1998年7月28日
全国労働組合総連合
「あなたは明日から会社にこなくてもいい」、「会社の経営危機をのりきるためにやめてほしい」とか、あるいは労働者を取り囲み「やめろ、やめろ」と暴力的な攻撃を加えるなど、会社の一方的で身勝手な首切り攻撃の嵐がふきあれています。また、こんな人権無視の首切り攻撃に嫌気がさして、「こんな会社はやめて、再就職で新天地を切り開こう」と思っている労働者も多いことでしょう。しかし、「完全失業者」の数は北海道全体の労働者よりもはるかに多い300万人近くに達し、失業者数は戦後最悪、なかなか再就職ができないというのが現実です。住宅ローンをかかえた失業者が一家無理心中をはかるなど深刻な事態がひろがっています。
今こそ危機的な雇用・失業情勢の打開のために共に立ち上がりましょう 全労連は、この様な戦後最悪の事態に陥っている雇用・失業問題を解決するために、① 解雇を規制し、雇用を守るために、② 失業者の生活を守り、雇用を確保するために、③ 新たに900万人の雇用を拡大するために、を3本の柱にした「緊急雇用対策(案)」を提案します。この「緊急雇用対策(案)」の多くは、企業が社会的責任を果たし、不十分ではあっても現に存在する法律・制度を国と地方自治体が失業を防止し、雇用を守る立場に立って機動的、能動的に運用するならば実現可能な内容です。
全労連は、緊急対策の実現のため、企業および経営者団体、国や地方自治体などに対して、共同の運動を呼びかけるものです。そのために全労連は、広範な労働組合や諸団体との共同を追求しながら、9月上旬~11月上旬にかけて全国的な「総行動」を展開し、この「緊急雇用対策案」を政府、自治体、経済団体、諸団体、すべての労働組合、労働者に「緊急対策案」として積極的に提示すると共に、多くの方々と協議しさらに具体的な要求に練り上げ、共同した行動を広範に呼びかけ、具体的に実行させるために全力で奮闘する決意でいます。
労働組合は労働者の切実な要求を実現するために存在しています。企業の一方的で身勝手な解雇や出向・配置転換、転籍等の攻撃に対して、本人同意はもちろんのこと、労働組合の同意を労働協約等で締結することは、労働基準法、労働組合法などで認められている当然の権利です。解雇をやめさせ、雇用を守るために、労働組合はその役割を果たすことが求められています。
すべての労働組合、労働者のみなさん、当面する臨時国会でのサービス残業拡大・短期雇用の拡大、派遣法の改悪などの労働法制全面改悪を許さないたたかいと同時に、戦後最悪の雇用・失業情勢を打開し、「人間らしく働き、生活するためのルールを確立するために」今こそ共同して立ち上がろうではありませんか。
景気のいいときには「働け、働け」と労働者に長時間労働を強制して大儲けをし、余分な投資で不良資産をつくると「経営危機を克服するため」といって、大量の労働者を首切り、戦後最悪の失業者をつくりだす一方、会社に残った労働者にはさらにきびしい長時間・過密労働を強制する大企業の横暴を断じて許すわけにはいきません。
また、大企業の下請け単価の切り下げや発注止め、海外進出、さらには銀行の貸し渋りなどにより、中小企業は深刻な経営危機に陥っており、工場閉鎖、規模縮小や人減らしを余儀なくされ、経営者の自殺や自己破産が急増するなどの事態に陥っています。
企業の利益のためには「労働者を捨て、町を捨て、国をも捨てる」という財界・大企業の身勝手な「論理」で、労働者とその家族、中小企業の経営者と労働者、さらには地域の商店や農家など地域の経済が押しつぶされ、国民生活が危機的状態にあります。
これらは、大企業・ゼネコン本位の国の予算を社会保障や中小企業、農漁業重視などの国民本位の予算にするならば可能ですし、主要企業だけで100兆円にも及ぶ内部留保をほんの数%取り崩すだけで労働者の要求している賃上げは可能となっています。
