JMITU ジェンダー平等宣言
2025年1月25日・JMITU第19回臨時大会決定
社会的な性別=ジェンダーによる差別をなくし、平等に責任や権利、機会を分かち合う「ジェンダー平等」は国際社会の最重要課題である。しかし日本は、ジェンダー平等がもっとも遅れた国のひとつとなっており、いま、家庭や企業をはじめ、社会のすみずみにジェンダー平等を貫くことが切実に求められている。とりわけ、職場におけるあらゆる性差別を根絶し、ジェンダー平等を実現することは「企業の社会的責任」である。同時に、企業が責任を放棄しているとき、労働組合が関心をよせず、それを放置していたならば、労働組合もその社会的責任が強く問われることは当然である。
日本社会には「男は仕事・女は家庭」というジェンダー由来の「男性」「女性」それぞれに対する性別役割分担論がいまだに残っている。この性別役割分担論を利用して、企業は雇用(非正規雇用)、賃金、昇格等さまざまな性差別を温存させ、労働者のなかに格差と分断をもたらしている。また、「男性は仕事、女性は家庭」という役割分担論のもと、男性は家族的責任を放棄して長時間労働に従事するいっぽう、女性は家事や育児・介護など家族的責任を担わされることが当然視されてきた。このため、労働者は性別にかかわらず「自分のための自由な時間」を奪われている。
いっぽう、性別役割分担論は、JMITUの組合員の意識のなかにも少なくなく、「生活」を土台にした積極的な時短要求を組織するうえでの弊害の一因となっている。男性組合員も家族的責任を率先して担うよう意識改革を行うことこそが、性別を問わず労働者が自分のための時間を確保し、労働組合など社会的活動にも参加しやすい条件づくりにつながる。
職場のジェンダー平等を実現することは、女性に限らず、すべての人の権利をまもりひとりの個性ある人間として大切にし、誰もがジェンダーにしばられず自身の希望に沿ってはたらくことができる職場をつくることにつながる。また、職場の少数者である女性の権利と要求を大切にし、女性が男性と対等に活動し意思表明できる職場と労働組合をつくりあげることは、外国人労働者や障がい者、性的少数者など、あらゆる社会的弱者の人権と人格をまもり、さらには、誰もが積極的に意見表明と行動参加の機会が与えられることをつうじて企業と組合活動を活性化させる大きな力ともなる。
JMITUは、男女の定年差別や家族手当差別を争った日産自動車注1やパートの賃金差別を争った丸子警報器注2のたたかいなど、女性の差別に反対し、女性の権利獲得のために全力でたたかってきた歴史をもっている。同時に、JMITUのなかでも、依然として少数である女性組合員の声が十分に反映されないなど、労働組合の組織や運営、要求づくりに反映されにくいという弱点が残されている。
JMITUは24春闘において男女の賃金差の情報公開を統一要求書として取り組んだものの、一部をのぞき大半の支部分会では団体交渉での協議の俎上にものぼらなかった。このことは、JMITUの「ジェンダー平等」への取り組みの弱さをあらためて浮き彫りにした。
ジェンダー平等の問題では職場でのジェンダーによる差別の是正にとどまらず、社会的・文化的な「男らしさ」「女らしさ」の押し付けをなくしていくこと、さらには、性的マイノリティーへの差別と偏見をなくすことなど、取り組むべき課題が山積している。結婚休暇や結婚一時金を同性婚にも認めるなどの要求が前進している職場もある。JMITUは、職場の「ジェンダー平等」の推進を労働組合の重要な課題であると位置づけ、あらゆる労働組合活動の土台に「ジェンダー平等」をおき、性別にかかわりなく人間らしくはたらくことができる職場をめざし、次のとおり、取り組みを強化する。
(1)ジェンダー平等が貫かれた職場と労働組合を実現することをめざし、「JMITUのジェンダー平等宣言(案)」にもとづき、すべての組織で話し合い、行動する。
(2)仕事、雇用、賃金、昇格など性差によるあらゆる差別をなくすとともに、一日の労働時間を大幅に短縮させ、だれもが平等に仕事と家族的責任を両立できる職場をめざす。生理休暇をはじめとする母性保護など女性独自の要求実現にむけ積極的に取り組む。
(3)セクハラや性差による人権侵害、人格否定・軽視する言動をなくし、労働者の人権と人格をまもるため、日常的な取り組みをつよめる。
(4)「組合員が主人公」の取り組みの土台にジェンダー平等を位置づけ、職場討議をはじめ労働組合でのあらゆる場で、職場の少数者や立場の弱い組合員・労働者の意見や思いが大切にされ、要求や方針に反映できる労働組合をめざす。
(5)春闘・秋闘などでは女性をはじめ少数者の要求も大切にし、その実現にむけ、全員が我が事として全力でとりくむ。
(6)会議等の ZOOM 参加や開催時間帯、短時間会議の工夫など、性別を問わず育児や介護など家族的責任を有する組合員が参加できる条件や環境をつくり、産別の大会や集会、産別と支部の役員等に誰もが積極的に参加できることを追求する。
(7)「選択的夫婦別姓」の実現をはじめ、ジェンダー平等の推進に逆行する法制度や政治に反対し、ジェンダー平等の社会・政治の実現にむけ取り組む。
(8)当面、すべての支部分会で男女賃金格差の開示および是正計画について要求していく。このことはジェンダー平等のほんの一歩の取り組みであるが、まずはその一歩を踏み出し職場でのジェンダー平等での推進につなげていく。
以上
注1)日産定年差別・家族手当差別争議
東京地本日産自動車支部の中本ミヨ組合員が男性の定年年齢が55歳に対し女性が50歳であるのは男女差別であるとして争った争議で、1981年に最高裁において男女の定年差別は無効とする判決をかちとり、男女の定年差別は完全に撤廃させた。また、女性の家族手当の支給を求めておこした裁判では、1990年、東京高裁において世帯主条項など日産の差別条項をすべて廃止する就業規則を改定させる和解を勝ち取った。日産自動車支部のこれらの男女差別とのたたかいは、その後の男女雇用機会均等法制定や男女の均等待遇を求めるたたかいに大きく貢献した。
注2)丸子警報器賃金差別争議
長野地本丸子警報器支部に所属する女性の臨時社員28人が正規社員との賃金等の差別は不当として争った争議。1996年、長野地裁上田支部において、均等待遇の理念に反する賃金格差は公序良俗に違反するとした画期的判決をかちとり、その後の均等待遇を求めるたたかいの大きな礎となった。争議は1999年、東京高裁で勝利的和解を勝ち取る。