2014国民春闘共闘情報
全労連HP

第38号 2014年7月3日

中央最低賃金審議会がスタート

7・1中央最低賃金審議会・緊急要求行動

 7月1日、第41回中央最低賃金審議会が厚生労働省内で開催されました。厚生労働大臣の諮問後、第1回目安小委員会が行われ、今年度の最低賃金に関する審議が開始されました。全労連・国民春闘共闘は、審議会の開催に先立ち、最低賃金の大幅引き上げ、全国一律制度の確立、公開審議の実施を求めて宣伝を行い、傍聴行動を実施しました。

 審議会開催に先立ち行った厚生労働省前での緊急宣伝行動には17人が参加し、中央最低賃金審議会に対する要求を訴えました。
 福祉保育労の澤村書記長は、この間、中央最低賃金審議会会長などと懇談した際の要請内容もふまえ、「議事録をあとで公開しているから、透明だなどという主張は的外れだ。誰が、どのような表情で発言し、それを聞いている相手側がどのような態度で受けとめたかといったことも、重要な情報であり、それらをリアルタイムで公開していくことが大事だ。鳥取の地方最賃審議会では公開されていて、中立性が損なわれるようなことにはなっていない。中央でも公開を決断すべきだ」と金額改定の目安の実質審議をする目安小委員会を、原則通り、公開することの重要性を訴えました。
 自治労連の杉本中央執行委員は、自治体職場におけるワーキング・プア問題をとりあげ、「自治体において業務を民間にアウトソーシングするケースが増えており、そこには大きな問題がある。例えば、足立区は人件費削減をするとして、戸籍住民課と中央本町区民事務所の窓口を統合し、届出や証明発行などの窓口業務を民間委託したが、公権力行使にあたる受理・不受理の判断を委託業者が行っていることは違法と法務局が判断。疑義が生じた場合は委託業者が区職員に指示をあおぐため、手続きにかかる時間がこれまでより長くなり、繁忙期には、戸籍届出に1時間以上もかかってしまった。2億2680万円の委託料は、委託に伴う32名の職員削減額を上回っているのに、現場で働く労働者は低賃金。区はその賃金を把握していないといっているが、実態は非正規で、賃金は初任給水準に張り付き、あがらない」と実態を暴露。「最低賃金の大幅引き上げと、公契約条例の制定が必要」と訴えました。
 全労連・全国一般の女性センター西村議長は、熊本にある実家(イチゴ農家)の状況から、話しはじめ、「昔は野菜なら作っていたが、今は買っている。その野菜やくだものの値段は東京と同じだ。お菓子などはむしろ、熊本の方が東京より高い。地方では車は必需品で、実家には5台ある。そこには税金もガソリン代もかかる。冠婚葬祭など近所とのお付き合いにもお金がかかる。こうした地域の生活があるにもかかわらず、熊本の最賃は669円で、全く実情をふまえていない」と述べ、「生活をしていく上で必要なお金は、東京と地方とで大きくは変わらない。さらに健康を害したらどうなるか。私は4月まで看護師をしていたが、糖尿病治療には毎月1万円はかかる。今の最低賃金ではフルタイム就労しても治療代が払えるか疑問だ。せめて1,000円には引き上げてほしい」と力を込めました。
 全労連・全国一般の青池書記長は2007年の最低賃金法改正を振り返りつつ、それを一つの前進とみて喜んでいたが、その後、遅々として改善が進まない現状に裏切られた思いがすると発言。「審議会委員は、自分で月にいくらの賃金、収入が必要かを真剣に考えて、審議をしてほしい。これは経済対策としても重要だ。お金がある人に、お金を回しても貯蓄や投資に回ってしまうが、低賃金で暮らす人たちにお金が回れば、節制していた食事や衣服を購入し、地域の中小企業分野の刺激になる。賃上げは企業に負担が重いというが、労働者の定着は高まり、新規募集や新人教育の費用が抑えられ、生産性が向上するメリットもある」として、労働者のみならず、使用者にとっても、最賃引上げにはメリットがあることをアピールしました。
 特殊法人労連の岡村事務局次長は、日本学生支援機構労働組合(学支労)で掴んでいる学生の状況を発言しました。「先日、島根の奨学金返済中の30代女性から手紙が届いた。働きながら返していたが、メンタルで仕事を止めざるをえなくなり、奨学金の滞納額が300万円になってしまった。その後、やっとついた仕事がコンビニのアルバイトで、月5〜7万円の手取り収入のうち5,000円〜1万円を返済にまわしている。奨学金で、学生時代は本当に助かったから、なんとしてでも返済したいのだが、何年たったら完済となるのか・・・。というものだった。卒業すると同時に多額の借金を背負う青年たちが増えている。そして、その借金を、働いていても返せない人が増えている。そんな低賃金が横行しているのはおかしい。新宿一般労働組合が毎月25日に行っている新宿最賃デモに参加しているが、沿道の若者から熱烈な声援を受けている。最賃大幅引き上げに賛同する人は増えている」と訴えました。

