2013国民春闘共闘情報
全労連HP

第51号 2013年8月19日

2013年春闘・制度的諸要求(最終集計)

法改正の前進面を職場に反映

 国民春闘共闘委員会(全労連、純中立労組懇、地方共闘などで構成)はこのほど、2013年春闘における制度的諸要求(非正規雇用の処遇改善、企業内最賃、時短、各種休暇、福祉厚生など)の獲得状況をまとめました。18単産6地方742組織(連合会・単組・支部などの交渉単位)から報告が寄せられ、1736件の条件改善を獲得しています。

2013年 制度的諸要求獲得状況の特徴

 今年度の制度的諸要求獲得状況の第1の特徴は、非正規雇用で働く仲間の要求を大きく前進させたことです。賃金改善では、生協労連の100件をはじめ、日本医労連(70件)、全労連・全国一般(35件)など、前年同期(192組織272件)を上回る194組織で288件の改善を勝ち取っています。その他の労働条件では、非正規労働者への一時金支給を中心に、「臨時・パートの退職金を獲得」(建交労)、「パート労働者メモリアルデー休暇」(化学一般労連)、「派遣やアルバイト、社外スタッフなども含む構内労働者に、現金やクオカード、商品券による激励金などを支給」(民放労連)、「6時間以上の勤務者に食事手当125円支給」(日本医労連)など155組織が216件の成果をあげています。
 第2の特徴は、これまでの取り組みと法改正や制度改正をつなぎ合わせ要求を前進させたことです。
 4月に改正された労働契約法の第18条「有期労働契約の無期契約への転換」条項を活用した「正社員化や無期雇用化、無期雇用登用条件の改善」では、全印総連で「8人の非正規雇用者を正社員化」、全農農協労連では「25人の有期雇用者を4月より無期労働契約化」、生協労連では「3年間の期間を経た希望する定時職員を無期契約に」、JMIUでは「派遣2名を直接雇用に」するなど、38組織から43件の成果が報告されています。建交労(1)、建設関連労連(1)、JMIU(2:大阪1含む)、全労連・全国一般(3)、全印総連(2)、日本医労連(3)、福祉保育労(3)の15組織では、「非正規の正規化」を実現しています。
 そして、改正労働契約法・第20条「期間の定めがあることを理由とした不合理な労働条件の禁止」条項を活用したケースでは、「アルバイトの交通費基準を統一運用に」(JMIU)、「非正規雇用労働者にも4月から持ち家住宅手当新設」(自治労連・関連)、「パートへの厚生休暇の新規付与」(生協労連)、「契約社員の労働条件は社員に準じる」(出版労連)など、46組織から63件の要求前進の報告が寄せられています。
 年金と雇用の隙間をつくらせない取り組みも進んでおり、改正高年齢者雇用安定法とも関わって、定年・雇用延長の改善では、前年同期(36組織37件)を上回る51組織54件の条件改善を勝ち取っています。「定年延長」は、自交総連(4)、全倉運(2)、福祉保育労(1)の7組織7件で実現され、生協労連では2組織で協議・協議検討段階に入っています。全農協労連、建交労、JMIU、民放労連、日本医労連、福祉保育労では「65歳までの再雇用」、「希望者全員の再雇用」などを実現させています。その他、「無年金者に2ヵ月分支給」(JMIU)、「65歳定年までの正社員の賃金体系維持」(自交総連)、「再雇用嘱託社員にも年度末奨励金支給」(民放労連)、「再雇用者に住宅手当を支給」(日本医労連)など高年齢者に対する賃金・労働条件の改善も獲得されています。
 また、日本医労連では厚生労働省の5人の局長が連名で発出した「看護師等の『雇用の質』の向上のための取り組みについて」(5局長通知)という通知を活用し、「労働時間管理者(職場責任者)の明確化させた」などの成果を勝ち取っています。
 職場の要求を練り上げ、政府、国会、業界団体など関係各所へと働きかけることで法律や制度改正につなげ、それを職場で生かし要求を実現し、その成果を共有し広げる、好循環の取り組みが進んでいます。
 第3の特徴は、前述した非正規雇用労働者の要求や高年齢者の要求を含め、格差是正に関わった要求が前進したことです。初任給・格差是正(非正規除く)に関する要求獲得は、要求が前進した前年同期(40件43件)からさらに増加し、初任給引き上げを中心に49組織で56件を獲得しています。「秋田で広域合併後に入った職員の格差を是正させた」(全農協労連)、「近年入社した中途採用者の年齢給、勤続給の是正を3年かけて行う」(全倉運)、「初任給と若年層賃金引き上げ」(金融労連)などの報告も寄せられています。
 そして、格差是正・賃金引き上げの土台となる企業内最低賃金協定や年齢・職種による最低保障賃金の協定化の取り組みも進んでいます。企業内最低賃金協定は、前年同期(116組織167件)を54組織103件上回る170組織が270件の最低賃金協定を締結しています。国民春闘共闘委員会では「誰でも月額16万円、日額7,500円、時間額1,000円」以上の最低賃金改善目標を掲げ、たたかいを進めてきました。建交労では、獲得した34件すべてでこの目標を上回り、日本医労連は、前年同期を大幅に上回る162件を獲得しています。最低保障賃金は、「28歳:22万1200円」(JMIU)、「年齢別最低保障基本給の設定」(全倉運)など4組織で7件の協定を締結しました。

