全労連 TOPへ戻る BACK
国旗 世界の労働者のたたかい
オーストラリア
2003

 2001年11月10日の連邦総選挙で続投を決めたハワード保守政権は米英軍によるアフガニスタン軍事作戦に国防軍特殊部隊を派遣するなど対テロ姿勢を強化し、移民問題に関する国連難民高等弁務官事務所からの国際条約違反の指摘を拒否するなどとともに、国内では労働運動に対する強硬姿勢を強めた。

総選挙後と労使関係の動向

<総選挙結果とその背景>
 01年11月の連邦総選挙では大方の予想を裏切って自由党・国民党連立のハワード政権が維持された。数ヵ月前には、いくつかの企業倒産で政府の労働債権保護策の不十分さが露呈し、現政権の導入した財・サービス税を理由に多くの識者が現政権の敗北を予想していた。しかし、米国の9・11同時多発テロとそれに伴って生じた「難民問題」の発生にたいする政府の対応は国内における反難民感情に有効に働き、他方、労働党は議論を巻き起こすような新たな政策を公表せず、そのメッセージを十分に伝えることができなかった。選挙直後、労働党のビーズリー党首は辞任し、後任にオーストラリア労働組合評議会(ACTU)前議長のサイモン・クリーン氏が就任した。

<労働党と労組の対立>
 11月総選挙で3期連続の敗北となった労働党は党組織近代化のために労働組合との関係見直しに入った。党内部での労組の影響力を削減することが中心課題とされ、とくに問題となっているのが、党大会の政策立案代表の60%を労組員に分配するという、いわゆる60:40ルールであり、さらに労働党推薦候補者は労組員でなければならないこと、党内右派・左派の分裂・対立克服の問題である。
 選挙後、一部有力労組代表の離党や国内最大労組のオーストラリア製造労組(AMWU)のビクトリア、ニューサウスウェールズ、クィンズランド各州支部の離党、新党結成や緑の党への加入の動きがあった。
 こうした事態の背景には、今回の選挙結果だけでなくもっと根深い理由がある。それは、1980年代の労働党政権時代に労働党が多くの労働組合の意に反して、規制緩和・民営化の政策を断行し、労働党が96年総選挙で敗れたことで、それが労働組合組織率の低下にもつながったとの見方が労働組合関係者の間できわめて強いことである。
 クリーン新党首は「労働環境の変化とともに労組と労働党も変わらなければならない」と主張し、他方、AMWU指導部は「近代化よりも労働党がその原点に立つ必要がある」とし、労組の影響力を削減されてまでなぜAMWUが年間65万豪ドルもの加盟費を払わねばならないのか疑問だ」と批判した。
 しかし、一部労組が政党を作ることがあってもそのために労組代表がいっせいに労働党を離党することはなかった。

<総選挙後の労使関係政策>
 総選挙で自由・国民党は下院で過半数を獲得できたものの、上院では獲得できず、法案成立には上院での民主党の支持が必要となる。雇用職場関係省(雇用職場関係小規模事業省が再編成され、小規模事業担当部局は産業・観光・資源省に移行)長官にはトニー・アボット氏が留任、引き続き反労働組合的政策が追求された。
 アボット氏の提示する労使関係政策の多くは一度退けられたものだが、1999年の職場関係法改正法案に示されている。その概要は、
 1)労組が非組合員に「交渉料金」を課すことを阻止するための法案、2)合法的なストライキ実施にあたっての秘密投票の義務づけ、3)職場関係法の中の「不当解雇禁止規定」適用除外の拡大、4)労使紛争の自主的調停の強調と労使関係委員会のさらなる権限の縮小、5)アワードの簡素化とそれに代わる認証協定の作成・承認手続きの合理化、6)企業倒産における労働債権弁済の優先のための商法改正、7)職場関係法を平易な表現に書き改める、8)職業教育訓練分野の予算拡充、である。

