日本医労連 ジェンダー平等宣言
日本医労連は、医療・介護・福祉職場で働く労働者の「生活と権利の向上」と「国民の医療を守る」たたかいを統一してすすめる基本路線を確立し、結成当時から産別運動の柱に据えて、たたかいを前進させてきました。その背景には、前近代的な労使関係による労働者に対する従属物的発想と「低賃金及び人権抑圧」が全国の職場にあり、当時の看護婦(師)には通勤の自由も結婚の自由も認められていませんでした。その後、病院スト、夜勤制限闘争、ナースウェーブ行動、大幅増員・夜勤改善闘争など、産別統一闘争への結集を図りながら職場の要求を前進させてきました。これらは、今日的課題として取り上げられている「ジェンダー平等推進」に全力を挙げてきた歴史とも言えます。
日本においては古くからの家父長制のもとで、家事・育児・介護など家庭内の労働は女性の役割とされ、「家事労働的な仕事は低賃金でよい」とする差別的な見方を歴代政府も踏襲してきたため、ケア労働者の賃金は異常な低賃金におさえられ非正規雇用も拡大しました。世界全体をみると保健と福祉の現場で働く女性の比率は 70%程度ですが、日本においては女性看護師の比率は 91.4%に上っています(2022 年現在)。働く女性の割合が多いことから、他産業に比べて相対的に労働条件が低く抑えられており、労働条件を改善させる運動とともに、女性蔑視、ジェンダー不平等な国の制度・政策そのものについて変えるたたかいを同時に追求する必要があります。
医学部における不適切入試問題では、性別などの理由で合否判定に差異を設けていたことが明らかになりました。長時間労働が当たり前のようになっている医師職場において、女性医師が避けられる傾向は根強くあります。「長時間勤務を改善する」ことを目標とした医師の働き方改革は、政府が抜本的に医師を増やす方向にかじを切らないため、「女性医師が増えると働き方改革はできない」という声すらあがっています。古典的な性別役割分担が強い日本では、医療労働者であっても女性が家事・育児の主な担い手であることが多く、妊娠・出産・育児というライフイベントの中で、キャリア形成はまだまだ難しい状況です。
世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数によれば、日本は 146 カ国中 118 位(2024 年)であり、特に経済分野(120 位)での女性管理職比率や、政治分野(113 位)での国会議員及び閣僚の男女比の低さは際立っています。日本医労連加盟組織における役員の女性比率は 3 割未満が 20%に上る一方で、5 割以上は 35%にとどまっており、女性比率を高めることが求められます。労働組合組織においても、労働組合の魅力を高め組織拡大を図りながら運動を前進させるためには、多様な声が組織の意思決定に反映され、当事者が主体的に参加できる運動づくりが求められます。日本医労連と加盟組織は、ジェンダー平等が労働組合運動と社会のなかに根付き、誰もが差別や抑圧から解放されることを目指して、下記のように取り組みをすすめることを宣言するものです
記
1.ジェンダー平等を推進し、医療・介護・福祉のあらゆる場で、ハラスメントなど人権侵害を許さず、女性や LGBTQ+を含む社会的マイノリティに対する差別を解消し、個人の尊厳や多様性、個人が尊重される職場、社会をめざします。
2.他産業との賃金格差や男女の賃金格差の是正、労働時間短縮、長時間夜勤の改善、大幅増員など、人間らしく生きる権利を保障する労働条件、均等待遇など、職場環境改善の制度・政策の実現をめざします。
3.非正規雇用労働者や女性、青年の多様な要求を組織し、要求前進と組織拡大を結びつけた取り組みを位置付けます。
4.あらゆる意思決定の場で男女同数をめざし、多様な要求をもとにした方針が決定される組織づくりをすすめます。
5.ジェンダー平等を推進するため、日本医労連に加盟するすべての組織が学習活動に取り組みます。
以上