国内総生産世界第2位、国民一人あたりでは世界一の日本がその生産力を有効に発揮するならば、従業員数・生産額とも8割を占める中小企業を立て直して、商店や農漁業、林業などを含め地域経済・日本経済を再建することは充分可能です。また、「1996年までに年間1800時間の労働時間にする」とした国際公約を誠実に守り、諸外国ではみられない「サービス残業」をなくすならば過労死や長時間・過密労働による労働者の健康破壊をなくすばかりでなく720万人の雇用を増やすこともできるのです。 こうして、雇用・失業問題を打開すれば、消費不況も克服され、日本経済の好循環にもつながります。
労働者を解雇するための「労働者いじめ」が陰惨な形ですすめられ、労働者を自殺にまで追いこんでいます。会社からさまざまな形で「やめろ」といわれ、相手の言動に腹が立っても、冷静にきっぱりと「首切りを退ける合言葉10章」などを参考に「やめない」と意思表示することが重要です。最高裁判所などの判例は、つぎの4つの条件がそろわないと、解雇できないとハッキリとした判断を示しています。
整理解雇の4要件:1)どうしても整理解雇をしなければならないほどの経営状態にあることが証明されること、2)解雇を回避するためにあらゆる努力がつくされたこと、3)解雇対象者の人選基準が客観的で合理的であること、4)労働者および労働組合と事前に協議をつくすなど、解雇にいたる手続きに合理性・相当性があること。 「企業を守るために」ということを口実に、一方的に解雇することは、「社会規範を遵守する」という「経団連企業行動憲章」にも違反することです。大企業は、100兆円を超える国際的にも異常で巨額の「内部留保」の一部を取り崩し、労働時間を短縮して雇用を確保すべきです。
首切りを退ける合言葉10章:①「辞めません」、②やっぱり「辞めません」、③退職強要にはきっぱり抗議を、④人権蹂躙には厳重抗議を、⑤出向・配転・移籍も断りましょう、⑥会社よりも自分が大変、⑦おだてにのらず謙虚に拒否を、⑧家族は首切りに反対です、⑨最後は黙秘でがんばりましょう、⑩首切り110番などに相談を
【私たちの要求】 1) 最高裁などの判例でも確定している「整理解雇の4要件」に違反する一方的解をやめること。 2) 失業の防止、雇用安定のための経営者責任を守ること。 3) 性や年齢を理由にした解雇をやめること。 4) 法律で定められている障害者の雇用率を厳守すること。 |
大企業や政府は、「日本経済の危機」を抜け出し、日本経済を再建するためには、「余分に抱え込んでいる」労働者の解雇、発注単価の切り下げ、受注打ち切り・仕事の引き上げなど下請・中小企業も再編成は避けてとおれないことだといっています。こうして、不況型の倒産件数や失業者数は戦後最悪の記録を更新しつづけています。
しかし、日本経済は世界でもっとも勤勉な労働者と優秀な中小企業に支えられて依然として世界第2位の経済力を維持しています。日本経済を再建し、雇用を守るためには、大企業や金融機関の不良債権の後始末に何十兆円もの税金を投入するのではなく、全事業所の99%、全従業員の80%、全生産額の80%を占め、農林業とともに日本経済の柱となっている中小企業の経営基盤を守ることこそが重要です。全労連は、公共事業の7割が大企業に発注されている現状を切り替え、中小企業への官公需発注などを含め、中小企業基本法などを積極的に活用し、中小企業の経営と雇用を守ることを要求しています。
【私たちの要求】 1) 大企業は下請単価の引き下げや発注停止・仕事の引き上げをやめること。 2) 銀行は、中小企業の経営破綻につながる貸し渋りをやめること。 3) 国と自治体は、住民・地域密着型の公共事業を地元中小企業に発注し、仕事と雇用を確保すること。また、公的融資枠を拡大するなど中小企業対策を拡充すること。 4) 国は通貨投機の規制などで円相場を安定化させ、セーフガードの発動などで無制限な輸入拡大をやめさせること。 |
