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国旗 世界の労働者のたたかい
ベルギー
2005

職場評議会の選挙

 04年5月、保健安全委員会と職場評議会への従業員代表を選出する選挙が行われた。
 ベルギー法では労働者100人以上の民間企業で職場評議会の設置が義務付けられており、50人以上の企業では保健安全委員会を設けなければならない。選挙は4年ごとであり、03年が選挙の年であったが、国会選挙と重なるので04年に延期した。労働組合が候補者を提示する。組合未加入の者は立候補できない。
 組合の発表する選挙公約には、早期退職の権利の保障、タイム・クレジット利用の延長(現行のタイム・クレジット制度では、労働者は雇用契約を5年まで一時的に中断できる)など、いくつか共通している問題がある。

キリスト教労働組合連合(CSC)の公約
―正規雇用の重要性。臨時労働は、可能であれば通常の正規雇用契約を基礎として、正規労働の条件で行う。組合は外注量の削減に努める。
―とくに低賃金労働者への賃上げ、全労働者への休暇手当、13ヶ月目の賃金としての年度末ボーナスの支給。現在これらの給付は、正規雇用のホワイトカラー労働者に限定されている。
―38年勤続の全労働者に対する現行の早期退職制度の継続。労働負担の重い高齢労働者が軽度の労働に変更できる制度の導入。
―労働者のあいだでの訓練の機会のより公平な配分。現在、技能の低い労働者やパートタイム労働者が受ける訓練機会は少ない。
―ブルーカラー労働者の雇用契約には、とくに長期の解雇期間を考慮し、休暇手当の改善など、ホワイトカラー労働者と同一の給付を盛り込む。

ベルギー労働総同盟(FGTB)の公約
―夜勤労働を行った55歳以上の労働者を昼間の労働に移す新しい権利の導入。
―重労働を行う55歳以上の労働者で38年勤続の者に現行の早期退職制度を拡大する。
―職場までの往復の公共交通機関の無料。最近行った列車利用無料化の導入をバス、地下鉄にも拡大適用すること。
―子どもの施設の増設。
―新入労働者へのガイダンスの改善。
―緊張した反復労働による障害者への援助の改善。
―時間外労働など追加的支払いを要求できない管理職労働者の労働時間に関する条件の改善。
―管理職の資格を正確に規定し、会社が管理職でない者にこの名称を使わせないこと。

ベルギー自由労働組合連合(CGSLB)の公約
―臨時雇用契約の減少と無期限雇用の増大。
―労働によるストレスを防止する措置の導入。
―現行の早期退職制度の維持。
―タイム・クレジット制度参加の機会を増やすこと。

全国管理職連合(CNC)の公約
―管理職向けの新しい雇用契約は、訓練、タイム・クレジット利用、国外臨時労働にかかわる財政的側面についての項目を含むこと。
―管理職にはジョブ・シェアリングの制度を導入し、現行の早期退職制度にとって換える。

 臨時雇用契約数を減らせという組合要求は、臨時雇用紹介所を怒らせた。紹介所は、このような雇用はベルギー労働者のわずか2%に過ぎず、この数字も近年はほとんど増えていないという。さらに、多くの人はこの種の契約を進んで選んでいるのだという。
 この職場選挙は民間部門だけに限られ、公的機関は除外されている。前回の選挙は2000年に実施されCSCは民間部門職場評議会の票の47%を獲得し、病院など非営利組織で72%をとり、もっとも強力な組織であることを明らかにした。
 選挙結果 CSCが保健安全委員会で53.7%、職場評議会で52.5%を獲得。FGTBはそれぞれに36.5%、35.7%であり、CGSLBは9.84%、9.2%であった。CNCは、投票全体の1%、他の中立組合(複数)は1%以下であった。(下表は全体の集計後の数字)
 職場評議会は従業員ならびに経営側からの同数の代表を含み、財政、経済、雇用に関する情報を受け、また労働問題で企業に意見を述べ、休暇の実際的組織について限られた決定権をもつ。安全委員会は従業員と経営側からの同数の代表からなり、職業上の保健と安全にかんする問題で企業に意見を述べる。
 1953〜2004年における3労組の得票の変化は下表に示すとおりで、優勢であったFGTBが後退し、CSCが支持率を高め、逆転して最強の地位を得た。FGTBは中規模の組合に後退し、影響力を失った。


