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国旗 世界の労働者のたたかい
ニュージーランド
2005

労働経済動向

 99年に労働党政権になって5年目の2004年のニュージーランドは、クラーク首相の下で引き続き新自由主義政策の「痛手」を回復しつつある。11月に発表された失業統計では3.8%の失業率となり、04年に入って1〜3月期が4.3%、4〜6月期が4.0%で推移していた数値がさらに低下した。この数字は1980年代半ばの水準に戻ったことになり、新自由主義政策以前の水準に回復したことになる。OECD27ヵ国中でも、韓国の3.5%に次ぐ二位となった。この結果は、人口増加のペースダウンと、労働力需要の増加が反映していると分析されている。
 また10月にILOが発表した調査によれば、ニュージーランドの労働者の21.3%が週50時間以上働いている。この調査はニュージーランドと日本、オーストラリア、EU、アメリカを対象にしたもので、ニュージーランドの数字は日本についで二位。イギリスをのぞくEU諸国で50時間以上働いている人の割合が10%以下なのに比べても高水準である。

最低賃金の引き上げ

 2月には最低賃金の5.9%アップが発表され、4月1日から成人労働者の最低賃金は時給で8.5NZドルから9NZドルへ、未成年は6.8NZドルから7.2NZドルへと上昇した。国内でのインフレ率1.6%に連動したもので、民間部門の賃金も2.7%上昇していることにともなう措置とされる。ニュージーランド労働組合評議会(NZCTU)は、10.52NZドルへの上昇を求めていたが、一応この措置を歓迎している。ウィルソン労働大臣は「ニュージーランドの国内経済情勢は好調で、今こそ労働市場の底上げを行い、人々の士気を高めることが必要。最低賃金は人々の働く気を起こす現実的な数字でなければならず、企業の利益に比例したものであってはならない」とコメントしている。NZCTUのキャロル・ボーモント書記長は、さらに若年層の最低賃金設定を廃止し、すべての労働者に一律の最低賃金を設定することが必要であると求めている。

雇用関係法の改正

 昨年から議論の続いていた雇用関係法の改正について、NZCTUは2月に77ページにも及ぶ修正案を提出するなど、積極的に発言を続けてきた。使用者側の主張である集団的労働協約が個人の権利を侵害するというキャンペーンに反論し、集団的協約内でも個別の事情に配慮することは可能だと主張した。そして労働組合のない場合の個別雇用契約でも使用者に誠実交渉を義務付けることも提案している。
 その後10月には国会で正式に改正案が承認され、集団雇用関係の促進、使用者の誠実交渉を促進する手段確保、労働組合員以外の集団労使協約への「ただ乗り」の禁止、転職時期に不安定な立場に置かれる労働者の保護などが促進されることとなった。

有給育児休暇延長

 有給育児休暇の延長が国際女性デーの3月8日にクラーク首相みずからが発表した。これまでは12ヶ月以上勤務した労働者に対し、使用者は12週間分の有給育児休暇(最高1週間あたり334.75NZドル)を与え、さらに1年間の復職保証をするよう定めていた。これを、有給休暇は14週間に伸ばし、適用される勤務年限を6ヶ月に下げた。
 現行制度では最初の一年間で有給育児休暇を利用しているのは1万9千人ほどで、年間2万7千人が妊娠していることに比べると決して多い数字とはいえない。
 NZCTUのボーモント書記長は、これは労組がかねてから要求してきたものであり、これでILO基準を満たすことになるとコメント。しかし、週10時間以下しか働かない短時間労働者には適用されず、6ヶ月以内の短期契約で働く不安定労働者も適用されないことに改善点が残ると指摘。今後これらの改善と、給付の向上を求めていくとしている。

港湾労働者スト、映画館青年労働者のたたかい

 ニュージーランド港湾労働組合(MUNZ)のオークランド港に働く組合員が9月13日から港湾・埠頭の自由化に抗議する4日間のストライキを行った。NZCTUのウィルソン議長は同日MUNZのカーリスル議長に支援の手紙を送り、NZCTU30万人組合員のストへの支援を表明した。手紙の中で「安定雇用は労働者とその家族に安心をもたらすが、不安定雇用になれば労働者と家族の健康と安全が大きく損なわれるだろう」と述べている。
 また10月にはウェリントンのオーストラリア資本の映画館に勤める青年組合員80人が、賃金アップと労働条件向上を求め抗議行動に入った。CTUは「青年労働者が使用者に軽んじられ、もてあそばれるのを見過ごすことはできない」と加盟組合に支援を呼びかけた。組合員は「ポップコーン作戦」と名づけた方法で、来館者にポップコーンを無料で配り、映画館がチケットよりも収益を上げている売店からものを買わないよう呼びかける行動を行った。

自由貿易協定(FTA)への対応

 ニュージーランド政府は周辺国との自由貿易協定(FTA)を積極的に促進している。03年9月から、シンガポールとチリとの三カ国によるパシフィック3(P3)協定の交渉を開始。04年に入って、6月にタイと、12月に中国との交渉を開始している。
 NZCTUは特に製造業での雇用が減ることにたいして、政府に十分な措置をとるように要求。特に中国との協定交渉に当たっては、中華全国総工会を北京に訪問し、また総工会加盟組合をニュージーランドに招聘するなど積極的外交を行っている。また05年9月までに行われる予定の総選挙をにらんで、政府に対しても雇用の確保などで要求をつきつけていくものと見られる。(布施恵輔)