日本の法律では企業の身勝手な解雇を制限する規定が整備されていません。全労連は、ヨーロッパ諸国では当たり前となっている「解雇を規制する法律の制定を要求する署名運動」に取り組んでいますが、政府は、戦後最悪の失業情勢を解決するため、労働省を解体するのではなく、労働法制の改悪を中止し、いまこそ労働省設置法に基づき、「職業の確保等必要な施策」をおこなうため現に存在する条項を総合的に活用し、失業の防止、失業者の生活安定、就業保障や生活保護など労働権と生存権を保障するため緊急に行政責任を果たすべきです。そのため、大企業の生産拠点の海外展開を規制することも重要です。 憲法第25条は「すべて国民は、健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と、すべての国民への生存権保障を国の責任と規定しています。
憲法第27条は「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」と、すべての国民に対して働く権利、つまり雇用を保障することを国の責任と定めているのです。このように、国民の労働する権利は生存権の前提条件です。
【私たちの要求】 1) 「解雇規制法」を制定すること。法制定以前にも、企業の一方的な解雇は違法であり、出向・配置転換、転籍は、本人と労働組合の同意を原則とする旨の行政指導を強化すること。 2) 公共職業安定所長は、事業主から雇用対策法に基づき、人員削減計画等が提出された場合、労働者の雇用を守る観点から、厳密に審査・指導すること。 3) 政府は、失業を防止する観点から、いまある法律を弾力的に運用し、緊急雇用安定地域などや特定不況業種指定を機動的におこなうこと。また、中小企業の雇用維持に効果があがるように改善すること。 4) 政府は、失業を防止する立場から、有効求人倍率が全国水準を下回っている都道府県を雇用機会増大促進地域に指定すること。 |
親の失業が原因で高校や大学進学、就学をあきらめる子どもたちが増大しています。 失業したら職業安定所に行きましょう。手続きを取り権利としての雇用保険を受け取りましょう。雇用保険制度に基づく失業手当は、失業者が就業状態にあった時の生活条件を維持しつつ、再就職までの間、生活を補償する制度です。再就職がきわめて困難な現在、労働大臣や職業安定所長は、失業給付の個別延長給付、訓練延長給付、広域延長給付、全国延長給付などを機動的に発動すべきです。失業給付の制限期間を現行3ヵ月から1ヵ月に短縮することを緊急に実施するべきです。また、就業時の生活水準を維持できるよう給付水準を引き上げることが必要です。
新しく学校を卒業しても就職できない等、雇用保険受給資格のない失業者が増大しています。雇用保険で救済されない失業者の生活を保障するため、失業手当を新設すべきです。
生活保護は、失業保障、職業訓練、公共事業への雇い入れ、再就職のための職業紹介などを積極的、機動的に運用してもなお生活が保障されない場合、憲法第25条に基づく当然の権利です。ヨーロッパでは失業扶助と生活保護(社会的扶助)は連動しています。人間の尊厳をふみにじるような現在の保護行政は直ちに改めるべきです。世界第2位の経済力にふさわしい保護水準に引き上げることは当然です。
政府は、失業者の生活援助のために住宅ローンなど各種ローンの返済繰り延べ措置や利子補給、公的機関による低利子借り換えのための信用保証措置を行うべきです。高校進学が準義務教育化している現実をふまえ、失業者家庭の高校進学希望者を含め、小中学生や大学生などには適用されている、奨学金や授業料免除、修学援助金を給付すべきです。
2 国の職業紹介事業を強化する
求人数と求職者数との割合を示す「有効求人倍率」も戦後最悪です。職業安定所では待機時間が2時間にも達し、職業相談に応じきれない状況になるとか、求人票の奪い合いで暴力事件が発生する事態となっています。政府は、職業安定法や雇用対策法の精神に基づいて、「職業開拓」などを積極的に推進すべきです。こうした切実な行政需要にこたえうる労働省職員の配置が必要です。