FGTB CSC CGSLB CNC
1954
59.00%
37.00%
3.50%

1958
55
41
4

1963
51.1
43.8
5.1

1967
51.5
42.5
6

1971
48.7
45.5
5.8

1975
46.1
47.7
6.2

1979
42.6
50.1
7.3

1983
43.4
48.6
7.9

1987
40.8
47.9
7.5
3.80%
1991
37.9
51.5
7.5
3.1
1995
37.5
51.7
8.3
2.5
2000
36.9
51.9
8.9
1.2
2004
35.7
52.5
7.2
1.2
(連邦政府雇用・労働・社会協議局)

組合員の増大
 ゲント大学の研究者バンダーレが組合員数の動向を研究している。1995年には、ベルギーの組合員は259万人であった。2000年の組合員数は270万に達した。つまり、それまでの50年のあいだに、組合員は4倍になった。この比率は、労働者総数の72.8%にあたる。働いていない組合員を除いた組織率は50%強で、これでも他の欧州諸国の比率より高い。
 このデータはベルギーの主要3労組(CSC、FGTB、CGSLB)を網羅している。これらの組合はみな全国規模で、全国労働評議会および中央全国委員会に代表を送っている。
 労働組合には一定数の小規模で、地域的で、特定部門にかかわる組合があり、主としてとくに公務サービスや半政府的仕事、例えばSNPSは、警察や警備要員の労働者を代表している。
 べルギーの組合員比率が相対的に高い理由は、組合が組合員の失業給付管理制度を維持しているからで、これで失業した人の組合加入を維持している。失業してすぐ組合に加入する人もいる。上記バンダーレ氏による1995年の推定では、組合員の19.5%は失業していた。その次に大きい、労働していない組合加入者は、早く退職した人、あるいは早期退職制度を利用した人で、17.5%である。つまり、組合員の3分の一以上は、経済的に活動していない。

相次ぐストライキ行動
 04年10月21日、福祉部門の労働者が、賃上げ、労働時間短縮、仕事のストレスの軽減、雇用のいっそうの創出をめざして全国ストを実施したが、福祉部門の新団体協約にかんする政府との交渉は行き詰まったままである。郵便部門でも不安が高まり、11月10日、週38時間労働を維持するとの経営側の決定に抗議して全国ストを行った。とはいえ、01〜04年団体協約では、週労働時間は36時間に短縮されているのである。経営側は、市場の発展が不十分なため、労働時間の短縮は現実性がないと主張している。郵便労働者もまた、提案されている郵便事業自由化に向けての、広範囲にわたる仕事のリストラを憂慮している。

失業監視制度
 長期失業者がどのように仕事を探しているかを調べた後で、新しい雇用調査計画を導入することになった。
 04年10月全国雇用機関が、長期間失業している864人の青年とのインタビューを行った。この中には25歳以下で15ヵ月失業していた者、および25〜30歳で21ヵ月仕事がなかった者が含まれていた。雇用機関は青年たちがどのように仕事を探したか、求職の努力をどのように示したか聞きたいと願った。
 27%の青年がインタビューに参加せず、その理由を言わなかった。その他の者は欠席したが、理由を明らかにした。インタビューの中で、住んでいる地域にもよるが、18〜38%の青年は積極的に仕事を探している証拠を示すことは出来なかった。これらの青年はこれから詳細に監視され、積極的に仕事を探さない場合には給付を失う恐れがある。
 あたらしい制度は長期失業者による利用の管理を高めるもので、青年失業者から始めるが、後に高齢の失業者にも広げていく。
 労働組合の反応は否定的で、一部地域では真に雇用がないのだと強調している。また、インタビューにくるようにとの青年宛ての手紙が難しくて理解できなかったとも言っている。

