労働組合に加入して交渉を申し入れたら、一発で賃金カットが撤回された件
賃金を下げると会社から一方的に通知された。理由は新型コロナの影響で、業績が悪化したということだった。これは受け入れなければならないのか?
全労連からのアドバイス
まずはじめに、正当な理由がなく、本人の同意を得ず賃金を一方的に切り下げることは、違法・無効であることを伝えた。そして、この問題の解決方法として、①「労働組合を結成して交渉する」、②「一人でも加入できる労働組合に加入し、交渉する」、③「労働局にあっせんを申請する」、④「切り下げの拒否を会社に伝え、それでも一方的に切り下げてきたら、労働審判で争う」といくつかの選択肢を示し、検討してもらうことになった。その後「面談での相談をしたい」との電話があったため面談をセットし、会社からの「一方的な通知」の内容を確認したところ
①月額24万円の賃金を25%カットして、18万円とする。
②最低賃金×8時間×20日=14万5440円+歩合給とする。歩合給の内容は、売り上げが月50万円を超えたら、超えた額の50%を積み立てておき、積み立てた金額を半年毎に支給する。①もしくは②のいずれかを選択でき、4月度より実施する。
というものだった。「賃下げは納得できない」、「私の主な業務は、資料作りであり、営業職ではないので、歩合給が適用されるのは納得できない」と主張され、後日「一人でも加入できる労働組合に加入し、現状維持を要求したい」と労働組合に加入することを決断。「申し入れ並びに要求書」を作成し、会社に郵送した。
結果
その後、団体交渉を開催することもないまま、合意書(協定書)が組合に届いた。その内容は、「会社は今回の会社提案は撤回し、4月以降についても従前の労働条件を保障する」というもので、労働組合の要求をのむことを認めた満額回答であった。労働組合で交渉することで、会社側も法律違反を認めて対応を改めざるを得なくなったと思われる。
元記事:https://zenroren1989.hatenablog.com/entry/2021/09/17/184557
ストライキを構えた交渉で満額回答となった件
とある日産の下請けの会社で働いている方から「労働組合のことで相談したい。営業部と工場との労働条件に大きな差があるのでなんとかしたい」という連絡が入った。
全労連からのアドバイス
労働組合をつくり、団体交渉で交渉していく必要がある。
結果
3度の団体交渉を経ても経営側が不誠実な回答に終始したため、期日までに誠実な回答を示さない場合はストライキを行うと経営側に通告したところ、経営側から「条件をしめすので、ストライキはやめてほしい」との返答あり。そこで示された条件は、
①賃上げは組合の要求どおり2000円から一律1万円に、夏期一時金は1.5か月支給する。
②パート組合員の時間給1500円と夏季寸志5万円を検討し、回答する。
③社長兼務の工場長は新しい工場長にする。
④工場経費の是正と、不当な役員昇給は返納し、取り消す。
というもの。ストライキを構えて交渉したことで、結果としてストライキを行う前に労働組合の要求をのませることができた。元記事:https://zenroren1989.hatenablog.com/
「パートには何の権利もない」と言われたが……
全労連からのアドバイス
日本国憲法第27条に基づいて、最低限の働くルールについて定めた法律が「労働基準法」です。労働基準法第9条に、労働者の定義があります。労働基準法には、正規も非正規も、パートもアルバイトも派遣などの区別はありません。労働基準法の下では、すべてが「労働者」であって、パートであっても、正規の労働者と同じ権利を持っているのです。
ですから、「パートだから」「派遣だから」という理由で労働者を差別することは、本当はあってはならないのです。交通費も有給休暇なども堂々と要求してください。
労働基準法第9条【定義】
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
突然「解雇する」と言われたが……
全労連からのアドバイス
ほとんどの労働者は、賃金だけで生活していますので、労働者の生活手段を絶つには、それなりの理由が必要です。解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」があります。
「懲戒解雇」は、犯罪行為や重大な背任などの反社会的な行動をした場合に適用されます。
「整理解雇」は、解雇しなければ企業の存在が危うくなる状況が客観的に証明できて、解雇を回避するための最大限の努力がされていて、解雇される人を決める理由に合理性があり、当人(組合)としっかりと話し合いがなされていることが条件となります(整理解雇の4要件)。
「普通解雇」は、労働契約法第16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。つまり、誰が聞いても「仕方ない」と判断できる理由がなければ解雇はできないのです。
「解雇だ」と言われたら、解雇理由を明記してある「解雇通知書」を請求してください。社会的に相当な理由がない不当な解雇がかなり多くあります。解雇されたからと言って簡単にあきらめずに、その解雇通知書を持って、労働組合に相談してください。
「うちには有給休暇なんかないよ」と言われたが……
全労連からのアドバイス
労働基準法第39条で「使用者は、その雇い入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定めています。さらに、1年を経過するごとに1労働日を与えることとしています。6箇月間継続して働いていたら、パートもアルバイトも有給休暇が取れるのです。
なお使用者は、労働者の有給取得を拒否できません。あるのは「日程の変更要請権」だけです。さらに有給休暇の付与に理由をつけることも許されていません。どのように使うかは労働者の自由であって、使用者として「慶弔以外は認めない」などの制限をかけられないことになっています。
ですから「休暇願」ではなく「休暇届」が正しいのです。「休暇届」を出して、堂々と休んでください。
