雇用統計によると、1997年から02年のジョスパンの時代には150万人分の雇用が創出され、失業者数は312万から239万に減少したものの、景気回復が鈍っているため、雇用創出は停滞している。失業は25年来の減少を4年にわたって記録したあと、増加傾向を続けた。
03年度の最大の問題は年金改革であり、法案の提出される以前の年初から、労働組合組織は統一した対応につとめながら、抗議の行動を行った。
この年のもう一つの問題は、アメリカおよび同盟国によるイラク攻撃であった。シラク大統領は国内では年金改正など、労働者の要求の対極にあったが、国際的にはドイツ、ロシアなどとともに国連中心の解決を主張し、世論の先頭にたった。労働組合を含む国内世論がこれを支えた。
■年金改革
フランスの年金制度は、働いている者が退職した者の年金を払う。しかし、人口統計の動向から、国民の寿命が延び、退職者の年金を支払う青年が減るため、年金財政に大きな負担がかかるようになる。政府の宣伝では、1960年から2000年のあいだに1人の年金受給者を支える労働者の数は4人から2人になる。05年からは退職者数が激増し、40年には人口の3分の1が60歳以上になる。この問題は6月の選挙で就任した政府の優先課題であった。
政府は1995年秋冬の社会保障改悪に反対する労働者の大闘争が97年の総選挙での保守敗北をもたらした教訓から、この問題での労使との三者会議を先行させ、2月にラファラン首相と社会経済評議会との話し合いが始まった。社会相フィヨンは3月に年金改革委員会に一連の提案を出した。労使とのこの交渉が5月15日の明け方までかかった。改革の大筋が決まり、この原則が法案に盛り込まれた。この法案は労使のうちのフランス民主労働総同盟(CFDT)および職長連合(CFE-CGC)を含む5労連,および使用者団体のMEDEF、CGPME、UPAが支持した。労働総同盟(CGT)、労働者の力(FO)、統一労働組合連合(FSU)、全国独立労組連合(UNSA)は反対した。
<提案の内容>
法案の中で、労働組合に譲歩したものは、08年までに最低賃金(SMIC)を受け取る最低の者85%への年金増額、および14〜16歳から働いた者の60歳退職である。
改革案は民間労働者の基礎年金制度と公務員の年金制度を対象にしている。最大の改革は保険料支払い期間の延長である。現行制度では民間労働者40年、公務員37.5年であるが、改革案ではまず08年までに公務員を民間労働者と同じ40年に延長し、その後、民間労働者と公務員を一緒にして、12年までに41年、20年までに42年にするというもの。
<労働組合の行動>
7労働組合―労働総同盟(CGT)、民主労働総同盟(CFDT),労働者の力(FO)、キリスト教労連(CFTC)、職長連合(CFE−CGC)、全国独立労組連合(UNSA)、統一労組連合(FSU)は、多様な年金制度を考慮し、民間・公務の労働者の中期、長期の利益を最大限に保障して富の分配を可能にする年金改革を確認し、共同声明に合意し、2月1日の共同行動を決めた。この日、パリ、その他で、約35万の参加者が年金改革への不安を表明してデモを行った。全学連(UNEF)も参加を呼びかけた。
年金改革の緊急性から、ラファラン首相の2月の経済社会評議会での意見表明に続いて、フィヨン社会相が政府、労使の作業部会に改革案を提出したが、この案を3月17日の全労組連合の会合は支持できず、4月3日、CGT、FO、UNSA、FSUの4労組35万が全国ストにたった。パリで8万、マルセーユで8万、トゥールーズで3万5千、ボルドーで2万など。調査機関CSAの世論調査では、国民の72%が労組の呼びかけを支持した。CFDTはその条件について政府と話あう用意があったが、FOは公務員を代表する主要組織として断固反対した。
