全労連 TOPへ戻る BACK
国旗 世界の労働者のたたかい
ギリシャ
2004

概 観

2003年の経済指標
経済(GDP)成長率
41%
消費者物価上昇率
3.6%
失業率
9.5%
賃金(名目)上昇率
6.5%
財政赤字の対GDP比率
△1.7%
累積債務の対GDP比率
△100.6%
「欧州委員会経済予測」
2003年秋版による。

 ギリシャでは、PASOK(全ギリシャ社会主義運動)の政権が2002年の総選挙後、2期目に入っている(シミティス首相)。
 経済状況は下表に見るとおり、いずれの指標も厳しい状況の継続を反映しているが、失業率を含めて、前年よりやや改善している。名目賃上げ率は前年8.4%を下回った。週実労働時間(フルタイム労働者、2002年)は45.5時間で、2000年44.9時間、2001年45.4時間と比べ、増える傾向にある。2002,2003年は労働争議が1990年代と比べて激増しているのが特徴である。

2003年の主な闘い・できごと

  • 1月13日 労働・社会保障省と国家経済省がSoftex社のドラマ工場の大量解雇による失業者の救済策(雇用創出、補助金制度、自営業支援)を決定・発表。
  • 4〜6月 一連の裁判所の判決が、使用者の恒常的かつ長期的な必要を満たすために、繰り返しての有期雇用契約で雇用されてきた労働者を、1999年のEU有期雇用指令を国内法化した法制に則って無期限雇用契約に変更するよう命令した(別項本文「裁判所がEU指令にもとづき有期雇用契約の乱用を正し、無期限雇用に」を参照)。
  • 5月28日 ドラマ裁判所(第1審)がSoftex社ドラマ工場の大量解雇(2002年8月に解雇された417人のうち223人が提訴)を、解雇規制法規に違反する不法・不当なものと判決。判決の日までの賃金支払いを命じた。
  • 6〜7月 開発省が6月に発表した電力自由化政策に反対して公営電力企業全職員労働組合(GENOP-DEI)が数次のストライキ。
  • 9月3日 港湾労働者が、EU港湾サービス自由化指令案反対の欧州統一行動に参加。
  • 9月下旬 農業保険団体ELGAが企図していた、妊娠したら解雇という条件付の有期雇用契約を、労働組合が抗議し、撤回させた。
  • 10月 公共安全・治安関係職員(警察、消防、沿岸警備)の労働組合が、政府がこれらの労働者の仕事を高危険度職務(特別手当および年金上の特典がある)と認めるのを拒否したことに抗議してストライキを含む行動を展開。
  • 11月4日 ギリシャ公務員連合(ADEDY、医師、看護師、教員、航空管制官、建設労働者を含む)が政府の賃金政策に反対して24時間ストライキ決行(別項本文「各分野の公務員労働者が多様な要求掲げてストライキ」参照)。
  • 12月12日 国営オリンピック航空Olympic Airways が民営化され、民間企業Olympic Airlinesに移行。民営化・リストラにともなう労働条件悪化に抗議して労働者がストライキを含む改善闘争を続けている。
  • 12月上旬 TVX Hellas(多国籍鉱山企業のギリシャの子会社、ギリシャ北部ハルキディキ)の倒産・解雇(約500人)への労働者の抗議行動を受け、政府が労働者への補償と鉱山再開の措置を決定。

裁判所がEU指令にもとづき有期雇用契約の乱用を正し、無期限雇用に

 4月から6月にかけての一連の判決で、裁判所は使用者の恒常的かつ長期的な必要を満たすために、繰り返しての有期雇用契約で雇用されてきた労働者の訴えを認め、1999年のEU有期雇用指令(1999/70/EC)を国内法化した法制に則って無期限雇用契約に変更するよう命令した。EU指令は、「特定の任務の完了」などの客観的条件による場合に限って「有期雇用契約」が認められること、「比較可能な労働者との均等待遇」などの非差別原則、有期雇用契約の反復継続の禁止・更新回数の制限などの乱用防止、等々をうたっている。
 これらの裁判の判決理由は、同EU指令を国内法化した「有期契約雇用の労働者に関する規則」(大統領命令第81/2003)に定められた例外規定、および、「職員選択・人事管理規制のための独立機関の設置に関する法律」(法第2190・1994)の諸規制は、それらがEU指令(1999/70/EC)の適用範囲を過度に制限しており、同指令の趣旨に反し、多数の有期雇用労働者の権利を不当に侵害していることをあげた。
 ギリシャの有期雇用契約労働者の約65%は現行法制の適用外に置かれているが、その救済策は訴訟しかないため、今回の判決がもたらす影響は非常に大きい。

各分野の公務員労働者が多様な要求掲げてストライキ

 11月4日 ギリシャ公務員連合(ADEDY、医師、看護師、教員、航空管制官、建設労働者を含む)が政府の賃金政策、および、2004年度予算案に組まれた低い賃上げ率に反対して24時間全国ストライキを決行した。掲げられた要求は(1)公務員の賃金と制度をEU各国並みに、(2)公的部門にある「重・非衛生労働」のそれにふさわしい認定、(3)パートタイム労働を公的部門に拡大する法律(第3174/2003)の撤回、(4)(裁判所判決にもとづく)家族手当の引上げとその遡及的支給など。
 ADEDYの行動には、予算増を要求する公立病院の医師と職員、その職務を「重・非衛生労働」のそれにふさわしき認定し、待遇改善を要求する全国救急センター職員らも参加した。
 教育分野では、9月15日以降、全国教育・研究職員労組に結集した大学教授が、大学予算増額、賃金引上げを要求して、「休講スト」を含む行動を続けた。二つの教員組合に組織された初・中級教育教員も、賃金・労働条件改善、教育予算のGDP(国内総生産)の5%への引上げ、社会保険・年金権の法律による保証などを要求して、11月4〜5日、48時間ストを決行した。統計局職員(国家公務員)も賃上げなどを要求してストをしたため、経済統計の更新にも大きな障害が生じた。(宮前忠夫)