カナダの人口は約3200万人で日本の約四分の一。労働組合の組織率は25%。約400万人の組織労働者のうち6割以上がカナダ労働会議(Canadian Labour Congress=CLC)加盟である。産業別の労働組合組織の多くは米国と一体の「国際労組」(international)に加盟しているが、自動車労働組合(CAW)は米国の自動車労働組合(UAW)から1985年に独立したのをはじめ、独自性をもつ組織もある。
2004年4月に発表された「カナダの家計の現状」という報告書(Vanier Institute of the Family)は、主として政府統計を分析し、カナダではこの15年間、実質賃金が低下し、収入が減った分を労働時間を長くして補っているとしている。「経済にとってよいとされるものが、多数の世帯にとってはよくない結果をもたらしている」とのべている。人々は、所得が下がり、個人の借金が増えているという。
2003年以降は、イラク戦争、新型肺炎(SARS)、牛海綿状脳(BSE)などの影響で経済が失速。失業率が7%で推移している。
(公務員のたたかい)
公務員の労働組合が太平洋のブリティッシュコロンビア州のバンクーバーや大西洋側のニューファンドランド州では、人員削減、民間委託、民営化などに反対して、ストライキをふくむたたかいをおこなった。これにたいして、これらの州の右派政権は、ストライキを事実上禁止する立法措置をとるなどして、公務員にたいする二重の攻撃を強めた。
西部のブリティッシュコロンビア州では、バンクーバー・アイランド・ヘルス・オーソリティ (保健局) は、2004年初めに、約1,000人の医療労働者を解雇して、伝染病対策、食餌療法の部門を民間会社 (Compass Group)に委託した。この企業は年間250億ドル( カナダ・ドル、以下同じ)の所得がありながら、従業員を時給9.5ドルという低賃金で働かせている。この動きは主として米国の多国籍企業の要求にもとづいたもので、これにブリティッシュコロンビア州右派政権が応えたものである。
労働組合側(ブリティッシュコロンビア労働連合(BCFL)と病院従業員組合(HEU)の労働者4,300人がストライキで州政府の政策に反対してたたかったが、これにたいして州政府は、ストを直ちに沖しさせるとともに、病院関係労働者の賃金カット(11%)と労働時間の週1.5時間延長(実質4%の賃金カットに相当)を盛り込んだ「法案37」で攻撃をかけてきた。
このストライキ闘争は、今後予想されるカナダの各分野のたたかいに影響を与える可能性のあるものだったが、労働組合は、野党(社会民主主義)の新民主党(NDP)とともに、与党・自由党に「法案37」の約款の手直しを申し入れて、基本的に受け入れることを表明した。たたかいを腰砕けにしてしまい、多くの労組員の批判を招いた。労組指導部は、「被害を最小限に食い止める」と説明した。
なお、この問題は、公務員の生活と権利の問題にとどまらず、カナダの皆医療保険制度にもとづく医療制度(Medicare)の存亡にかかわる問題となっている。労働組合運動だけでなく、市民運動でも「メディケアを守れ」というたたかいが発展している。
一方、大西洋側のニューファンドランド週では、州保守党政権の人員削減と民営化推進の政策に抗議して4月はじめ、同州の公務員2万人という、州始まって以来の大規模なストライキをたたかった。公務員、病院などの労働者の4時間におよぶストライキだった。州政府はこの直前に、4年間で4,000人の人員削減をおこなうことを前提にした予算案をうちだした。州政府は、このストをつぶすための法案を議会に提案。ストをやめない労働者は解雇すると脅迫した。ここでも、組合指導部は、ストを中止して職場に復帰するようよびかけた。
一年間新しい労働協約交渉がまとまらなかったカナダの連邦職員135,000人(カナダ公務員共闘)のストライキが8月から部分的に、あるいは波状的におこなわれ、10月には多くの連邦政府機関が事実上シャットアウトした。」(岡田則男)
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