5月13日,6労組連合がフランスの115以上の都市で、政府の広範な年金改革に抗議して公共・民間の100-200万人が全国スト、デモを行った。公務員は全国ストを実施、交通関係は国鉄、航空、都市交通の多くの労組が統一行動への参加を決定した。野党社会党もこの統一行動への参加を呼びかけた。CGTの態度は断固としており、同時に傘下の公務部門労働者を配慮するものだった。
6月10日、国民議会の年金制度改革法案審議開始に合わせて、CGTやFOなど4労組連合が法案の撤回と交渉のやり直しを求めて呼びかけたストライキやデモが各地で行われた。主催者発表の全国の参加者は150万であった。
政府提案の年金改革をめぐる6月19日の最後の行動日までにデモやストライキが130日以上行われた。きわめて激しかったのが5月13日で、国の機能を麻痺させた。
6月初め、抵抗はきわめて激しくなり、警官の介入もあった。
<年金法案の討議と採択>
議会での年金改革法案の審議が始まり、政府は7月中旬の採択、04年1月1日の施行をめざした。 政府が年金改革法案にかんする労使の交渉の続行を拒否し,国民議会での審議が6月10日に始まった。法案は5章81条からなり、5月7日の閣僚会議および5月15日未明に及んだ労使の討議で持ち込まれた変更をすべて網羅した。
第一読会には数千の修正案が出された。最後に453の修正案が採択され,法案は7月3日に通過し、27ヵ条の追加で上院に送られた。7月24日、上院は年金改革法の投票を行い,採択した。法案の第1読会は19日と、1981年以降二番目に長く、討論は156時間57分に及んだ。
<補足年金制度>
補足年金制度である管理職年金総合協会(AGIRC)と補足年金制度協会(ARRCO)の期間延長の交渉が6月20日に始まった。
一般制度にもとづく年金給付は、報酬限度額があるため、賃金水準の高い労働者のためそれを補う制度がある。これは労働協約にもとづいて始まったが、1975年以来、一部を除いてすべての職業分野で、一般制度の被保険者全員に加入が義務付けられている。その運営は2種類の金庫、幹部職員とこれに準ずる者を対象とするAGIRC(幹部職員年金制度総連合会)、およびARRCO(補足年金組合連合)である。
■ダノン企業で雇用維持の協定
フランスの多国籍企業ダノンは、2年前から始まった欧州部門のリストラで、労働者側が経営者側と交渉し、代替職場の確保と賃金水準の維持を約束させ、結局、削減人員以上の職を生み出す成果を上げた。
ダノンは世界120ヶ国に事業を展開し、10万人余を雇用する。ダノン本部の01年発表の計画では、フランスの2工場をはじめ、ベルギー、オランダ、イタリア、ハンガリーそれぞれ1工場、合計6工場を閉鎖、2,600人を削減するものであった。
各国の労組は削減反対を表明し、ストやデモで立ち上がった。会社側はハンガリー工場の閉鎖計画を撤回し、削減人員を5工場で2,025人に留めると手直しを提案した。同時に、削減対象労働者には、1)グループ企業内外への再就職に責任をもつ、2)閉鎖で影響を受ける地域の雇用と生活維持を支援することを約束した。すでに1,450人がグループ内外の企業に再就職、工場跡地の再開発などで最終的には削減人数以上の雇用が生み出された。
ダノンの「社会計画」では、再就職までの賃金、生活保障が約束されている。
■SMICの5.3%引き上げ
さまざまなレベルの多様な最低賃金(SMIC)を3段階にわたって調和させることになっているが、その第一段階はSMICの5.3%の引き上げという政府の発表で実現し、7月1日に発効した。これは00年1月19日からの週35時間法の実施で生じた多様なSMICを調和することを目的としている。1998年の35時間法(オーブリ法)では、同年6月15日以後35時間に移行した労働者は、引き続き週39時間働いていても、同一の賃金を保障されることになっている。これは月額所得保障(GMR)の制度を導入することによって実施されている。つまり、会社がいつ時間短縮をしたかによって異なっている。
