タイの経済は01年からの低迷が続いたが、景気底入れ感とあいまって、失業率が02年2月2.8%(前年同月4.2%)、同10月2%となり、雇用情勢に改善の傾向が見られるようになった。国家経済社会開発庁の報告によると、97年の経済危機後の4年間に、農村部の貧困人口が816万人から300万人に減少した。しかし危機以前の水準にはまだ達していない。
こうした中で、政府に最低賃金の引き上げや失業者を対象にした社会保障制度の導入などを求める繊維・縫製・皮革労組の要求行動などがたたかわれた。経済危機以降、政府が推進している国営企業の民営化に対し、国営企業労働者が反対運動に立ち上がっている。
■繊維産業労組が首都で要求行動
タイの繊維・縫製・皮革労組連盟は02年4月22日、バンコクの政府官邸前で、最低賃金の引き上げなどの要求を掲げてデモを行った。
タイの現行最低賃金水準はバンコクで日額165バーツ、そのほか地方により133〜168バーツであるが、同労組連盟は最低賃金を全国で日額200バーツまで引き上げるよう要求した。このほか同労連は政府に対し、失業者を対象にした社会保険制度の導入、就業年齢に関する国際労働条約第138号の批准などの要求を提出した。
4月29日、海P産業社の従業員で組織するCPテキスタイル労組の組合員約100人がナコンラチャシマ県からバンコクにやってきて、会社側に対する要求行動を行った。要求項目は、1)経営側は1年に2足の靴を各従業員に支給すること、2)飲料水と住居(寮)の質の改善、3)労組の活動への介入の中止、4)不当解雇された組合員の再雇用、5)労災で死亡した従業員の家族への支援などで、会社側との交渉の結果、これらの要求項目について最終的に合意に達した。
■民営化に反対する国営企業労組
タイでは経済危機以降、企業の効率性向上を理由に国営企業の民営化計画が推進され、国営企業労組が反対運動に立ち上がっている。
◆タイ港湾局労組が民間との企業提携、バンコク港民営化に反対
タイ港湾局(PAT)の労働組合は02年4月10日、フォーラムを開催し、民間企業のトレイラー・トランスポート1974とPATとの企業提携に反対する1,200人の従業員の署名を集約した。同労組はこの企業提携とともにバンコク港の民営化計画にも反対している。トレイラー社はPATに数百万バーツを貸付けており、同社の経営者が内務省の国営企業担当副大臣の親類であることから、この企業提携計画が出されていた。
◆電話公社と通信公社の合併民営化に労組が反対
タイ電話公社(TOT)とタイ通信公社(CAT)の合併・民営化計画に対して、電話公社の労働組合は通信省に合併案反対の意向を表明した書簡を提出した。TOT労組は、合併により大幅な利益損失を生ずるとして合併に反対している。
■タイ自動車労組、期間工の採用比率制限を要求
タイ自動車労働者連盟は02年9月22日、政府と国会に対して、労働者保護法で「試用期間」雇用と認められている120日以内の雇用契約の労働者(期間工)の採用比率を、全従業員の30%までに制限する法律を制定するよう要求した。
タイ自動車労連のヴィヴァット議長によれば、自動車産業では年々労働者が期間工化し、これら労働者は雇用保障も社会保障もなく奴隷のように扱われているという。多くの自動車企業で期間工の高率採用が広がっており、全従業員の半数以上が期間工で占められているところもある。また、自動車産業だけでなく、繊維・アパレル・縫製・石油化学など、特に労働集約的産業において、経済危機後急激に期間工の採用が増えている。
こうした状況からタイ自動車労連は、期間工の採用を全従業員数の30%以下に削減する立法を求めた。これと同時に20以上の自動車労組が合同で、政府に嘆願書を提出し、経営者連盟との協議の場を設けるよう要求した。
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