【読み合わせ資料】高額医療費制度引き上げ見送りでなく白紙撤回を(585号・全労連新聞2025年4月号)
全労連新聞連載:国会で何が起きているの?
医療費が高額になった患者の自己負担を抑える医療費負担限度額(高額療養費制度)について、石破首相は、今年8月の負担上限額の引き上げを見送った上で、秋までに改めて方針を検討し、決定すると表明した。患者団体などの反対が大きく夏の参院選への影響を考慮したといわれている。見送りではなく、白紙撤回を強める声をさらに大きくすることが必要だ。
厚労相 受診抑制による削減を2270億円と試算
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額(入院時の食費負担や差額ベッド代などは除く)が、ひと月で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度だ。
政府は、2025年度予算案にすべての所得層、すべての年代での限度額引き上げを盛り込んだ。厚労省が1月に示した資料には、「削減できる医療費を5330億円と見込んでいるうち、2270億円は受診抑制によるもの」と試算した。
予算案は3月4日に自民党、公明党、維新の会の賛成で衆議院を通過すると、緊急で取り組まれた引き上げ撤回を求める署名は、またたく間に広がり、開始後48時間で10万筆を超える賛同が集まった。3月7日には、石破首相が、予定していた今年8月の引き上げの「見合わせ」を表明。
しかし「今秋までに方針を検討し、(引き上げを)決定する」とも発言しており、7月の参院選後に、再度引き上げ案を出してくる可能性がある。
負担上限引き上げで 4割が「治療継続中断」
全国保険医団体連合会が、子どもをもつ乳がん患者を対象に行ったアンケートに、負担上限額が引き上げられたら4割が治療を中断、6割が治療継続が困難になると回答した。がん診断後に4割が年収が減ったと答えていることからも、高額診療費制度は治療と生活を支える命綱だ。
さらに、5割が子どもの進路変更、6割が習い事を減らすと回答するなど、子どもの教育にも大きな影響を及ぼす。「教育費のために治療を断念した方がいいのではないか」という悲痛な声も寄せられ、がんや難病の患者にとって受診抑制は命に直結する。
限度額引き上げ撤回を求める署名は15万人分を超えている。見送りではなく、白紙撤回させよう。そして高額医療費引き上げに賛成した議員に参院選で審判を下そう。