国と地方自治体は雇用対策法などに基づいて、職業訓練と生活を両立させながら再就職の準備をする「職業転換給付金」制度や「求職手帳」制度などを弾力的、積極的に運用し、失業者の就職促進、職業訓練および生活保障をおこなうべきです。
今回の金融再編は政府・大蔵省の指導で強行されているものであり、北海道拓殖銀行や山一証券等の解雇者は、いわば国家政策に基づく失業者です。このような失業者に対しては、国家責任で失業補償・生活保障および再就職を保障すべきです。過去にも石炭産業や繊維産業の構造転換など、国家政策により発生した失業問題には国が責任をもって対処してきた実績があります。
【私たちの要求】 1) 失業給付期間を延長し、給付制限期間を1ヵ月に短縮すること。 2) 新規卒業者など雇用保険受給資格のないものへの失業手当を新設すること。 3) 住宅ローン等の繰り延べや公的機関による信用保証をおこなうこと。 4) 失業者家庭の高校進学希望者の援助や在学高校生への授業料免除、奨学金など就学援助金を支給する制度を確立すること。 5) 生活保護を適正に実施し、就学援助の拡充をはかること。 |
【私たちの要求】 1) 失業者の就職準備と生活を保障する職業転換給付金支給などの制度を積極的に活用すること。 2) 新規学卒失業者にも職業転換給付金制度を適用すること。 3) 高度な技術訓練とともに、ホワイトカラー層の職業訓練拡充など職業訓練制度を拡充すること。 4) 政府の責任で求人開拓を積極的にすすめること。行政需要にこたえうる労働省職員を配置すること。 |
3 国と自治体の責任によって就業機会を確保する
失業期間が長期化し、失業状態が1年以上におよぶ中高年失業者の割合が増大し、失業給付がうち切られるなど、生活苦は深刻の度を深めています。
国と地方自治体は、地域の要請にあった特定地域開発就労事業をおこなうために、公共事業を立案・計画、実施する権限をもっています。この制度を積極的、能動的に活用して、国と地方自治体の責任で公的就労事業を起こし、中高年失業者の就業機会を確保すべきです。また、この制度を改善すると同時に、公共事業への失業者の雇用を義務づけるなどして、失業者の労働と生活を保障すべきです。
【私たちの要求】 1) 公共事業へ失業者を雇用する制度を有効に活用できるよう事業の種類や内容を改善し、失業者の雇用を確保すること。 2) 特定地域開発就労事業制度を機動的に活用できるように見直し、失業者の臨時・応急的な雇用確保をはかること。 3) シルバー人材センターと高年齢者就業機会開発事業を拡充・改善し、高齢者などが自主的につくる非営利団体に対しても就業機会開発事業を適用するなど助成をおこなうこと。 4) 政府の政策によって生まれた失業者の救済のため、直接的雇用創出策を検討すること。 |
日本の労働者は、ドイツと比べて年間600時間も多く働らいています。日本の企業が国際的に抜群の競争力を保持しているのは、労働者を低労働条件で長時間働らかせて製品のコストをきわめて低くおさえているからであると国際的な批判をうけてきました。このような不公正な国際競争力をただせという国際的非難にこたえて、政府は年間総労働時間を1800時間(所定内1653時間、所定外147時間)にすると1986年に国際公約しました。この国際公約を緊急に実現すれば、300万人の雇用を拡大することができます。
1997年の平均年間実総労働時間=1891時間
政府公約の平均年間実総労働時間=1800時間
1997年の労働者数=5391万人
1891時間-1800時間=91時間
1800時間労働制実現により新たに拡大できる雇用者数
91時間×5391万人÷1800時間=272万2545人
労働時間短縮による雇用拡大はヨーロッパ諸国ではあたりまえのことであり、法整備もすすんでいます。たとえば、ドイツでは週33時間労働が現実の課題となっていますし、フランスやイタリアでは週35時間労働制が2000年から実施されようとしています。しかし、日本ではこうした国際的流れに逆行して、人減らし「合理化」が長時間・過密労働とセットですすめられてきました。
