コロンビアでは2004年も、それまでと同じように、改革の名のもとに労働者の成果と基本的権利を破壊する政策がすすめられた。
労働運動の面で統一が進んだ。大民主連合(La Gran Coalición Democrático) が次の選挙にむけてのたたかいで重要な役割を果たしている。
テレコムの解体、 石油公団(ECOPETROL) の株式会社化、社会保障の分割、民間での脱工業化がすすんで工場閉鎖が相次いだ。これは当然のことながら、労働組合運動にも痛手だった。
失業率は32%を超え、非正規雇用、不安定雇用が増大している。これは多くの中南米諸国に共通した問題である。
(テロ・暴力)
そうしたなか、コロンビア独特の深刻な問題が、労働組合にたいするテロ、暴力である。この現象についてコロンビアの統一労働中央組織(Central Unitaria de Trabajadores)は2004年末に発表した報告書のなかで、国内の労働組合にたいする暴力が、多国籍企業とコロンビアの大企業の利益を優先させ労働者の憲法上の権利や団結権を奪う経済戦略の適用にもとづく資本主義的発展モデルの産物であると指摘している。それによると、1996年7月から2004年6月までの間に少なくとも700人の労働組合活動家が政治的暴力 (武力衝突と関係なく、自宅や職場など日常生活の場) で命を落としたことが記録されている。この期間に、推定約4000人の組合活動家が暗殺されたとしている。CUTの人権部によると、この期間に月平均の犠牲者数は増大の一途をたどっている。
(石油労働者)
コロンビアでは石油労働者の統一労働組合(Union Sindical Obrera de la Industria del Petroleo=USO)が、国営石油公社ECOPETROLで4月22日から37日間のストライキをたたかった。これは労働者自身の生活とコロンビアの経済を米国、国際通貨基金(IMF) の干渉、支配からまもるたたかいだった。5月26日USOとコロンビア政府(鉱業省)は、多国籍企業と新たに交わした契約を撤回し、民営化しないことを確認した合意書に調印した。労働者側の勝利だった。現在油田の操業を外国の企業との契約でおこなっているのを、その契約期限が切れたら、ふたたびECOPETROLの手にもどすというもの。また、ストライキ突入後に政府がこれを違法と宣言し、解雇したUSO議長ら約250人にたいし、年金権を維持できることと、復職の機会を与えられることも確認した。USOはECOPETROLとの間で国営企業をまもることと、労働者の基本権を保障することを1年半近く要求してきたが、組合側の提案にたいして企業側は、弾圧で応えるのが常だった。そのやりかたは、軍隊を工場に入れたり、労組指導者の工場内立ち入りを禁止したり、労働者の首切りをおこない、さらにストライキをおこなえば政府は「違法」宣言すると脅迫するというものだ。このストライキでの企業の損失は一日当たり5億ペソ (18万ドル) といわれる。
政府は、国営ECOPETROLを民営化する方針をおしすすめている。それは結局はシェブロン、テキサコなど米国をはじめとする多国籍企業に奉仕しようとするものだった。カルタヘナの精油所の売却方針を明らかにするなど、民営化への道を進めてきた。
精油施設のあるバランカベルメハの市議会は、ストライキはコロンビアの資源を外国の支配から守るたたかいであるとして支持を表明、ウリベ政権のスト敵視を批判した。議会では、政府に労組と交渉するように求める議員もあらわれた。また、労組と政府の間の交渉を再開するよう、カトリックも調停にのりだした。しかし、200人以上が解雇され、スト指導者17人が逮捕された。政府は、石油施設に軍隊を配置した。
(コカコーラ労働者のたたかい)
コロンビアの食品産業労働組合(SINALTRAINAL)に組織された、米国の多国籍企業コカコーラの労働者のたたかいが注目を集めた。2003年にコカコーラのコロンビア工場を経営するフェムサという会社(本社がメキシコで、筆頭株主はアトランタに本社のあるコカコーラ) が11の工場閉鎖を発表したことにたいし、3月15日から労働者がハンガーストライキをおこない、その支援者も国内8カ所で24時間のピケを張った。会社側は500人の労働者に、退職金を条件に工場閉鎖解雇を受け入れるよう迫った。コロンビアの法律のもとでは、工場閉鎖などで解雇された労働者は別の工場に移って働く権利があるとされているため、労働者は簡単に会社の圧力に屈することはできなかった。12日に及んだハンストの間、北部の都市バランカベルメハでは87人の組合員がカトリック教会や女性組織、公務員労組(SINTRAEMDES)それに石油労組(USO)の支援を受けた。ハンスト労働者のなかには、脱水症や腎臓障害を引き起こすものもいた。イギリスやアメリカでのコカコーラ・ボイコット運動や、コロンビア国内各地からの支援や連帯もひろがり、フェムサは3 月26日、労組との話し合いに応じることを約束するにいたった。
労組SINATRAINALにたいする攻撃は、きわめて暴力的で、ニューヨーク市議会の調査団によれば、コカコーラ工場での人権侵害は重大なもので179件あり、暗殺が9件もあったという。労組のリーダーが撃たれたり、パラミリタレスといわれる、正規の軍隊ではない武装組織から、労働者にたいして組合脱退圧力がかけられたりした。コカコーラ工場とこのパラミリタレスが協力しあって労働者を弾圧していたことは、公然の秘密となっている。(岡田則男)
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