【月刊全労連連載】It’s Union Time「レバカレとケア労働者の賃上げ」(2025年4月号)
先日、「労働組合のオルグになりたい」と二人の若者が話すシンポジウムに参加した。
一人は大学生で、一度就職して職場を経験するかどうかを悩んでいる。もう一人は、近年大学を卒業してオルグになった。首都圏青年ユニオンの話である。
彼らのオルガナイザーのイメージは、労働者を労働組合に組織する人と明確であるように思う。自分のバイト先で労働組合を結成してそれを全国に広げる。ひとりの労働相談からその職場に組合員を複数に増やし、労働組合を結成してストライキを構えて社長と交渉する。深刻な実態を社会に告発し、世論を味方に譲歩を引き出す戦術も板に付いてきている。
労働組合の活動に専念したいと志願する若者が育っている現実に感動すら覚えた。
「参加・持込型」集会
全労連は、労働運動交流集会Labor Union College“レバカレ2025”を10月11日~13日の3日間、東京・京橋のビジョンセンター京橋(想定600人規模)で初開催する。
「運動は頑張っているが仲間が増えない」、「要求実現が実感できない」など、日常の組合活動や組織づくりの苦労やモヤモヤは尽きないが、克服できないか、こんな思いからの発案である。
克服するためのアイデアも、壁も、その答えは現場の実践にあると確信している。職場や地域で日々がんばる全国の活動経験を当事者が直接参加して持ち寄る、「当事者参加型」の集会にしたい。およそ100分科会の開催を目指す。参加者は一コマ90分程の分科会を3日間で4つ、5つと渡り歩けるようにしたい。『月刊全労連』や『学習の友』などに提供された優れた事例は、もれなく分科会に持ち込んで欲しい。
学者、弁護士、ジャーナリスト、未加入の労働者、潮流の違う労働組合の方でも、趣旨に賛同いただける人なら大歓迎である。日本の労働組合運動の新たなステージをみんなで議論しあえる場・スペースを目指したい。
また、労働者教育やトレーニングのデモンストレーションも行う。その他、レイバーノーツ・アジアが同時開催されることになった。お陰で海外の労働運動家のゲストを招くことにもなった。この集会でいくつもの気づきや元気が得られるに違いない。刺激的な集会にしたい。
もう少し、経緯を書いておきたい。私は2022年のレイバーノーツ大会(シカゴ)に参加し、2024年大会には39人の仲間を送り出した。ここで見た参加型集会の爆発的な力強さと職場・地域での実践の共有が、停滞していた米国労働運動の歴史的な高揚をつくる大きな力になっていることは疑う余地もなかった。
レバカレのチラシも配られ、周知や具体化が進むにつれ、「楽しみだ」「斬新な企画だ」「ぜひ分科会に出してみたい」「参加型の活力ある集会にしたい」など期待の声がある。一方で、「持込型のイメージが湧かない」「何人参加させたらいいか示して欲しい」「100もの分科会できるのか」「参加費が高い」「財政的な困難のもと乱暴な提起なのではないか」「ボトムアップの組織づくりといいながら上からの企画なのではないか」「提起が遅い」など、もっと丁寧な準備と議論、スピード感を求める声が多数寄せられている。期待と疑心暗鬼が入り混じる状況だと受け止めている。
集会のコンセプト自体が「参加型」。準備、運営にあたっても丁寧に議論を重ねたい。この集会をつくりあげるなかで「対話と学びあい」が広がり、自覚的な活動参加が根付いていくようにがんばりたい。
ケア労働者の賃上げを如何に実現させるか
25国民春闘は、ヤマ場を迎えた。とりわけ、公定価格に大きく縛られるケア労働者の抜本的な賃上げが譲れない春闘となっている。この物価高騰下で、「年収35万円も賃下げされた」病院職場があると言う。離職に拍車がかかっている。雑誌『東洋経済』は「病院淘汰の時代」と特集しているが、人手不足から定員基準を下げ、補助金目当てに病床縮小などを重ねれば、社会保障費の削減をすすめる政府の思う壺だ。
交渉で使用者から「経営が立ち行かない」「赤字だ」「診療報酬が変らない限り賃上げはできない」と言われると「仕方がない」となりがちだが、本当にそうだろうか。この理屈は、使用者としての労働者を雇用する責任を自ら免責しているに過ぎない。結局、労働者に頭を下げて賃金を下げることで乗り切ろうとする「その場しのぎ」。何年も何年も繰り返されてきた。
労働組合が労働者の利益のために、引かずに使用者に対して労働者の生活を守る使用者責任を取らせる、この立場をはっきりさせた強い交渉で賃上げをさせる以外に解決の道はない。
もちろん、労働組合として政府の政策を変えさせるたたかいにも全力をあげる。
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なぜ、レバカレの話からこんな話になったのか。こうした難題を研究しあい、現場の経験から答えを見つけ出していく場にしたいからだ。そして、オルグになりたいという若い労働者が増えるような主体的でたたかう労働運動が構築されていくことを期待してやまない。
(月刊全労連2025年4月号 通巻338号)