全労連・全国一般労働組合 ジェンダー平等をめざすための行動宣言
―ジェンダー平等社会実現のため、労働組合が先頭に立ち、政治を変えよう―
―社会、職場、家庭でジェンダー差別、性別役割分業を克服しよう―
ジェンダー差別は私たちの心に深く刻まれ、次世代へ受け継がれています。こうした負の連鎖を止めるため、政治や職場を変えるとともに、自分自身の中にあるかもしれない「無意識の差別」に思いを巡らせ、性別役割分業を克服し、ジェンダー平等社会を目指しましょう。その際、日本国憲法は大切な指針です。特に 13 条(個人の尊重)、14 条(法の下の平等)、24 条(婚姻におけるジェンダー平等)は重要です。日本国憲法を学び活かし、深刻なジェンダー差別を解決していくとともに、選択的夫婦別姓制度の実現、女性差別撤廃条約・選択議定書への批准、性指向と性自認(SOGI)に関わらず誰もが平等に暮らせる社会の実現、同一労働同一賃金、非正規差別解消、最低賃金全国一律 1,500 円と中小企業支援の抜本的拡充などをすすめながらジェンダー平等社会を実現していくことが求められます。
世界はジェンダー平等実現に向け大きく前進しています。しかし、日本は政治・経済分野で特に遅れが深刻です。その原因は、政府、自治体、企業・組織などの意思決定機関に女性が非常に少ないことです。「首相」、「取締役社長」、「委員長」。この言葉から男性と女性のどちらを連想するでしょうか?多くは男性を連想するのではないでしょうか。女性の社会進出が進んでも、ジェンダー平等が実現しない大きな要因の一つは指導的立場から女性が締め出されていることです。
「男は仕事、女は家を守る」。今、この言葉を聞けば多くの人が「古い考えだ」と思うでしょう。しかし、家事労働やケア労働の多くはいまだに無償で女性が担っています(女性の家事・育児時間の分担割合は84.6% 2023 内閣府「男女共同参画白書」)。政府・経営者の中で家父長制(男性が支配的・特権的な地位を占める社会システム)の価値観に固執する勢力は、社会に女性差別を温存することで、女性の労働を「家計補助的」と低く位置づけ、低賃金を押し付け、非正規雇用を拡大してきました。その結果、労働者全体が低賃金構造に縛り付けられ、歴史的物価高と相まって国民的貧困が急速に進んでいます。
女性が差別される社会で、女性は無償の家事・育児労働に加え低賃金の非正規労働やケア労働が押し付けられ、男性には長時間・過密労働が押し付けられてきました。ジェンダー平等社会実現は女性の権利を回復すると同時に、すべての人の尊厳を取り戻す力を持っています。男らしさ・女らしさの呪縛を解き、自分らしさを解放するため、まずはジェンダー平等学習をすすめながら、家事労働やケア労働、普段の働き方等について語り合い理解を深め合うところから運動を始めましょう。
政治、社会、職場を変え、脈々と続くジェンダー差別の歴史を私たちが終わらせましょう。
- 労働組合運動を含め、あらゆる場でジェンダー平等を推進するため、ハラスメントなど人権侵害を許さず、個人が尊重される職場、社会を実現するため、ともに学び合い、ともに話し合い、行動します
- 男女賃金格差の是正、同一労働同一賃金、労働時間の大幅短縮など、誰もが仕事と家庭的責任を両立し、人間らしく生きはたらく権利を保障する労働条件、職場環境、制度・政策の実現を目指します
- あらゆる意思決定の場で男女同率の参加を目指し、多様な要求をもとにした方針決定がなされる組織づくりをすすめます
- 非正規雇用ではたらく労働者、女性、青年、子育て世代、介護世代など多様な要求を組織し、主体的に参加できる運動づくりをすすめます
- 全労連・全国一般労働組合は上記 1 から 4 について到達度や実施状況を定期的に検証・研究し、労働組合の最重要課題としてジェンダー平等の取り組みを推進します
以上
全労連・全国一般労働組合 ジェンダー平等推進の取り組み指標
- 「ジェンダー平等宣言」と「取り組み指標(本文書)」採択する
・ 全国一般の運動方針に「ジェンダー平等推進」を掲げ、「ジェンダー平等宣言」と「取り組み指標(本文書)」は毎年中央執行委員会で議論し、定期大会に提案する
・ 各地方組織は独自の「ジェンダー平等宣言」と「取り組み指標」の採択を進める - 大会参加の女性比率と中央女性役員数について、全国一般組合員の約 60%が女性であることを前提に、当面「30%以上」を目標とし、実現に向けた具体的議論と行動を行う
・ 「誰もが参加できる活動」づくりをめざし、会議の持ち方など課題を明確にして中央執行委員会で議論する
・ 各地方組織の女性役員割合の実態調査を行う
・ ジェンダー平等の視点に立ち、規約などの点検をすすめる - ジェンダー平等に関する学習会・交流会を年 1 回以上実施する
・ ジェンダー平等に関する学習交流会を開催する。その際、ジェンダーに関する個々の意識、思い、経験を交流する。学習・交流会以外の組合活動の中においてもジェンダーについて理解を深め合う
・ 労働組合におけるハラスメントの実態と防止等についての経験を交流する
・ ジェンダー平等宣言の全組合員読み合わせを行う - 男女ともに仕事と子育て・介護を両立できる要求運動を「家族的責任」「母性保護とは」などの学習と一体ですすめ、以下の要求項目を運動方針に掲げる
・ 労働時間短縮
・ 生理休暇の課題(取得率向上、取得しやすい職場環境)
・ 育児・介護休業の取得率向上
・ 子の看護休暇の課題(取得率向上、取得しやすい職場環境)
・ 最低賃金(全国一律 1,500 円以上)と企業内最賃引き上げ
・ 間接差別と男女の賃金格差の是正
・ 均等待遇・非正規差別の是正
・ 職場におけるハラスメントの実態と防止 - 女性・青年・非正規雇用労働者の組織化をすすめる
・対話集会、しゃべり場の開催や春闘要求アンケートなどを活用しての対話をすすめ、秋闘・春闘で要求を提出し、職場で交渉を行う
・ 団体交渉に女性組合員が参加できるよう支援する - 各地方組織は地方労連等が実施する、自治体等へのジェンダー平等に関する要請・行動に積極的に参加する
- 全労連・全国一般中央本部は各地方組織の取り組み状況を定期的に集約し、取り組みの推進・強化方針を中央執行委員会に提起する
以上