全国労働組合総連合(全労連)

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京都総評 ジェンダー平等宣言

2025/01/25

~一人ひとりを尊重する労働組合へのアップデートで社会を変えよう~

「女だから家庭内でのケア(世話、配慮、思いやり/家事、育児、介護など)の役割を担い、不安定で低賃金の働き方は仕方がない」
「男だから休暇も取らずに長時間働くことがあたりまえ」

私たちの暮らしや働き方をはじめとした営みには、誰におそわったのかもわからない役割分担意識が根強く残っています。私たちは、このことを〝あたりまえ〟や〝仕方がない〟と個人的、私的なこととして受け止めてきました。そして、それによって同時に悩み傷つき苦しむ人々を生み出してきました。その背景には家父長制を根強く存続させながら、新自由主義のイデオロギーのもと、私たちを孤立させ、分断させ、自己責任に追いやり、ジェンダー差別を助長するかたちで搾取を強めてきた日本の資本主義の構造があります。そのもとで人間らしく生き、働くことが奪われています。

政府と財界は、女性には家庭内でのケアの役割を押し付けることと一体に、男性には長時間労働を強いてきました。一方で、雇用機会の均等や「女性活躍」を唱えつつ、女性労働を「家計補助的」として低賃金を押しつけ、非正規雇用を拡大するなかで労働者全体に低賃金構造をつくりだしています。男女の賃金格差、雇用格差、ケア労働者の低賃金水準などその根底に個人の尊厳を奪うジェンダー差別が存在しています。そしてコロナ禍で雇用と貧困問題の中心にいたのは非正規雇用で働く女性労働者でした。各地で取り組まれた食糧支援や相談会には「生活が厳しい」など生きづらさを抱えた多くの人々の姿であふれました。女性を中心に貧困が可視化されたことによって、より一層、社会の矛盾の根底にあるジェンダー差別が浮き彫りになりました。この問題に正面から向き合うことなしにジェンダー平等は実現できません。

私たち労働組合は、当事者が声を上げることで、育児休業や子どもの看護休暇、介護休暇など、様々な権利を勝ち取ってきた歴史があります。そして多くの人々と力を合わせ、ケアと労働の両立を前進させ、ジェンダー平等を推進する社会的役割を果たしてきました。
しかし同時に、労働組合の組織運営において、ジェンダー平等に本気で取り組む努力をしてきたか、家庭でのケアとの両立など様々な条件がある人が主体的に参画できる機会づくりが広がってきたのかという点では、課題があることも事実です。
労働組合の力でジェンダー平等の実現をめざすことは、男性を含めすべての人を個性ある人間として尊重し、誰もが人間らしく働くことができる職場をつくることになります。同時に、この社会を変えていくにふさわしい労働組合へとアップデートすることが求められています。心理的安全性(※)のもと、子育て、介護などケア実践の当事者を含め、誰もが労働組合運動に参加することができ、多様な要求をくみ上げられる組織に変わることが大切です。それは、民主主義を基礎に置く労働組合の本来の姿でもあり、労働組合の闘う力を大きくしていくことにつながると確信しています。
私たちは、誰もが差別や抑圧から解放されることをめざします。

1. 日本国憲法に基づいて、すべての取り組みや諸要求にジェンダー平等の視点を貫き、男女の賃金格差の是正、均等待遇の実現、労働時間の大幅短縮など、だれもが仕事とケア実践の両立がはかられ、人間らしく生きる権利を保障する労働条件、職場環境、制度・政策の実現をめざします。
2. 京都総評運動においてすべての組織がジェンダー平等を推進するための学びを深め、話し合い、行動します。
3. 京都総評の意思決定の場で男女同数の参加をめざします。すべての組織で、民主主義を基本に、ケア実践の当事者を含め、誰もが参加できる労働組合運動をめざし、心理的安全性が保障され
る組織運営のもとで多様な要求をもとにした方針が決定される組織づくりをすすめます。
4. 特に矛盾が集中している非正規雇用で働く労働者、女性、青年、マイノリティの多様な要求を組織し、主体的に参加できる運動づくりをすすめます。
5. 女性や LGBTQ を含む社会的マイノリティに対する経済的社会的差別を解消し、ハラスメントなど人権侵害を許さず個人の尊厳や多様性が尊重される職場、組織、社会をめざします。
6. この宣言の目的を達成するため、行動計画を策定し、宣言の到達度や実施状況を定期的に検証し、取り組みを強化します。

以上
2025 年 1 月 25 日
京都地方労働組合総評議会

(※)心理的安全性—1999年にエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した心理学用語「このチームでは率直に自分の意見を伝えても、対人関係を悪くさせるような心配はしなくてもよいと いう信念が共有されている状態」(エドモンドソン教授)
また、「組織・チームの中で、対人リスクを恐れずに思っていることを気兼ねなく発言できる、話し合える状態」(『リーダーのための心理的安全性ガイドブック』労務行政)
ジェンダー平等の実現は「男女」間だけではなく、子育てや介護などケア実践の当事者、マイノリティ の人たちへの個人の尊重に関わる課題です。誰もが安心して意見を表明できる組織をめざすためには、心 理的安全性を意識することで、一人ひとりの力を引き出すことが大切です。同時に、率直に言うべきことを言い合える「温かくも厳しい組織」。運動や組織においてその目的・目標 達成のために、改善点などを指摘したり意見することが必要。仲間と尊重しあえる関係だからこそ育まれ るもの。

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