つかみとろう!要求と組織の新たな前進、日本社会の未来
改憲と戦争する国づくりNO! 憲法が花ひらく国へ
格差と貧困を是正し、暮らしの底上げ、地域活性化
はじめに
(1) 第27回定期大会決定(2014年7月)は、情勢の特徴点を「安倍政権の『二つの暴走』が日本社会のさまざまな矛盾を拡大する一方で、『暴走政治ストップ』の国民共同を前進させる条件を高めている」と指摘したが、この間の情勢の進展は、その正しさを示すものとなった。
安倍政権の「暴走」が乱暴に加速され、この国の危機が進行するもとで、全労連と加盟組織は安倍「暴走」政治と正面から切り結び、安保法制(戦争法)に反対するたたかいをはじめ、さまざまな分野で共同を献身的に支え続け、たたかいを牽引してきた。総がかり行動実行委員会など護憲勢力の総結集は国民的な共同の土台となり、共同の豊かな発展を通して、多くの市民や団体がたたかう労働組合の姿を知り、信頼を深めている。SEALDsなどに象徴される若者や市民の新しい運動にも触発され、相互に響きあいながらたたかいをさらに前進させてきた。
7月10日の参議院選挙は、与党が改選議席の過半数61を上回る70議席を確保し、改憲勢力が参議院でも3分の2を占めるという重大な結果になったが、一方で、32の一人区のうち11選挙区で「統一候補」が勝利し、他の多くの選挙区でも接戦に持ち込んだことは、広範な市民と野党の共同こそが「暴走」政治打破の確かな道であることを示すものである。全労連と加盟組織はそうした状況をつくりだす原動力のひとつになったのであり、全労連結成から27年、この状況をさらに前にすすめ、結成の思いが花ひらく時代を切り拓いていかねばならない。
改憲勢力で3分の2を確保した安倍政権は、千載一遇のチャンスとばかりに、さらに前のめりに「暴走」を加速させようとしている。この国の根幹を危うくする深刻な事態といわなければならない。危機感を共有し、組織の総力をあげて反撃を強化していく必要があるが、同時に、改憲策動をはじめとした安倍「暴走」政治のさらなる加速は、大多数の国民との矛盾や亀裂を抜き差しならないものとし、間違いなく、安倍政権を追い詰め、力関係の劇的な変化をつくりだす可能性を高めるものとなる。これから衆議院選挙までの1〜2年は、人々の暮らしと日本の未来を左右する重大な時期になることを深く意思統一し、切実な要求を基礎に共同と結びつきをより太く深化させていくことが強く求められている。
(2) 第28回定期大会は、以上のように、改憲策動など安倍政権の「暴走」がさらに激烈になる一方で、それに抗する私たちの世論と共同、運動も確かな前進を築き、日本の針路を決める攻防がさらに激化しようとするなかで開催される。この2年間のたたかいの教訓を全体で確認するとともに、共同の豊かな発展という段階からさらに前にすすんで、安倍政権を早期に退陣に追い込み、要求実現と組織拡大強化の新たな前進・飛躍をつかみとる確固とした運動方針を確立して、日本社会の未来を切り拓く前進に転じる重要な大会である。
労働運動の真価を発揮して攻勢的にたたかい抜き、組合員と地域が“成果”を実感できる時代を切り拓く。憲法をめぐる歴史的な攻防が激化するもとで、すべての活動を通して憲法をまもり活かす観点を重視し、とりくみを重層的に発展させる。改憲策動と戦争する国づくりに反対する国民的な共同にくわえて、暮らしと雇用をまもる課題でも共同の輪をさらにひろげ、すべての働く人々の賃金の底上げや中小企業支援の強化を実現し、持続可能な地域循環型の経済・社会に転換していくことなど、2025年をめざして全労連運動への信頼と結びつき、社会的な影響力を強化して、要求実現と組織拡大強化の相乗効果をつくりだし、新たな前進を開始する。
I 私たちを取り巻く情勢の特徴点
1.戦争する国づくりと憲法蹂躙の強権的な加速、かつてない反撃
(1) 情勢をめぐる第一の焦点は、安保法制(戦争法)の強行など、安倍政権による「アメリカと一緒に戦争する国づくり」と改憲策動の強権的な加速と、それに抗する国民的な反撃の発展である。
安倍政権は、特定秘密保護法の強行に続いて、2014年7月1日には歴代内閣の憲法解釈を180度転換して、集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行した。そして、15年9月19日未明、国民的な世論と共同の高揚を無視して、国会議員の数の力だけを頼りに、憲法違反が明白な戦争法の成立を強行し、16年3月29日にそのまま施行した。
辺野古新基地建設への異常なまでの固執をはじめ、基地強化を加速し、軍事費(防衛費)を5兆円超に膨らませ、武器輸出を拡大するなどしている。防衛省設置法の改悪によって制服組(統幕)の権限を強めるなど、戦争法全面発動のための態勢整備を急いでいる。
(2) 安倍政権のこれら一連の動きは、日本を平和国家から海外で戦争する国(外征国家)につくり変える違憲の企みであり、独裁への道にほかならない。しかし、立憲主義・民主主義そのものの危機だということが明白になるなかで、これまで政治に関心のなかった人、むしろ敬遠していた人、保守的な人……、広範な人々が反対の声をあげ、初めての集会やデモ、数十年ぶりの行動に立ちあがった。総がかり行動実行委員会の連続した大規模行動をはじめ、共同した世論と行動が急速かつ多様に全国にひろがり、安保闘争以来というべき運動の高揚がつくりだされた。
戦争法の強行後もたたかいは止むことなく継続・発展し、野党5党(当時)の2・19党首会談「合意」につながり、32の参議院選挙一人区のすべてで「統一候補」が実現した。戦争法廃止・立憲主義まもれを掲げる広範な団体・有志と野党はさまざまな違いを乗り越え、日本の憲政史上初めての画期的な事態をつくりだした。そして、参議院選挙に向けて、全国各地で市民連合規模の大規模な集会や街頭行動が連鎖的に展開され、野党4党が揃い踏みするという状況が大きくひろがった。全労連と加盟組織のとりくみは、こうした状況をつくりだすうえで大きな力を発揮し、共同を牽引してきた。
(3) 安倍首相は16年1月22日の施政方針演説で、“挑戦”という言葉を21回も使い、「世界の中心で輝く日本」にすると宣言し、「国のかたちを決める憲法改正。国民から負託を受けた私たち国会議員は、正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく」と、改憲の旗を高く掲げた。参議院選挙公約にも改憲を明記したにもかかわらず、選挙戦では「選挙の争点ではない」と争点隠しに終始したが、安倍首相は「次の国会から憲法審査会をぜひ動かしていきたい」と表明し、参議院選挙を受けて、在任中の明文改憲に具体的に踏み出そうとしている。
安倍首相がねらっているのは、9条改悪と緊急事態条項の創設という野望の本丸であり、憲法審査会で野党を改憲論議に巻き込み、分断をはかりながら推進しようということである。日本は今、最高権力者による正面からの憲法破壊という、国のあり方を根底から覆しかねない危機に直面しているといえるが、それは同時に、世論と共同の前進に追い詰められた安倍政権のあがきという側面も持っている。憲法は70年の歴史に支えられ、広範な人々のなかに脈々と根づき、戦争法本格発動の最大の障害になっている。だからこそ、安倍首相は明文改憲に執念を燃やし、障害を取り除こうと躍起になっているのだ。
一方で、安倍政権は運動におされ、南スーダンPKO派遣部隊の任務拡大を早々と秋以降に先送りし、3月4日には辺野古新基地建設をめぐる訴訟で裁判所の和解提案を突如受けいれ、新基地建設をいったん中断せざるを得なくなった。あからさまな憲法破壊という安倍政権の「暴走」は国民各層との矛盾を確実にひろげ、世論と運動による包囲が強まっている。
(4) 7月10日の参議院選挙の結果は前出のとおり、与党が改選議席の過半数61を上回る70議席を確保し、参議院でも改憲勢力が3分の2を占めるという重大な結果になった。
その最大の要因は、安倍政権がまたもや「アベノミクス選挙」を唱え、アベノミクスの偽りの成果を声高に叫び続け、改憲や戦争法などの争点隠しをはかったなかで、選挙戦全体の構図が見えにくくなったことである。もうひとつは、危機感を抱いた安倍自民党と補完勢力が、「暗い低迷した時代」などと旧民主党政権に対するネガティブキャンペーンを強めただけでなく、野党共闘に対する“野合”批判や反共分断攻撃をなりふり構わず展開して、「統一候補」や野党に対する支持や期待のひろがりにブレーキをかけたことである。また、参院選報道を大きく減らしたNHKをはじめ、マスコミの報道姿勢も問題にされねばならない。
