ポルトガルでは3月17日実施の総選挙で、グテレス社会党政権に代わって、7年ぶりに保守連立のバロゾ政権が成立した。ポルトガル経済は1999年後半以降停滞を続けている。2002年の経済指標は、経済(GDP)成長率0.7%(「欧州委員会経済予測2002年秋」による推定値、以下同様)、消費者物価上昇率1.0%、失業率4.6%(対前年比0.5%増)、財政赤字(対GDP比)3.4%、累積債務(対GDP比)57.4%だった。
■2002年の主な闘い・できごと
- 3月17日、繰上げ総選挙で、バロゾ保守政権へ
- 8月、新政権の労働条件改悪(昼食休憩30分へ短縮など)に反対して公務員労働者がストを含む多様な闘争を展開
- 10月16日、公務員労働者が5.5%賃上げ、雇用安定などを要求してストとデモ
- 10月30日、労働法制と社会保障の改悪反対で、多数の公務・民間労組が24時間スト
- 11月、銀行部門の労働者総連合(UGT)傘下の3労組が新全国労組を結成
- 12月10日、労働法制改悪反対24時間ゼネスト
■新保守政権の労働法制・労働条件改悪に反対して、公務・民間労働者が多様な闘争を展開
新政権は就任後、直ちに「競争力強化」を旗印とした雇用政策、労働法制、社会保障など各分野での「改革」措置、および、それにみあうべき予算対策を打ち出し、次々に実施に移した。たとえば、労働条件・法制分野では、企業競争力強化のための労働時間制度の弾力化、パートタイム「活用」、労働者の移動性の拡大措置などが含まれていた。社会保障分野では政・労・使分担によるリスク負担制の導入、保障最低賃金の見直し、福祉サービスの合理化・効率化などが ― 社会保障負担の平等化、官僚主義排除などとセットで ― 計画されていた。
バロゾ政権の労相は7月に、「国際競争力の強化」をスローガン掲げ、解雇規制の緩和、スト権の制限、夜間勤務手当の削減を狙った昼間労働時間の延長などを含む「新労働法典(案)」提案した。法案にはさらに、有期雇用上限の現行3年から5年への延長、労働時間(週40時間)の平均計算期間(変則許容期間)の4ヵ月から6ヵ月(労働協約で認めれば1年も可)への延長、「12回を超える30分超の遅刻」を解雇の正当理由に加える、などが含まれている。こうした労働条件・法制の改悪に対して公務および民間労働者は強力な反対闘争に立ち上がった。
それらのうち最大の闘争は12月のゼネストである。最大の労組ナショナルセンター、ポルトガル労働者総同盟(CGTP)は11月のゼネストに続き、バロゾ右派政権が打ち出した労働法制の大幅改悪に反対する12月10日・24時間ゼネストを決行した。同日は全国の都市で朝から電車や地下鉄、バスなど公共交通が全面ストツブしたほか、学校や大学、郵便局や病院なども閉鎖した。CGTPによると、全国レベルで全労働者の87%が参加した。
もう一つの労組ナショナルセンター、労働者総連合(UGT)は法案について政府と交渉中であることを理由にスト闘争には加わらずにきたが、年末までのCGTPを中心とした闘争のもりあがりと、政府との交渉の行き詰まりから、取り組み方の見直しを迫られている。
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