2011国民春闘共闘情報
全労連HP

第31号 2011年6月24日

2011年春闘・制度的諸要求獲得状況(第3回中間集計)

『たたかう組合』の本領発揮


 国民春闘共闘委員会(全労連、純中立労組懇、地方共闘などで構成)はこのほど、今春闘における制度的諸要求獲得状況の第3回中間集計をおこないました。全体の集約数は前年に及ばないものの、震災復興にかかわる要求や解雇・委託の撤回など、全国各地から多彩な成果が報告されています。

 第3回集計には、18単産3地方から、のべ770組合の要求獲得が報告されました。今回報告されたなかで、とくに注目されるのは、全教・教組共闘のとりくみです。

 全教は4月27日、全国私教連や宮城高教組の代表とともに、被災地の教育活動の再開に向けて文部科学省交渉を実施。被災校、被災児童の通学校などに対する教職員の加配措置とともに、被災生徒に対する学費の全額減免などを求めました。文科省側は「調整作業中」と答えましたが、交渉の翌28日、「東日本大震災への対応のための教職員の加配定数について」という文書を発出。岩手、宮城、茨城、新潟の4県について、小・中・高等学校などあわせて424人の教職員加配を内示しました。また、福島原発事故に関して、国と東京電力の責任で学校施設内の放射線量を引き下げる措置を講じるよう求めたのに対し、文科省は6月6日、「私立学校を含む福島県内の全ての小中学校等に…積算線量計を配布する」と回答。文科省が示している福島県内の学校・校庭等の利用判断基準である「年間20ミリシーベルト」を即時撤回せよとの要求に対しては、「年間20ミリシーベルトの放射線を浴びてもよいという意味ではない」として、「学校内で受ける線量について、当面、年間1ミリシーベルトをめざす」「校庭等の土壌に関し、…毎時1.0マイクロシーベルト以上の学校について、災害復旧費での財政支援の対象とする」と回答しました。これらはマスコミでも大きく報道されましたが、国民世論を背景に、教職員組合がねばり強く交渉を重ね、かちとってきた重要な成果です。

非正規関係

 これまでに非正規労働者の正規化をかちとった組合は、4組合報告されています。山形県の全農協労連加盟の組合は、准職員・臨時職員から14人もの正職員化を実現しました。神奈川県の全労連全国一般の組合は、非正規雇用組合員の雇止め提案を交渉で撤回させています。出版労連の組合(東京)は、非正規の一時金について、正社員と同率の20割支給をかちとりました。今回寄せられた報告のなかでは、出版労連、全印総連、全国一般などの組合が、非正規にかかわる一時金支給や休暇増、福利厚生の改善など多くの成果をあげています。
 非正規労働者の賃上げは、192組合が獲得しています。全農協労連は、東北をはじめ各地の組合で1.6〜3%の賃上げを実現。化学一般労連、出版労連なども、パートや契約社員の昇給・時給改定などをかちとりました。

初任給・格差是正など

 初任給の引上げは、愛媛県で全農協労連の組合(複数)が、高卒・短大卒・大卒のそれぞれで5600〜7200円のアップを獲得したほか、「56歳以上の賃金カット(5%)廃止」をかちとっているのは画期的です。全倉運の組合からは「若年職員家賃補助制度の増額」「中京・福岡都市圏の新設」などが報告されています。

時短関係

 時間短縮・休暇・残業関係では、70組合が要求を前進させました。
静岡県では、製造業関係の組合が「3交替者の休日1日増」を獲得。このほか「半日有給休暇取得可」(全国一般)、「代休取得期間:休日出勤日より4週→8週まで延長」(出版労連)、「リフレッシュ休暇の増日(3日間連続)」(全倉運)などの回答を得ています。

雇用保障、人員増

  雇用保障関係では、全国一般の組合(神奈川)が、組合員の解雇撤回・職場復帰をかちとりました。定年・雇用延長関係では、出版労連の組合が「希望者全員雇用(1年ごとの更新)」を実現。人員増関係では、「スタンド職員の増員」(全農協労連)、「正社員増員」(化学一般労連)などを約束させています。

安全衛生ほか

 安全衛生関係では、21組合から報告がありました。「安全衛生委員会の設置」「安衛委員会で年休・代休の取得状況を報告」(全農協労連)、「ドライブレコーダーの導入」「ヘッドライト交換」「肺炎予防接種の実施」(自交総連)などが目立ちます。
 その他の諸要求では、高知県で全国一般の組合が業務一部委託提案を凍結させたのをはじめ、全農協労連の各組合が「通勤手当:支給上限を2万円から3万円に」「物価手当1000円引上げ」「TPP研修会の実施」「共済のいっせい推進は班単位とし、個人ノルマとしない(実績の個人管理はしない)」など多彩な成果を獲得。出版労連の組合は「リフォーム融資制度(500万円まで年利1%)の新設」などをかちとっています。

 今春闘における諸要求獲得状況の特徴は、第1に、大震災が各組織の態勢にも少なからず影響を与え、報告数が全体として伸び悩んでいることです。現時点での到達は、なお前年の7割程度にとどまっています。第2に、こうした困難のなかでも、冒頭の全教のとりくみや、第2回集計時に紹介した自交総連など、震災からの復興をめざすとりくみのなかで、たたかう労働組合としての本領を発揮した奮闘が各地で展開されたことです。第3に、集約数はともかく、獲得した要求内容はこれまでにも増して多彩なものとなっていることです。これは、小さな要求にも光をあて、労働者の生活を丸ごと℃轤驍フが労働組合の役割であることを、実際の成果で示したという点で極めて貴重です。

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