カナダでは、公務員の地位、権利をめぐる労働組合のたたかいが目立った。米国、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)、さらには米州自由貿易協定への動きとむすびついた攻撃であることが特徴の一つであった。
2003年4月、カナダ労働組合会議(CLC)のケン・ゲオルゲッティ議長は、公務員の労働基本権が保障されていないとして、ILO(国際労働機構)の加盟国としての義務を果たすよう要求した。
ILO結社の自由委員会の報告書は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州とオンタリオ州の労働組合からの提訴にかんしておこなった勧告で、結社の自由を侵害する法律を廃止するか修正するよう、カナダに求めた。この勧告は、医療、教育、地域社会サービスの分野で働く労働者約15万人にかかわる。
11月24日、CLCのゲオルゲッティは、ブリティッシュコロンビアで官公労働者と民間の労働者の共同で、キャンベル政権の政策とたたかうよう訴えをおこなった。(ブリティッシュコロンビア州労働組合連合の大会で)
カナダ太平洋側のブリティッシュコロンビア州では、それまで看護師や介護労働者などに保障された、組合員の雇用保障などの権利を骨抜きにし、医療関係業務の民営化に道をひらく法律が提案され、労働者の強い反対を引き起こしている。
病院・介護施設で食料サービス、ハウスキーパー、ガードマンなどに従事する労働者にかかわる法律である。これらの労働者はカナダ公務員労働組合(CUPE)傘下の病院従業員労働組合に加盟しており、移民(外国人)労働者の女性が多い。企業はこれまでの労働条件を見直して、低賃金にして医療システムを民営化することで利益が出るようにしようというもので、大企業の草刈場にするものだとの批判を受けている。要は、カナダでは伝統的に強い労働組合として知られるCUPEおよびその傘下の労働組合が、そうした民営化への再編成に障害なのだといわれている。
ケベック州では、4月に発足したジャン・シャレ州政府は、中小企業への補助金を削減し、保育料(1日当たり)を5ドルから7ドルに引き上げたり、それまで組合を州の決定過程に組み入れるというやり方をやめようとしている。また、今後3年で12.5%の賃上げ要求にたいし、政府は「凍結」を主張している。
ケベック州政府はまた、民間の企業や公共企業体が業務の一部を下請けにだすのを容易にする労働法(州法)改悪をうちだし、労組側は、他の州よりも下請けをやりやすくするもの。失業の増大を労働者の収入の低下を招く、現在の団体交渉による労働協約のもとでの労働者保護を損なうものであるとして強く反対している。このほか、都市交通運賃値上げ、水道料金値上げ、低料金保育制度廃止などもつぎつぎと強行した。
■歴史的共同行動
12月11日、ケベックの労働組合は、労働法改悪の全州規模の抗議行動を、繰り広げた。報道機関は参加者4万人と伝えた。ケベック州は、北米のなかでも労働者の組織率がもっとも高いといわれるが、官民の労働者の共同で、公務員組合(CUPE)、自動車労組(CAW)、鉄鋼労組、機械工労組、トラック運転手労組(チームスター)などをはじめ、少なくとも1,600の労働組合が参加した70年代以来の最大の行動となった。
ケベック市とモントリオール市の都市交通の一部が朝のラッシュアワー時間帯に止まり、州内の半数近くの保育園が閉鎖され、モントリオール大学病院では手術を含め3,000人の予約をキャンセルした。モントリオール以外の地域でも、ケベック市などの川の港を閉鎖し、市内に通じる二つのハイウェイを封鎖した。
労働組合員は多くの職場でピケを張り、各地でデモをおこなった。
さらに労働組合は、12月15日には、政府が労働法改悪など問題の8法案の議会審議を短時間で終えようとしたことにたいし、地域の労働組合ははじめて、統一戦線を張り、約3,000人の労働者が大雪のなか警察機動隊と対峙した。
自由党のシャレ州首相は2003年4月に、ケベックの分離独立を主張するケベック党をやぶって当選したが、それは主として、分離か否かの議論にうんざりした住民が自由党に投票したものといわれ、シャレ氏の経済政策などはあいまいなままだったという。(岡田則男)
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