ただし、「統一候補」の擁立・合意がギリギリになり、「統一候補」の名前や、その歴史的な意義が十分に浸透しきれなかったもとでも、現職大臣を破った沖縄や福島をはじめ、東北5県など東日本を中心に、32の一人区のうち11選挙区で「統一候補」が勝利し、他の多くの一人区でも接戦に持ち込んだことは、市民と野党の共同の大きな可能性を示すものであり、間違いなく、今後につながる重要な一歩になったということができる。
来るべき総選挙はまさに日本の針路を決めるものになると予想されるが、市民と野党の共同をさらに太く深化させていくことが求められている。全労連と加盟組織は、各県・選挙区の実情を踏まえて、「統一候補」への支援を含めて、「安倍政権NO!の選挙権行使を呼びかけ投票率を押し上げる」ために奮闘したが、さまざまな不十分は残しつつも、11の一人区での勝利に貢献し、それ以外でも多くが接戦に持ち込み議席を競りあったなかで、確信が大きくひろがっている。総括論議を深め、要求闘争と政治闘争の結合など、より深めた方針論議が求められている。
改憲や戦争法、消費税増税、TPP、辺野古、原発……、個々の政策では国民の多くが反対しているにもかかわらず、安倍政権が今回も多数を獲得できたのは、巨大与党に代わる選択肢としての「統一候補」が十分に浸透しきれなかったなかで、与党が「消極的な支持」や「ふわっとした民意」のつなぎ留めに成功したからだ。憲法をめぐる攻防がいっそう激化するなかで、「憲法まもれ」「野党は共闘」の声と運動をさらに強化していくならば、必ず状況を変えることができる。1947年の現行憲法の施行から70年、侵略戦争への痛苦の反省と憲法70年の歴史をかけて、総力をあげて安倍政権を早期に退陣に追い込み、改憲の企みを打ち砕かねばならない。
同時に、“野合”批判や反共分断攻撃を許さないだけの結びつきの強化が求められている。つまり、要求闘争と政治闘争の結合をいっそう強めて、改憲と戦争する国づくりに反対する国民的な共同にくわえ、切実な要求に根ざした結びつきを深化させることによって、暮らしや雇用をまもる課題でも共同を前進させ、アベノミクスの新自由主義改革そのものに反対する一致点を深めていく必要があるということである。
(5) 戦争する国づくりと改憲策動の全体に対する反撃も前進している。安倍政権が明文改憲の野望を公言するもとで、世論調査でも改憲反対が顕著に増え、賛成を上回っている。
横田基地へのオスプレイ配備に反対する東京のたたかいなど、全国各地で基地強化に反対するとりくみが前進している。とくに沖縄では、辺野古米軍新基地建設に反対するオール沖縄のたたかいが、14年12月に翁長雄志知事を誕生させ、同月の衆議院選挙では沖縄の小選挙区で自民党の議席をゼロにするなど、力強く継続的に安倍政権を追い詰めてきた。元海兵隊員の米軍属による暴行殺人事件が発生したもとで、16年6月5日の沖縄県議選では翁長与党が3議席増の27議席に躍進して安定多数を確保し、6月19日の県民集会は6万5千人が結集する大集会となり、海兵隊の撤退そのものを求める運動へと発展している。同日には、連帯する集会や街頭行動が国会周辺(1万人)をはじめ全国32か所で開催されるなど、辺野古新基地の問題を参議院選挙でも重要な争点に押し上げた。
(6) 戦争する国づくりが進行するもとで、安倍政権の強権的な政治手法と民主主義破壊が大きな問題となり、反撃の強化が求められる情勢になっている。
高市総務大臣の停波発言に象徴されるように、マスコミや言論への圧力が格段に強化されるなかで、マスコミのなかに自主規制や政権への追随姿勢が強まっていることは、国民の知る権利や民主主義に対する大きな脅威になっている。労働組合の正当な活動や市民の運動に対する抑制も強まっており、各地で護憲を掲げた集会等への公共施設の使用制限などの事件が発生している。橋下大阪維新による組合弾圧をはじめ、鎌倉市における一部議員と市長による鎌倉市職労への攻撃や北海道高教組のクリアファイルへの干渉などの事例が各地で起きている。教科書検定における統制の強化や18歳選挙権の実現に付随する高校生の政治活動の届出制の動きなど、教育への統制も強められている。
安倍政権の独裁ともいうべき民意を無視した強権的な政治手法は、民主主義を破壊する攻撃としてとくに重大であり、戦争法廃止のたたかいと一体で、安倍政権NO!の世論と共同が多様に前進する要因ともなっている。
また、甘利経済担当相(当時)の口利き疑惑に続いて、舛添都知事の政治資金流用など公私混同が大問題になり、辞任に追い込まれた。企業団体献金や政党助成金が政治をゆがめ、退廃をうむ大きな要因であることを示しており、辞任で済まさず、全容解明が強く求められる。
2.アベノミクスの乱暴な推進と誤りの鮮明化、転換の新たな可能性
(1) 情勢の第二の焦点は、人々の暮らしや地域を踏み台に、ひと握りのグローバル大企業の利益のみに奉仕するアベノミクスという名の剥きだしの新自由主義改革=グローバル競争国家づくりが乱暴におしすすめられるもとで、その誤りが誰の眼にも鮮明になり、転換の新たな可能性がつくりだされつつあることである。
アベノミクスの乱暴な推進によって、格差と貧困が加速度的に拡大し、各分野で矛盾や亀裂が眼に見えて顕在化している。暮らしと雇用をまもる課題でも、経済のグローバル化と新自由主義改革の矛盾が集中的に現れている“地域”を基礎に、共同の輪をさらに前にすすめることが求められているが、矛盾の深まり、要求の切実化が飛躍の可能性をひろげている。戦争する国づくりに反対する国民的な共同にくわえ、暮らしと雇用をまもる共同という「ふたつの共同」が響きあって前進してこそ、社会の変革は加速され、要求実現と組織拡大強化の新たな前進が必ず切り拓かれる。
(2) 安倍首相はアベノミクスの成果を誇り、「デフレ脱却は目前」と強弁し続けている。しかし、景気の減速は明らかであり、実質GDP(国内総生産)も一進一退を続けている。
グローバル大企業だけが史上空前の利益を謳歌し、株主への配当を急速に増やし、内部留保を300兆円に積み増す一方で、労働者・国民の暮らしは消費税8%への増税と円安による物価高や賃金の低迷などでますます苦しくなった。各種政府統計からも、勤労者世帯の実収入が減るなかで、消費支出が低迷していることは明らかだ。実質賃金は5年連続の減少で5%も目減りし、個人消費は初めて2年連続減となった。非正規雇用労働者は増え続け就業者の4割近くに達し、年収200万円未満の働く貧困層(ワーキングプア)は1139万人(24.0%。ただし、1年を通じて勤務した者のみの集計)にまで増大した。厚労省も“結婚の壁”と認める年収300万円未満の労働者は今や3千万人を突破し、有業者の6割近くにまで達しており、“中間層の没落・総崩れ”というべき深刻な事態である。そして、中小企業の廃業や人口減少・労働力不足が深刻化するなど、地域経済・社会の疲弊が大きな社会問題になっている。
(3) アベノミクスの3年が明らかにしたのは、トリクルダウン論の誤りにほかならない。マネーの跳梁が深まり、大企業がグローバル化・無国籍化を進展させ、短期的な利益の最大化を貪欲に追求しているもとでは、大企業優遇策をいくら強めても、労働者・国民の暮らしや地域経済への還元(おこぼれ)はないということである。安倍首相は「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げ、「稼ぐ力」を強調しているが、それでは労働者・国民の暮らしと雇用、地域社会はいっそうの困難を強いられるだけである。
安倍政権が押しすすめた異次元の金融緩和によって、円安が大きくすすんだにもかかわらず、輸出も民間設備投資も伸びなかった。製造業の就業者数も落ち込み続けており、最近は内需型の産業でも海外進出が急速にすすんでいる。こうした状況は、経済のグローバル化の反映であると同時に、決定的には日本でモノが売れないからであり、内需・個人消費の弱さにこそ原因がある。裏を返せば、働く人々の賃上げ・底上げと雇用の安定、社会保障拡充などによって、個人消費を活性化し、内需を拡大しなければ、日本経済の回復などないということである。