03年1月、新しい法律、フィヨン法が発表され、03年7月1日から05年7月1日までにSMICを調和させることになった。
03年のSMICの5.3%引き上げは、国の最低時間賃率を、以前の6.83ユーロにたいし、7.19ユーロに設定するものであった。これは次のよう要素で構成されている。
- 1.6%引き上げは、02年5月から03年5月の期間の、都市に住む、ブルーカラーあるいはホワイトカラー労働者を世帯主とする家計の消費物価指数の動きに応じたものである。
- 政府の裁量による3.7%の引き上げは、フィヨン法の諸条件に従ったものである。これは1.6%という法定の引き上げを上回るものである。
したがって、新たな月額賃金は151.67時間の労働に基礎を置いて、1,090.51ユーロとなる。この措置の対象になる労働者は100万人であるが、時給の労働者、一定のタイプのパート労働者、新たに就職した労働者を含まない。
<労働組合の声>
労働組合の意見は、まちまちである。CFDTとCFTCは裁量引き上げによるこのレベルを、条件付で支持している。CFTCの幹部は、「かなり大幅な引き上げであるのは認めるものの、SMICの賃金を受け取っている労働者がこの額で生活をまかなっていくのは不可能である」と述べている。FOとCGTは、5.3%引き上げを享受できるのはごく一部の人たちであって、他の労働者の引き上げは取るに足らないものである、と批判している。CGTのマリーズ・デュマは言った。「昨年、政府は最賃をもらっている者にバゲット(細長いパン)一個分相当のものを与えた。今年、かれらに与えられたのは、一週に何時間働いているかによって違うが、バゲット半分か、一個半である。
■メーデー
1日、フランス各地で「平和、年金擁護、雇用」をスローガンに、全国200個所、約30万人が参加した。
パリでは労働総同盟(CGT)、民主労働総同盟(CFDT)、統一労組連合(FSU)、独立労組全国連合(UNSA)の4労組が統一して呼びかけたデモに約4万人が参加した。「60歳で満率の年金を」と書かれた横断幕やプラカードが多かった。
■平和闘争、とりわけイラク戦争反対の行動
3月に開かれたCGT大会は、「イラクの戦争に反対するアピール」を採択した。
6月12日、1万5千人のデモが「イラクはイラク人の手に」「占領軍は撤退せよ」などのスローガンを掲げ、米英軍のイラク侵攻と占領に抗議した。
9月27日、パリでは平和運動全国評議会や人権同盟、左翼政党がよびかけたデモに1万人が参加した。「イラク人に自由と主権を、占領軍は撤退を、平和と正義と民主主義」を要求した。
■CGT第47回大会
CGTの第47回大会が、3月24-28日、モンペリエで開かれた。大会には4年間の活動報告および財政報告が提出され、「新たな労働者の勝利に向かっての連帯」、「転換をめざす労働組合運動の刷新」、「労働組合活動憲章の採択とCGTの変革にかんする考察の追求」「組合費徴収の新制度の確立」の4本の決議が採択された。またべルナール・チボー書記長を再選した。
■第2回欧州社会フォーラム
第2回欧州フォーラムは、11月12~15日、フランスのパリ、サンドニ、ボビニ、イブリの4都市で開かれた。5万1千の信用状が発行されたが、そのうち2万の参加者はヨーロッパからで、とりわけドイツ、ベルギー、スペイン、イタリアのほかに、ハンガリー、ポーランド、その他の東欧諸国、ロシア、バルカン半島からも参加し、青年の参加が目立った。
55の主要討論会、270の分科会に集まったヨーロッパおよびアフリカ、アメリカからの参加者に、900名の通訳がおよそ15の言語によってボランティア活動をした。
前年のフィレンツェでの欧州社会フォーラムに比べると、人数も取り上げる問題も一段と広がりを見せた。主要なテーマは、1)戦争反対、平和と正義、連帯の欧州、2)新自由主義反対、社会的民主的権利の欧州、3)利潤の論理に反対、環境にやさしい社会と食糧主権、4)商品化プロセス反対、情報・文化・教育の民主的欧州、5)移民排斥・社会的排除反対、権利の平等と文化の対話、であった。