さらに政府は労基法の全面改悪により、膨大な時間外労働・サービス残業を潜在化し、みせかけの労働時間短縮で国際的批判をかわし、一方ではあらたな収奪をいっそうすすめようとしています。本来、残業とは突発的な仕事の増大に対処する臨時的なものであって、恒常的に残業が続くのであれば労働者を増やすなり、労働時間を短縮して雇用を増やすというのが労働基準法の基本的立場です。
【私たちの要求】 1) サービス残業(ただ働き)を厳禁し、450万人の雇用を拡大する。 2) 政府公約の年間総労働時間1800時間を早期に実現して272万人の雇用を拡大する。 |
2 国民本位の経済・社会への転換によって新たな雇用拡大をめざす
政府・自民党は、不況を打開するためには、ゼネコン型の大規模公共事業が必要であるとして、公共事業には社会保障の2・5倍の50兆円もの税金を投入してきました。 しかし、政府が発表している産業連関表を使い、同じ1兆円の投入効果を計算してみると、経済波及効果も、雇用拡大効果も公共事業部門より社会福祉部門のほうが大きいことが実証されています。雇用効果は、公共事業207万人、社会保障福祉292万人、医療・保健225万人となっており、社会福祉分野の方が公共事業分野よりも経済的波及効果も雇用拡大効果も大きいのです。
政府と自治体は、国公立など病院や保健所の統廃合、医師を含む医療従事者の削減、シルバーパスなど老人福祉の切捨て、学校修繕や教職員定員のカット、公営住宅建設の削減、防災や安全確保施策の切捨てなどを強行する一方、国民から批判浪費の象徴として批判されている大型土木事業を続行しています。全労連は、このような住民生活に直結した公務業務の切捨てではなく、住民が要求する福祉、医療、保険、介護や防災や安全施策の充実など住民サービス行政を推進するため、医療・福祉関連分野で新たに140万人の労働者が必要です。深刻な国民的課題となっている子どもと教育問題を解決するため、30人学級制の早期実現のためには新たに4万人の教職員を増やす必要です。
政府も新ゴールドプランやエンゼルプランなどの実施を含む医療、介護、社会福祉分野の雇用規模は480万人が必要と予測していますが、現在140万人が不足しているとしています。こうした分野で新規学卒者も含め大量の雇用を創出することが緊急に求められています。また、そのためにも、保育所や学童保育の増設などをはじめ女性の社会進出条件の整備は当然の前提です。
こうした国民の切実な要求を実現するために「国民や住民に奉仕する」公務労働者を適正に配置することは憲法第25条の具体化です。住民サービスを担う労働者が労働時間短縮によって、国民が要求する質の高い労働・サービスを提供が切望されます。これらは、公共事業50兆円、社会保障20兆円という国際的に見ても、国民の立場から見ても税金の使い方が逆立ちしている財政構造を切り替えれば、財源は十分に確保することができます。
【私たちの要求】 1) ゼネコン型巨大公共事業から生活基盤密着型の公共事業に転換すること。 2) 国民の要求に沿って新ゴールドプランなど政府計画を早期実現し、社会保障・医療、介護などの充実などで140万人の雇用を拡大すること。 3) 30人学級を実現し、教育の危機を克服するため教職員を4万人増員すること。 4) 国民の要求に沿った安全・防災などの拡充で50万人の労働者を拡大すること。 |
全国労働組合総連合
長引く不況のもとで、戦後2番目の企業倒産や工場閉鎖などにより「非自発的離職者」がこの5月には前年同月比で35万人増の87万人にのぼり、男性の完全失業率は最悪の4.3%、全体でも4.1%、失業者数も過去最多の293万人となり、さらに悪化が懸念されている。とりわけ、家計を支える「世帯主」の失業率が3.1%と初めて3%を超え、新卒未就職者も20万人を超え、失業期間も「1年以上」が25%、「6ヵ月以上」をあわせると約50%と長期化し、有効求人倍率も0.53倍と20年来の低水準となっている。また、この1~3月にパートなどの短時間労働者が78万人増大しているのに、正社員などフルタイム労働者が96万人も減少しているように、労働者のパートへの転換が加速している。