(4) こうしたもとで、安倍首相は、「アベノミクスは第2ステージ」と称して、「一億総活躍社会」なる新たなスローガンを掲げた。戦争法から国民の眼を逸らそうという姑息な企みであると同時に、アベノミクスの誤りが誰の眼にも鮮明になりつつあるもとで、目先を変えて新自由主義改革を継続しようという欺瞞的な手口にほかならない。参議院選挙に向けては「アベノミクスのアクセルを最大にふかす」などと唱えたが、絶対に止めなければならない。
「稼ぐ力」を強調する安倍政権は、原発や武器の輸出も成長戦略として大きく位置づけている。川内原発を皮切りに原発再稼働を加速させ、震災復興支援の縮小・原発被害の補償打ち切りを強行しようとしている。わが国の経済主権と農業・医療など国民の暮らし、安全を差し出すTPPについても、自らの選挙公約や国会決議を投げ捨て、「国家100年の計」(1・22施政方針)とまで持ち上げて、早期批准に躍起になっている。違法なカジノ解禁も諦めてはおらず、大企業の儲けのためには何だってありの姿勢、倫理観の欠如は眼を覆うばかりだ。
“地域”を基礎に、切実な要求を出発点に、単産と地域が総がかりで「地域活性化大運動」を戦略的に強化し、大企業中心の歪んだ経済の仕組みを変え、賃金底上げや雇用の安定、社会保障拡充など、暮らしと雇用をまもる共同を前進させ、中小企業・地場産業支援の強化など、持続可能な地域循環型の経済・社会への転換を求める運動へと発展させる必要がある。
(5) 「一億総活躍社会」の本当のねらいは、安倍首相が「構造的課題である少子高齢化の問題に挑戦する」というように、少子高齢化対策としての社会保障抑制・解体であり、また、急速に顕在化・深刻化している労働力不足への反動的な対応である。
若者や女性、高齢者、外国人労働者などを労働力として最大限に“活用”しようというものだが、それは決して労働条件や就労環境の改善、良質な雇用の創出ではない。「多様な働き方」の名のもとに、非正規雇用、低賃金の細切れ雇用にいざない、安上がりの労働力として動員(酷使)しようという企みだ。労働者派遣法の大改悪に続いて、残業代ゼロ制度など8時間労働制の根幹を壊す労基法大改悪や解雇規制の緩和などがねらわれている。労働者保護法制は全面的な解体攻撃に晒されているのであり、労働運動の総力を結集して反撃を強化する必要がある。
(6) 安倍政権が、賃上げにくわえ、最低賃金の3%程度の引き上げや同一労働同一賃金、労働時間の上限規制までいわざるを得なくなったのは、「多様な働き方」というごまかしの手口であると同時に、一方では世論と運動の反映という側面も持っている。
日本経済の先行き不安が深刻化し、批判が高まるもとで、安倍政権ですら部分的な手立てを打たざるを得なくなっている。暮らしと雇用をまもるたたかいでも、「保育園落ちた」のツイートがあっという間に全国に拡散し、政局を動かしたことに見られるように、運動が安倍政権を追い詰め、力関係の変化がはじまっており、矛盾の激化が変化の可能性を高めている。批判に止まらず、切実な要求を掲げた攻勢的な反撃がいっそう重要になっている。
16年秋の臨時国会には、「大型補正予算(案)」の提出が予定されているが、まさにアベノミクスの是非や経済政策の根幹が問われる重要な国会となる。また、消費税10%大増税が2年半先送りされたもとで、来年度予算編成に向けて社会保障など暮らし関連の予算のさらなる抑制・改悪がねらわれる状況にもなっている。TPP批准法案阻止の課題とあわせて17年秋の重要課題としてとりくみを強化し、大企業・大金持ち優遇税制の見直しをはじめ、税制の在り方、使い方に迫る反撃を構築していくことが求められている。
3.国際的にも大きな変化が強まっている
(1) 世界の国々でもまた、経済のグローバル化のもとで新自由主義改革の嵐が吹き荒れ、労働法制や労働基本権に対する野蛮な攻撃や緊縮財政の名による公務員削減、社会保障改悪などが強行され、働く人々や諸国民は大きな困難を強いられてきた。しかし、格差と貧困がいっそう拡大し、矛盾が激化するなかで、各国で反撃が強化され、変化が強まっている。
2014〜15年にかけて、トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」が世界中で大ベストセラーとなり、多くの国際機関が資本の横暴に警鐘を鳴らし格差と貧困の是正を提唱したことや、現在進行形でパナマ文書が人々の怒りを呼び起こし、富裕層に対する適正課税を求める運動が発展していることに見られるように、資本主義の綻び、深刻な行き詰まりが顕在化している。
とくにアメリカで、ファストフード労働者らの「15ドルのためのたたかい」が高揚し、その実現が大都市レベルから州レベルへと質的なひろがりを見せ、大統領選予備選挙でも劇的な変化がうまれたことは象徴的である。経済のグローバル化とマネー資本主義の跳梁の問題点を端的に浮き彫りにすると同時に、日本でも同様の変化が起きうることを示している。
イギリスの国民投票でEU離脱派が勝利したことが、世界に大きな衝撃をひろげている。テロに対する力の政策の破綻が大量の難民をうみだしている混乱の反映であると同時に、根底には、EUによる新自由主義改革や財政抑制策の押し付けのもとで、格差と貧困がさらに拡大し、社会保障や公共サービスが削減されていることに対する一般市民の怒りがある。
(2) 世界ではまた、経済分野に止まらず、政治・軍事の分野でも大きな混乱と変化がひろがっている。15年秋のパリ同時多発テロなどに象徴されるように、IS(イスラム国)などによって断じて許すことができない野蛮なテロが頻発し、アメリカなど有志連合による空爆等の軍事作戦が強化されている。しかし、シリアなどの内戦はますます泥沼化し国の存続すら危うくする事態となり、欧州などに桁違いに大量の難民がなだれ込むなど、事態はますます悪化している。
最大の教訓は、武力では何も解決しない、憎しみの連鎖をうむだけだということであり、テロの温床となっている格差と貧困の解消・是正こそが急務だということである。こうしたもとで、世界の諸国民のたたかいは、戦争そのものを禁止し、野蛮な生物兵器や核兵器などの廃絶を求める大きな流れをつくりだしている。9条を持つ日本国憲法の輝きがますます増しているのであり、日本のたたかいがいっそう問われる状況になっている。
II 第27回大会以降のとりくみの中心的な到達点と課題
(1) この2年間のたたかいの最大の特徴は、安倍「暴走」政治の嵐に抗して、各分野で切実な要求を基礎に国民的な世論と共同を発展させ、対抗してきたことである。全労連と加盟組織のねばり強く献身的なとりくみは、国民的な共同を育てる大きな力となり、運動を牽引してきた。
とくに、戦争する国づくりをめぐる攻防では、明文改憲の策動を押しとどめ、戦争法反対のたたかいで安保闘争以来といわれる運動の高揚をつくりだすなど、安倍政権をあと一歩まで追い詰めてきた。全労連は、憲法共同センターの中心的な団体として、総がかり行動実行委員会で、また、各地の幅広の共同で重要な役割を果たし、国民的な共同の前進に大きく貢献してきた。
戦争法強行後もたたかいは止むことなく継続・発展しており、広範な市民と野党が共同して参議院選挙の「統一候補」を32の一人区すべてで実現するという、日本の憲政史上初めての画期的な状況をうみだした。そして、参議院選挙では前出のとおり、安倍自民党と補完勢力が参議院でも3分の2の議席を確保するという結果になったが、一方で、市民と野党の共同の大きな可能性も示された。また、同じ7月10日に投開票された鹿児島県知事選挙でも反原発候補として一本化された三反園氏が勝利した。これらの到達点を活かし、「戦争法廃止・安倍政権NO!」の世論と共同をさらに前にすすめていくならば、必ず、安倍政権を退陣に追い込み、力関係を大きく変えて、戦争法と明文改憲の策動に終止符を打ち、国民の声が政治を動かす新たな状況をつくりだすことができる。それが、私たちのねばり強い運動がつくりだした到達点である。
(2) 「世界で一番企業が活動しやすい国づくり」を掲げたアベノミクスの新自由主義改革に対しても、各分野から切実な要求を基礎にしたたたかいを組織し、世論と共同をひろげてきた。アベノミクスの誤りが鮮明になり、矛盾と亀裂が顕在化するなかで、賃上げによる内需拡大の必要性や底上げなどで保守層を含む広範な人々との一致点が眼に見えて拡大している。
