【談話】派遣労働者の切実な声を受け止めた徹底審議、労働者派遣法・政府「改正」案の大幅な見直しを求める
2010年 5月 24日
全労連事務局長 小田川義和
マスコミ報道によると、政府・民主党は、会期延長をおこなわずに7月11日の参議院選挙実施の意向を固め、労働者派遣法「改正」案の今国会成立を確認したと言われています。
会期延長を見送ることを前提にした労働者派遣法「改正」案の成立確認は、法案審議を極めて短時間に制限するものであり、不十分な政府「改正」案の問題点を解明し、修正論議をおこなうことへの制約になりかねません。「派遣切り」や偽装請負の根絶に資する法改正を求めてきた全労連としては容認できない問題です。
この間、派遣法「改正」案については、4月16日に衆院本会議での趣旨説明・各党代表質問がおこなわれて以降、政権党の横暴な国会運営と自民党の審議拒否によって、2時間弱の与党質問(4月23日)がおこなわれただけです。そのわずかな論議を通じても、政府「改正」案が抜本改正にほど遠い内容であることが明らかになりました。さらに、与党議員からは「専門業務」の拡大を求める質問も繰り返されており、政令一つでなし崩し的な「専門業務」拡大による派遣の固定化・拡大がすすめられる危険もうまれています。派遣労働者の保護をうたった「改正」法案が羊頭狗肉の内容に止まらないためにも、実態を踏まえた徹底審議が必要です。
政府案の発表以降、派遣労働者や派遣切りとたたかう当事者・労働組合からは「これでは救われない」「派遣切りはなくならない」という声が湧きあがっています。また、「派遣切り」裁判にとりくむ法曹界などからも強い危惧の声が出されています。
私たち全労連も、(1)製造業派遣と登録型派遣は「原則禁止」と言いながら、実際には8割が例外となる大穴(=原則容認)、(2)みなし雇用制度を盛り込んだものの、派遣のときと同じ賃金・労働条件で、しかも短期間の直接雇用で雇止めできる問題、(3)「均衡に考慮」という言葉で「均等待遇原則」に背を向けたこと、(4)労働契約申し込み義務の一部撤廃など自公政権時代の改悪部分を残すとともに、「専門26業務」の縮小を見送ったことなど、修正すべき点を具体的に指摘し、見直しを強く求めてきました。
昨年の総選挙では、「構造改革」路線に対する強い怒りが自公政権を退場に追い込みました。「派遣切りをなくしてほしい」「雇用破壊に歯止めをかけ、雇用の安定を取り戻してほしい」ということが、労働者・国民の切実な願いです。
しかし、法案審議が短時間に限られれば、首相出席の下での集中審議や地方公聴会はおろか、参考人質疑さえおこなわれない可能性があります。強行採決を重ねたあげく、政府案は何も修正されないということにもなりかねません。「派遣切り」にあった労働者の生の声を聞き、法案に反映することがなければ、労働者・国民の願いは実現できせん。与野党は協力・工夫して重要法案にふさわしい審議時間を確保すべきです。
派遣労働者の切実な声を受け止めて、国会論議を尽くし、政府「改正」案の大幅な見直しをおこなうよう、私たち全労連は強く求めます。その実現のため、広範な労働組合や市民団体のみなさんとの共同をいっそう強め、運動をいっそう強めていきます。
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