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国旗 世界の労働者のたたかい
インド
2005

インド総選挙の結果

 有権者数6億5000万人余という世界最大規模のインド総選挙(第14回インド下院選挙)が、2004年4月20日から5月10日まで5回の投票日にわたって実施された。

<国民の審判―宗派主義と新自由主義の政権を放逐>
 この総選挙の結果、6年近くにわたって政権の座にあったインド人民党=BJP中心の政党連合(国民民主連合=NDA)が大敗した。
 バジパイ首相が率いる人民党連合政権の、ヒンズー至上主義による宗派主義政治と、国際通貨基金(IMF)、世界銀行に指示された新自由主義経済政策による雇用悪化と貧国の増大を、庶民が拒否した。そしてこの政権を放逐するというインド国民の厳しい審判が下されたのである。

<史上初、左翼が本格協力の連合政権>
 野党の国民会議派とインド共産党(マルクス主義)=CPIMは、人民党がヒンズー至上主義によって国是の政教分離を踏みにじったと批判し、政教分離の原則を守る政権の樹立を公約にかかげた。
 総選挙の結果、国民会議派は、前回の114議席から29議席を伸ばして143議席を獲得し、第1党となった。インド共産党(マルクス主義)を中心勢力とする左翼戦線は、前回43議席から今回60議席へ躍進。インド独立後最大の議席数となった。ケララ州での左翼民主戦線候補の勝利も含めて62議席の勢力となり、国会で第3の勢力としての地位を固めた(別表参照)。
 会議派とその同盟政党の合計議席だけでは下院の過半数に達せず、新政権樹立のためにはCPIMを中心とする左翼諸党との協力関係樹立が必要であった。会議派ガンジー総裁が5月15日、CPIMに政府参加を公式に要請。これを受けてCPIMと左翼諸党は、政権分離の新政権を閣外から支持し協力することを表明した。政権に参加しない理由についてCPIMは、同意できない政府決定については明確に反対できるようにするため、としている。こうして、インドの政治史上初めて、左翼政党が本格的に協力する連立政権が誕生した。5月22日、国民会議派のマンモハン・シン元財務相が次期インド首相に就任した。

<新政権与党が共同最小限綱領を発表>
 国民会議派などインド新政権与党の連合体である統一進歩連盟=UPAは5月27日、新政権の政策の基礎となる共同最小限綱領を発表した。
 同綱領の作成にあたって国民会議派は、新政権に閣外協力することを決めているCPIMなど左翼諸党との協議をかさね、共同綱領には左翼諸党の主張も考慮に入れた。CPIMなど左翼4党は5月27日夜、声明を発表し、経済政策などで違いはあるが、この共同最小限綱領を「歓迎」、「広く支持する」と表明した。
 UPA新政権の共同最小限綱領の要旨は次のとおり。

  • 統一進歩連盟=UPA政府の統治の6つの基本原則として、社会的調和を維持し、擁護し、促進する。雇用を創出するやり方での年7−8%の経済成長を確保する。非組織部門の福祉を増進する。女性の地位を政治的にも教育的にも経済的にも法律的にも強化する。社会的に後れた階級や宗派的少数派に平等の機会を与える。企業家を育成する。
  • 国民雇用保障法の制定をはかる。同法は、すべての農村・都市の貧困者および下位中間層の世帯から最低1人の就労可能者を、さしあたり公共事業に最低賃金で毎年最低100日間雇用することを法的に保障する。
  • 国内で最も貧しく後れた地域での公的配給制度を強化する。その運営に女性や退役軍人協同組合も参加させる。
第14回インド下院選挙の開票結果
政 党 名
04年
99年
インド人民党率いる国民民主連合と協力政党
インド人民党
136
182
テルグ・デサム党
5
29
ジャナタ・ダル(統一派)
7
21
シブ・セナ
12
15
全印アンナ・ドラビダ進歩同盟
0
10
草の根会議派
1
8
 他
27
39
 計
188
304
国民会議派と同盟政党
国民会議派
143
114
ドラビダ進歩同盟
16
12
民族ジャナタ・ダル
18
7
 他
42
3
 計
219
136
左翼諸党と共同勢力
インド共産党(マルクス主義)
44
33
インド共産党
10
4
革命社会党
3
3
前衛党
3
2
他(ケララでの共同)
2
1
 計
62
43
その他の政党、無所属
社会主義党
36
26
大衆社会党
19
14
 他
15
20
 計
70
60
総   計
(再選挙実施選挙区の未確定4議席を除く)
539
543
(しんぶん赤旗’04年5月15日付)
  • 労働者を自動的に「雇っては首切る」という考え方を拒否する。労働諸立法の若干の改定は必要と認めるが、その改定は労働者とその家族の利益を全面的に保護するものでなければならず、また労働組合との十分な協議の後におこなうべきである。この問題について政府は具体的提案をおこなう前に、産業界および労働組合との対話をすすめる。
  • UPA政府は、わが国の労使関係が、対決ではなく話し合いと協力と合意形成を特徴とすべきであると信じている。労働組合および産業界との三者協議が、労使双方にかかわるすべての提案について積極的におこなわれるようにする。
  • ストライキの権利を含め、労働者が法律上かちとっている権利と利益は、奪われたり制限されたりすることはない。
  • UPA政府は、総じて利益をあげている公企業は民営化されないと考える。不健全な公企業を近代化し再構築して、不健全部門の再生のためにあらゆる努力を払うが、慢性的赤字企業については、その企業のすべての労働者が法的に受け取る権利のある諸給与や補償金を受領した後に、売却または閉鎖される。
  • UPAは、過去の伝統に留意し独立した外交を追求する。パキスタンとの対話は体系的かつ持続的に追求される。確かな核兵器計画を維持する。パキスタンとは検証可能な信頼醸成措置を発展させる。核軍縮と核兵器のない世界に向けての指導的役割を果たす。世界での多極化を促進し、単独行動主義のすべての企てに反対する。米国とのより緊密な経済的関係を追求する。