だからこそ、安倍政権も、賃金や保育、介護など、さまざまな分野で若干の修正を余儀なくされている。消費税10%への再増税についても、“延期”ではあるが、ふたたび2年半先送りせざるを得なくなった。ただし、反撃はまだ端緒的なレベル、分野ごとのたたかいという側面が強く、グローバル競争国家を志向する新自由主義改革そのものの転換を求める本格的な国民的共同というレベルにまでは至っていない。
全労連が重視してとりくんできた全国一律最賃制を軸にした賃金底上げ、「今すぐ最賃1,000円以上」のとりくみや、「地域活性化大運動」という新たな提起は、各方面から大きな歓迎をもって新鮮に受け止められており、戦略的な課題としてさらに強化していく必要がある。経済のグローバル化の矛盾が集中する“地域”を基礎に、暮らしと雇用をまもる課題でも、壮大な共同づくりに挑戦する必要性と飛躍の可能性が格段に高まっている。
(3) この間のねばり強いたたかいと共同の前進によって、「安倍『暴走』政治と国民的な世論と共同の激しいせめぎあい」という局面から一歩前進し、「国民的な世論と共同が安倍政権を包囲し、守勢に回らせる」という状況の変化がうまれている。しかし、追い詰められた安倍政権は明文改憲を旗印に反撃に転じようとしており、国民的な包囲で安倍政権を退陣に追い込むことが喫緊の課題になっている。
「戦争法廃止・立憲主義まもれ・安倍政権NO!」の国民的な共同をさらに前にすすめると同時に、各分野でひろがる矛盾と切実化する要求を基礎にした運動を強めながら、大企業全面奉仕の経済政策そのものの転換をせまる、より攻勢的なたたかいを構築していくことが強く求められている。とくに、底上げ・格差是正の課題を重視することが重要であり、それは、内需拡大による日本経済の再生を実現する最大のカギになっている。
(4) たたかいと共同の前進に比して、組織拡大強化の分野では、いまだに減勢に歯止めがかかっていない。とくに、現行中期計画の最終年となった2015年度の組織拡大数は99,102人(前年101,781人)と2年連続で10万人を超えたが、6月末の現勢調査結果は、さまざまな奮闘や前進の芽をつくりだしたものの、1,060,118人(前年比−22,781人)と、依然として増勢に転じるには至らなかった。とくに、新規結成・加盟が129組織1,337人に止まったことなど、共同のひろがりなど運動のなかでつくりだされた新たな可能性を汲み尽くせていない。その打開が、全労連運動の新たな前進のうえで決定的に重要なカギになっている。
現状は、若者などの労働組合への信頼の強まりなど、端緒的だが変化がうまれる一方で、全体としては、団塊の世代の組合活動家の大量退職(定年)や産業構造の再編などによって、日常活動が停滞し、また、職場が様変わりして、統一闘争への結集や集会参加、署名集約などのとりくみが弱まっている。それを、世論と共同の前進や役員の献身的な努力で何とかカバーしている状況となっている。
この状況を打開するためには、組織拡大強化を中心にした活動スタイルを徹底し、組合員参加型の日常的な組織拡大運動を組織の隅々にひろげる努力を尽くすことによって、切実な要求を基礎にした要求実現と日常活動の活性化、組織拡大強化の相乗効果をつくりだす必要がある。くわえて、いっそう切実化する要求とアベノミクスのもとで加速度的に拡大する格差と貧困、各分野で深まる矛盾と亀裂に依拠して、世論と共同を前進させるなかで、全労連運動への信頼と結びつき、社会的な影響力を拡大し、組織拡大強化につなげていくことが強く求められている。
III 2016〜17年度の運動の基調
以上の情勢認識のもとに、安倍政権の「二つの暴走」(①アメリカと一緒に「戦争する国づくり」と、②働く人々や地域を踏み台に、大企業の利益に全面奉仕する「グローバル競争国家づくり」)と全面的に対峙し、要求実現と組織拡大強化の新たな前進を切り拓くために、全労連と加盟組織は以下の「三つの基調」を掲げて、2016〜17年度のとりくみを有機的に結合して推進する。
とくに、安倍政権が明文改憲の野望を露わにするもとで、「憲法をまもり活かす」立場を鮮明にして、たたかいを相乗的に発展させる。「三つの基調」を軸に、“地域”から、安倍政権NO!の“共同”をさらに前にすすめ、2025年をめざして全労連運動への信頼と結びつき、社会的な影響力を強化し、力関係を変えて、組合員が具体的な“成果”を実感できるたたかいを構築する。
(1) その第一は、全労連運動の飛躍を実現する最大のカギとして、あらゆる活動を通じて組織拡大強化を中心に据えた活動スタイルを確立し、すべての加盟組織が2016年度に増勢に転じ、社会的な影響力の拡大と150万全労連に向けた新たな前進・飛躍を開始することである。
そのため、別添のとおり、「組織拡大強化4か年計画 <2016〜19年度>(新4か年計画)」を策定し、①切実な要求に基づく総対話と共同を単産と地域が総がかりで発展させ、労働運動への信頼と結びつき、社会的な影響力を強化し、要求実現と新加盟・結成など組織拡大強化の相乗効果をうみだすとともに、②あらためて組織の基礎を見つめ直し、職場活動を活性化して、組合員参加型の日常的な組織拡大強化運動をすべての組合で粘り強く推進、定着させる。
(2) 第二は、アベノミクスのグローバル競争国家づくりによって格差と貧困が加速度的に拡大し、働く人々をはじめ、広範な人々の暮らしと雇用の悪化、地域社会の疲弊が深刻化するもとで、賃金の底上げをはじめ、暮らしと雇用をまもる課題でも、“地域”を基礎に共同を大きく前進させることである。それは、内需拡大による日本経済再生の中心課題であり、アベノミクスへの対抗としても特別に重視してとりくむ必要がある。
①賃金の底上げをはじめ、ますます切実化する要求を基礎に、各分野、職場・地域から共同したとりくみを構築するとともに、②経済のグローバル化とアベノミクスの矛盾が集中的に現れている“地域”を基礎に、新自由主義改革そのものの転換をせまり、日本経済の再生と持続可能な地域循環型の経済・社会を求める大きな共同へと発展させるために全力をあげる。
その中心に、賃金の総合的な底上げと中小企業支援の抜本的な強化、地場産業・農林漁業の振興、さらには暮らしをまもる公務・公共サービスの拡充を据えて、憲法に依拠した「全労連大運動」、その具体としての「地域活性化大運動」を戦略的・系統的に強化しながら合意づくりをすすめ、国民的な共同へと発展させる。
(3) 第三は、引き続き、戦争法を廃止し、安倍政権を退陣に追い込むことを当面の重点課題に据えながら、改憲策動と戦争する国づくりをストップさせるために総力をあげてとりくむことである。
そのため、「戦争法廃止・立憲主義まもれ・安倍政権NO!」の国民的な世論と共同をさらに前にすすめ、力関係の転換をつくりだす。改憲策動に断固反対し、憲法をまもり活かす国民運動の発展に力を尽くす。
辺野古新基地建設など基地強化に反対するとりくみを発展させるとともに、原発ゼロ・再生可能エネルギーへの転換、住民の暮らし第一の震災復興など、安全・安心社会をめざすとりくみを、地域を基礎にさらにひろげる。
IV 組織拡大強化を軸にした活動と新4か年計画の推進
(1) 組織の拡大強化こそが要求実現の最大の保障であり、全労連運動発展の最大のカギとなっていることを徹底し、すべての加盟組織が組織拡大強化を中心にした活動スタイルを確立し、新たな前進、150万全労連に向けた飛躍に挑んでいく。
その中心に「新4か年計画」の推進を置き、単産と地方組織が総がかりで具体化をすすめる。
毎年の組織拡大の目標は1割増とし、初年度の2016年度においては、すべての加盟組織が増勢に転じることをめざす。そのため、各単産・地方組織は、「新4か年計画」に対応した組織拡大強化の目標を確立する。組織内においては単組・支部・分会レベルにおいても、少数組合は過半数組合へ、過半数組合は8割以上組合へなど、具体的な数値目標を明確にするとともに、各産業・地域から社会的な結びつきと影響力を強化しながら、未組織・未加盟対策を抜本的に強化する目標を設定する。
(2) 単産と地方組織は協力しあって、「組合員10人に1人」をひとつの指標・目標に、自らの職場・地域で組合員拡大を推進する「組織建設委員」の選出を運動としてとりくみ、日常活動の活性化、組合員参加型の日常的な組織拡大運動を組織の隅々に定着させていく。
