ベネズエラでは2001年以来、ウゴ・チャベス大統領率いる政権の打倒をかかげたデモや暴動が続いているが、労働組合運動のナショナルセンターが民族資本家と手を結んでゼネストなどによって国内の不安定化をはかっているのが特徴である。これには米国のナショナルセンターである米労働総同盟産別会議(AFL-CIO)も批判せざるをえなかった。
2002年4 月、11日に首都カラカスで発生した反大統領デモが警察と衝突し、13人が死亡した事件をとらえて、これを大統領の責任と非難した軍の将校がチャベス大統領をとらえ、退陣をせまり12日に「大統領辞任」を発表した。クーデターを引き起した軍部は、財界を代表するエネズエラ経済団体連合会のペドロ・カルモナ会長をチャベスにかわる暫定大統領にすえた。しかし、このクーデターに反対する抗議行動がおき、13日にはカルモナ暫定大統領も辞任し、その翌日チャベス大統領は大統領府に復帰した。
その後、12月はじめからの2003年にかけて反チャベス政権「スト」が続いた。
米州機構(OAS)やカーター元米大統領も調停を試みたが、不調に終わり、事態は混沌としている。
ベネズエラは、世界で5 番目に大きい産油国であり、対米輸出国でもあるが、外からは見えにくい特殊な経済構造がある。スペインの植民地だったことからの子孫が経済エリートを形成し、先住民を搾取してきたという構造が、いまも根強く続いている。これらエリートたちは、民主主義者や自由市場主義者の看板をかかげて、米国のエコノミストや外交官をひきつけ、利潤をふやしてきた。その一方で、都市部で貧しさにあえぐ多くの人々は不満や怒りを鬱積させてきた。90年代も終わりにちかづいた1998年の大統領選挙で、これらの人々は、ラテンアメリカの独立運動の父ともいわれるシモン・ボリバルを尊敬しベネズエラの貧困問題を解決、二大政党制の腐敗をなくすなどの政策をかかげたチャベス元陸軍中佐に期待をかけ、大統領に選んだ。
一連の反チャベス行動の背後にブッシュ米政権の影が見え隠れした「石油クーデター」であったことも広く指摘されている。
ニューヨークタイムズ紙は、米国から87万ドルの資金が反チャベス系団体に流れたこと、そのなかには「労働団体」がふくまれていたと報じた。出所は、かつて中米ニカラグアなどで「民主化を支援する」という名目で干渉をするための道具としてつかわれたことでしられるNational Endowment for Democracy という、議会で決定して設立した非営利団体からだという(2002年 4月26日付) 。
メキシコのプロセソ誌は、クーデターの目的が、国営の石油企業PDSAを民営化し、ブッシュ大統領とつながりのある米国の企業に売り渡すこと、PDSAの米国子会社CITGO をブッシュの友人のグスタボ・シスネロスらに売り、ベネズエラ政府の権利を奪うことだと報じた。
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