10日17時から厚生労働省内で、中央最低賃金審議会における第2回目の「目安に関する小委員会」が開催され、生活保護との整合性論など、考え方に関する議論が行われた模様です。全労連・国民春闘共闘は東京春闘共闘と共に、審議に先駆け16時20分から最低賃金の大幅引き上げ、全国一律制度の確立を求めて宣伝を行いました。
【目安小委員は、大幅引上げを決断せよ!】
厚労省前での宣伝行動には、16組織28人が駆けつけ、5人の代表が意気高い決意表明を行いました。
国公労連の高木中央執行委員は「先日、発表された自殺対策白書によると、自殺の原因第2位が経済的問題・生活苦によるものである。とりわけ10代から30代の若者の自殺問題が深刻化している。生活苦による自殺を防ぐためにも、最賃を3ケタ引き上げ生活できる最賃にしなければならない」と思いの丈を訴えました。
生協労連・桑田委員長は「昨年の目安答申は、中小企業の支払能力論を口実に被災地では、たったの1円と抑制された。マスコミは、大手企業が被災地に店舗を出したことを美談の様に取り上げるが、最賃ギリギリの金額で雇用している。もっと高い賃金で採用している地元中小企業の事を思うなら最賃を引き上げるべきだ」と被災地での実態を告発。
東京自治労連・喜入書記は、低賃金で働く労働者の実態を例に上げ、「最賃に関わっての生活保護基準が低く見られている。このことに抜本的にメスを入れるべきである」と訴え、全労連・全国一般の大木副委員長は「26日の審議会には大臣も出てこず、通り一遍の諮問文を読み上げるだけで、政府のメッセージは何もなかった。民主党・野田政権の労働政策の姿勢がここにあらわれている」と批判。
全労連・全国一般東京地本の室井委員長は「運動により2008年に最賃法が改正され大きな前進となったが、最賃の決定要素に企業の支払能力が入っているのは大問題」と最賃法の問題点を指摘し、「最賃の大幅引き上げと全国一律制の確立で、低賃金で苦しんでいる非正規労働者の賃金を底上げしていこう」と呼びかけました。
【「雇用戦略対話合意」は前提条件が不成立!と使側主張】
第2回の目安小委員会では、29人未満の事業所の「賃金改定状況調査結果」、「生活保護と最低賃金との比較」、「最賃額の未満率・影響率」、「都道府県別賃金分布」、「最賃引上げに向けた中小企業への支援事業の実施状況」、「最新の経済指標の動向」、「東日本大震災関係資料」、「最賃法違反の状況」といった資料が出されました。
まず、雇用戦略対話合意である「800円、1000円」目標の条件として、使用者側がこだわる、経済成長率は、2011年度はマイナス2.0%でした。これをみた使用者側は、一斉に合意の前提が成立していないことを主張したようです。地方の使用者代表の中には、経済成長率の前提条件をクリアしていなければ、合意は無視して最賃を引き上げなくてもよい、というものではないという意見もありますし、2012年の1〜3月という直近のデータでは1.2%、年率換算で4.9%と上向いていることを意識すべきとの声もありますが、審議会の中での議論がどうなっているかは不明です。
もうひとつ、昨年の目安全員協議会で、使用者側が重要な統計として最重視するよう求めた中小零細企業の賃金改定状況調査結果は、全体で0.2%の賃金アップでした。Aランクが0.1%、Bランクが0.4%、Cランクが0.5%、Dランクが0.3%と、いずれもわずかなプラスにとどまりました。
【まやかしの算定ですら、11地方で最賃が生保未満に】
最低賃金と生活保護との乖離については、生活保護に関する最新のデータ(2010年時)が発表されました。結果は11の地方で乖離が生じているというものでした。
北海道30円、青森5円、宮城19円、埼玉12円、千葉6円、東京20円、神奈川18円、京都8円、大阪15円、兵庫10円、広島12円です。この間の最賃引上げで、乖離は縮めたはずが、再び広がったかに見える理由は、(1)住宅扶助の数字を実績値でみているために、リーマンショックの影響で新規に生活保護を受給した人が増え、そのために家賃代が高めに出たこと、(2)社会保険料の引き上げで可処分所得が減ったことが主な原因です。
この結果は、(1)月173.8時間労働を前提とし、(2)生活保護の級地は都道府県内の最上級地でなく人口加重平均をとり、(3)住宅扶助は基準額でなく実績値をつかい、(4)勤労控除は無視し、(5)沖縄の税金・社会保険料率を適用して計算するという「まやかし算定」をしてもなお、乖離が発覚したということであり、すぐにでも、この乖離は埋めるべきです。
さらに、労働者に最低限保障されるべき賃金が、本来いくらであるべきか、最低生計費をキチンと計算し、全国一律にまともな最低賃金を設定すべきです。
【マスコミの生活保護攻撃に警戒、反論を!】
警戒が必要なのは、生活保護バッシングを大展開してきた、マスコミの報道の仕方です。今回の生活保護と最賃との乖離の発表について、「“逆転”が明らかに!」と取材が殺到、生活保護が高すぎるかのような報道が垂れ流しされる可能性があります。
問題は、まともに働いても暮らせないような低賃金が蔓延していることであり、その原因は、憲法や労働基準法、最低賃金法の趣旨にもとる、あまりに低額な最低賃金にあります。また、合理的な理由もないのに、有期労働契約が濫用され、使用者の都合で安易な雇止めがなされていること、そして、いつでも雇止めできることが脅しとなって、長く働いても労働条件の向上を要求できない労働者を生んでいることにあります。
私たちは、生活保護バッシングの誤った報道を批判すると同時に、まともな労働基準の土台をつくるためには、生活保護がしっかりしていなければならないということを世論に訴え、ナショナル・ミニマム破壊のメディアの攻撃に対抗しなければなりません。
この夏の最賃闘争は、秋年末に向けた「税と社会保障の一体改悪」とのたたかいとも連携した重要性を帯びるようになっています。
【中央の最賃行動・予定】
◇ 第3回目安小委員会包囲・要求行動(目安小委は厚労省22F 専用第14会議室で開催)
日時:7月19日(木)16:20〜17:00(小委員会は19:00までの予定 )
場所:厚生労働省前 行動:宣伝行動
◇ 第4回目安小委員会包囲・要求行動
(目安小委は日本青年館ホテル5F 501会議室で開催)
日時:7月24日(火)16:20〜17:00(小委員会は深夜に及ぶ見込み )
場所:日本青年館前(明治公園隣) 行動:宣伝行動
◇ 第3次最賃デー中央行動(夏季闘争勝利7・25中央行動)
(1)諸要求実現7・25総決起集会 12:15〜13:00【日比谷野外音楽堂】
(2)「最賃引き上げ、雇用と暮らし守れ、公務員賃金改善」人事院・厚生労働省前要求行動 13:15〜13:45
(3)各省前要求行動 14:00〜14:30
(1)財務省・文科省前要求行動 (2)農水省前要求行動 (3)総務省前要求行動
(4)国会請願デモ 14:50〜 【日比谷公園霞門出発】
※7月26日(木)13:00〜 第37回中央最低賃金審議会は傍聴行動とします。