すべての単組・支部・分会が毎月拡大、退職者を上回る拡大に強くこだわり、「1人が10人と対話」「1人に10回対話」「対象労働者と近い人が当たる」など試されずみの方針を実践し、拡大運動を日常的に推進する。そのため、職場総点検・日常活動活性化の指標(目標)づくりをおこない、眼に見える組合活動を推進しながら、要求実現と組織拡大強化の相乗効果をつくりだす。
とくに、非正規雇用労働者の組織化を重点課題に据え、最賃など賃金の底上げのとりくみや雇用の安定、全労連共済の活用などを通して、加入呼びかけを徹底する。
これらを推進するため、春と秋に「組織拡大強化月間」を設定するとともに、全労連として組織拡大強化の点検を通年的に強化しながら、年間を通じてニュース発行をおこなうなど、到達点と教訓の普及をすすめる。
(3) 「新4か年計画」で最重点課題とした「2025年をめざし全労連運動への信頼と結びつき、社会的影響力を格段に強化」するための「単産と地域、官と民が文字どおり一体となって推進する総対話と共同、組織拡大強化の総がかり作戦」の定着・推進に全力をあげる。
そのため、すべての単産・地方組織は、あらためて産業政策・地域政策を深め、共同を前進させながら、未組織・未加盟対策の目標を明確にして、総がかり作戦を系統的に推進する。
とりわけ、初年度となる2016年度においては、単産と地方組織が協力して「総がかり推進委員」の選出をすすめ、計画が具体的にスタートする秋口の段階では20県以上、年度内にはすべての都道府県で「調整会議」をスタートさせ、単産と地域の重点計画を寄せあい、総がかり作戦を具体化・推進する。
また、各県・地域の総がかり作戦の具体化状況を掌握しながら、加盟組織からのエントリーを求めて、全労連としての「最重点計画」(半年ごとに10件程度。8〜1月、2〜7月)を策定し、人と金を重点的に投入して先進事例づくりをすすめる。とくに、第I期の「最重点計画」の調整を重視し、「新4か年計画」を円滑にスタートさせ、総がかり作戦を推進する。
これらを総合的に推進するため、全労連幹事会のもとに「4か年計画推進委員会」を設置し、総がかり作戦の具体化状況を掌握、調整する。「総がかり作戦推進ニュース(仮称)」を定期的に発行して、とりくみの現状や教訓の普及に強め、「調整会議」任せではなく、組織全体で推進する意思統一と態勢づくりをすすめる。また、地域での運動強化のために、単産と地域が協力して地域労連の態勢整備を強める。
V 要求実現の重点課題と具体的なとりくみ
1.実質賃金の底上げを実現する運動を総合的に推進する
a.社会的な賃金闘争をいっそう強化し、すべての働く人々の賃金を底上げする
(1) 組合員に“賃上げの果実”を実現し、すべての働く人々の実質賃金の改善・底上げを獲得するためには、社会的なたたかいをいっそう前面に押しだし、強化する必要がある。実質賃金の底上げを求める世論喚起と共同を推進し、最低賃金・公契約・公務賃金改善(とくに自治体非正規と初任給の重視)など「社会的な賃金闘争」をさらに強化する。
その中心課題に、人間らしく暮らせる全国一律最賃制の実現を据え、2020年を目途にした「全国最賃アクションプラン(全国一律最賃制の実現をめざす行動計画)」(別紙)を策定し、世論喚起と合意づくり、共同、組織化を推進し、最低賃金法の改正をめざす。グローバル大企業のためのアベノミクスへの対抗としても重視し、内需拡大による日本経済再生の中心課題として総力を結集してとりくみを推進する。
これと連動して、産業や職種ごとの最低規制・底上げのとりくみを抜本的に強化する。人手不足の深刻化を踏まえた政策化を重視し、各産業の未加盟労組や業界団体などとの連携、合意づくりをすすめる。また、個別労使においても最賃協定の獲得・改善のとりくみを強め、職場から底上げのとりくみ(時給1,500円程度をめざしながら、少なくとも時給1,000円以上)を推進する。
(2) 以上のとりくみをすすめるため、対策委員会の設置を検討するとともに、2016年10月に「賃金闘争交流集会」を開催して、意思統一と具体化を深める。
全組合員学習用の簡便なリーフレットを作成するとともに、2016秋季年末闘争の段階から新たな法改正署名にとりくむ。また、中小企業支援の団体署名の発展・強化を検討する。
それらを素材に、「地域活性化大運動」と結んで、未加盟労組や地域の諸団体、商店街などとの対話・懇談運動を系統的にすすめる。地方議会の意見書採択運動に全地方組織がとりくむ。
最低生計費試算調査やファストフード・グローバルアクションなどの経験をいかし、インパクトのある全国統一行動を系統的に実施し、低賃金の不安定雇用労働者の暮らしの実態告発と組織化を強め、当事者を中心にした運動展開をめざす。
(3) 「全国最賃アクションプラン」がめざす全国一律最低賃金の水準は、「健康で文化的な人間らしい最低限の暮らしを営むことができる水準」とし、この間積み上げてきた最低生計費試算調査の結果なども活かし、時給1,500円・月額22〜23万円程度が必要なことを明らかにしながら、諸団体との合意づくりをすすめる。
同時に、2017年度の改定に向けては、安倍政権が最賃1,000円や同一労働同一賃金をいわざるを得なくなっているという状況を活かし、労働団体や若者などとの共同を強めて、政府に「今すぐ最賃1,000円以上」の緊急的な政治決断を強く迫る。
とりわけ、17国民春闘においては、職場・地域から少なくとも時給1,000円未満の人をなくすとりくみを“広義の最賃闘争”というイメージで強力に展開する。また、現行制度の制度的限界を明らかにしながら、CDランク県での底上げ・格差是正のとりくみを集中して展開する。
最賃審議会委員については、17年改選での委員獲得をめざして、中央・地方で早期に候補者を選定し、中央・地方で統一的にとりくむ。また、ブロック内での協力を強めながら、地方最賃審の審議の全面公開や意見陳述の実現などの状況をさらに改善させる。
(4) 公契約条例については、制定や検討の動きが多くの自治体にひろがっているもとで、すべての都道府県で重点自治体を設定し、賃金の下限設定を持った条例獲得で飛躍をつくりだす。また、各単産は、深刻化する人手不足問題のとりくみとも結んで、産業・職種ごとの底上げのための補助金や財政支援等のとりくみを検討し、公契約的とりくみの幅をひろげる。
公務賃金改善の課題を重視し、官民一体のたたかいを発展させる。当面する勧告で、すべての公務労働者の賃上げにつながる改定をめざすとともに、若者や非正規雇用労働者の底上げを重視してとりくむ。また、手当等の改悪を許さない官民一体のたたかいをすすめる。高裁で重要段階にある賃下げ違憲訴訟への支援を強める。
非正規雇用労働者の底上げ、均等待遇の実現を求めて、職場から底上げのたたかいを強化する。同時に、安倍政権が同一労働同一賃金の検討をすすめているもとで、すべての差別禁止、均等待遇原則に基づく実効ある法改正を求めて、16年秋から17年春の重点課題としてとりくむ。
b.生計費原則を基礎に、職場から春闘再構築の統一闘争をいっそう強化する
(5) 生計費原則を基礎に、職場・地域から実質賃金を改善する大幅賃上げ要求を掲げて、とりくみをいっそう強化する。春闘再構築論議を強めて、日常活動を強化しながら、全組合員参加の統一闘争を推進する。春闘アンケートの大規模集約などを出足早く開始し、生活と労働の赤裸々な実態を見つめ直す職場討議を徹底する。
統一闘争のあり方や結集強化について、単産などとの意見調整や戦術会議を検討し、日程の統一やストライキでの決起など、原点に立ち返った組織論議を深め、国民春闘の再構築をめざす。
職場から時給1,000円未満の人をなくし、底上げを実現するため、すべての組合が、パートや派遣など非正規雇用労働者の底上げ、均等待遇実現の課題を重視し、その事業所・職場で働くすべての人を対象にした最賃協定の改善・獲得をめざす。
(6) 年末一時金・夏季一時金のとりくみを強め、すべての組合が前年実績以上を獲得し、この間の実質賃金の低下を意識した年収確保をめざす。派遣や請負を含め、その事業所で働くすべての労働者を対象にした一時金の支給、均等待遇を求めてとりくむ。
そのたたかいとも結合して、公務の確定闘争を重視し、地域を基礎に、官民一体のたたかいを推進する。
秋季年末闘争の結節点として、16年11月に中央行動(9日を軸に調整)を配置する。