フランスの労組としては、CGT以外にFSU、グループ10連帯(G10)は最初からフォーラム実行委員会に参加し、FOは書記長の言とは反対に準備に参加し、UNSAはフォーラム賛成のアピールに署名し、教育の討論会に参加した。CFDTだけは、一部の組織が最初だけ参加したものの、フォーラムへの参加は全面的に拒否した。CGTは討論会の10%を主催し、15%の討論会を欧州労連と共催した。参加者は全体として8〜10万とみられたが、CGT、FSU、G10と言うフランス労働組合の隊列は小さく、CGTデモ隊の1,000人中の大きな隊列は青年委員会を先頭とした青年であった。
フォーラムはフランスのメディア、とくに新聞に大きな影響を及ぼした。事実フォーラムは国民にたいする、とりわけ青年にたいする広大な教育の場であった。(CGT機関誌誌「プープル」より)
■港湾の規制緩和EU指令に反対する投票の勝利
フランスを含む欧州の港湾労働者は1月に、EU加盟国の港湾への出入りを規制緩和するとの欧州連合提案に反対し、デモやストを行った。この行動を組織し連携させたのは、この計画に反対する欧州運輸労連である。提案の中には、港湾への出入りの自由化を目的とする指令案が含まれていた。これが実現すると、特定の港湾企業以外に実に多様な多くの企業が、港湾で仕事をすることになる。欧州運輸労連は、このために欧州の港湾で働く港湾労働者の条件や安全が悪化すると考えた。この行動は、スウェーデン、スペイン、フィンランド、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、デンマーク、ポルトガルで実施された。
欧州議会はこの指令案に反対投票した。CGTはとくに港湾労組とともに、フランスと欧州の労働者の行動への参加のために奮闘し、この大勝利を喜ぶ声明を発表した。「これは自らの要求を追求するばかりでなく、同じ攻撃にさらされる他の産業の労働者にとっても大きな励ましである」と述べている。
■職業訓練協定の締結
9月20日、生涯学習と職業訓練にかんする新しい協定に労使が調印した。3年間の交渉を経たもので、3つの経営者団体と5つの労働団体すべてが調印したのは、数年ぶりのことである。この協定は、1970年以来実施されている現行の措置を改革するもので、主な目的は、訓練にたいする個人の権利の導入によって、訓練に参加する機会の不平等を改善し、生涯学習の権利を確立することによって、これを容易にすることである。
1995年に、解雇ではなく早期退職の機会を与えるという協定が労使で一致して調印されたが、これはそのとき以来である。
30年余にわたって労働者の訓練への参加は、労使間の任意協定の対象であったが、その措置のほとんどは相互の組織に依存していた。新協定は、とくに労働時間以外の訓練に関する条件で、両者が合意できない時に生じる問題を避けることにある。
職業訓練にたいする各企業の財政的負担は、次のように引き上げられる。
- 04年1月1日から、10人ないしそれ以上を雇う企業は、賃金総額の1.6%を職業訓練に支出する。これは現在の1.5%にあたる。この1.6%のうち、0.2%は、訓練のための個人休暇基金に納められる。0.5%は労使訓練基金(OPCA)に、残る0.9%は訓練計画の必要事項あるいは個人の訓練の権利にもとづく追加措置のために使われる。
- 04年1月1日から、10人以下を雇用する企業は、賃金総額の0.25%から0.4%を職業訓練に支出する。05年1月1日から、この拠出金は0.55%に引き上げられる。これらの額はOPCAに払い込まれる。
■2002年労働裁判所の選挙結果