<政府が不当解雇禁止条項改正案を提出>
 2002年4月、職場関係法の不当解雇禁止条項改正案が提出された。
 オーストラリアでは、各州政府が独自の労使関係法を制定し、独自の労使関係制度を持っている。そのため連邦と州の管轄が不明確になったり、重複したりしている。とくに不当解雇禁止規定については、州ごとの規制にばらつきがある。アボット雇用職場関係省長官は、州政府から権限を奪うことによって、ニューサウスウェールズ州など連邦よりも強力な不当解雇禁止法が制定されている状況を緩和しようというねらがある。それとともに、オーストラリアの労使関係制度を一元化する出発点として不当解雇禁止条項改正に乗り出し、将来的にはその範囲を他の分野にも広げようと考えている。しかし、こうした試みは労働組合からの大きな反発を受け、憲法解釈上大きな難題があるため最高裁まで争われる可能性もある。
 これ以外に政府は、1)労働組合に対し労組の労働党加盟の是非について組合員による投票を義務づける法案、2)ストライキ実施にあたって秘密投票を義務づける法案、3)アワード簡素化をさらに進める法案などを提出している。
 労働党加盟の決定は現在、組合員ではなく労組幹部により行われ、組合員個人の意思を問うことになればかなりの者が加盟を認めないことが予想され、これによって労組が労働党加盟を見合わせれば、労働党は財政面でかなりの痛手を受けることとなる。

オーストラリアの労働基準に関する報告書

国際自由労連(ICFTU)は2002年9月、オーストラリアが国際的な労働基準を遵守しているかどうかを検討した報告書を明らかにした。WTO加盟国がILOの中核的な労働基準(1)結社の自由と団体交渉権、2)差別と平等賃金、3)児童労働、4)強制労働)を尊重すると宣言して以来、ICFTUが一連の報告書を作成しWTOに提出してきたものの一環である。
 報告は、結社の自由と団体交渉権については、オーストラリアがILO第87号、第98号条約を批准しているにもかかわらず、多くの連邦法がこうした国際的な労働基準の適用を損なっていると指摘。とくに連邦職場関係法のオーストラリア職場合意(AWAs)やストの制限強化、労働者救済方法の限定などを取り上げている。これらの問題はすでにILOでも議論され、政府に対していくつか勧告を行っている。
 差別と平等賃金に関しては、ILO第100号条約(同一報酬)と第111号条約(差別待遇)を批准しており、これらを対象とした国内法が存在するにもかかわらず、女性は労働条件面で、原住民や移民は雇用機会面で差別を受けていると分析。例えば、原住民の失業率は全国平均のおよそ6倍、賃金も約半分、人種差別事件のうち30%が雇用における差別を理由としている。また、女性については賃金格差が課題とされ、男女間職務分離や訓練機会の不足等が問題として挙げられている。
 強制労働に関しては、オーストラリアは第29号条約(強制労働)と第105号条約(強制労働廃止)を批准している。国内で強制労働が報告される例はほとんどみられないが、囚人の強制労働、女性や子供の強制売春が問題となっている。

労使関係委員会がアワード最低賃金引き上げを決定

 企業別交渉の普及とともに交渉力の弱い労働者が十分な賃上げを獲得できないことはオーストラリアでも問題となってきた。そのため、ACTUは低賃金労働者の生活水準引き上げのために「生活賃金ケース」という形で毎年、労使関係委員会に賃上げ申請を行っている。この申請を審理していたオーストラリア労使関係委員会(AIRC)は2002年5月9日、すべてのアワード賃金率の週18豪ドル引き上げを決定し、連邦最低賃金は週431.40豪ドルとなった。この引き上げ幅は過去20年間でもっとも高いものである。
 連邦政府と使用者団体は10豪ドル程度の引き上げを、また、ACTUは25豪ドルの引き上げを求めていた。連邦労使関係委員会のこの決定の影響を受ける労働者は170万人以上に及ぶとみられており、ACTUは歓迎の意向を示した。