(7) 成果主義賃金の導入・拡大の動きが強まっているなかで、学習を強化し、導入を許さない意思統一と反撃のたたかいを構築する。そのため、導入策動や提案内容等の調査・分析をすすめ、対策づくりを強化する。すでに評価制度が導入されている組合でも、その問題点、弊害を具体的に明らかにし、改善・撤回を求めるとりくみをねばり強くすすめる。地公法等の改悪で「能力及び実績に基づく人事管理の徹底」が強められているもとで、地域から官民一体のとりくみを強化する。
(8) 17国民春闘での大幅賃上げ、諸要求の獲得をめざして出足早くとりくむ。そのため、「社会的な賃金闘争」の推進とも結合して、16年10月に賃金闘争交流集会を開催する。
あらためて春闘とは何かの論議を徹底し、職場の切実な要求に基づく全組合員参加型のとりくみと統一闘争への結集を強化する。決められた期日までの要求提出、スト権確立とともに、回答指定日の順守やストライキなど実力をかけた統一行動への結集などについて議論を深め、具体化につなげる。2017年国民春闘討論集会を11月23〜24日に開催する。
切実な要求を基礎にとりくみを強化するため、春闘アンケートの内容をさらに工夫し、大規模集約にすべての組織が力を集中してとりくむ。大企業に社会的責任の履行を求め、大幅賃上げの世論を喚起する宣伝行動や地域総行動のさらなる工夫、発展をめざす。
2.安倍「雇用改革」を跳ね返し、働き続けられるルールを確立する
(1) 「世界で一番企業が活動しやすい国」づくりを掲げ、雇用流動化政策を強引に推進する安倍「雇用改革」に反対する共同闘争をさらに強める。未加盟労組や法曹関係者との対話・懇談運動にとりくみながら、雇用共同アクション規模のとりくみを全国にひろげ、ナショナルセンターの違いを超えた反撃を構築するために、ねばり強く工夫したとりくみをすすめる。
その当面する中心課題に、残業代ゼロ・定額働かせ放題の労基法改悪法案の撤回・廃案と解雇規制の緩和阻止の課題を据え、労働組合と市民の共同したとりくみを強化する。また、雇用維持型から労働移動支援型への転換の問題点を明らかにしながら、人材ビジネスを重用した雇用流動化政策の見直し、転換を迫る。労働者派遣法の実効ある改正を求めるとりくみなど、雇用の不安定化、細切れ雇用に反対し、正社員が当たり前の雇用の安定を求めていく。
ブラック企業への批判の高まりや人手不足の深刻化のもとで、安倍政権も労働時間規制等に言及せざるを得なくなっている変化を活かして、労働時間の上限規制などの要求を対置し、その実現を求める反撃を強化することを強く意識して攻勢的なとりくみを推進する。
雇用共同アクション規模で新たな署名を検討するなどして、職場から全組合員規模のとりくみをつくりだす。大規模学習運動にとりくむこととし、学習素材を具体化する。労働法制中央連絡会とも共同して2016年秋に交流集会を開催する。16年秋の臨時国会から、労基法改悪法案の廃案と解雇規制緩和の検討中止を求めて、雇用共同アクション規模での国会行動等を具体化するとともに、労働時間の上限規制のとりくみを強めながら、重要段階では全国統一行動や大規模な共同集会などを攻勢的に配置できるよう、たたかいと準備をすすめる。
(2) 職場から働くルールの確立、働き続けられる職場づくりの課題をすすめる。そのため、チェックリスト等を活用して、すべての組合が「職場総点検運動」に継続的にとりくむ。
とくに労働時間短縮の課題を重視し、行動期間などを検討し、すべての組合が、増員要求とセットで、時短・不払い労働(サービス残業)一掃を求めて、ノー残業デーや退勤時間調査などに集中的にとりくむ。36協定の改善・特別条項の廃止、インターバル規制の実現など、労働時間の縮減・上限規制を求めて、労使交渉を強める。また、公務の“ゆう活”をはじめ、フレックスタイム制や早出、長時間労働の拡大に反対してとりくむ。
労働時間の法的な上限規制やインターバル規制を実現するため、世論喚起など社会的なたたかいを強化し、野党4党の労働時間規制法案の成立を求めながら、政府に実効ある法改正を迫っていく。夜勤・交代制労働に対する労働時間の短縮措置など、規制強化を求めて、関係単産との連携を強めながら、シンポジウムを開催するなど世論喚起をすすめる。
(3) 引き続き、ブラック企業なくせのキャンペーン運動にとりくみ、青年や学生と連帯した行動を強化する。
人手不足がいっそう深刻化するもとで、若者や女性が定着し、働き続けられる労働条件整備を求めるとりくみを、各産業・分野から時短・増員の課題とセットで推進する。また、メンタルやパワハラ対策など労安活動を強化するとともに、育休や介護休暇の代替要員の確保など、働き続けられる職場づくりの課題で具体的な成果を獲得する。
改悪派遣法の職場への持ち込みに反対するとりくみを強化するなど、雇用の不安定化、細切れ雇用の拡大に反対してとりくむ。非正規雇用労働者の正社員化、無期雇用への転換を求めるとりくみを引き続き強める。労契法20条を活用して、非正規雇用労働者とともに無期雇用への転換時や再雇用時の処遇改善・均等待遇確保の課題でも前進をつくりだす。
人手不足を口実にした低賃金・無権利の外国人労働者活用の安易な拡大に反対し、日本人と同等の賃金保障を求めてとりくむ。とくに、技能実習生問題では、送り出し国の労働組合との連携を強めながら、法改悪を阻止し、制度の廃止・抜本見直しを迫っていく。
高齢者の雇用についても、生きがい雇用の名目で低賃金就労を強いるシルバー人材センターの見直しとまともな賃金保障を求めるとりくみをすすめる。年金支給開始年齢の繰り上げに留意し、官民一体のとりくみで定年延長を軸に改善を迫るとともに、恣意的な継続雇用拒否を許さず、適切な処遇の実現を求めていく。
3.社会保障、教育の拡充を求めるとりくみを強化する
(1) 格差と貧困の加速度的な拡大という現状を踏まえて、賃金の底上げとも結んで、憲法25条を軸に最低生活をまもる地域段階からの共同づくりを、労働組合の社保闘争として推進する。
日々の糧を得るために劣悪な仕事にも飛びつかざるを得ない人をなくし、雇用の質をまもるため、失業時保障の拡充を求めてとりくむ。支給額や支給期間の拡充(少なくとも2000年以前の水準に戻すこと)にくわえ、非正規雇用労働者への適用拡大を求める。その一環として、リーマンショックを機に緊急的に整備された求職者支援制度については、負債を負うことなく安心してスキルアップがはかれる制度への抜本見直しを追求する。そのため、ハローワーク前アンケートなどのとりくみを検討し、失業者・求職者の切実な実態と声に依拠してとりくむ。
同時に、生活保護や年金の改悪・削減に反対するとともに、最低保障年金制度の実現など、人間らしい暮らしを保障する最低保障、所得保障を求めるとりくみを総合的にすすめる。また、年金者組合の年金裁判や生存権裁判への支援を強める。
(2) 社会保障制度・皆保険制度をなし崩しにし、営利化を推進する社会保障解体攻撃(社会保障制度改革推進法に基づく一連の改悪)に反対し、中央社保協の「医療・介護大運動」と連携しながら、地域を基礎に、“権利としての社会保障”を求める共同行動を推進する。
社保協などと協力して、18年度に向けて具体化が強められている医療・介護提供体制の縮小攻撃に反対し、地域段階から医療・介護の深刻な実態や切実な要求を掘り起し、必要な医療機関や介護施設の整備、社会保障制度の拡充を求めるとりくみを強化するとともに、国保料や介護保険料など患者・利用者・国民負担の軽減を迫る。また、消費税増税先送りを口実とした社会保障抑制攻撃を許さず、税と予算の在り方の見直しを求めるとりくみを強化する。
医療・介護・社会保障費の事実上のキャップ制を許さず、公的保険範囲の縮小(保険外し)・営利化に反対して、皆保険制度をまもるとりくみを関係団体とともに推進する。10・20いのち大集会をはじめ、社会保障をまもる共同のとりくみへの結集を強める。
(3) 医療・看護・介護労働者の必要数の確保を求め、診療報酬・介護報酬の改善や処遇改善を柱に、関係単産の協力のもとにとりくみを推進する。毎年11月を「介護アクション月間」として集中したとりくみを展開する。
とくに、社会問題化している保育や介護の課題では、当事者や利用者の運動との連携を強化し、働き続けられる条件整備を求める労働運動としてのとりくみを発展させる。配置基準の引き下げや資格要件の緩和など安上がりの体制づくりを許さず、公的保育・介護施設の拡充を求める。保育や介護等の人材不足を解消するため、処遇改善のとりくみを緊急行動として推進し、少なくとも世間並みの賃金が保障できる財政措置の実現などを迫る。
