2008国民春闘共闘情報
全労連HP

第 52 号  2008年09月17日

審議・改定状況一覧

 

16円アップ。二桁ながら格差拡大

 08地域別最賃  32都県で目安プラス1〜3円

加重平均703円。生活保護下回る水準

 08年度の地域別最低賃金を答申する各地方審議会は、12日までに全国47都道府県で出そろいました。今年度の全体状況は、全国加重平均16円アップで703円になりましたが、厚労省が不当に低く見積もった「生活保護基準」と対比したため、本来の生活保護基準や最低生活費保障の要求には遠く及ばない水準になりました。地域別の引上げ額、答申結果の評価はつぎのようになりました。

1.答申結果について

(1)全体状況 ― 2ケタ引き上げながら、最低生計費保障には遠く及ばず

 今年度の地域別最低賃金改定額の答申が、9月12日(徳島)に47都道府県すべてで出揃った。改定最低賃金法の施行下で初めての改定審議は、地域別に7〜30円の引き上げという結論をだした。今回の改定で、最も高くなったのは東京と神奈川で、ともに766円となった。これに大阪(748円)、愛知(731円)、千葉(723円)、埼玉(722円)、京都(717円)、兵庫(712円)、静岡(711円)、三重(701円)などが700円台で続く。逆に最も低いのは宮崎、鹿児島、沖縄の627円、次いで岩手、佐賀、長崎、熊本の628円となった。地域別最低賃金の全国加重平均は昨年より16円アップして、703円と初めて700円台にのった。
 A・Bランクの地方を中心に、例年より大幅の引き上げが実現したのは、全労連が軸となって進めてきた最賃底上げの運動が世論の支持を得て、国会にも影響を与え、最低賃金法の一部改正を実現し、そのもとでの最賃改定審議を、様々な運動で盛り上げたことによる。全国の仲間が取り組んできた最賃闘争が、大きな成果をあげたことに確信をもちたい。

(2)地域別にみた引き上げ額

 引上げ額のトップは神奈川の30円で、これに東京27円、埼玉20円、千葉、愛知、京都、大阪の17円が続く。生活保護との乖離是正(中賃目安第2表)が求められた12地方で、相対的に高い引き上げが実現している。逆に低額改定となったのは、徳島の7円、鳥取、島根、愛媛、高知、宮崎、熊本、鹿児島の8円である。これらは従来型の目安(中賃目安第1表)をもとに審議された地方である。とはいえ、従来型目安の地方でも、多くが目安に上積みをしている。目安+3円の引き上げとなったのは、静岡、滋賀、大分の3地方、目安+2円は9地方、目安+1円は20地方におよび、目安どおりの答申は長野、富山、徳島の3地方にとどまった。こうしたことにより、従来より最高額と最低額との格差はひらき、139円となった(昨年は121円)。
 今年度の地方最賃審議会は、最も早い福岡が8月12日に採決しており、地域によって1か月のズレが生じた。中賃目安によって、生活保護との乖離是正を指摘された12都道府県のみならず、引き上げを拒む使用者委員と労働者委員との対立が、かなり深刻になった審議会もみられた。

(3)答申結果についての評価

 2年続いて例年に比べれば大幅な引き上げを実現したことは、全国の仲間の奮闘の結果であり、運動的観点からは大きく評価すべきであろう。しかし、改定額の到達については、率直に不満を表明せざるをえない。最も高い東京・神奈川の766円でも、年間2000時間働いて税込153.2万円にしかならず、ワーキング・プアを抜け出しようがない。最賃法を改定し、憲法25条の文言をあえて書き込んで働く貧困をなくす趣旨を宣言し、さらに生活保護との整合性という具体的措置も記して「最賃決定における生計費原則の強化」をはかったにもかかわらず、中央・地方最低賃金審議会は、働くものの最低生計費の水準をみたすだけの改定額を答申できなかった。法の趣旨にもとる今回の各地の答申結果は、大いに批判されてしかるべきである。

(4)生活保護との整合性問題

 今回の審議における最大の問題は、生活保護を活用した最低生計費の算定にあたって、厚生労働省が、データを公にせず、不当な手法で金額を矮小化させたことである。不当な手法とは、
(1) 生活扶助費を級地の加重平均をとったこと。
(2) 住宅扶助について基準額でなく、生活保護受給者の実績値をもちいたこと(通常の労働者では入居できない特別に安い公営住宅などの家賃負担額)。
(3) 生活保護で制度化されている勤労控除を含めなかったこと。
(4) 173.8時間という長時間労働で月額換算したこと。
(5) 税金・社会保険料の控除について610円の沖縄のケースを全体にあてはめたこと

などである。
 地方最低賃金審議会では、自治体の生活保護行政の担当者が、生活保護制度の仕組みを紹介し、たとえば東京であれば時間額1150円程度なければ保護が適用されるなどと説明をしている。ここでも、中賃目安の誤りが指摘されている。
 中賃目安の算定手法については、新聞社説でも「比較する生活保護水準をまるでトリックのように低い数字ばかり使うのであれば、引き上げるべき最低賃金も不当に抑え込まれてしまう。最低限度の生活を保障するという改正法の趣旨がゆがめられかねない。生活保護との整合性はまだ不十分と言わざるを得ない」との批判がでている(毎日新聞社説9/14)
 当局の算定手法の不当性を広く知らしめるため、
(1) 生計費算定のデータや手法を公表させ、問題点をあぶりだすことや、
(2) 自前の「最低生計費試算」を実施して「あるべき最低賃金の水準」を別途打ち出すなどして、
(3) 労働者の最低生計費の指標としうるまともな算定方法を確立させ、
来年以降はそれに基づいた審議をさせることが重要となる。




2.当面の対応と今後の取り組みについて

(1)異議申立

 異議申立に取り組む。その中で、生活保護を活用した、勤労者の最低生計費の算定方法のあり方を指摘し、記者発表などもおこなって、世論に問題を周知せしめる。

(2)改定最賃の周知

 発行日は10〜11月とバラつく。最賃底上げの街頭宣伝を行い、周知徹底をはかりつつ、労働組合への結集と賃金闘争への意識喚起をはかる。あわせて、地域経済問題・中小企業活性化の課題にもふれ、ワーキング・プアと中小企業対策を政治の争点に押しだす。

(3)最低生計費試算と最賃体験

 京都と首都圏4地方だけで行われた、「最低生計費試算調査」の取り組みを、C・Dランク地方でも実施する。
 青年部の取り組みとのタイ・アップで、「最賃生活体験運動」を広げる。

(4)地方議会意見書採択

 改正最賃法の趣旨をふまえた、ただしい制度運用によって、「最賃1000円以上」と全国一律制度導入を訴える。地域経済活性化の視点も盛り込む。

(5)最賃審議委員の公正任命

 委員問題の重要性をあらためて、位置づけなおし、全国的に取り組む。

(6)全国一律最低賃金制度確立にむけて

 具体的な筋道を議論・提案する。「最賃要求大綱」を再改定する。

(以 上)

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