<ACTUがアワード最低賃金引き上げを請求>
 ACTU)は2002年11月、労使関係委員会に対しアワード賃金引き上げ請求を行った。ACTUは連邦アワード適用労働者について週あたり24.6豪ドルの賃金引き上げを要求、これが認められれば連邦最賃は4.2%増の週456豪ドルとなる。今年はコステロ財務省長官が低インフレと生産性の向上を前提にすれば4.2 %程度の賃上げもインフレを誘発しないと発言、さらにアボット雇用職場関係省長官がACTUの請求について何のコメントもしなかったことから例年とは異なる状況となっている。
 賃金をめぐっては、むしろ、企業倒産が増加する中で、CEO(最高経営責任者)のあまりにも高い報酬に批判が起きている。アボット長官など政府関係者はCEOが従業員や出資者に対し不誠実であるとさえ主張した。上位企業のCEOの平均報酬伸び率は、企業業績の悪化とは対照的に、2000年には約22%、2001年には約13.4%を記録し。さらに、倒産した企業の幹部が高額の報酬を得ていたことが明るみになり、国民の怒りをかった。

NSW州労使関係委員会が公正賃金の歴史的な判断

  ニューサウスウェールズ(NSW)州労使関係委員会は2002年3月28日、ペイ・エクイティ(公正賃金)にかんして、NSW州の公共部門で働く図書館員(司書、専門員、記録保管係、等)がジェンダー(性差)に基づきその労働を過小に評価されてきたことを認める歴史的な決定をくだした。図書館員はその大半は女性で占められている。委員会はこのことが低賃金をもたらした理由であると認め、25%を上限とした賃金引き上げを内容とする暫定アワードを作成した。
 同委員会は1999年12月、いわゆる女性職が過小評価されてきたことを明らかにした報告書を州政府に提出。その中で委員会は、こうした現状が同一価値労働同一賃金原則を定めるILO第100号条約に違反すると指摘し、新たな原則を確立する必要を主張した。その後、委員会は関係組合の主張を検討するにあたっての「2000年NSW州公正賃金原則」を定めた。
 この原則の適用を求めるはじめての請求が2001年10月、州の公共部門労組によっておこなわれ、州政府機関により雇用されている図書館員や図書館専門員、記録保管係の賃金引き上げ等を求めた。労組は、これらの職種が女性によって占められ、結果として過小評価されているので、再分類と再定義が必要であると主張。委員会はこれに同意し、さらに近年こうした職種に必要とされる技能や責任が増大してきていることを指摘し決定を下したものである。
 NSW州の公共部門労組は、同決定が労働組合運動にとって歴史的なものであると歓迎。ACTUはNSW州以外でも同様の請求が行われるであろうとの見解を示した。これが先例となって、公共・民間両部門のこれらの職種だけでなく、保育など他の部門にも波及する可能性が指摘されている。

労使関係委員会、労働者の残業拒否権を認める

 ここ数年、長時間労働とサービス残業問題を重要課題として運動を展開してきたオーストラリア労働組合評議会(ACTU)は連邦労使関係委員会(AIRC)に、1)合理的な労働時間、2)合理的な時間外労働、3)長時間労働に対する代償としての有給休日の付与、に関する基準を設定するよう求め申請をおこなった。
 ACTUは労働時間規制を求めており、ACTUが提出した証拠によると、オーストラリアは先進諸国の中で労働時間が延びている唯一の国であり、またOECD諸国で2番目に労働時間が長い状態だという。今回の申請は、1947年に世界に先駆けて1日8時間労働制を達成して以来もっとも重要な労働時間に関する決定となる可能性があった。
 しかし2002年7月23日に下された決定は、組合が求めていた明白な勝利ではなく、2)を除きそれ以外の申請は認めなかった。
 2)の「合理的な時間外労働」に関するAIRC決定の概要は以下のとおり。
 使用者は、労働者に対し規定の割増賃金率をもって合理的な時間外労働を行うよう求めることができる。
 労働者は、当該時間外労働が不合理な結果をもたらす場合にはそれを拒否することができる。
 時間外労働が不合理であるかどうかは労働者の健康・安全への危険、家族的責任を含む労働者の個人的事情、事業所や企業の必要性、時間外労働に関する使用者の通知等を考慮して決定する。
 これらの規定はアワードに挿入されることが予定されており、AIRCは標準労働時間を特定し、かつ時間外労働に関する規定を有するアワードにのみこれらの規定を設けることができるとしている。
 AIRCは今回の決定を行うにあたって関係当事者から提出された資料等を検討した結果、労働時間の現状について、過去20年間にフルタイム労働者の平均労働時間が増加傾向にあることを認めた。具体的には、フルタイム労働者の週平均労働時間は1982年に38.2時間であったのが、2001年には41.3時間となっている。年平均労働時間で見ても、オーストラリアはOECD諸国の中で最も労働時間の長い国の一つであり、近年ではサービス残業も目立つようになっている。
 ACTUは、今回の決定をはじめて労働者の残業拒否権を認めたきわめて重要なものであると評価している。新たな規制に反対してきた連邦政府も今回の決定がバランスのとれた公正なものであるとの見解を示した。しかし、使用者団体の一部は残業拒否権の明確化に懸念を表明した。