このような事態は、労働者とその家族に雇用・生活に対する不安感を抱かせると同時に、消費税率の引き上げや医療・年金など社会保障改悪による生活不安・将来不安とあいまって個人消費を冷え込ませ、不況をいっそう深刻なものにしている。また、雇用不安と長時間・過密労働は、多くの労働者に心身共の健康破壊や自殺を含む過労死を拡大し、家庭生活や子供にも重大な影響を与えている。警察庁の発表でも、倒産や失業・生活苦などの「経済生活問題」が原因・動機の自殺者が前年比2.8倍の3500人を突破するなど、「雇用不安と失業問題」は一刻の猶予も許されない事態になっている。
新卒者や高齢者を含め雇用確保と失業中の労働者の生活保障を緊急対策として講じることは、今日の最大の政治的・社会的な課題となっている。
こうしたリストラ「合理化」は、管理職を含む大量の労働者の人減らし、出向や配転、首切りとパートなど不安定雇用労働者への切り替えなどの強行、さらには下請け単価の切り下げ・発注止め、工場閉鎖、海外進出、地域経済の崩壊などをもたらし、労働者の雇用不安を増大させている。それがまた個人消費の停滞につながり日本経済の矛盾をさらに深めることにつながっている。したがって、財界・大企業の横暴を民主的に規制していくことが雇用不安の解消、国民本位の不況打開のためにも重要になっている。
2)政府・自民党による労働者・国民犠牲の悪政もまた今日の雇用不安をいっそう深刻にしている。政府・自民党は、不況の最大の原因が個人消費の落ち込み・内需不振とそれに連動した生産の停滞・縮小にあるにもかかわらず、消費税率引き上げなど国民負担の強化によりこれをさらに深刻なものとした。そればかりでなく、大企業の横暴により経営環境が悪化している中小企業にたいして、これを支援するのではなく、逆に大企業本位の「経済構造改革」「金融改革」などをすすめ、「大店法廃止」や「規制緩和」などにより、大企業の横暴を容認し、中小企業の再編・淘汰を積極的に進める立場に立っている。また、「不良債権処理」と「金融システム」安定化を口実に、金融機関に対して政府自身が大掛かりなリストラを強要していることも、今日の雇用不安を拡大するものとなっている。
政府・労働省が財界・大企業の要請に応えて「労働者派遣法」や「職安法」の連続改悪などにより、「派遣事業」や「有料職業紹介」の「緩和」など「労働力流動化」政策を積極的に進めていることも重大な問題である。さらに、「労働法制の全面改悪」もまた「短期の契約期限で合法的に首が切れ」「長時間労働をさせても残業代を払わなくても良い」ことなどを合法化し、長時間・過密労働や違法なサービス残業を野放しにし、現在でさえ「ルールなき資本主義」といわれているわが国の状態から「最低限」の働くルールさえ取り払い、首切りと搾取強化の自由を企業に保障するものである。国民の勤労権や生存権を保障すべき政府自身が、労働者の勤労権を奪い、雇用不安を拡大していることは許しがたい重大な問題であり、国民本位の政治への転換が重要になっている。
また、この間の政府の「雇用・失業対策」は、雇用調整助成給付の対象拡大や助成率を高めた程度であり、しかも、そのほとんどが大企業の「雇用調整」や「職業転換のための準備」という人減らし「合理化」促進への利用や「後追い」が中心となっており、大掛かりな人減らし「合理化」を規制するものとはなっていない。
政府は、「不況・失業対策」として、4月に16兆円を超える「総合経済対策」を発表し、6月には「雇用情勢への当面の対処方針」を打ち出したが、それは従来型の大企業・ゼネコン奉仕の「公共事業」に大きな比重が置かれている。したがって、消費税率引き下げなど国民本位の不況打開とより抜本的な雇用対策を要求しつつ、政府がうちだしている「雇用調整助成金や特定求職者雇用開発助成金の拡充」「地域雇用対策」などが真に効果的なものとなるよう、職場や地域からの具体的な要求闘争を強化することが重要になっている。
