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国旗 世界の労働者のたたかい
チェコ
2005

 以下に掲げるチェコ、ハンガリー、ポーランドの東欧3ヵ国には、1980年代末から1990年にかけての共産主義政権から市場経済の国に転換し、多様な形で負の遺産をかかえながら、国や経済、労働組合運動の建設に取り組んでいるが,その道はいまだ緒についたばかりである。04年5月のEU加盟のための準備やEUの基準を国内法に取り入れる問題、その他があり、さまざまな困難を乗り越える課題に迫られている。
 チェコ政府は04年始め,財政難やEU加盟を理由に、食料品やサービスを除く商品への消費税率を5%から22%へと大幅に引き上げた。また急激な民営化の中で、経済格差と失業問題が深刻化した。3月下旬に発表された世論調査は、EU加盟後に生活がよくなると期待している国民は10%であり、40%以上の人びとが「生活が悪化する」と考えていることを明らかにした。
 以下に示すのは、一部東欧その他諸国における近年のスト件数、参加者数、損失日数にかんする表、ならびに組合員数にかんする表である(出典「ILO統計年鑑2000年度版」およびその他)。近年の概況を知る上で参考にされたい。

東欧その他一部諸国におけるストライキ件数
1993年
1996年
1999年
件数 参加者 損失日 件数 参加者 損失日 件数 参加者 損失日
ポーランド
7.443
383,200
1.51
21
44,300
1.69
920
27,149
3.94
ロシア
264
120,000
1.97
8,278
663,900
6.04
7,28
238,400
7.66
ハンガリー
5
2,574
1.9
8
4,521
0.53
5
16,685
14.5
チェコ
2
2,500
0.12
2
11,500
1.43



ウクライナ
462
360,400
10.28
1,269
171,400
12.45
290
42,079
10.54
  *損失日は1人当り

東欧その他の一部諸国の組合員数と組織率
国名 組合名
組合員数(千人)

1990‐91
1993
1995‐1996
1999‐2001
組織率
ブルガリア KNSB
3,600
1,664
1,070
680
35%
Podkrepa
250
500
510
154
チェコ CMKOS
4,500
3,500
2,300
1,500
35%
スロバキア KOZ
1,500
1,200
830
35%
ハンガリー MSZOSZ
2,700
1,300
892
235
20%
SZEF
557
550
500
300
ASZSZ
374
410
280
120
LIGA
70
250
100
50
MOSZ
106
160
80
30
ポーランド Solidarity
2,200
1,500
1,300
1,200
25%
OPZZ
6,000
64,782
2,500
1,700
ロシア FNPR
66,000
64,300
45,000
38,000
70%
ウクライナ FPU
26,000
21,295
18,000
14,500
80%

新しい雇用法

 04年4月、議会下院は、主として失業レベルを低下させるための雇用法案を可決した。さらに上院の承認と大統領の署名が必要である。
 この法律は失業者にたいし、失業者として登録されるための基準を厳しくしている。これによって政府は就職申込者が仕事を見つける意欲を高め、失業者と職業紹介所の協力を改善したいと思っている。
 将来、紹介事務所は、次の者への紹介、給付、支払いを認めない。何らかの雇用契約をしている者、自営業者、顧問役についている者、会社の役員。.
 もっとも大きな変化の一つは、卒業した青年に関するものである。彼らは事務所に登録できるが、勉学の期間は給付請求にあたって「働いた」とはみなされない。したがって、給付を受け取るには、他の市民に適用される条件を満たさなければならない。
 新雇用法は主として次の内容をもつ。

  1. 失業者として登録し、これを続けたいとする者を厳しく規制する。
  2. 3ヵ月ごとの失業給付のうち、2回目の3ヵ月は給付を引き上げる。
  3. 高齢者の失業給付期間を延長する。
  4. 失業給付の資格をもつと同時に、最低賃金の半額を稼ぐ便宜を与ること。
  5. 労働不能の労働者への差別を改善する。
  6. 一定の状況においては医療検診を義務付ける。
  7. 新しい措置をとって労働市場を活性化する。

 チェコ共和国が職場における青年の保護にかんするEU指令(94/EC)に合致させるため,この法律は、児童労働を禁止し、青年の労働条件に関する指標が守られるようにする措置を実施する。

国家財政改革が労働市場に及ぼす影響

 政府は04年5月のEU加盟を前にし、国家財政の赤字増大とEU加盟準備のための追加的支出に直面して、改革計画に乗り出した。
 政府による国家財政改革提案は03年半ばに行われたが、そのうちの一部は04年1月1日に発効し、チェコ経済全体に影響を及ぼした。影響を及ぼすものは税金、年金、社会福 祉制度および公共行政の変更である。
 税制:現行制度は1993年に実施され、その後何度か変更し、複雑で混乱したものになった。法人税を06年に31%から24%、05年に22%に引き下げる政府案に労働組合は反対であり、他方、経営者は政府案より大幅な削減を望んでいる。この国の税負担は、他の国に比べて重い。これら削減を徐々に導入せよとの労働組合の要求は、産業界の競争力を弱め、国内投資に傾くと考えている。
 チェコ・モラビア労働組合連合(CMKOS)は法人税の削減を大幅にするのでなく、24%を26%にするよう要求した。高い法人税がチェコの競争力を脅かすとは考えていないからである。CMKOSは租税負担が国内投資レベルに影響することも賛同できない。この分野での重要な要因は、労働者の教育水準,国の天然資源、発達した市場への参入と考えている。さらに付け加えると,国のインフラの状態、それの制度的経済的安定性も重要である。労働組合は,税金を下げれば,経済成長と失業の減少がもたらされるとは考えていない。

新しい雇用創出計画

 政府は、高失業にひどく見舞われている地域に雇用を創出するため、あらたな雇用創出計画を導入した。経営者が一定数の正規雇用を創出する約束をした場合、これら経営者は賃金、社会保障のコストに加え、訓練の助成費を受け取る。
 04年6月2日、この種の制度創設の法律が通過した。この制度は労働・社会問題省(MPSV)、商工業省および商業・投資(チェコの)支援局による共同計画で、平均失業率が14%以上の地域に少なくとも10の新規雇用を二年間に創設する約束をした経営者に給付される。採用する労働者は期限をつけない正規雇用で、失業者あるいは雇用が終了した者に限られる。現在チェコには、失業が14%以上の地域は、モスト地域の23.62%、カルビナ地域の20.72%である。
 この条件を満たして10の雇用を創出すると、1,000万CZK(315,284ユーロ)の国の助成金が出る。これで使用者のコストの50%(小企業の場合は65%)がまかなえる。また、新しい仕事のための再訓練の経費も受け取れる。
 これは04年から06年までの二年間の制度で、主としてサービス部門を対象とし、鉄鋼、石炭、合成繊維、農業、運輸、造船は含まれていない。またこの期間にチェコ労働法をEU規定にあわせるために改正できる。この計画は、2010年までに欧州に世界でもっともダイナミックな経済を生み出すというEUのリスボン戦略の諸目標を全面的に支えるものである。(坂本満枝)