新政権への労働組合の対応

◆中央諸労組が新労相に要求を提出
 インドの労働組合全国中央諸組織の指導者たちで構成された代表団が04年5月27日、統一進歩連盟=UPA新政権のシスラム・オラ労働大臣と会談し、インドの労働者階級の最も切実な諸要求を列挙した詳細なメモランダム(覚書)を提出した。
 代表団を構成したグルダス・ダス・グプタ(AITUC)、M・K・パンデ(CITU)、ウムラオマル・プロヒット(HMS)、スワパン・ムヘルジ(AICCTU)、クリシュナ・チャクラボルティ(UTUC-LS)、デブラヤン(TUCC)その他は、オラ新労相と1時間以上にわたって会談し、これらの要求課題の緊急性について説明した。
 労相は、彼自身および統一進歩連盟政府の労働者への共感を表明し、提起された諸問題に真剣に取り組むことを約束した。労相はまた、メモランダムに提起されたすべての問題についての実状報告を入手し、今後とも労組指導者との討議をしてゆくことを約束した。さらに労相は、問題の処理をすすめ早めるために首相ならびに財務大臣と会談するよう労働指導者たちに助言した。
 中央諸労組が新政権の労相にたいして包括的な要求メモランダムを提出したことは、人民党主導の国民民主連合=NDA政権の敗北によって生じた新しい情勢のもとで、諸要求の実現を求めるインドの労働者と労働組合の新たな運動の開始を意味するものとして注目される。ここで参考のためにメモランダムの全文を紹介しておく。

<メモランダムのテキスト=全文>
 わが国の労働者の圧倒的多数を代表する中央労働組合諸組織 ― AICCTU、AITUC、CITU、HMS、TUCC、UTUC、UTUC-LSは、労働大臣閣下に挨拶をおくる。われわれは、わが国の労働者階級の関心事を提起するにあたり、貴方の積極的な関与を期待する。
 インドの労働者は、ごく少数の大金持ちを除くインド社会のあらゆる階層を破滅にみちびく記録をつくっていた、人民党=BJP主導の前国民民主連合=NDA政府が放逐されたことを、幾百万の国民とともに喜んでいる。
 統一進歩連盟=UPA政府は、BJP主導のNDA政府がその6年近い統治の間に、インドの基本的な人間的諸問題に取り組む中で犯した完全な失敗を背景にして、中央政権を担当することになった。その失敗とは、景気後退を抑制できず、投資を促進できず、雇用を改善できず、貧困の軽減を保障することもできず、庶民の利益となるような経済成長と発展を推進することもできなかった完全な無能力、飢えた幾百万の人びとに食糧を保障することさえできなかった無能力である。そのかわりにNDA政府は、多国籍企業に本国での巨額の節約の機会を与え、労働力の大量の非正規化をもたらし、また、各州が、困窮した圧倒的多数の人々の利益のために経済に介入する能力を弱めた。
 したがって、新政府は、ただちに行動を開始し、わが国の困窮した勤労大衆にたいして緊急の援助を与えるという任務を遂行すべきである。われわれはまた、新政府が経済政策の模範的な方向転換をもたらす行動に着手することを期待している。
 われわれは次のような計画に着手することが必要不可欠であると強調する。

  • 農業生産を増大させるための大規模な政府投資。
  • 特に保健、教育、飲料水供給などの社会的基盤の建設と拡大。
  • 灌漑施設の大規模な改善、中小工業の発展、農村地帯での道路建設。
  • 新発電所の設立、通信の拡大。
  • そして何よりも、貧困の軽減と大量の雇用創出。

 われわれは新政府が、これまでの憎しみと暴力による分断、宗派的不寛容、少数者叩き、あらゆる機構での狂熱と洗脳などの政治を土台とした統治を清浄化し、自由と明瞭と開放の新時代の先触れとなり、インド社会の非宗教的、民主的な仕組みを再生させることを期待している。
 われわれはまた、新政府が、わが国のような共和国における人民の民主的権利を不当に侵害するテロ防止法や基本業務維持法などの悪法を撤廃することを期待している。
 過去数年間、わが国の中央諸労組と中立の労組、単産は、次のような8項目の要求をかかげてきた。