 時間短縮・休暇・残業関係での前進回答は124組織で176件となりました。
 所定内労働時間の短縮は、「夜勤勤務時間10分短縮」など日本医労連で3件、全倉運では「年間労働時間14時間短縮」を勝ち取り4組織4件となりました。全農協労連の茨城の職場では「第2、3の週2回だった週休2日制を、第1土曜を休日とさせ週3回」としました。
 休日休暇に関する要求では、生協労連が改正労働契約法を活用した取り組みで、「シニアパート職員への慶弔特別休暇の付与」などパートなど非正規雇用で働く仲間の要求を12件獲得。「リフレッシュ休暇3日間から5日間へ」(民放労連)、「全有給休暇の日数の55%を強制取得」(全印総連)など前年同期を上回る79組織で99件の制度改善を実現させています。
 残業関係では、「ノー残業デーを月1回から週1回に」(建設関連労連)、「36協定の締結」(全労連・全国一般)など16組織で20件獲得。
 育児休業・休暇関係では「適用範囲の拡大」を中心に21組織で24件となっています。「子育てをしながら働き続けられるための環境整備」を課題として揚げた出版労連や民放労連などマスコミ関係での健闘が光ります。
 看護・介護休業関係では、「年5日の家族介護休暇新設」(JMIU)、「介護休職期間を勤続年数に加算」(生協労連)など14組織が17件の制度改善を勝ち取っています。
 その他、「つけ待ち1を労働時間として取り扱う」(自交総連)、「職員会議の時間内実施」(福祉保育労)などの報告が寄せられています。

 社会保険料の負担割合の改善は、全倉運、出版労連の2組織で獲得。育児休業・休暇などを除いた母性保護関係での前進回答は「土日の託児所利用料の病院全額負担」(日本医労連)、「異常妊娠に起因する疾病の4週間限度の有給保障」(出版労連)、「妊娠中の通院を有給にて時間保障」(福祉保育労)、「人間ドックで全ての女性を対象に『マンモグラフィー検査』『子宮がん検査』を追加」(民放労連)、など13組織14件となっています。
 労災補償の上積み獲得は、建交労(8)、JMUI(5)、化学一般労連(1)、福祉保育労(1)の15組織15件となりました。安全衛生関係では、「安全パトロールの実施」(JMIU)、「車内カメラ装着」(自交総連)などの安全対策や「人間ドッグ費用の会社負担分」、「インフルエンザ予防接種の会社負担」などの健康対策に加え、パワハラやセクハラ、メンタルヘルスへの対策など68組織で78件の前進回答を得ています。民放労連の職場では、「私傷病による長期欠勤または休職した社員への復職支援制度取扱規則」を新設させています。
 長時間過密労働による健康破壊・メンタルヘルス不全の防止となる人員増は、JMIU(17)をはじめ、日本医労連(8)、民放労連(4)、化学一般労連(3)、全農協労連、全倉運、福祉保育労、大阪(各1)で、前年同期(27組織29件)を上回る30組織が36件の要求を前進させています。
 退職金の上積み・新設は、10組織で13件獲得し、「算定基礎額の上積み」に加えて、「再雇用者退職慰労金40万円」(JMIU)や「準常勤の退職一時金を新設」(日本医労連)などを実現しています。
 その他、「Iターン手当の月額5,000円引上げ」(全農協労連)、「無料駐車場の確保」(建交労)、「建築積算士試験合格者への受験料の全額支給」(建設関連労連)、「災害見舞金制度の改定」(JMIU)、「永年勤続表彰制度改善(増額)」(化学一般労連)、「カード・クレジット手数料の運転手負担軽減」(自交総連)、「寒冷地転勤手当の新設」(全倉運)、「職員割引制度の本格導入」(生協労連)、「2km未満の通勤者に交通費750円支給」(全労連・全国一般)、「別居手当・住宅手当の地域間格差是正」(全損保)、「ガソリン単価が1リットル当り170円を超えた場合20円補助」(全印総連)、「決算報告書の提示」(出版労連)、「食堂の無料開放」(民放労連)、「夜勤手当の増額」(日本医労連)、「発達保障のための年齢別保育の実施」(福祉保育労)など320組織で468件の前進を勝ち取っています。
 また、「消費税対策での共同」(自交総連)、「『産業政策提言』への賛同・協力」(全印総連)など制度政策要求で、経営者と一致・協力が進んだという報告も寄せられています。
 以上で紹介した様々な成果と教訓を、単組や産別を超えて共有し、より多くの職場に広げましょう。同時に、政府や国会、地方自治体、業界団体などにも働きかけて、要求前進の支えとなる法制度整備を実施させ、それをテコとして、さらなる要求実現につなげる好循環を、ともにつくり出そうではありませんか。


1 駅・ホテル・公共施設等に設置されたタクシー乗り場において乗客が来るのを待つこと

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