2002年のインドでは、人民党連合政権がすすめる経済自由化・規制緩和政策と労働運動との対決が前年にも増して激化した。インド政府は、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)の要求にもとづき、自由化・規制緩和政策の一環として国営・州営企業や公共サービスなど公的部門の無差別の民営化、労働者の諸権利を奪いリストラ人減らしや請負労働者化を容易にする労働法規改悪などの強行をめざしている。
この中で、インドのすべての労組ナショナルセンターが政府の反労働者的、反国民的な自由化政策に反対する共同闘争を前進させており、3・14全国抗議デー、500万人が参加した4・16全国ストライキなど大規模な全国的共同行動が展開された。組織の違いを超えた共同は産業別、地方(州)レベルでも前進しており、英国系銀行での不当配転に抗議した銀行労働者の1・4全国ストライキ、7月19日の銀行労働者による銀行民営化反対の全国統一行動、タミルナド州で中央・州政府の自由化政策に抗議して広範な労組の共同行動委員会が組織した10・23ゼネストなどが相次いだ。
■イギリス系銀行の不当配転に抗議し銀行労働者が全国スト
02年1月4日、40万人を超える銀行労働者が全国ストライキを決行した。このストは、イギリス系のスタンダード・チャータード銀行が、15人の労働者をコルカタからチェンナイに、他の7人をコルカタからデリーに不当配転したことに抗議して行われた。他の数人の労働者もムンバイやカンプールから配転された。
ストライキをよびかけたのは全インド銀行従業員組合(AIBEA)で、3日間にわたった調停作業が経営者側の頑固な姿勢によって失敗に終わったのを受けて、ストライキにふみきった。このストは、AIBEA以外のすべての銀行労組(7組合)とすべての労組ナショナルセンターからの全面的な支持を受けてたたかわれた。
インドでは1953年以降、銀行部門での規則によって、ただの1人の銀行員も異なる言語圏へ配置転換されることはなかった。ところがスタンダード・チャータード銀行の経営者は、この現行の規範をあからさまにふみにじって、女性を含む従業員をコルカタからチェンナイやデリーに、ムンバイからデリーに配転するという不当不法な攻撃をかけてきた。
労組側は、この問題は単に何人かの個々の配転だけにとどまるものではなく、その内容ははるかに重大な影響をもたらすものとして受けとめた。すなわち、ひとたび一人の経営者によって、あらゆる法規や判定や合意を侵害するこうした横暴な反労働者的行動がまかり通ってしまえば、それはたちまちすべての銀行に広がるだろう、とAIBEAは厳しく批判している。
スタンダード・チャータード銀行は、これまでにコルカタの従業員数を858人からわずか72人にまで削減してきた。この銀行では、すべての恒常的、永続的業務が下請け、外注化されてきた。下請け契約労働者の数は正規労働者数の6〜7倍に達している。コルカタの各店舗だけで、下請け契約労働者が約1,600人いるが、正規従業員は72人にすぎない。
チェンナイ、ハイデラバード、ムンバイ、デリー、パトナその他からAIBEA本部に寄せられた報告によれば、ストライキは全国すべての銀行で、全面的に、平和的に行われた。AIBEA本部はこのストライキの成功をふまえて闘争を継続発展させる決意を表明した。
■3・14全国抗議デーに総決起―政府の反労働者・半国民的政策の転換求め
02年3月14日、政府の反労働者的・反国民的諸政策に反対しその転換を求める全国抗議デーに、文字どおり全インドの労働者階級が決起した。すべての労組ナショナルセンターの完全な団結が大衆を奮い立たせた。
この全国統一闘争で、インドの労働者と労働組合は、政府の以下のような諸政策に対し、一致して反対と抗議を表明した。
*無差別の民営化
*経営者側に有利な労働法改悪
*工業、農業および国益全体にとって有害な輸入規制撤廃
*雇用喪失と失業をさらに悪化させる諸政策
*農業労働者のための包括的な全国立法の断念
抗議デーの当日、インド全土にわたって大衆集会、座り込み、デモ行進が展開された。
ムンバイでは、これまでのあらゆる記録を破って、60万人以上の労働者による長大なデモ行進が組織された。コルカタでも巨大な大衆集会が行われた。
デリーでは、国会議事堂前の大通りで開かれた大集会で、すべてのナショナルセンターの指導者があいさつを送った。集会は中央政府に対し、公共企業の無差別の民営化・売却反対、労働法改悪の中止、農業労働者の利益を守る包括的政策の実施、雇用の創出、社会保障の充実などを要求した。
全国抗議デーの成功を受けて、各労組センターは3月15日に会議を開き、中央・州の公的部門の労働者の4月16日の全国ストライキを、全労働者の支持と連帯で成功させることを決定した。
■州政府職員・教員ら500万人の4・16全国スト ― 民営化などに抗議
4月16日、インド全国にわたって州政府職員、銀行・保険労働者、教員ら公的部門の労働者がストライキを実施した。全体で500万人を超える労働者が、人民党連合政権の民営化、労働法規改悪など、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)の要求による反労働者的・反国民的政策に抗議してストライキに参加した。いくつかの州ではゼネストの様相を呈した。
ビハール州では、37地区のすべてと州都パトナで、全1日のストライキが完全に行われた。
ウッタルプラデシュでも、州都ラクノーから全地区にいたるまで、すべての州政府職員がストに参加した。
マニプールでは、夜明けから日没まで、終日にわたるゼネストとなった。州のすべての商店、オフィスが閉鎖され、あらゆる乗り物が路上から姿を消した。州都のインパール空港では、空港労働者がストに合流したため、すべてのフライトが欠航となった。
ラジャスタンでは、全州の公的部門、銀行・保険労働者の完全参加によるストライキとともに、州都ジャイプールをはじめジョディプール、ビカナ、チットガルその他多くの都市、地域で集会、デモが実施された。
■銀行民営化反対の全国行動
インドの国営銀行や州営銀行の民営化に反対する銀行労働者の行動が7月19日、全国で展開された。銀行従業員労働組合フォーラム(UFBU)に参加する労働組合がよびかけた「公共の銀行を守れ」という統一行動で、コルカタでは1万人集会、ムンバイでは人間の鎖行動が行われた。
各地の集会では、「政府は国の発展に役割を果たしてきた国営銀行を多国籍企業に売り飛ばそうとしている」(ジャイプール市)、「国営銀行は、草の根レベルの人たちに奉仕する目的で34年前に改革された。民営化はそれを覆すもの」(ムンバイ)など、政府批判の声が相次いだ。また、「消費者によりよいサービスの方法を見つけよう」(コルカタ)のよびかけもあった。
■タミルナド州の10・23ゼネスト
02年10月23日、タミルナド州全体を覆うゼネストが実施された。
各労組ナショナルセンターと中央・州政府職員組合、教員組合などで構成された共同行動委員会がよびかけたもので、中央政府と州政府の、民営化、労働法改悪、諸手当削減など反労働者・反国民的政策に抗議してたたかわれたこのゼネストには、州営交通、電力公社、上下水道局、その他の地方公共機関の労働者がこぞって参加した。機械、繊維、皮革その他の工業労働者もストに加わった。保険労働者は全州で全員がストに参加した。医療労働者のスト参加も完ぺきだった。未組織の建設労働者、運搬労働者、手織機労働者らも多数がゼネストに加わった。
州政府職員と教員の共同行動委員会は、諸手当削減反対などの諸要求を掲げて、10月23日から無期限ストを開始した。
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