本日、野田首相など関係4閣僚は、停止中であった関西電力大飯原発3号機、4号機の再稼働を「政治判断」しました。これを受けて関西電力は、再稼働の準備を開始し、7月初旬に3号機の本格運転を開始すると発表しました。
本日の「政治判断」は、高まる国民の再稼働反対の声を押し切り、なし崩し的に停止中原発再稼働に進むための「アリの一穴」に位置付けられていることは明らかです。与党の一部からは既に、他の原発の再稼働を進める意向も示され始めています。
原発をなくす全国連絡会は、そのような意味を持つ本日の「政治判断」に抗議し、なし崩しの原発再稼働は行わず、原発ゼロの日本をめざす決断を政府が行うよう強く求めます。
野田首相などの「政治判断」は、原発が稼働しないことの経済活動への影響のみを強調し、福島原発事故をふまえた新たな安全基準などは全く示さないままに行われました。原発の安全問題が指摘されると、「暫定安全基準」なるものを急きょ示し、それへの電力会社の対策は「口約束」で済ますという杜撰なものでした。
このような「政治判断」の経過からは、政府として果たすべき国民生活の安全確保の視点は全くうかがえません。福島原発事故で、原発が極めて危険で「未完の技術」であることをあらためて認識した国民への説明責任も果たされていません。
「政治判断」にあたり野田首相は、繰り返し「責任」を口にしました。しかし、福島事故から1年余りの経過をみると、福島原発事故と同様の事態が起きた場合の政府の責任を明確にする発言とは思えません。
未だ収束していない福島原発事故について、政府も電力会社も原発メーカーも、原発の安全神話を作り出してきた科学者も、誰一人として責任を明確にしていません。
「想定外の事故」が起きた場合の責任を曖昧にし続けている政府や電力会社に今、国民の批判が集中していることを政府は強く自覚すべきです。
経済活動を重視し、安全よりも「安価な電力」を大量に発電することに重きがおかれた結果が福島原発事故であることは、過去の行政情報の公開などからも明らかです。国民の安全を最優先すべき国の行政機関が、経済的効率優先の立場に立っていたこと、電力会社が利益第一主義で原発を稼働し続けていたことも同様です。
今回の「政治判断」にいたる政府機関や電力会社などの対応は、福島原発事故以前と何ら変わっていません。原発をなくす全国連絡会は、その点にも強く抗議します。
新たな安全対策を何も講じず、安全基準の見直しさえ進んでいません。原発事故が起きた際に影響を受ける住民の意見反映の方法なども整備されていません。そもそも、エネルギー政策として「原発は引き続き重要」という国民的な合意は形成されていません。
これらの点で、野田首相らの「政治判断」は、国民主権、民主主義との関係でも妥当性を欠いています。
原発をなくす全国連絡会は、以上の主張、意見を表明し、大飯原発再稼働の「政治判断」を直ちに撤回し、「原発ゼロの日本」への決断をおこなうよう政府に求めます。
2012年6月16日