  • 利益をあげていたり、存続可能な潜在力のある公的部門諸企業の民営化の中止。
  • 使用者側に有利で労働者の利益に反する労働法改定の撤回。
  • 農業労働者のための包括的立法の即時制定。
  • 失業の深刻な悪化にみちびく政策の中止。
  • 非組織部門の労働者をふくむ全労働者のための包括的な社会保障制度の拡充。
  • 輸入に対する量的規制の復活。
  • ボーナス支給法を改正し、すべての上限規制を除去。
  • 年金基金の預金利子率12%の復活。

 以上の要求とは別に、わが国の労働組合運動全体が、ストライキ権を否認した最高裁判所の判決を非難し、中央政府がこの有害な最高裁の判断の影響を除去するための適切な措置をとるよう要求してきた。
 以上のような諸要求の実現を政府に迫るために、労働組合とあらゆる部門の労働者は、団結して立ち上がり、全国的に、またさまざまな部門でキャンペーンと持続的な闘争を展開してきた。こうしてわが国の労働者は、国民の世論形成に確固とした貢献をし、NDA政権の退場をもたらしたのである。
 したがって、われわれは、新政府にたいして、労働者の関心事にこたえるよう要求する、譲ることのできない権利をもっている。
 われわれは、わが国の労働組合運動全体がとっている前述のような共通の立場にそって、以下に具体的な課題と要求を列挙する。これらについて新政府が速やかに行動を起こすことを期待する。

労働者の諸権利について
何よりも先ず、ストライキの権利にかんして、最高裁によってつくりだされた行き詰まりとその有害な影響を、効果的な措置をとって除去すること。
団結権と団体交渉権にかんする国際労働機関=ILOの基本的諸条約(ILO条約第87号、第98号)、および公共業務に雇用されている労働者の諸権利にかんするILO条約第151号、第154号を批准する措置に着手すること。
メーデーを国民休日に加えること。
利益をあげていたり、戦略的に重要であったり、存続可能な潜在力のある公的部門諸企業の民営化、売却を中止すること。
農業、地元産業および民族的利益全体を保護するために、輸入の量的制限を復活し、輸出入政策を再検討すること。
急速な経済成長に導き広大な雇用潜在力をつくりだすための迅速な土地改革計画を実施すること。
政府諸機関、鉄道、公的部門諸企業での採用停止や、系統的な労働力削減などの施策を破棄し、大量失業を減らすための緊急の雇用創出計画を実施すること。
十分な量の安定的供給を保持し効果的な監視体制を持った公的配給制度を強化し、恵まれない貧困層に物資が届くよう保障する。灯油の価格を引き下げ、公的流通システムをつうじてその供給を増やすこと。ジーゼル油、ガソリン、調理用ガスの価格を引き上げないこと。
2003年電力法を再検討し、04年6月10日の事業分割の期限を撤回する。国会で保留となっている銀行、炭鉱などの民営化法案を撤回する。
製茶、ジュート麻、コイア(ココナッツの外皮の繊維)、製糸、手織りなどの伝統産業やタバコ、砂糖など農村の産業の危機を打開する緊急措置をとること。
10年以上も棚ざらしになっている労働者経営参加法案をただちに立法化する措置をとること。
病弱産業会社(特別支援)法(SICA)の廃止を撤回すること。産業・金融再建委員会(BIFR)およびその上訴権限(AAIFR)を復活させること。BIFR=AAIFRのシステムを強化し、それらがSICAの適用範囲外におかれている弱小企業の健全化と再生を保障するための適切な金融措置をとれるように改革すること。
生計費指数測定のため中央諸労組がモニターの役割を与えられた真に透明な機構を立ち上げるために、中央諸労組の代表もふくめた新しい再検討委員会を任命すること。
漁民の増大する諸問題を解決すること。外国の深海トロール操業者に与えられてきた許可を取り消すこと。沿岸漁業で増大する機械化船の使用を禁止すること。
三者構成制度について
労働省の機能を能率化すること。労働者の利益にかかわるすべての問題について労働省の効率的な機能を確保すること。三者委員会、インド労働会議、常設労働委員会を含む三者構成機構を活性化させること。
各三者機構委員会の中央労組代表を決めるさいの気まぐれな党派的なやり方をやめること。そのため、中央諸労組と協議して諸基準を発展させること。
労働立法について
膨大な数にのぼる農業労働者に、最低賃金を保障し、社会的保護を適用するための包括的な農業労働者法を制定すること。
すべての中央諸労組が勧告しているように、非組織部門労働者法を制定すること。
勤務形態分類規則の中に「期限付き雇用労働者」という部類を新しく持ち込むとした通達を直ちに撤回すること。これは、組織部門までも含めすべての雇用の恒常性を一掃してしまうものである。
労働者の利益に反する法改定を、すでに実施され、あるいは予定されているものを含め、すべて撤回すること。輸出振興区や経済特区に与えられている、労働法や社会保障制度の適用除外を取り消すこと。
労働諸立法をいっそう有意義な効果的なものにし、その実施の仕組みを強化するために、中央諸労組との深い討議を新たに始めること。
現行のボーナス法の諸条項を改定して、ボーナスの受給資格や算定にあたっての所得上限を取り除くこと。
中央諸労組との協議により、「労働者」や「産業」という用語についてすべての労働者に適用可能な統一的な規定をつくり、いかなる種類の所得上限規定もなくするように、すべての労働法規を改定すること。
国会でのしかるべき立法により、最高裁判所の諸判決の有害な影響を一掃すること。最高裁判決は、(A)下請け労働者に有利な以前の判決をくつがえした、(B)私立の学校や教育施設に雇用されている教師は「労働者」と解釈することはできず、したがって法定の退職金その他の諸手当をもらう資格はないと宣告した。
女性に対する職場での性的いやがらせ(セクハラ)を禁止する法律を、最高裁の指針のとおりに、早急に制定すること。
州間移民労働者の利益を守り、1979年州間移民労働者法(雇用とサービス条件にかんする規則)を改定してその適用範囲を拡大すること。
社会保障について
国の社会保障政策を発展させて、労働者のあらゆる層を適用対象とし、本人の意志によらずに失業している人びとへの救済を拡げ、その早期実施をはかること。
被用者備蓄基金、少額貯金、一般備蓄基金、公共備蓄基金などの利子率12%を復活させること。
被用者備蓄基金機構と被用者州保険会社のもとにある現行の社会保障制度を改善すること。そのために、中央諸労組と協議して現行諸制度を徹底的に洗い直し、社会保障制度の機能の改善と普遍的な適用を保障すること。
現行の「給付金額本位」の年金制度を、政府機関の新規採用職員から新しい「拠出金額本位」の年金制度に切り換えるという、後退的な措置を撤回すること。