雇用・失業、労働市場の動向

 多くの経済指標はオーストラリアが30年間で最悪といわれる経済環境を経てきたことを示している。失業に関しても、米国における多発テロの影響、悪化する世界経済展望、国内の企業倒産などで、労働市場の見通しは悪くなっており、IT産業における人員削減も見通しをいっそう暗いものにしている。
 失業率は2001年10月に2年6ヵ月ぶりの高水準となる7.1%を記録したが、その後は、11月、12月と6.7%に減少した。失業率の最も高かったのはタスマニア州で、最も低かったのはニューサウスウェールズ州と西オーストラリア州であった。しかし、オーストラリア統計局の調査では、週に1時間でも働いていれば「雇用者」と見なされ、失業統計には反映されないため、実際の失業率はもっと高く、10%近くなると労働組合は見ている。

労使紛争のひきつづく減少傾向

 オーストラリア統計局の2002年版年報によると、最近20年間では労働損失日数とスト参加労働者数ともに減少傾向にある。
年間労働損失日数は、1980年代には一時400万日を超えたこともあったが、それ以降は漸減傾向を示し、2000年の労働損失日数は46万9100日で、1999年よりも28%以上の減少となった。とくに減少幅の大きかったのは、教育・医療・社会サービス業(11万4000日減)と建設業(5万6300日減)であった。
 ストライキ参加労働者数も、2000年の場合は1999年比でおよそ30%減り32万5400人。争議件数は、1999年に731件であったが、2000年には698件となった。

労働組合員数は増加したが組織率は低下

 オーストラリア統計局によると2001年8月の労働組合員数は190万2700人、前年同月より900人増となった。しかし組織率は24.7%から24.5%に低下した。組織率は1992年には40%を記録していたが、その後低下傾向が続いている。
 ACTUは、産業構造の変化によって伝統的に組織率が高かった職種につく労働者が減少する中でこうした数値を維持できたことをむしろ肯定的に捉えている。1997年から2000年にかけて記録された組織率低下のペースが現在まで続いていれば、組織率は23%弱まで落ち込んでいるはずで、パートタイム労働者の増加や景気減速といった逆風を勘案すれば、今回の数値はむしろACTUなどの草の根レベルの組織化活動の成果があらわれたものと評価している。
 組合員数は、製造、建設、電気、ガス・水道といった産業のブルーカラー職種で減少を続け、政府行政機関や教育、ホテル・カフェ・レストラン、輸送・保管等の産業で増加している。このような変化を反映して、女性組合員の割合は漸増し(全体の43%)、またフルタイム労働者に比べて臨時労働者やパートタイム労働者の組合員数・組織率が上昇している。

