全国労働組合総連合(全労連)

ページの上部へ

【News】ハラスメントと性差別根絶めざすキャンペーンキックオフ集会

2025/02/05
講演する角田由紀子弁護士(中央)

世界水準レベルで安心して働ける職場をめざす

 全労連は、2月5日、「あらゆるハラスメントと女性や性的マイノリティ差別の根絶をめざすキャンペーン」のキックオフ集会を開催し150人以上が参加しました。角田由紀子弁護士を講師に、「ILO第190号条約とハラスメントの法規制」について学習し、4人の方が決意表明しました。終了後、衆参の厚労委員に議員要請を行いました。

◆髙木りつ副議長の開会あいさつ◆
 このキャンペーンは、声に出せずに苦しみ悩んでいる仲間を支援するたたかいであり、私たち自身が「あれはやはり差別だった、ハラスメントだった、性暴力だった」と過去を振り返るものだ。
 特に女性、性的マイノリティ、若い世代など、職場におけるあらゆるハラスメントと暴力を許さない運動を今から始める。ILO190号条約批准、包括的ハラスメント禁止法の制定、個人通報できる人権機関の設立など世界水準レベルで安心して働ける職場を目指す。

4人が決意表明
声をあげられる環境を作ることが大事 群馬県医労連書記長 古川真由美 さん
 20代前半の男性看護師の要望でハラスメント学習会を行った。学習会に先立って行ったアンケートには303人から回答があった。パワハラは自分を責めてしまい、セクハラの告発ははずかしい。ハラスメント窓口があっても部長が窓口になっているなどであきらめることがほとんどだ。過去に例のないアンケート集計数で、医師からのハラスメント、患者からの身体接触、口頭、SNS、無自覚に発生するハラスメントが多い。ハラスメントとは何かを知ることで自分自身を守れる。ハラスメントは人権侵害。人格否定を許してはいけない。声をあげられる環境を作っていくことが大切だ。

提訴とともに始まった仕事外し AGCグリーンテック間接差別裁判原告 小林瑠美子さん(仮名)
 総合職だけに社宅制度を適用し一般職には認められないことが違法であるかどうか、そして男女賃金差別の2つを提訴した。昨年5月に社宅制度については間接差別を認め勝訴したが、男女賃金差別については、敗訴した。会社は裁判が始まると直属上司に総合職女性を採用し、私は仕事を外された。非常に悔しかった。ユニオンで申し入れたが改善されない。小さい会社で公正中立な第三者に相談できる場所もない。立場の弱い労働者は会社からの有形無形の圧力で追い込まれる。会社裁量優先ではなく従業員をやめさせることのできない仕組み、対等の立場で要求できることも必要だ。

意思決定層への女性管理職割合改善 民放労連・書記次長 岩崎貞明さん
 「安心して働ける環境の実現をすべての放送局に求めます」という委員長談話を出した。フジテレビは事案が起こって間もなく事態を把握していたにもかかわらず対策も取らずに放置し、タレントもそのまま出演させ続けた。対策を怠ったと批判されても仕方ない。放送における女性の権利や人権が軽視されている。民放の放送局における女性比率調査。在京局では社員の女性比率も平均25%程度で、役員では1桁%。少なくとも一人は各局に女性役員がいるが民放連の理事や委員長は女性がゼロ。改善のための取り組みを進めたい。2020年に国会議員秘書から強制性交に該当する行為を行われた報道記者が2023年にPTSDを患った事件で、国家賠償請求をたたかっている。2月20日に結審を迎えるのでご支援をお願いしたい。

ジェンダー平等宣言と学校現場のハラスメント 全教・書記長 檀原毅也さん
 全教は昨年10月にジェンダー平等宣言を採択した。第1次案の議論の中で「自分の生き方を突き付けられた」「これでいいのかというような苦しい思いをした」という声も寄せられた。学校は差別や偏見を乗り越える力を育てる大きな可能性を持っている。ジェンダー平等の視点で見ると見えてくるものもある。ハラスメントは学校職場にあってはならないものだと思うが、あるのが現実。教育政策の中でゆとりと仲間と自由を奪われてきた。ジェンダー平等宣言では、すべての教職員が性別や、世代、経験に関係なく必要な権利を行使できて自分の力を発揮できる公平でハラスメントのない職場づくりに努めるとしており、これが私たちの決意だ。
 
ILO第190号条約とハラスメント法規制  角田由紀子弁護士講演

 ILO第190号条約におけるハラスメントの定義は対象とする人も場所も非常に広くされていることが特徴だが、日本は法的に定義もしておらず、違反した者に対する制裁もない。
 この条約は、加盟国に対し、ハラスメントを禁止すること、被害者に対する適切な救済制度、その後の法の執行、監視監督を強化することを求めている。ILO条約ができたとき国会質問で厚労大臣は「日本では裁判ができているから新しい法律をつくらなくてもいい」と答弁した。ハラスメントそのものを禁止する法律がない為、裁判では30年間、民法の不法行為の枠内で損害賠償を求めてきた。若干の慰謝料を払わせることは出来るがその先が進まない。ハラスメントの定義がないからだ。そのため被害者の人権を守る発想も規定もない。加害者に制裁を加えることもない。
 今あるハラスメント法制は労働者の権利擁護規定ではなく、事業者の措置義務規定となっており、被害者に直接権利を与えるものでない。
 民法の不法行為は女性の人権が認められていない明治時代にできた法律。対等な当事者間で経済的なトラブルを解決するための法律だ。一方、ハラスメントは加害者と被害者が対等ではないところが出発点。男か女か、力関係その他もろもろの点で双方が対等ではないからこそ強要することができる。このことは忘れてはいけない点だ。 
 不法行為では、加害者に対し金銭の賠償しか命ずることができず、慰謝料も低く、裁判をするのはものすごい負担なのに全く見合ってない。これは裁判長が男社会で上り詰めた人のため、男性ジェンダーの人が多いことが一因だ。裁判では、加害者は、「あなたも悪いところがあった」と過失相殺を主張できる、司法手続きには長い時間がかかり、それはたいてい加害者に味方する。裁判の中での反論で二次加害も起きてくる。
 この行為がセクハラやパワハラであって、違法な行為であることを認定し、事業主はもちろん、直接の加害者からも謝罪してほしい、そしてもう二度と同じようなことが起こらないよう再初防止をしてほしいという被害者の思いは果たされない。他人のせいでキャリアを絶たれ、自信と誇りを傷つけられるが「不法行為」で争う限り救われない。
 2019年の衆議院厚生労働委員会の付帯決議では、はっきりとハラスメント行為そのものを禁止する規定の法制化の検討を行うことと書かれているが、昨年12月26日付の厚労省労働政策審議会の建議ではハラスメント禁止や被害者支援救済法の施行については論点になっていない。1月10日のジェンダー法学会は理事会声明で抗議声明を出している。
 『脱セクシャル・ハラスメント宣言』という本で、立法に向けて語り、具体的な提言がされているのでぜひ勉強していただきたい。また皆さんの中でどういう法律が必要か十分に議論して、それを議員にぶつけて、こういう法律をぜひ作ってくださいと運動していくことが必要だ。  (全労連事務局まとめ)
 

すべて表示する