 要するにわれわれは、人民党主導のNDA政権の敗北が、より良い政治への急速な転換を求める大衆の厳しい気分を示しているということを強調したい。それゆえにわれわれは、新政府にたいして、前政権の強行したような悪政をおこなわないというだけにとどまらず、この機会をとらえて立ち上がり、大衆の願望を実現してゆくよう訴える。われわれは新政府にたいして、経済不況を終わらせ、最富裕層だけが受益者であるような経済成長の枠組みを許さず、一般大衆のためにいっそう質の高い生活を保障するような、国民本位の確固とした経済政策をおこなうよう要求する。
 国民に責任を負う政府は、国民に利益をもたらす発展計画をまかなう追加的財源をつくりだすことができる、とわれわれは信じている。汚職の一掃、経済成長への道の開拓、より良好な納税の保持、納税不履行の抑制、銀行ローンの未払い分や税金滞納分の決済、大金持ちや富裕大地主にたいする課税の幅と率の増大による直接税収入の増加、所得税の免税点引き上げによる賃金労働者の救済、長期発展国債の発行による国内財源の動員などを、われわれは強く主張する。
 以上に列挙したような労働者の課題と要求について、貴方が有意義な施策と迅速な行動を開始することをわれわれは期待している。われわれは今後とも、貴方との相互接触と対話を、貴方の都合の良い最も早い機会にいつでも持つことができる。

◆中央労組、シン首相と会談 予算案の政労討議復活
 旧人民党連合政権によって破棄されていた、首相と中央労働組合諸組織とが予算案提出前に討議をおこなうという慣習が復活し、6月23日、ニューデリーで、マンモハン・シン首相が中央諸労組代表との討議をおこなった。
 労組代表は、被用者備蓄基金(EPF)の利子率引き上げ、雇用機会の改善、所得税の免税点引き上げなどを要求した。ストライキの禁止という最高裁判決の影響や、第6次賃金小委員会の設置についても討議された。また、労組代表は、デリーとムンバイの空港を民営化するという中央政府の決定にたいして、異口同音に批判した。
 シン首相は労組幹部らにたいし、労働組合が提起しているすべての問題を今年度の予算の中で取り上げることはできないかもしれないが、共同最小限綱領でのすべての公約を誠実に実行することを約束した。

◆新政権に向け全国要求デーを展開 予算関連の7項目要求かかげ行動
 インドの労組中央諸組織は7月12日デリーで合同会議を開き、統一進歩連盟=UPA政府の財務大臣が7月8日に国会に提出した2004年〜2005年度連邦予算案を長時間にわたって討議検討した。その結果、中央諸労組は、新政府の予算案の中で、最低100日雇用保障や働くための食料支給をつうじての雇用促進などの誓約をはじめ、総人口の大きな部分を占める農業・農村経済のための投資と福祉の増進をはかる諸提案などについては歓迎するが、他方、同予算案には、庶民と国民経済の利益に反し、選挙公約にも背反するいくつかの欠陥があることに重大な懸念を表明。UPA政府にたいして、緊急な重要性を持つ七項目の要求を提出し、それらの問題の再検討と予算案の適切な修正をおこなうよう要請した(7項目要求の全文は後掲)。
 しかし、政府の側から何らの積極的な回答がなかったため、中央諸労組は8月5日に合同の代表者会議を開き、政府にたいする要請をくりかえすだけでなく、政府に提示した要求の実現のために行動によって圧力を加えることが重要であるとして、8月20日に「全国要求デー」を展開することを決定した。
 7項目要求の内容は全文次のとおり。なお、これらの要求は、AICCTU、AITUC、CITU、HMS、TUCC、UTUC、UTUC-LS、および銀行、保険、鉄道、中央政府職員、州政府職員、電信電話、郵便その他の諸部門の全国単産が共同して作成、提示したものである。