(4) 学費・教育費の高騰が続き、奨学金ローンやブラックバイトが大きな社会問題となっているもとで、安倍「教育再生」に反対し、高等教育を含む学費・教育費の無償化・負担軽減など、すべての子どもたちの学ぶ権利をまもるためにとりくみを強化する。
奨学金ローン問題の抜本解決を求めて、若者や奨学金の会などとの協力・共同を強化し、給付制奨学金への全面転換や利子部分の返済免除、所得に応じた返済猶予・免除措置の拡充など、改善を求める共同行動を展開する。また、最賃闘争とも結んで、ブラックバイト一掃のとりくみを前進させる。
4.持続可能な地域経済・社会への転換を求めるとりくみの強化
(1) アベノミクスの新自由主義改革、グローバル競争国家づくりが各分野で矛盾や亀裂をひろげるもとで、「雇用の安定と社会保障拡充を中心にした安全・安心社会を求める大運動(全労連大運動)」と、その具体としての「地域活性化大運動」を引き続き重視し、今後の労働運動を左右する戦略的課題として、賃金の底上げや中小企業支援、労働法制、社会保障・教育の拡充など、諸課題を統一したとりくみとして推進する。
労働組合をはじめ、“地域”の経済団体など広範な団体、中小企業や業者、商店街、自治体などとの対話・懇談運動を、県段階から地域段階へ、さらに各産業・分野にひろげ、転換の合意づくりと一致点に基づく共同行動づくりを系統的に追求する。
その当面する最重点課題に、賃金の底上げと若者などのまともな雇用、中小企業支援の抜本的な強化を据えて、経済や税の在り方の転換を求め、持続可能な地域循環型の経済・社会をめざすとりくみへと発展させる。さらに、雇用の安定と社会保障拡充、安全な公共交通の再生など、地域のセーフティネット確立の課題へとひろげていく。
そのため、各単産・地方組織においても産業政策、地域政策を深めながら、安全・安心の公務・公共サービスの確立をめざす課題を重視して、政策転換を迫る。また、地場産業や農林漁業の振興の課題では、諸団体との対話・懇談における要望や問題点の聞き取りを重視し、懇談の相手方のとりくみにも協力しながら、政策化や共同を強める。
そのため、2016秋季年末闘争においては、10〜11月を集中期間として、全労連作成の「要請書モデル」を活用して、単産や地域の独自要求も加味しながら、対話・懇談運動を集中的に展開し、一致点をひろげる。
(2) 暮らしと地域をまもる当面の重点課題に、消費税10%大増税の中止・撤回とTPP批准阻止を据え、共同をいっそう強化する。
16年秋の臨時国会ではTPP批准阻止を最大の柱に大企業優先の経済政策の転換を厳しく迫るため、消費税増税中止署名とTPP批准反対署名を推進しながら、各分野から実態告発を強めて、諸団体との共同行動をすすめる。市民共同アクションや社保協規模の連携を強化しながら、国会行動や統一行動を具体化する。消費税増税先送りを口実とした社会保障や暮らし関連の予算や施策の削減・改悪に反対し、税と予算の在り方の見直しを求めてとりくむ。また、農業関係の課題を重視し、地域から共同を推進する。食健連のグリーンウエーブへの協力を強める。
マイナンバーの中止・撤回を求めて、引き続き連絡会などの共同をすすめながら、マイナンバーの問題事例等を告発し、改善を求めてとりくむ。
(3) 税金の集め方、使い方の転換を求めるとりくみを強化する。法人税減税・消費税増税に反対するとりくみを強化しながら、大企業・大金持ち優遇税制を見直し、生計費非課税など原則に立ち返った税制への転換を求める。低所得者や中小企業への税と社会保険料の軽減措置の拡充を求めてとりくむ。税金の使い方を改め、国民の生活保障や社会保障拡充への政策転換を迫る。
社会問題化しているパナマ文書問題等の追及を強化し、グローバル大企業や大金持ちの税逃れを許さず、国際的な協調で適正な課税をめざす。ファンドなどマネーの横暴に対する規制強化を求め、中小企業の経営と地域経済をまもるとりくみを強める。
(4) 安倍政権と財界がすすめる道州制、地方創生など、住民自治と暮らし破壊の統治機構改革に反対するとりくみを引き続き強める。安倍政権の地域創生のねらいなどを明らかにしながら、その反撃のとりくみとしても「地域活性化大運動」を重視してとりくむ。
“地域”における対話・懇談運動で出された諸団体のとりくみや要望等も踏まえながら、安全・安心の公務公共サービスを求める政策化を強め、住民自治の拡充、安全・安心の地域を求める。官民一体のとりくみを強化し、公務員バッシングに反撃し、公務リストラに反対する共同を前進させる。
また、大企業の再編・工場閉鎖等に反対して、民主的な規制を求めるとりくみを強化するとともに、ライドシェア問題など規制緩和のさらなる推進や新陳代謝の促進の名による中小企業つぶしに反対する共同を前進させる。
5.国民的な世論と共同で、戦争法を廃止し、改憲策動を打ち破る
(1) 参議院選挙の到達点を踏まえて引き続き、中央・地方で共同を推進し、安保法制(戦争法)廃止・戦争する国づくり反対の総がかり行動を国民運動としていっそう発展させる。そして、早期に安倍政権を退陣に追い込み、戦争法を廃止し、改憲策動と戦争する国づくりをストップさせるために全力をあげる。
そのため、9の日宣伝や毎月19日のいっせい行動を全国で継続するとともに、中央・地方で継続的に総がかりの大規模行動・集会にとりくむ。とくに、労働分野での共同を前進させるために、未加盟・中立労組との対話・懇談運動に系統的にとりくみ、地域段階から共同をひろげる努力と工夫をさらに強める。
次の衆議院選挙に向けて、戦争法廃止の共同を土台に、「野党は共闘」の世論喚起をいっそう強め、「戦争法廃止・立憲主義まもれ・安倍政権NO!」の野党共闘を推進する。
9月中下旬開会といわれる2016年秋の臨時国会では、野党共同提出法案を支持し、戦争法廃止の国会論戦を強く求めていく。また、2000万人統一署名の到達点を受けた今後の展開について、総がかり行動実行委員会での議論を踏まえて検討をすすめる。
(2) 戦争する国づくりの当面する焦点の課題として、駆け付け警護の解禁など南スーダンPKO派遣部隊の任務拡大問題を重視し、秋の臨時国会では集中的なとりくみを具体化する。
また、辺野古新基地建設断念・普天間基地撤去の課題を引き続き重視し、全国的な課題としての位置づけをさらに強化してとりくむ。オスプレイ配備反対など、全国で基地強化反対のとりくみを共同行動として強めていく。安保条約の廃止を求めて、世論喚起を強める。
ISをはじめ非道なテロに反対し、武力ではなく格差の是正など構造転換を求めて、国際労働運動との連携も強化しながら、世論喚起を促進する。
(3) 憲法をめぐる攻防がいっそう激化するもとで、明文改憲の本丸が憲法9条と緊急事態条項にあることをひろく明らかにしながら、憲法をまもり活かす共同の新たな発展をめざす。
そのため、暮らしと雇用をまもる課題とも連動させながら、憲法の大学習運動を展開し、「憲法をまもり活かそう」を合言葉に、すべての課題を通じて憲法擁護の課題を意識しながら、全組合員規模のとりくみを具体化し、草の根の世論喚起と憲法擁護の共同づくりを推進する。また、憲法をめぐる情勢を見ながら、「かがやけ憲法署名」を引き継ぐ署名の必要性について、戦争法廃止署名の今後の扱いとも関連させながら検討する。
政府・与党が明文改憲に具体的に踏み出そうとしているもとで、すべての加盟組織の総力をあげて、総行動月間等の集中した行動を配置し、全組合員規模の全国行動を展開する。とくに、改憲発議等の重要段階には、ストライキでの決起など全国統一行動を配置し、全力で反撃する。
6.震災復興、原発ゼロ、核兵器廃絶を求めるとりくみ
(1) 東日本大震災からの全面復興を求めるとりくみを再強化するとともに、熊本大地震へのとりくみの加速化を迫っていく。
東日本大震災については、政府による支援縮小の動きが顕著になるなかで、あらためてアンケート活動などによる実態把握や全国規模の調査団などを検討し、切実な実態を踏まえた対策強化を迫る。とくに、復興事業における労働者の実態把握と対策にとりくむ。
また、生活再建支援法の改正などを柱に、署名などのとりくみを推進する。福島原発事故に対する国と東電の責任を追及し、支援の打ち切りに断固反対してとりくむ。
