■04年にEU加盟
04年5月1日、キプロス、チェコ共和国、エストニア、ハンガリー、ラトビア、マルタ、ポーランド、スロベニアが欧州連合に加入する。ルーマニア、ブルガリアは07年に加盟することになっており、トルコとの加盟交渉は04年中に始められる。新加盟国は、すでに成立したEU法に従うことになっており、すべてのEU指令および他の拘束力のある文書を国内法に置き換える必要がある。
■不満の渦巻く03年冬
04年初めの数ヵ月は、労働者のかなり激しい闘争が起こりそうである。炭鉱労働者、鉄道労働者、保健労働者、警官、消防夫など、多様な労働者グループはすでに抗議行動を行っている。また、全国レベルの三者委員会でも経営者と労働組合が対立している。
炭鉱労働者は炭鉱閉鎖という大量の解雇をもたらしそうな政府の計画に抗議している。現在炭鉱では約10万人が働いている。議会は11月3日、炭鉱産業のリストラを促進する法律を可決し、この産業の180億ズロチ(38億ユーロ)の負債を放棄した。しかし、炭鉱産業と結びついている諸企業は、地方当局に払うべき債務、未払いの社会保険や年金の掛金を支払わっていかなければならない。
03年から06年までに2万8千の労働者が解雇され、約1万4千人が、働かないままで75%の賃金を受け取る「炭鉱休暇」を取ることになる。退職まで3年ある者もこの選択をすることになる。さらに8,500人が訓練一括計画を提供され、約7千人が退職するか別の仕事につくことになる。
政府は石炭の採掘量を1年に12-〜14トン減らすことで、採算性を高める提案をしている。そのため、炭鉱が六つ閉鎖される。しかし労働組合は炭鉱を閉鎖するのではなく、採炭場を統合するよう要求している。政府はそれを拒否し、労働者は政府が方針を変えるまで抗議を続けるといっている。
保健部門の労働者は、全般的に劣悪な保健事業に抗議し、政府を非難している。労働者は賃金割増のない長時間労働を提案する政府計画を拒否している。警官、消防夫、国境警備隊、刑務所の看守は、労働組合と交渉して成立した協定を政府が守るよう要求して、独自の抗議を行っている。これには主として、労働者がスト行為を許されていないので、建物に旗を立てるといった抗議も含まれている。
しかし労働組合は、もしこの行動が成功しない場合には、12月いっぱいデモを行うといった。この時期に行われている争議の中で、鉄道労働者を含む争議は解決が近い。鉄道は地域事業の予算からの財政資金の追加を要求しているが、労働組合は地域運輸のために8億ズロチ、市町村の交通のために2億ズロチを要求している。労働組合はまた、政府のリストラと民営化の計画を憂慮している。今のところ、政府と組合が協約を交渉する時間をもつために、ストライキは延期されている。
最後に、国の三者委員会において、経営者と労働組合代表とのあいだに大きな意見の不一致がある。経営者は5項目の提案を出したが、労働組合はこれを拒否した。この中の一つは、6ヵ月の予告で団体協約を解消し、小企業内の労働組合の地位に変更できるようにすることである。経営者は労働組合が提案全部を一括して受け入れるべきだと主張している。しかし労働組合は、一つ一つの提案を個別に交渉するべきだと主張している。
■「連帯」労組第16回大会を開く
「連帯」(ソリダルノスチ)は最近、労使紛争と労働組合員の減少の中で、第16回大会を開いた。
大会は賃金の擁護、失業の削減、年金の支払い、解雇された労働者の社会的給付をめざすいっそう効果的な行動を中心に、一連の問題を討議し、要求を作成した。企業の倒産や労働者の権利侵害が増える中、これらの要求の実現は労働者にとって厳しいと労働組合はみている。
最近数週間、炭鉱労働者、鉄鋼労働者、造船労働者による激しい争議が続いている。特殊なものには、ワルシャワのタクシー労働者による争議があり、かれらは義務的メーター計の導入という政府の決定に抗議している。タクシー労働者はコストを理由に抗議しており、これは現在のメーターを複写することになるので不必要だと主張している。メーター計設置の最終期限は03年12月31日である。メーター計の登録をする中央機関によると、10万人の運転手のうち、これまでに700人しか登録していない。
一連の部門における将来のスト行動の形態については、組合との協議のあとで決められよう。しかし「連帯」は断固として、積極的で直接的な政治的役割は果たさないと述べている。これは「連帯」が今度の選挙に参加しないことを意味しているものと思われる。
しかし、労働組合代表の大多数は、相対的には激しい行動に出て、対話を好む少数派とともに、政府に要求を聞いてもらうことを望んでいる。
とはいえ「連帯」は、経済社会問題の三者委員会から引き上げる計画はなく、この委員会は労働組合運動が政府の決定に影響を及ぼすための、残された一つの手段であると述べている。