<労働組合の要求> (全文)

  1.  人民党連合政権によってここ数年の間に12%から8%にまで引き下げられてきた、特別預金制度(SDS)、一般備蓄基金(GPF)、年金備蓄基金(PPF)の利子率をそのまま維持するという決定を再検討すること。同利子率を8%に据え置くと、被用者備蓄基金(EPF)の利子率をさらに押し下げることになる。それゆえ、2002年4月以来の労働組合運動の統一要求が利子率の12%への復元であることを考慮に入れて、SDSの利子率を引き上げる修正をおこなうこと。
  2.  非組織部門や農業部門の労働者にも社会保障を拡大するための十分な予算配分をおこなうこと。それとともに、中央諸労組が提案している方向にそって、これらの部門のために必要な立法を早急におこなうこと。すべての部門(下請け労働者も含む)での最低賃金や社会保障にかかわるあらゆる労働法規の効果的な履行を確保すること。
  3.  電信電話、航空、保険の諸部門への外国直接投資(FDI)の上限を引き上げるという決定を撤回すること。FDIの上限引き上げは、外国金融資本がこれらの経済諸部門を全面的に乗っ取る結果となり、わが国の安全保障と経済を危機におとしいれる。
  4.  小規模部門としてリストに記載されてきた諸項目から85項目を除外するという決定を撤回し、小・零細企業の営業存続のための融資をおこなうこと。
  5.  2001年−2002年度に実施された労働者の臨時所得や福祉諸給付にたいする課税を廃止し、社会保障制度の諸給付の最終支給分に課税するという今回の提案を撤回すること。
  6.  公的部門企業の枠組みの中で、存続可能な潜在力を持つ病弱企業の再生をはかる施策を促進し、そのための十分な準備措置をおこなうこと。銀行その他の金融機関にたいする政府の関与を希薄にしないこと。
  7.  すべての公企業で、賃金未払い分と、制度上の労働者負担分を完済すること。

<草の根から組織された全国要求デー>
 中央諸労組がよびかけた8月20日の全国要求デーには、インドの広大な国土の隅々にまでわたって、大衆的な要求行動が展開された。労働組合が行動に立ち上らなかった州や地域はほとんど見当らなかった。
 今回の要求行動の特徴は、共同集会、示威行進、座り込みなどの大衆行動が、都市や地域ごとに草の根から組織されたことである。集会や示威行動の中では、草の根の幹部たちが演説し、新政府にたいする要求の重要な意義をよく説明するとともに、中央諸労組の決定にそって今後いかなる行動でも展開していく用意があると決意を表明した。

スト権擁護の2・24ゼネスト

 2004年2月24日、公務員を含む労働者のストライキ権を守るためのゼネラルストライキが、インド全国で成功的にたたかわれた。マスメディアでさえスト参加人員5000万人と報道したように、ゼネストの規模は過去最大となった。
 この大闘争の出発点は、タミルナド州での州政府職員と教員にたいするリストラ人減らし、年金・諸手当切り下げの攻撃と、これに反対する03年7月2日以降11日間にわたったストライキ闘争だった。この闘争にたいして、同州のジャヤラリサ政府が、タミルナド基本業務維持法(TESMA)というスト禁止の弾圧立法を発動して、2200人を超える逮捕、18万人にのぼる州政府職員・教師の不当免職処分などの兇暴な弾圧を加え、それに続いて最高裁判所が、8月6日の最終判決で、州政府の弾圧を正当化したうえ、公務員のストライキを違法とする判決を下したことが、新しい情勢を生みだした。公務員労働者をはじめインド全国のあらゆる部門の労働者と労働組合の怒りと抗議をよびおこしただけでなく、広範な民主的人士や知識人、とりわけ、インド政府の司法長官をはじめ前最高裁判事や前高裁裁判長、有力な開業法律家など法曹界の著名人らが、政治的立場の違いを超えて厳しい批判と抗議の声をあげた。こうして、公務員を含む全労働者の基本的な権利であるストライキ権を擁護するという、労働者階級と国民全体にかかわる民主主義的課題が闘争の焦点となるにいたった。ここから、二つの全国的公務員労組連合とすべての主要労組ナショナルセンターの共闘によるスト権擁護の大闘争が、広範な国民世論の支持のもとに発展していった。

