はじめに
(1) 3月11日14時46分ごろ、東北から関東北部の太平洋沖で発生した大地震と、それによって発生した大津波は、北海道から神奈川までの都道県に甚大な被害を引き起こした。この大震災は、石油コンビナートや発電施設のいくつかにも壊滅的な被害を与え、燃料、電力不足の2次被害を発生させた。また、福島原発第1発電所での深刻な事故の誘因となり、東京電力や政府の対処のまずさもあって、チェルノブイリ原子力事故を上回る大規模な放射能事故となる危険が高まっている。
3月16日の第1次集中回答日、17日の全国統一行動日は、社会的危機とも言える状況の下での取り組みとなった。
(2) 後述するように、JMIUや建交労、医労連などが、16日までの回答引き出しにこだわった取り組みを進めた。また、地方段階でも、大震災の影響を受けた東北、関東の各都県では取り組み自体を中止せざるを得なかったものの、他の地方では、災害対策強化などを求める宣伝行動や震災カンパの取り組みが28地方組織から報告されている。大規模災害も契機に、雇用破壊、賃下げ攻撃を強める姿勢さえ示している財界等の攻撃とたたかう決意が示されている。
1.第1次集中回答日に向けた取り組み
(1) 3月10日までの報告では、地域総行動は27都道府県で自治体、経営者団体・事業者団体などへの要請をはじめとする行動が取り組まれている。なお、6月議会に向け、自治体キャラバンを計画している地方組織も8県ある。2011年春闘で強調した春闘期の学習決起集会は、70地域(シンポジウムを合わせれば延べ83地域)が報告されている。地域総行動とも合わせた地域集会は85地域・119会場での実施、または実施予定が報告され、宣伝行動も84地域で延べ307回、約20万枚のビラ配布の実績が報告されている。
賃金底上げ、雇用確保などの労働者要求を前面に掲げた集会、宣伝だけでなく、TPP(環太平洋連携協定)参加反対など国民的課題を強調した取り組みも各地で取り組まれている。
2月10日に延べ7000人が結集して取り組んだ「2.10中央総行動」を契機に地域総行動が全国的に展開され、その成果を持ちよった春闘決起の場として設定した「3.3中央行動」は3000人の参加で成功した。
各組織で、前年以上に行動参加が強調されたことは、以上のような取り組み報告の状況からも伺える。
(2) 地域、中央段階での取り組みも背景に、各単産での要求提出、交渉が強められていた。しかし、冒頭で述べた大震災の発生もあり、各単産は、3月16日の集中回答日と翌17日の統一行動の内容を修正せざるを得なかった。
多くの単産は、被害が集中した東北地方での回答引き出し、行動配置を延期、解除し、17日のストライキの中止も相次いだ。
17日の統一行動は東海以西に集中し、ストライキ実施は、JMIU、日本医労連(61組合・19000人)などにとどまった。統一行動参加者の集約も遅れており、現段階では生協労連、医労連2単産からの報告で、4万7000人の行動参加となっている。地方からは前述のように、28地方組織から震災カンパ活動参加などの取り組みが報告されている。
(3) 3月17日の第1回賃上げ集計には、11単産・部会から報告が寄せられ、有額回答を引き出したのは102組合であった(前年同期は110組合)。
単純平均(一組合あたりの平均)は5161円で、前年比166円増、加重平均(組合員一人あたりの平均)は4868円で、前年比443円減である。加重平均が前年比減となっているのは、規模別集計「1000人以上」の組合が大きくマイナスとなっていることが影響した。
単産別では、報告を寄せた11組織のうち、前年同期比でプラスが6、マイナスが5となっている。9日に第1次回答を引き出し、現在も追い上げをはかっているJMIUや、出版労連が奮闘している。
2.4月段階の取り組み
(1) 大震災の影響で、自動車、電機などのメーカーでの操業中止も相次いでいる。東京電力管内での計画停電や、公共交通機関の運行中止の影響も出始めている。さらに、燃料不足が深刻化し、ガソリン、軽油不足と高騰が、物流関係や建設関係に影響し始めている。
被災地からは、内定取り消しや解雇、自宅待機などの雇用問題が報告され始めた。
それらへの対応もあって、春闘要求にかかわる交渉や回答引き出しが後景に追いやられ、結果として企業の賃下げ、労働条件引き下げ攻撃を激化させる状況が強く懸念される。
(2) したがって、被災地も含め、経営者との間での要求確認や回答確約を迫り、第1次回答集中日までの不十分な回答の追い上げを図る立場でのたたかいの再確立が必要となる。
単産の行動が配置されている3月23日を改めての統一回答日として設定する。
予定した4月14日の第2次集中回答日を最重視し、交渉、取り組みの集中をはかる。4月15日(金)を全国統一行動日に設定し、賃金底上げと雇用の安定、大震災対応も含めた大企業の社会的責任の履行を求める取り組みを集中させる。
(3) 政府・財界からは、災害復興を口実にした増税や、輸出企業重視の復興対策、生産の一時的停滞、生産調整を理由とする雇用破壊の動きがすでに出始めている。
被災者支援や被災地の早期復興を求める取り組みを組織し、強めると同時に、大震災に苦しんでいる労働者・国民にさらなる痛みと犠牲を押し付ける財界・大企業の動きを厳しく批判し、「今こそ大企業の内部留保の社会的還元を」「大企業は震災復興に社会的責任の発揮を」の主張を強め、世論形成の取り組みを強める。
また、労働者派遣法抜本改正、有期雇用規制強化など雇用の安定を求め、消費税増税によらない社会保障制度の拡充、TPP参加反対などの国民的課題での要求運動と共同の追求を、震災対策とあわせて強化する。
なお、5月29日にはTPP参加反対の一点での集会開催が準備されており、積極的に対応する。