政府は、雇用維持型から労働移動支援型への政策転換をかかげ、そのために外部労働市場を活性化させるとして、民間人材ビジネスの活用を推進されようとしている。しかし、そのような政策を推しすすめれば、一部の大手民間人材ビジネスだけが肥え太り、リストラが多発して、低賃金の非正規雇用がさらに拡大することは明らかであり、断じて容認できない。そもそも職業紹介などは、原則として国家機関が責任を持っておこなうという観点から、職業安定法でも公共職業安定所が無料でおこなうことが定められている。
日本経済の持続的回復のためにも、雇用の安定が重要という指摘が今大きくひろがっており、政府も賃上げを推奨されている。にもかかわらず、民間人材ビジネスを重用すれば、雇用の安定と賃上げによる内需回復にも逆行する。日本経済そのものをいっそう危うくするものと言わなければならない。
以上の趣旨から、当面の対策として以下のとおり要請し、その実現を強く求める。
記
(1)雇用の大原則が「期間の定めのない直接雇用」であることを踏まえ、雇用を流動化、不安定化させる民間人材ビジネスの活用に関する検討作業を中止、撤回すること。
1) 求人・求職情報の民間人材ビジネスや自治体への開放、オンライン提供はおこなわないこと。
2) ハローワークに求職登録するすべての求職者に対して、国が責任をもって直接再就職支援を実施することとし、営利目的の民間人材ビジネスへの誘導や委託を中止すること。
3) リストラ促進が強く危惧される労働移動支援助成金について当面、次のように改めるとともに、解雇・リストラを厳しく防止すること。
i)再就職支援奨励金委託開始申請分については、実際に支援が実施されるか否かさえ不明であることから廃止すること
ii)再就職実現申請分については、委託先の職業紹介会社が、自社の保有する求人に自ら紹介し、就職が実現した場合に限定すること
iii)受入れ人材育成支援奨励金は、対象となる訓練をOFF−JTに限定すること
4) 雇用調整助成金を拡充するなど、雇用維持の対策を再強化すること。
(2)雇用の安定と適職選択をまもるという見地から、公的な職業紹介を原則とし、大幅に拡充すること。
そのため、経験を有する非常勤職員を常勤化するなどの方策により、ハローワークの人員体制を正規の職員で大幅に拡充し、先進諸外国と同等の水準に引き上げること。
職業相談は個室を基本に十分な時間を確保するとともに、個別求人開拓を積極的に実施するなど、求職者個々の状況に寄り添った支援を強化すること。
(3)失業給付の拡充にくわえて失業時扶助制度の創設など、失業時の生活保障を抜本的に拡充し、失業者が生活不安から意に添わない低賃金・不安定雇用への就労を強いられることなく、安心して適職を選択しうる状況をつくること。
公的な職業訓練を大幅に拡充するとともに、安定した良質な雇用創出の一環として、政府の責任で公的就労の場を確保、拡充すること。