<二つの公務員労連の先進的な取組み>
 スト権擁護闘争の未曾有の高揚をつくり出す牽引車となったのは二つの公務員労連―全インド州政府職員連合(AISGEF)と中央政府職員労働者総連合(CCGEW)―だった。
 最高裁の公務員スト違法判決(03年8月6日)の直後、8月17、18日ジャイプールでAISGEFとCCGEWは合同の会議を持ち、弾圧とたたかうタミルナド州政府職員・教師への全面的支持と救援活動の強化を確認するとともに、公務員を含む全労働者の伝統的な基本権であるスト権にたいする最高裁の許しがたい干渉に反対してたたかいぬくことを誓約し、そのために03年12月後半を目途に全国的ストライキを設定し、すべての労組ナショナルセンター、全国単産にもこのストへの参加を要請することを決定した。そして、今後の闘争計画をさらに具体化するため03年9月25日にデリーで全国会議を開き、この会議に著名な法律家や知識人を招いて、最高裁判決についての意見を聴取することを決めた。
 二つの公務員労連によるスト権擁護の全国ストライキのよびかけは、インド全国の労働者階級と広範な国民の民主主義的関心を喚起する大きなインパクトを与えた。
 AISGEFとCCGEWが精力的に展開した学習・宣伝・広報活動―全国レベルや州レベルの会議、無数の学習会とそのための教材・宣伝文書の作成、マスメディアへのひんぱんな記者会見などをつうじて、今回のスト権擁護ストライキの眞の意義が明らかになっていった。このストライキが、いま新自由主義的攻勢に対抗するインドの労働者階級の高揚しつつある闘争にたいして牙をむきだした国家権力の強権的攻撃に反対するための、統一的な抵抗のストライキであることが、広範な労働者、国民のなかに十分に明らかにされていったのである。
 法曹界への働きかけは特に重要な反響をよんだ。9月25日のデリーの全国会議では、多数の元裁判長や元判事、法律専門家らが参加し、最高裁の公務員スト違法判決を厳しく批判した。各州の州都で開かれた州レベルでの会議でも、多くの著名な法律家や知識人が招かれ、この問題について発言した。こうして、民主的大義をもつ公務員のこのたたかいにたいして法曹界の広範な部分からの支持と法的支援が結集されていった。
 二つの公務員労連は、国会議員にも手紙を送り、ストライキ権の問題を国会の公開討論の場で取り上げ、公務員にたいする犠牲の強要を批判するよう要請した。多数の有力な議員がこれに好意的にこたえた。その中には、前インド首相チャンドラセカール氏や現国会議長ソムナス・チャテルジー氏らも含まれていた。チャテルジー氏は、最高裁の判決を厳しく批判し、ストライキ権を支持した。西ベンガル州議会はスト権擁護の全国ストのよびかけを支持した。

<統一ゼネストの日程決まる>
 AISGEFとCCGEFは、すべての労組ナショナルセンターにたいし、全国ストへの参加をくりかえしよびかけた。そしてインドの全労組の共同による統一ストの日程について、03年11月15日までに決定したいと各中央労組に要請したが、一部の中央労組の足踏みのため同日までにスト日程の調整はできなかった。そこで二つの公務員労連は11月20日デリーで会議を開き、ストライキの期日を04年2月11日とする案を決定し、すべての全国中央労組と産業別全国単産にたいして、統一ストライキへの参加を決断するようあらためてよびかけた。そして両公務員労連は、ストライキの成功のためのあらゆる準備活動に全力をあげて取り組んだ。
 年明けの04年1月5日、デリーにおいて、BMSを除くすべての全国中央諸労組が、INTUC委員長を議長にして会議を開き、全インド規模のストライキを04年2月24日に実施することを合意決定した。AISGEFとCCGEFは、統一ストライキの緊急な必要性を考慮して、このスト日程を受け入れるとともに、スト権擁護のための2・24全国ゼネストが歴史的な成功をおさめるよう、すべての関係諸組織に取り組み強化を訴えた。
 こうして、広大な亜大陸の全国津々浦々で、全力をあげてストライキの準備がすすめられた。
 州レベルの大会が、北のジャム・カシミールから南のケララまで、東の西ベンガルから西のグジャラートにいたるすべての州で組織された。大衆的な、しかも綿密な準備活動をつうじて、最終的には全インドのほとんどすべての労働組合がストライキ参加を決定した。ただ、INTUC、HMS、BMSの中央はスト不参加を決めた。しかし、ストライキのよびかけはたたかいのすさまじい勢いを生みだし、ストライキ権擁護の問題が労働者階級の新しい層を立ち上がらせ、かれらは相次いでスト参加を決定していった。さまざまな国際労働組合組織がストライキへの支持を表明した。