(2) 原発ゼロ・再生可能エネルギーへの転換を求めてとりくむ。引き続き、全国連絡会に結集し、反原連などとの共同を中央・地方で推進する。定期的な大規模行動などを展開しながら、川内原発の即時停止、原発再稼働反対のとりくみを発展させる。
地球温暖化や地域活性化の課題とも連動させながら、再生可能エネルギーへの転換を求める共同を地域から推進する。
そのため、「再稼働反対・フクシマ切り捨て許さない」課題を軸にした新署名を調整・具体化する。立地県をはじめ、すべての都道府県段階で、あらためて大規模集会やシンポジウムにとりくみ、草の根の反撃を推進する。反原連などとの共同による大規模行動を時々に具体化しながら、金曜行動などに引き続き全国でとりくむ。
(3) あらためて核兵器廃絶のとりくみを強める。核兵器禁止条約の締結交渉の開始を求めて、被爆者が呼びかけた新たな署名をすべての加盟組織で推進し、大規模集約をめざす。国際的な世論喚起をすすめながら、被爆国・日本政府の役割発揮を厳しく迫っていく。
原水爆禁止世界大会の成功のために、参加者組織などをすすめる。6・9行動など定期的な宣伝行動を地域から推進するとともに、国民平和大行進や3・1ビキニデーの成功のために力を発揮する。
7.人権と民主主義をまもり、政治の民主的な転換をめざす
(1) 戦争する国づくりと改憲策動が進行し、国民の人権や市民団体の活動、マスコミ等への圧力が強まっているもとで、人権と民主主義をまもるとりくみを強化する。特定秘密保護法の廃止を求めて、ねばり強くとりくみを継続する。
安倍政権によるマスコミや表現の自由への圧力強化や、労働組合や市民運動への干渉、公共施設の使用制限等に反対するとともに、権力のチェック機関としてのマスコミの役割発揮を求めていく。また、ヘイトスピーチへの規制を強く迫るとともに、LGBT(セクシャル・マイノリティ)などへの支援強化を求めてとりくむ。教育に対する不当な干渉を許さないとりくみを強めるとともに、高校生の政治活動の届出制に反対し、自主性の尊重を求めていく。また、教科書採択問題では地域の運動への結集を強めてたたかう。
金権政治に反対して、甘利元大臣の口利き疑惑等の徹底究明を迫るとともに、企業・団体献金の全面禁止、政党助成金の廃止を求めるとりくみを強化する。民意の正確な反映を求めて、比例代表制を中心にした選挙制度への改善を迫っていく。
公務員の労働基本権と政治的自由の回復のたたかいを強める。また、戦争するための人づくりや教育への介入、教職員組合への攻撃に反対するとりくみを地域から強める。
(2) 安倍政権の「二つの暴走」に反対する共同を前進させることと合わせて、国政・地方政治の民主的な転換を求めるとりくみを強化する。
国民的な共同がひろがる新たな情勢のもとで、参議院選挙の到達点も踏まえ、日本の針路を左右する極めて重要な選挙となるであろう衆議院選挙に向けて「野党は共闘」の草の根の世論と運動をさらに強めながら、職場・地域から切実な要求を基礎に日常的に政治論議を深めながら、要求闘争と政治闘争の有機的な結合を重視し、政治革新のために投票率のアップをめざす。また、労働組合としての選挙闘争のあり方や工夫、共同の発展について引き続き組織論議を深め、衆議院選挙に向けたとりくみを強める。
地方自治体の首長選挙や議員選挙のとりくみをいっそう強化し、「暴走」政治への防波堤としての地方自治体の役割発揮、住民本位の安全・安心の公務公共サービスを求めてとりくむ。地域から政治の民主的転換を求めるとりくみを推進し、首長選挙でも積極的な役割を果たす。
(3) 労働組合の国際連帯をいっそう強化する。とくに、経済のグローバル化のもとで新自由主義改革が推進されるなかで、ILOの提起やITUC(国際労働組合総連合)などが呼びかける連帯行動にも留意しながら、国際的な連帯、共同を推進していく。引き続き、二国間の共同を推進するとともに、とりわけ、アジアにおけるとりくみを重視する。
核兵器の廃絶、テロの根絶を求めて、平和憲法を活かして、国際的なとりくみを推進する。
8.組織の強化に総合的にとりくむ
(1) 組織拡大強化を中心に置いた活動スタイルを確立するために総合的にとりくむ。
格差と貧困が加速度的に拡大し、底上げの課題や当事者を中心にした運動づくりがいっそう重要であり、非正規・不安定雇用労働者の対策をこれまで以上に強める。そのため、賃金の底上げなど要求実現の課題と結んで、すべての加盟組織で非正規雇用労働者の組織化を重点課題に据えるとともに、単産の個人加盟組合・分会(可能な限りすべての都道府県段階に)とローカル・ユニオン(可能な限り地域労連単位で)の強化・確立をすすめる。
また、非正規センターの位置づけと役割を強化し、これまでのパ臨連など4連絡会による構成をあらため、単産と地方組織から委員を選出して、非正規雇用労働者など当事者が前面に立った運動を推進できる体制への早期移行をすすめる。
5,000人未満の地方組織と東日本大震災の被災3県に対する特別対策については、重点を絞りながら、とりくみを促進する。
(2) 社保庁やIBM、JAL、明乳など、すべての争議の全面解決をめざして、対策と相互支援を強める。安倍政権が産業構造の転換、企業再編をいっそう強めようとしているもとで、工場閉鎖や企業再編に対して、大企業の社会的責任を問うとともに、地場産業と中小零細企業の雇用をまもるとりくみを強める。
毎年、春と秋に争議総行動を実施する。また、全国いっせい労働相談ホットラインを実施し、相談の解決を支援しながら、組織化につなげるとりくみをいっそう強める。
(3) こうした課題を推進するため、人づくりの課題を重視する。引き続き、「わくわく講座」を重視し、集団受講を促進しながら、毎年2,000人以上の受講者を組織し制度化をすすめる。また、総がかり作戦等の推進と連動したオルグ養成講座の充実などをはかる。
“地域”の重要性が高まっているもとで、総がかり作戦の推進とも連携しながら、地域運動と地域労連の強化をすすめる。そのため、単産やOB等にも協力を求めて特別対策を具体化するとともに、対策会議(仮称「労働運動の社会的役割と影響力の拡大をめざす地域運動交流集会」)の2017年度開催を念頭に検討を開始する。
青年や女性など階層別の対策を強化し、組合運営への参加を促進する。次世代育成のとりくみを推進するとともに、とくに規約に定めた女性労働者の参加(3割目標)を重視し、すべての加盟組織で実現をめざす。青年や女性が働き続けられる職場づくりの課題を重視して、労働時間短縮のとりくみを強化するとともに、「ブラック企業なくせ」のキャンペーン運動や若手活動家のネットワークづくりにとりくむ。
(4) 働く人々の暮らしの悪化が顕著になっているもとで、労働者福祉のとりくみを総合的に強化、検討する。とくに全労連共済については、組合員の助け合い事業としていっそう強化し、組織の拡大強化につなげる。
① 組合員拡大と結合した加入者拡大、組織共済加入者の個人共済加入促進、未加盟の単産と地方組織への加盟の働きかけなど、全労連共済の基盤拡充のとりくみをすすめる。個人共済の加入促進の飛躍をめざし、そのことを通して職場の団結を高める。
② 地方共済会での未加盟単産の加盟・利用を働きかける。同時に、「あり方検討委員会のまとめ」を踏まえ、地方共済会は、単産共済会とも連携しながら独自の共済事業にとりくめるよう、また、共済会実務単位を単産と地方に集約できるよう論議をすすめる。具体的には、火災1万人キャンペーン運動や自動車共済の代理所設置を推進するとともに、自動車共済の「統合」に向けた組織協議を推進するなど全労連共済のスケールメリットを活かしたとりくみを具体化し、地方共済会の活動を強化する。
③ 非正規雇用労働者向けの組織共済制度の整備充実、個人共済制度の改善、単産共済との共通制度の検討など積極的な制度改善をすすめる。また、「あり方検討委員会のまとめ」を踏まえ、制度の充実と安定のために、単産共済会との分担金割合や対象共済の拡充を検討する。
④ 全労連共済の教育・学習活動を強化する。単産共済との連携を深め、相互支援・交流・研究教育機能をいっそう充実させる。共済事業部会として単産・地方単位の制度説明会、単産・地方共済会単位の共済学校を開催する。分担金管理部会として、事例研究会、単産共済会事務局研修交流会、加盟単産委員長・書記長懇談会等を開催する。
以上