【月刊全労連連載】 ぱたちゃんが行く「『生理の貧困』に向き合う」
今年5月、こんなツイートが目に留まりました。
最低賃金で働いたとして、日々家計簿をつける最賃体験に取り組んだ仲間の感想。「時給が1500円になったら、少し上等な肌ざわりのよさそうな生理用品を試してみたい」。ささやかな望みだが、女性にとって生理用品が必需品で家計の負担になっていることが分かる。
「#みんなの生理」が高校生、大学生など学生を対象に実施した「日本の若者の生理に関するアンケート調査」によって、「学生の5人に1人が生理用品の入手に苦労している」ことが明らかになり、「生理の貧困」問題がクローズアップされた時期でした。「#みんなの生理」は、「生理用品を軽減税率に!」という署名活動から生まれた団体です。
生理用品の購入をためらう背景に
公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンは、就労者を含めた15歳~24歳の女性2000人を対象に「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査」(2021年3月実施、4月発表)を実施しています。「生理用品を購入・入手することができなかったり、ためらったりしたこと」について理由も含めて聞いたところ、「ある」と答えた人は全体の35.9%にのぼり、さらに深刻な実態が明らかになりました。購入・入手できなかった理由として、「収入が少ない」、「生理用品が高額だから」、「おこづかいが少ないから」と、収入や価格を理由に挙げている人が、「ためらったことがある」人の8割にのぼっています。2000人の回答者から学生、専業主婦、無職・休職中・求職中を除いて、調査時点で就労している人は665人です。そのうち、ひと月の平均収入が20万円以上なのは10.5%に過ぎず、10万円以下の収入が24.3%と、4人に1人が10万円以下の収入で生活していました。3万円以下も8%を占めています。どうしても生活に必要なものを引いていくと、生理用品を購入するのをためらわざるを得なくなる実態が浮き彫りになりました。
調査では、さらに購入・入手できなかったり、ためらったりした時の対処方法についても聞いています。最も多かったのが「ナプキン/タンポンなどを長時間使ったり、交換する頻度を減らしたりする」(70.7%)、次いで「トイレットペーパーやキッチンペーパーなどでの代用」(37.9%)でした。「長時間使ったり、交換する頻度を減らしたりする」と答えた513人のうち、20歳以上が354人で、そのうち164人が就労しています。これは、就労者の約25%、4分の1にあたります。
私は、小学校の教員をしていましたが、放課後になって、朝からトイレに行っていないことに気が付くことも、稀なことではありませんでした。それでも生理の時は、そういうわけにはいきませんので、なるべく気を付けて時間を取り、こまめにナプキンを取り換えるようにしていました。でも、6年生の担任をしていた時に、修学旅行と生理の期間がぶつかってしまったことがありました。修学旅行はバスでの長時間の移動になり、しかも、トイレ休憩の時には、子どもたちを安全にトイレに行かせることが優先になりますから、自分のことに時間を使っている余裕はありません。できるだけ給水量の大きいナプキンを使うようにしましたが、取り換える時間が取れるまでは、気が気ではありませんでした。それが、毎月の生理のたびに、生理用品を長時間使ったり、交換する頻度を減らさざるを得ないのだとしたら、どれほどのストレスになるか、想像に難くありません。さらに、タンポンの長時間使用は感染症を引き起こす恐れがあることも指摘されています。
前述の「#みんなの生理」の調査を報道したNHKの番組が大きな反響をよんだことや、新日本婦人の会が全国47都道府県117自治体に働きかけるなどの運動の成果もあり、国や地方自治体も「生理の貧困」問題に取り組まざるを得なくなっています。内閣府男女共同参画局の調査によれば、2021年7月20日時点の調査で、「生理の貧困」に係る取組を実施している(実施した・実施することを検討している)地方公共団体は581となっています。第1回調査の5月19日時点では255でしたので、前進していることは間違いありません。しかし、生理用品の調達元としては、防災備蓄を挙げている自治体が最も多くなっていることに見られるように、コロナ禍における措置の範囲に止まっていることは否めません。また、生理用品の置き場所についても、公共施設や小中学校のトイレに置き、自由に受け取れるようにしているところもある一方で、保健室や相談窓口などを受け取り場所にしている学校・施設も多くあります。それではどうしても利用が制約されてしまうとの懸念も出されており、さらにとりくみを前に進める必要があります。
生理にまつわるタブーを打ち破る
「生理の貧困」は、経済的な問題だけではありません。月経衛生・健康についての教育の欠如の問題、生理にまつわる羞恥心、スティグマ、タブーの存在などが指摘されています。包括的な性教育があらゆる場面で求められていると思います。生理に対する羞恥心、スティグマ、タブーの存在が、私を含めた女性を縛ってきたことを強く感じます。生理のことは自己責任、自分のことなんだから、自分でなんとかしなきゃと思わされてきました。でも、毎月毎月、1週間近くある生理の期間を、少しでも気持ちよく過ごしたいと思うことは、当たり前の要求です。
「#みんなの生理」の皆さんは、この当たり前の要求を実現するために、①生理用品への軽減税率の適用、②学校のトイレへの生理用品の設置、③より包括的な調査の実施を要求しています。労働組合においても当たり前の要求に真摯に向き合い、実現のための手立てについて、女性も男性も共に話し合い、実践できるようになることが、タブーを打ち破っていく力になると感じています。
10月1日、全国の最低賃金が改定され、加重平均で28円アップの930円となりました。私たちの要求から言えば、不十分な到達ではありますが、コロナ禍だからとあきらめずに、たたかいを強めてきた全国の仲間の成果です。全労連は、当たり前の人間らしい生活ができる最低賃金を求めて、さらにとりくみを強めていきます。
(『月刊全労連』2021年11月号 通巻297号)