残業手当が払われない……
全労連からのアドバイス
労働時間は1日8時間、週40時間を超えてはならないと定められています(労働基準法第32条)。それを超えた場合、使用者には、平均賃金の25%増しの残業手当(深夜の場合は50%増)を支払う義務が発生します。同時に厚生労働省通達で、労働者の労働時間の管理は事業主の責任で行うこととされています。長時間働いたら、堂々と残業代を請求してください。
なお8時間労働の例外規定として「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「36協定」などの制度がありますが、いずれも労働組合との合意や過半数の労働者代表との合意があることを労働基準監督署に届け出なければなりません。そうしなければ制度そのものが無効になるものであり、使用者が一方的に押し付けることはできません。
一部に、労働時間管理をしない経営者が根強く残っています。その場合は、メモやカレンダーなどに出退勤時間の記録を残すようにしてください。証拠がなければ請求できません。
なお、未払い残業代の請求は、3年で時効になります。気を付けないと請求できなくなります。
社会保険をかけてくれない……
全労連からのアドバイス
労働時間は1日8時間、週40時間を超えてはならないと定められています(労働基準法第32条)。それを超えた場合、使用者には、平均賃金の25%増しの残業手当(深夜の場合は50%増)を支払う義務が発生します。同時に厚生労働省通達で、労働者の労働時間の管理は事業主の責任で行うこととされています。長時間働いたら、堂々と残業代を請求してください。
なお8時間労働の例外規定として「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「36協定」などの制度がありますが、いずれも労働組合との合意や過半数の労働者代表との合意があることを労働基準監督署に届け出なければなりません。そうしなければ制度そのものが無効になるものであり、使用者が一方的に押し付けることはできません。
一部に、労働時間管理をしない経営者が根強く残っています。その場合は、メモやカレンダーなどに出退勤時間の記録を残すようにしてください。証拠がなければ請求できません。
なお、未払い残業代の請求は、2年で時効になります。気を付けないと請求できなくなります。
健康保険
週30時間以上(4分の3以上)働く労働者は、加入しなければなりません。保険料は、本人と事業所で折半です。医療費の3割は自己負担になりますが、病気などで働けない場合の休業補償制度があります。
厚生年金
週30時間以上(4分の3以上)働く労働者は、加入しなければなりません。
保険料は、本人と事業所で折半です。退職後の老後の収入となります。障がい年金もあります。
労災保険
労働者を一人でも雇用する事業主は、必ずかけなければならない保険です(強制適用事業)。業務上のケガや仕事が原因の病気は、健康保険ではなく、労災保険で治療します。本人負担はありません。休業補償も、平均賃金の8割が治癒するまで保障されます。
雇用保険
退職したときや失業したときの生活保障です。週20時間以上働く人は、加入する義務があります。事業所負担と本人負担があります。平均賃金の6割が一定期間保障されます。失業給付を受けなければ、受給資格は継続されます。
労働条件をキチンと教えてくれない……
全労連からのアドバイス
労働基準法第15条に、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めています。具体的には文書で労働者に示すこととされています。労働者が要求しても出してくれない場合、労働基準法では「30万円以下の罰金に処する」(労働基準法第120条)となる違法行為です。しっかりと請求してください。
有期契約で働いている、正規になりたいが……
全労連からのアドバイス
2013年4月1日から労働契約法が改定されて、5年以上有期で働いている人(13年4月以前は対象外)が「契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」(労働契約法第18条)となりました。いろいろ問題のある条文ですが、有期から無期に転換できる可能性はできました。しかし労働条件については、有期時代と同じでよいとされています。
また、期間満了直前の「雇止め」の危険も消えていません。これからの運動が必要です。
上司のいじめがひどくてメンタルになった……
全労連からのアドバイス
メンタルの原因に、長時間過密労働などに続いて「職場環境の悪化」が言われています。2008年の厚労省調査では、323万人がメンタルにかかっていると発表されました。
セクシャル・ハラスメント(セクハラ)は、男女雇用機会均等法で明確に禁止されていますが、パワー・ハラスメント(パワハラ)を直接規制する法律はありません。
裁判では「民法90条(公序良俗の反する行為)」、「民法709条(損害賠償)」、「民法715条(事業主の不法行為に対する賠償)」、「会社法第350条(株式会社代表者の不法行為)」などが使われますが、確たる証拠がなく、証明することは極めて難しい内容です。
厚労省は円卓会議で以下のパワハラに該当する指針をしめし、注意を呼びかけています。
■暴行・傷害(身体的な攻撃)
■脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
■隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
■業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
■業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
■私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
パワハラを個人で会社にみとめさせることは、特にメンタルになった人には難しい課題です。ぜひ、労働組合にご相談ください。