<ゼネストの歴史的成功―メディアに異例の現象も>
 こうしてついに、04年2月24日の統一的な真に全国的規模のゼネラルストライキは、インド労働運動の歴史上かつてなかった大きな成功をおさめた。
 なによりも先ず、公務員労働者のストライキ参加は前代未聞の見事さであった。全インド州政府職員連合(AISGEF)のよびかけにこたえ、800万人以上の州政府職員、州公共部門の労働者、教師らがストに参加した。ここ数年らいAISGEFとの結びつきがきわめて弱かったグジャラートで、すべての職場の公務員の完全スト参加が見られた。アンドラプラデシュ州では、すべての職種の公務員と教職員がストに参加した。ほとんどすべての州で公務員のスト参加は100%だった。
 約300万人の中央政府職員、国防部門のシビリアン(文民)職員、防衛(軍需)産業労働者、電力労働者、財政部門職員らが、中央政府職員労働者総連合(CCGEF)のよびかけのもとにストライキに立ち上がった。
 政府職員以外の各産業部門のスト参加状況を見よう。
 銀行、保険会社を含む金融部門全体が、全国でほぼ完全なストライキに入った。
 石炭産業9社の約60万人の炭鉱労働者のうち、70%がストに参加した。石炭以外の鉱業部門でも、ジャルカンド、オリッサ、チャティスガルなどでスト参加はほぼ完全(100%)だった。
 公的部門の企業が集中している中心都市であるバンガロール、ハイデラバード、ビサカパトナムでは、そこにある公企業のすべてで大衆的ストライキが決行された。
 全国の農園部門でも、ストはほぼ全面的であった。煉瓦工、荷物運搬夫など非組織部門の労働者も広範にストに参加した。
 建設産業でも、組織部門と非組織部門の建設労働者が共に広範にストに加わった。ヒマチャルプラデシュ州、ウッタランチャル、ジャムなどで建設中の水力発電所の建設現場で働く労働者は、完全ストを実現した。
 運輸労働者は、州営部門と民営部門とを問わず、ストライキのよびかけにすばらしく反応して立ち上がった。
 港湾労働者は、一部の組合指導部の反対にもかかわらず、コルカタ、コチン、グジャラート、パラディブ、トゥチコリン、ムンバイなどでは大衆的なストライキがたたかわれた。その他の港でも部分ストが実施された。
 石油部門の労働者も広範にストに参加した。トリプラ、アッサム、西ベンガル、ビハールや南部諸州の石油諸施設では、ストライキは完全参加だった。他の地域でも部分ストがたたかわれた。
 鉄鋼産業では、ダルガプール、ブルンプールでストは100%参加。サレム・スチールでは60%の労働者がストに参加した。その他の地域でも部分ストが実施された。
 電力労働者は、ほとんどすべての州でストライキに入った。ウッタルプラデシュなどいくつかの州では、電力労働者が、ある地域ではストを実施し別の地域では終日の座り込みを組織した。これらの行動にはさまざまな組合加盟の労働者が参加した。
 各地域でのスト参加状況も見事だった。
 西ベンガル、ケララ、トリプラでは完全な総就業停止となった。アッサム、ハリアナ、オリッサ、ジャルカンドなどでも総就業停止に近い状況だった。これは、組合加盟の違いを超えた労働者の真に大衆的な参加と、あらゆる階層、分野の人びとの広範な支持によるものであった。カルナタカでは50%以上の公共交通機関がストによって停止した。
 いつもはストライキの達成を過小に報道するメディアも、今度の場合はそうすることができなかった。いくつかのメディアの報道は、全国で5000万人がこのゼネストに参加したという数字を引用していた。この数字は、インドで過去最高の記録である。電子メディアはストライキのニュースで埋めつくされた。これは異例の現象であった。それは、国民の民主的諸権利と自由の基幹ともいうべき労働組合権の擁護をかかげたこのストライキの重要性が無視できないものであり、どの角度からもわい小化できないものであったことを意味している。ストライキを攻撃した最高裁判決が、公務員をふくむインドの労働者階級の勇敢で大衆的な全国ゼネストという痛烈な反撃を受けたことは、世論に大きなインパクトを与え、広範な国民の共感と支持をよびおこした。このストはまた、人民党連合政権の反労働者的、反国民的政策にたいする怒りの増大を反映したものであった。そして、このゼネストの二ヵ月後に、総選挙によって同政権の放逐という人民の審判が下された。

タミルナド州政府、後退を余儀なくされる

 タミルナド州政府職員と教師にたいする頑固な弾圧攻撃を続けていた同州政府は、04年2月24日の全国ゼネストとそれに続く4〜5月のインド国会選挙での州政府与党の敗退によって、反公務員攻撃でも大きな後退を余儀なくされた。
 全インドの労働者階級の2・24ゼネストという巨大な抗議の圧力によって、タミルナド州政府は、03年7月のストライキに参加して不当な免職処分を受けた州政府職員を復職させた。しかし減給や昇給停止などの処分はそのままだった。
 その後おこなわれたインド国会選挙で、ジャヤラリサ州首相の属するAIADMK(全インド・アンナ・ドラビダ進歩連盟)とその選挙共闘相手であるBJP(インド人民党)が敗北を?した後、州政府は、7月スト参加の職員にたいする財政的処分―強制減給や昇給停止などを撤回するという後退を余儀なくされた。また州政府は、州内での報道の自由にたいする規制をゆるめざるをえなかった。労組側は、さらにあらゆる形の抑圧を撤回させるまでたたかい続けることを確認している。