建設業における残業の増大
 政府と労使は、建設産業での許容される残業延長で合意した。この協定は労働者1人あたりの残業を、現在の年間65時間から130時間へと2倍にした。残業の分は休日ないしは正規の時給の20%増を補償される。建設業の労使は03年にこの協約の基本を交渉したが、政府は建設労働者が短い時間に労働を集中する結果、一時的解雇が行われないかと憂慮した。政府はこれが社会保障機関の負担を増やすことを怖れた。

サービス券制度の延長
 試用期間がうまくいったので、政府は2万5千人の「公式」雇用の創設のため、サービス券制度の延長を決定した。
 03年5月、政府は現在インフォーマル経済の範囲でまかなっている家事サービス労働者の公式募集を奨励するため、助成制度を導入した。このサービス券で、労働者は1時間に少なくとも8.20ユーロを稼ぎ、雇用者は6.20ユーロを支払う。これは彼らが非公式に支払う額と同じである。

中小企業における従業員代表
 中小企業における従業員代表制が、このところ問題になっている。現行の法律は、50人以上の企業で安全委員会の設置を義務付け、100人以上の企業では職場評議会の設置を決めている。ベルギーは、EUの情報協議指令を05年3月までに実施しなければならない。つまりこの指令のもとに、50人以上の全企業において、中小企業向けの新しい措置を確立する必要がある。
 CSCは経営者の善意によるものではなく、経営者と従業員を平等に取り扱った、中小企業での正式の協議手続きを要求した。さらに、CSCは、賢人委員会によって損なわれた従業員代表の地位は望まなかった。
 FGTBは、自営業者を代表する最大の組合(UNIZO)が、最終的には中小企業での労働者の声の反映を受け入れる用意があることを歓迎しているが、非公式の行動規範に基づくオランダ方式は、ベルギーにとって正しい解決策であるとは考えていない。FGTBはまた、実質的な賃金交渉や労働条件交渉を可能にする適切な協議手続きも呼びかけている。
 これらの要求を押し出すうえで、労働組合は中小企業分野での労働災害の高い比率、ならびにこの分野での他の欧州諸国の優れた経験を引き合いに出した。
 労使は秋には、あたらしい全般的協定の交渉を始めるので、この問題は議題のトップに掲げられるだろう。すべての組合は、政府が適切な時期にこの指令を実施しない場合には、ストライキを実施する意図を表明している。

長期病気休暇が増大
 病気で働けない者の人数が、1998年以来15%増えた。
 03年には、200,700人が最低1年間は労働できず、したがって長期休暇手当の資格をもつとして登録されていた。これらの増大は、女性、55歳から60歳までの高齢者、精神的疾病をもつ者であった。この傾向は最初、1990年代のはじめに見られたが、それ以前にはこの手当を要求する人数は一貫して減少した。

女性組合役員の増大
 この国の三大労働組合連合が、組合役員会に参加する男女の代表数を平等にする平等憲章を採択した。
 大学間労働研究所(I ISA)の調査によると、女性は組合執行部を含め、政策立案機関への代表参加が少ない。そこでCSC、FGTB,CGSLBの諸連合は、労働組合における女性の平等にかんして憲章を起草し採択した。これに続いて「女性労働者の解放で必要な環は労働組合」という討論集会を開き、9月24日、憲章の調印を行なった。
 欧州でのこの問題にかんする類似した調査が3年がかりで行われ、この中で10労働組合組織が複数の部門、一部門レベル、企業における女性についての調査に協力した。調査は公務部門、流通、金属産業を中心に、とくに賃金、職場での雇用規則について実施された。調査によると、現行の賃金格差は、主として、男女の労働生活での次の差異から生まれている。
* 女性の方がパートタイムで働いた者が多い。
* 女性の方が教育上の資格が低い。
* 女性の方は勤続年数が少ない。
* 女性の方が責任ある部署についている者が少ない。
 しかし調査した者は、多くの女性がパートで働くことを選択しているのではないこと、女性はその組織の中で職歴を向上させようと思うと、男性以上に困難にぶつかることが明らかになった。
 ベルギーの労使は不均等な待遇をしないための平等協定を結んだが、しかし、この誓約は実行に移されていない。(坂本満枝)