二者構成の労働裁判所(コンセイユ・デ・プリュドム)の選挙結果は、労使の中での選挙への参加率が、1979年以来の低下傾向をふたたび示した。労働裁判所選挙での有資格投票者の参加は、1979年には63.3%の高さであったが、1992年の40.4%、1997年の34.4%と徐々に低下し、02年12月11日には、わずか32.7%になった。二つの大労組の得票率も減った。労働総同盟(CGT)は0.9%減って32.1%になり、フランス民主労働総同盟(CFDT)は0.14%減って25.2%になった。
投票率低下の中で、CGTは第一位の地位を保持し、小組合の得票も増えた。労働者の力(FO)への支持は2.25%低下して18.3%になった。相対的には小さい組合が支持を増やした。フランスキリスト教労連(CFTC)は9.7%に落ち、職長総同盟(FEC-CGC)は、1997年の5.92%を上回り、7.0%になった。公務部門の全国独立労組連合(UNSA)は5%の支持を獲得し、これまでの4.3%を更新した。労働組合連盟グループ10「連帯」は得票率を、1997年の0.3%から02年には1.5%へと増大させた。
民間雇用者団体は、フランス経営者運動(MEDEF)、中小企業総連盟(CGPME)、UPA、全国農業経営者組合連盟(FNSEA)、UNAPIを含めて、80.1%を得たが、1997年の87.9%から低下した。
■2001年企業委員会選挙の結果
雇用省は最近01年企業委員会選挙結果を発表した。組合以外の候補者に投じられた票数の最終結果ならびに参加率が低下した。フランス企業委員会の選挙は2年に1回である。選挙への参加は0.9%落ちて、1999年の65、3%にたいして、64.4%であった。CFDTは22.8%で、CGTの22.5%よりわずかに高かった。1991年以来、組合未加盟リストに載った候補の得票は低下を続け、組合が増加するなかでの全般的発展を反映している。
投票の資格をもつ労働者は、選挙が行われる企業の大きさによって、1、2、3に区分される。01年選挙は、選挙区分ごとの候補者の獲得した比率によって分析された。これによると、それぞれの区分には、次のように好みの組合があることもはっきりした。
- 第一区分:ブルーカラー労働者とホワイトカラーの従業員で、CGTを好み、28.2%で、CFDTは23.3%であった。
- 第二区分は、監督職、技術者、技師、管理職で、非組合リストの候補を好み、CFDT候補より多い。ただし、CFDTは4.2%減らしている。これら二つのリストの差は狭まり、1999年の6.3%から01年には1.5%になっている。
- 第三区分は管理職で、CFE−CGCを支持し、25.4%である。ただし前回より0.5%減らしている。非組合リストとCFDTは1.3%および1.2%という小さい比率を獲得している。
- 小企業からなる単一の選挙区分では、引き続き非組合リストの支持が多く、36.2%であるが、0.38%減らしている。
■労働組合運動内の勢力の変化
フランスでは、CGT、CFDT、CGT-FO、CFTC、CFE-CGCの5労連が政府によって代表権を認められ、全国レベルでの団体交渉権を与えられている。しかし最近では、さまざまな要因で組織からの脱退や再結集が進んでいる。新たに結成された労組としては、1981年に結成された「グループ10連帯」(G10)、93年に全国教員組合連合(FEN)から分かれた「統一組合連合」(FSU)、79年以来何度か行われた分離のなかで結成された「連帯統一民主労組」(SUD)がある。FSUやSUDがG10に結集している。1993年には「全国独立組合連合」(UNSA)が生まれており、労働団体への代表権を認めている1966年3月31日法の廃止を求めている。この項に述べているように、CFDTは年金闘争などでの指導部の方針に反発して、単産ぐるみ脱退し、CGTに加盟するところもでているし、社会フォーラムへの参加についても意見を異にしている。
■外務省職員のスト