銀行労組、全国スト含む2年越しの闘争で13%超の賃上げ獲得

 インドの銀行産業の9労組すべてが結集している銀行労働組合統一フォーラム(UFBU)は、2004年11月23日、インド銀行協会(IBA)との交渉で13.25%の賃金引き上げ、職員の移動のさいの規定などについて合意に達し、04年8月24日の全国ストを含む2年越しの闘争に勝利した。(統一フォーラムを構成する9労組は、全インド銀行職員組合=AIBEA、全国銀行職員同盟=NCBE、インド銀行職員連合=BEFI、インド全国銀行職員連合=INBEF、全国銀行労働者組織=NOBW、全インド銀行幹部職員組合=AIBOA、全インド銀行幹部職員同盟=AIBOC、インド全国銀行幹部職員同盟=INBOC、全国銀行幹部職員組織=NOBO)。
 統一フォーラム9労組とIBAの間の前回の賃金改定協約は、7年前の1997年11月1日から実施され、02年10月末にその期限が終了していた。本来なら02年11月から新しい賃金改定協約が実施されていなければならなかった。9銀行労組はこの2年間、賃金改定の早期解決を求めて忍耐強くIBAとの交渉にのぞんできた。
 組合側の要求は、年間賃金引き上げ総額300億ルピー(一般職員分と幹部職員分の合計)という金額で、これは道理のある要求だった。公営銀行27行の営業利益は03年3月末2971.2億ルピー、04年3月末3945.8億ルピーにのぼった。しかもその中から、不良債権や債務帳消しのための償却に03年3月末1741.8億ルピー(営業利益の59%)、04年3月末2291.6億ルピー(営業利益の58%)という巨額のカネがまわされている。純利益は03年3月末1229.4億ルピー、04年3月末1654.2億ルピーと、増益が記録されている。年間総額300億ルピーの賃上げを、銀行側が支払えないはずがなかった。
 ところがIBAは、銀行の経営状況が数年前に比べても好調であるのに、前回の賃上げに相当する改定さえ認めようとしなかった。IBAが提示した賃上げ案は、一般職員の年間賃上げ総額81.8億ルピー、幹部職員分60.4億ルピー、合計142.2億ルピーという金額で、賃上げ率で約8.5%にすぎず、前回の賃上げ率12.25%をはるかに下回っていた。
 もう一つの争点は、職員の移動規定の問題であった。これまで銀行職員の移動については、各銀行での協定にもとづいておこなわれ、組合側は、同一地区内または一定の距離以内での隣接地区への移動に限ることを決めさせてきた。ところが、今回の賃金改定交渉の中で、これらの協定を破棄し、経営側がほしいままに職員を移動させることができる無制限の自由を要求してきた。しかもこれを受けいれることが賃上げの前提条件だと主張した。組合側はこのIBAの理不尽な主張を断固として拒否した。

<8・24全国ストライキを決行>
 8月19日に持たれた労使交渉で、IBAは最終回答だとして、一般職員賃上げ総額92億ルピー、幹部職員67.5億ルピー、合計159.5億ルピーを提示してきたが、賃上げ率にして10%に満たない回答であった。組合側はこれを拒否し、合意に達しなかったため、8月22日、地方労働長官(中央任命)の仲介で、組合側とIBAとの最終的な話し合いがムンバイでおこなわれた。しかしIBA側は、これ以上つけ加えるものは何もないとの態度に固執したため、話し合いは物別れに終わった。
 銀行労組統一フォーラムは、IBAによって不当に引き延ばされてきた賃金改定の早期解決を要求して、8月24日を期し全国ストライキ決行をよびかけた。
 ストライキは全面的に成功した。9銀行労組の組合員である公営銀行、民間銀行、外国銀行の一般職員と幹部職員がこぞってストに参加した。
 統一フォーラムは、8・24ストの成功をうけて、ひきつづき要求実現のための圧力を強めるため、10月5日、6日の両日にわたる全国ストライキの実施を決め、スト態勢をとりながらIBAに賃上げの解決を迫った。
 10月1日、ムンバイで開かれた地方労働長官の調停会議で、IBAは中間提案として賃上げ総額190億ルピーを提示し、1ヵ月以内に賃金改定協約を結ぶことを約束した。これをうけて組合側は、10月5、6日の全国ストのよびかけを撤回することに同意した。

<賃上げ13.25%を獲得、移動の規制も確保>
 しかしその後約1ヵ月、IBAは約束を守らず、話し合いを持とうとしなかった。統一フォーラムは11月6日、ムンバイで会議を開き、12月にストライキを含む強力な闘争を展開することを決めた。同時に、IBA会長にあてて手紙を送り、組合側の決定を伝えるとともに、会長みずから組合代表団と会談を持つことを提案した。
 IBA会長はこの提案を受けいれ、11月9日に組合代表団と会談した。その席上、IBA会長は、11月10日に開かれるIBA経営委員会で積極的な結果が得られる希望があると述べ、あわせて数日内に組合側との正式な交渉を持つことを言明した。
 銀行労組とIBAとの正式交渉は11月23日に持たれた。長時間にわたった論議の末、ついに賃金改定その他について最終合意に達した。
 賃金改定については、一般職員の年間賃上げ総額128.8億ルピー。幹部職員91.2億ルピー、合計220億ルピーの増額という内容で妥結。これは率にして13.25%の賃上げに相当し、前回の12.25%を上回った。
 職員の移動については、次のような規定にそっておこなうことで合意した。
 (1)同地区内、または地区外の場合100キロメートル以内のどこでも移動させることができる、(2)2年ないし3年後に復帰する、(3)補償金は月400ルピー、(4)元の職場と同じ給与を保障する。
 銀行労組統一フォーラムは、交渉が妥結した11月23日の夕刻、すべての単組と組合員にあてて、妥結内容を報告し闘争の勝利を祝福する手紙を、9銀行労組代表の連名の署名で送った。手紙の最後は次のような言葉で結ばれていた。
 「われわれの統一闘争と忍耐がついに実を結び、この成果をかちとることができた」。(小森良夫)