「連帯」自身は組合員減少という形で、諸問題に当面している。その人数は1989年の250万から現在の80万に低下した。つまり、1年に3万2千の減少である。さらに組合員が高齢化しており、組合員の70%以上が41歳以上になり、32歳以下はわずかに5%である。
■最近の所得調査
ポーランド中央統計事務所GUSは賃金調査を発表し、ポーランドの賃金構造を明らかにした。1ヵ月の平均賃金総額は2,229.80ズロチ(486ユーロ)である。賃金額を決める要素は、教育水準、年齢、勤続、職業経験、部門と企業のタイプ、性別である。
調査は02年10月のデータに基づいている。これによると、調査した労働者の半数は1,820.73ズロチ以下であり、34%は1,461.62ズロチ以下であり、月額平均賃金は2,229.80ズロチである。約10%が3,721.87以上を得ており、約0.1%が月額2万ズロチ以上である。
従業員の年齢と作業経験が所得レベルを大きく左右する。例えば、24歳の平均賃金は約389.10ズロチで、60歳で、3,126ズロチまで上がる。
全般的に、賃金は公共部門より民間部門のほうが1ヵ月211ズロチ低い。もっとも公共部門従業員の34%は高い教育、高い職業経験レベルをもち、大きな役割を果たしている。民間部門では大学の学位を持っているのはわずか14%であり、24歳の労働者は公共部門では2.5%であるのに比べて、民間では約10%である。全体として、民間部門では相対的に賃金の低い作業をする労働者が非常に多いが、民間部門には資格の高い労働者が多く、かれらは公共部門より高い報酬を得ている。65歳以上の公共部門従業員は、3,989ズロチという最高の報酬を得ている。
賃金水準を左右する第二の大きな要因は教育である。調査によると、大学の免状をもっていると、賃金を51%高い。02年10月現在、大学の学位をもつ者の平均賃金は、3,367ズロチである。高等学校卒業者は全般的に、全国平均に近い賃金を保障され、中学校卒業者は全国平均より23%低い賃金を受け取っている。
各個人の選ぶ職業が、賃金を左右する。GUS調査が労働者の9グループの労働者を明らかにしている。最高レベルは上級公務員と管理者で、全従業員の約5%を占め、1ヵ月平均5,191ズロチの収入を得ている。一番下は単純労働の従業員で、1ヵ月1,305ズロチである。9グループの中で最大なのは「専門家」で、行政官、教師、法律家、建築士、医師である。このグループの平均賃金は2,972ズロチである。
また男女の格差も明らかにされた。女性は男子より高い資格を得ることもでき、類似の作業経験をもつこともあるが、収入はかなり低い。就職した第一年度の平均収入は、女子1,354ズロチ、男子は平均賃金が220ズロチ高い。大学の学位をもつ女子は、平均2,800ズロチであるが、同じ資格の男子は1,300ズロチ高い。
■雇用動向
ポーランドの中央な統計事務所は、雇用人員が03年には約7千人減少するとみている。02年には7万3千人の喪失であったから、大きな改善といえる。
03年には22万5千人が職を得、23万2千人が職を失ったので、差し引き7千人の減少であった。雇用は主としてサービス産業で増える見込みである。この部門の企業の58%が新たに労働者の雇用を計画しており、解雇を計画しているのはわずか6%である。情報技術(IT)部門は、これまで不況の影響を受け、雇用を減少させてきたが、目に見える改善を示している。IT企業は雇用を4.5%増大させた。製造産業でも未来は明るく、27%の企業が募集を計画しており、解雇を計画しているのはわずか15%以下である。
輸送、宿泊部門では、03年の第2四半期に雇用が大幅に増大し、経営者の60%は雇用削減の計画をもっていない。メディアや広告では、13%の企業が若干の従業員の解雇を計画しているが、およそ26%の企業はあらたな募集を計画している。
企業規模については、50人までの企業の3分の1は新しいスタッフの採用を考えている。同様に、失業者はポーランドの企業より外国の企業で雇用を得ているようである。国内企業の24%にたいして、外国企業に33%が募集を計画しているからである。
地理的にみると、雇用は国の南部で4%増える見込みで、北部では1.5%低下しそうである。
職業でみると、求人は販売業で高く、雇用は5%増大しそうである。しかし営業スタッフや経理事務では展望は暗い。
運輸、建設ではブルーカラーの臨時労働者が絶えず増え、銀行・金融では少ない。新しい従業員にどのくらいの教育を望むかを尋ねたところ、18%の経営者が公立大学の卒業を希望した。(坂本満枝)
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