12月1日、外務省職員が予算抑制に抗議し、省内の6労組の統一した呼びかけで、24時間ストを行った。ゼネストを除き、外務省が単独でストに見舞われるのははじめて。外務省職員は総計9,300人で、うち5,300人が国外勤務。159の大使館、88の総領事館、148の文化会館など、規模では米国に次ぐ世界第2の外交団である。 国家予算に占める外務省関係費は1.25%。予算抑制で過去10年間に職員数は10%減少している。ストを呼びかけた6労組は声明で「国際舞台でのフランスの大きな役割を強調されながら、外務省の人的財政的手段が一貫して後退している」と政府を批判した。時差の関係で、ストはアジアの外交施設から順次始まり、各国の領事関係はほぼ全面的に業務がストップした。
■政府が団体交渉制度を改正する提案
10月14日、社会相フィヨンは、団体交渉制度改正の目的で、労使対話法案を全国団体交渉委員会に提出した。この改革は、11月の議会に提出する予定の職業訓練法案の一部として計画されたものである。この法案は、次に示す二つのモデル中の一つに従って、部門別協定が同じ職業領域と地理的範囲において締結されたすべての企業協定を律することをねらっている。
- 大多数の協定。企業協定は、前回の企業委員会選挙で最低半数の票を獲得した労働組合、あるいは組合がない場合には、従業員代表が調印する。ないしは、
- 反対なしの協定。これは、前回の企業委員会選挙で最低半数の票を獲得したそれぞれの労働組合、あるいは従業員代表がこれに反対しない場合に、実施される。
この第二の規則は、現行の部門別協定がないところで適用される。
しかし、若干の条件がついている。いかなる企業協定も、法の定めがない場合には、協定された最低賃金、職業資格、社会福祉制度にかんして、部門別協定が優先される。
労働組合は、この広範な措置に激しく反対している。これは企業協定を高いレベルの協定に格上げできることになるからである。CFTC、CFE-CGCの小さい組合やFOは、最大の防御は、1966年の政令で認められているので、現状を維持することだと考えた。これに対して、CGTやCFDTは協約の導入と部門別代表の選挙に熱心であり、多数派協定の考え方や組合代表制の変更は、近い将来における労使の対話が妨げられようと、直ちに採択すべきであると考えた。
■プジョー・シトローエンにおける女性への反差別協定
11月4日、フランスのプジョー・シトローエン自動車企業において、5労組と経営者が女性にたいする差別撤廃に関して、協定に調印した。3年期限のこの協定には、次のものを含め、新たな措置が盛り込まれている。
募集―会社は各職種の女性応募者数を反映する一定比率の女性を採用し、また国内でこれらの講習を受けた女性の人数も考慮するよう保障する。採用の方法以外に、教育省との協力で、若い女性のあいだで自動車という職業に関連する科学技術の科目を推進できよう。
さらに雇用において女性を多くし、仕事場の変化および男女が入り混じっていない仕事の分野の評価を行うため、その他の措置を取る。
同一賃金―経営側は、企業の賃金について調査し、同一資格をもつ男女に同一の賃金を保障するために、必要とされる賃金水準を明らかにする。同一労働を行う男女間に賃金の差がないよう保障するとともに、会社は女性の職歴を発展させるための分野でも同じ機会を与えるよう保障する。さらに会社は、男女従業員の比率を反映するために昇進を保障する。これはこの産業のもっともダイナミックな分野で女性の機会を増やすことになり、女性は男性と同じ職歴および責任ある地位につく同一の機会を享受できるだろう。会社は、訓練、機動性、職業的適応、職務の発展、女性の必要に適応した仕事場について独自の計画を実施する。
その他の措置―この協定では、例えば地域的サービスの創設、男女にたいする個々の作業日程の調整、地域的移動に関して従業員を援助するなど、労働条件改善のための社会的施設の対応を想定している。
さらに母性、父性の休暇は個別協定の対象であるが、必要であれば、休暇後、以前と同じレベルの仕事への復帰を保障する。
この協定実施は、主として既存の多様な委員会を通して、会社が責任をもつ。(坂本満枝)
|