BHPスチールの労使紛争が自動車組立ラインを止める

 メルボルンの東南にあるBHPスチール社のウェスタン・ポート製鋼所の労働者は、メンテナンス業務外注化の条件をめぐる交渉が行き詰まり、2002年5月にストライキに入った。オーストラリア製造労働組合(AMWU)傘下の同労組のピケラインによって鋼製品の輸送はほとんど不可能となった。
 BHP社のこの製鋼所で起きた労使紛争自体はそれほど大規模なものではなかったが、自動車組立産業等はジャスト・イン・タイム(JIT)方式を通じ部品などの定期的な供給に依存する度合いを増しているために、予想以上にストライキの影響を受けることになった。6月12日、騎馬警官がピケラインを突破、400トンの鋼製品が外に持ち出され、ヘリコプターも利用して輸送された。
 連邦政府は、会社側に労使関係委員会による職場復帰命令を求めるよう促した。自動車組立企業(GM、フォード、トヨタ、三菱)も、ストによる損害賠償を組合に求めうると主張した。職場復帰命令の請求は認められたが、多くの労働者がそれを無視したため、会社は12名の労働者を裁判所侮辱で訴えた。その後、BHP社と労組との間で話し合いがもたれ、妥協が成立した。自動車組立会社も損害賠償請求と裁判所侮辱の訴えを取り下げ、労使紛争は終結した。
 自動車産業はこれで、過去10ヵ月間に3度、部品・資材の搬入がなかったため操業停止を余儀なくされた。ウォーカーズ社、トライスター社、そしてBHPウェスタン・ポート製鋼所と、いずれもAMWUの組合である。JIT方式を通し製造施設がお互いに密接に関連するようになったため、1工場でのストの影響がただちに他の工場に伝わるようになった。紛争の第3者がこうした労使紛争による損害の賠償を求めるのも時間の問題とみられていた。
 BHPの労使紛争では、連邦政府が直接、職場関係法によって開かれた法的救済措置の利用を使用者に強く勧めた。労使関係改革の政府案は上院でとどまったままであり、政府は現行法規定を使って使用者が労組と対決するよう促すようになった。一部では、雇用職場関係省が法的措置を勧めるためにBHP社と接触を持ったと伝えられている。

CFMEUへの組織攻撃‐建設業にかんする王立調査委員会中間報告書をめぐって

 約1年間にわたり建設業の労使当事者による不正行為について審理してきた「建設業に関する王立調査委員会」が2002年11月、中間報告書を公表し、「不正行為」一掃のために特別の権限を持った特別委員会の設立を勧告した。労働組合側は、王立委員会自体がACTUの主要左派労組である建設・林業・鉱山・エネルギー労組(CFMEU)に打撃を与えるための政治的手口であると批判した。
 報告書のいう「不正行為」とは、贈賄、脅迫、不適切な報酬そして組織強制の実施等で、労組側でこの問題に関わっていると見られているCFMEU幹部は、これらが根拠のない言いがかりであり、裁判所でも支持されることがないと反論、さらにこうした主張が政治的意図を持って展開されていると指摘した。
 問題とされているのは、あくまでも当事者の申立に過ぎないが、建設業者や下請けが産業平和を維持し、建設工事の納期を守るために労組幹部に報酬を支払っているのではないか、建設業者や下請業者が非組合員を採用すればストライキを実行するといった脅し等も行われている、あるいは、建設業者が下請業者の労働者の組合費まで負担したなどと伝えられていることである。
 王立委員会や特別委員会設置のねらいはCFMEUに打撃を与えることにあると指摘されている。実際、1998年の港湾労使紛争以来、CFMEUは政府の「標的」にされ、特に職場関係省長官は建設業におけるパターン・バーゲニングを取り締まることを望んできた。しかし労組も一歩も引かず、労組に弁明の機会を与えなかったことで王立委員会が手続的公正さを欠いていると主張、労組に対する偏見を理由に委員長の排除を求め、同委員長に対する訴訟を起こした。
 王立委員会や中間報告書に伺える同様の勧告は、1999年の生産性委員会の報告書やニューサウスウェールズ州の王立委員会でも見られ、この種の様々な調査は保守政権による労組に対する攻撃と捉えられている。
 建設業の労使関係は、こうした敵対的な対立を引き起こす構造的体質があり、建設産業は好不況の波が強く、仕事の性質上労働者と使用者の関係は一時的なものになりがちで、さらに重層的な下請・孫請関係によって競争が激しい業界である。そのために、中小の業者は職場の安全衛生を軽視し、労働者の賃金や労働条件を切りつめようとする。こうしたことが中央集権的な労使関係を求める労働組合の主張を正当化し、CFMEUやAMWUのパターン・バーゲニング戦略を評価する根拠ともなっている。