〜第41回中央最低賃金審議会〜
 15時から開催された第41回中央最低賃金審議会には、昨年と異なり、諮問日にも関わらず田村厚生労働大臣は姿を表しませんでした。代理として中野労働基準局長から、「諮問文」が仁田道夫会長に手交され、調査審議にあたっての政府からのメッセージが以下のように伝えられました。

政府からのメッセージ
 「諮問文は『平成26年度地域別最低賃金改定の目安について、貴会の調査審議を求める』とお手元の資料にあるとおりです。先月末、政府は『経済財政運営と改革の基本方針2014』と『日本再興戦略改訂2014』、いわゆる骨太方針と成長戦略を閣議決定いたしました。それらの方針でもふれられている通り、日本経済はデフレ脱却に向けて着実に前進しており、拡大した企業収益を賃金上昇につなげ、個人消費を拡大させることで更なる企業収益の拡大に結び付ける経済の好循環が実現しつつあります。
 ここで重要なことは、成長戦略によってもたらされた成長の果実をできるだけ早く国民の暮らしに反映していくことです。地域で暮らす人々の生活や中小企業や小規模経営者の方々は未だに厳しい状況に置かれています。そこで、骨太方針では、『中小企業・小規模事業者への支援を図りつつ最低賃金の引上げに努める』とうたい、成長戦略では、『全ての所得層での賃金上昇と企業収益向上の好循環が持続・
拡大されるよう、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援を図りつつ最低賃金の引上げに努める』としています。
 政府の姿勢は昨年から変わっていません。現下の最低賃金を取り巻く状況を踏まえ、経済財政運営と改革の基本方針及び日本再興戦略に配意した調査審議を求めます。」

 その後、「今後の進め方」が検討され、今年度においても「小委員会(目安小委員会)」を設けることとされ、審議会委員から公労使各4人計12人の委員が選出され、審議会は終了しました。
 つづいて、目安小委員会が開催され、例年であれば審議会の終了とともに、傍聴者は追い出され、扉が閉じられた後に、目安小委員会は開催されますが、今回は傍聴者に対する事務局からの追い出しはなされず、若干の時間をおいて、第1回目安小委員会が開催されました。
 そして、目安小委員会の冒頭、審議を公開で行うか、非公開で行うかをはかる場面までが、初めて公開されました。この点は、これまでの要請や懇談などの結果、改善された模様です。
 しかし、仁田会長は、初の公開審議に期待をよせた私たちの前で、従前どおりの非公開を提案しました。これを使用者側・労働側委員が了承し、今年度においても目安小委員会が非公開で実施されることが決まりました。
 残念ながら、今年も全ての労働者の賃金に影響する最低賃金の改定審議が、密室で議論されるという非民主的な事態が、公労使三者で確認され、行われることになってしまいました。私たちは、密室での審議運営に対して、強く抗議しつつ、最後まであきらめずに小委員会包囲行動や、意見書・署名の提出に粘り強く取り組み、私たちの要求を審議結果に反映させる努力を続けましょう。

【中央での最低賃金行動・予定】
○ 第2回目安に関する小委員会 7月15日(火)15:00〜17:00  於 厚生労働省
※「7・15目安小委員会・要求行動」を実施します。14:15〜15:00厚生労働省前です。

○ 第3回目安に関する小委員会 7月23日(水)17:00〜  於 厚生労働省
※「7・23目安小委員会・要求行動」を実施します。16:15〜17:00厚生労働省前です。

○ 7・25中央行動・第3次最賃デー 7月25日(金)12:15〜 日比谷野外音楽堂 ほか

○ 第4回目安に関する小委員会 7月28日(月)10:00〜 於 未定(おそらく、日本青年館)
※全労連大会があるため、行動配置はしません。夜、最賃担当者は現地で情報収集につとめます。

○ 第42回中央最低賃金審議会 15:00〜(審議状況により変更の可能性あり) 於 厚生労働省
※検討中「7・29中央最低賃金審議会・目安答申包囲行動」(実施の場合は14:30〜15:15)

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