2)正規労働者の労働条件の引き下げや雇用不安を拡大するような派遣労働者や非正規労働者の職場への導入・拡大を一方的に許さないとりくみと同時に、現に職場にいるパートや非正規・不安定雇用労働者の雇用をまもり、労働条件を改善するたたかいを重視する。
3)雇用拡大の視点からも、サービス残業の解消や年次有給休暇の完全消化、変形・裁量労働の拡大阻止、深夜交代労働の改善などによる職場の要員確保・拡大のたたかいを重視する。また、賃下げなしの「拘束1日8時間・1週40時間以下」「年間1800総労働時間」「完全週休二日制」の実現を追求する。
1)そのために、9月上旬~11月上旬にかけて全国的な「県内総行動」を展開し、政府、自治体、経済・業界団体、民主団体、広範な労働組合、労働者に「緊急対策案」を積極的に提起し、多くの団体との協議を通じてそれぞれの産業や地域の実態にかみあった具体的な共同要求に練り上げ、その実現を迫る運動を全国各地から展開する。
とりわけ大企業による下請け単価の引き下げや発注減などにより深刻な経営難に陥っている中小企業経営者や業者などとの懇談を重視し、住民・地域密着型の公共事業の地元中小企業・業者への発注などで仕事と雇用の確保のための共同したとりくみを追求する。
運動推進にあたっては、別途作成する「雇用闘争の手引き」を参考にそれぞれの地方・地域の実状に見合った運動の具体化をはかる。
2)その集約的な行動として、また、様々な要求を掲げた98秋季年末闘争の各地域からの総決起として、11月6日を全国統一行動日に春闘時の「2・26総行動」のような「全国一斉総行動」をすべての地方・地域で「目に見える」運動として展開する。
3)労働総研などと共同で第3回地域政策交流集会として「雇用と地域経済を考えるシンポジウム」(仮称)を10月9~10日に国や自治体の専門家、中小業者、学者、労働組合代表などを招いて、今日の雇用問題や諸矛盾が集中している北海道・札幌市内で行う。
全国各地での運動発展に向けての契機とするよう、単産や地方。地域からの積極的な参加でこれを成功させる。
これらは賃金・雇用破壊と「労働力流動化」をすすめ、不安定雇用労働者を拡大し、労働者への搾取強化と雇用不安を加速・拡大するものであり、労働法制の改悪阻止にむけて「秋季年末闘争方針」にもとづき、国会請願署名や学習・宣伝など職場・地域からの運動を緊急に強化することが重要になっている。
全労連はバブルの崩壊により不況が深刻化し始めた93年2月に、①国民の購買力を高める緊急対策、②雇用を守る緊急対策、③下請・中小企業の経営を守る緊急対策、④大企業本位の景気対策の見直し、などの4項目を柱とした「国民本位の不況対策に関する全労連の要求」を明らかにしている。この要求は国民本位の不況打開策として、今日なお有効性をもった要求である。したがって、これらの要求を基本にしつつ、今日の不況対策として多くの国民が切実かつ緊急策として要求している消費税率引き下げなどの実現に向け、当面する臨時国会などにおいて、広範な諸勢力と共同を強めていくことが重要である。
また、大企業の横暴などに対して全労連は、94年12月には「異議ありリストラ『合理化』―大企業の社会的責任を求める全労連の提言」を、95年1月には「労働者と中小企業は日本経済の主役―中小企業に対する全労連の5つの提言」を発表している。さらに、95年2月には「産業『空洞化』に反対し、国民生活が大切にされる日本経済再建のための全労連の政策(案)―大企業の横暴を民主的に規制する全労連の政策」を提起している。したがって、これらを参考にしつつ、NTTの「5万人合理化」や地域的にも大きな影響を持つ金融機関の大がかりなリストラ「合理化」などに、別項でふれている「県内総行動」などを通じて、地域からこれらの攻撃を跳ね返す運動の強化が重要になっている。
以 上