国民春闘共闘2009年春闘方針
雇用闘争の強化について 

 

09年国民春闘方針

2009年1月14日 単産・地方代表者会議

国民春闘共闘委員会


【09年春闘スローガン】

貧困・生活危機突破の大運動で、かえるぞ大企業中心社会


 市場原理主義にもとづく「構造改革」が強行された90年代後半以降、労働者の貧困、地域経済の疲弊が深刻化する一方で、大企業に富が集中した。大企業は、余剰資金をもとにマネーゲームを激化させ、その行きすぎが世界経済を危機においやる金融恐慌の原因となった。今、大企業は、そのような経緯には無反省なまま、派遣、期間工など最も不安定な雇用に追いやった労働者から仕事を取り上げ、むき出しの貧困に突き落としている。そのような非人間的な経営の被害は、全ての労働者に及んでいる。
 一方で、命まで脅かす大企業の横暴や冷たい政治に怒る諸国民のたたかいは、08年秋の段階でもさらに前進した。
 09年春闘は、生活危機に追いやられた中でたたかいに立ち上がった労働者、国民の連帯と共同で、破たんした大企業中心の経済から、国民生活中心の内需型経済への転換を迫る運動を旺盛に展開し、それを背景に地域・職場の切実な要求前進をめざす春闘を追求する。
 以上のことを表現するスローガンとして、前記を提起する。




 1 09年春闘をとりまく情勢の特徴とたたかいの四つの構え 

(1) 労働組合の役割が問われる09年春闘

 08年に入って原油や穀物、原材料の高騰が続いた影響で消費者物価を高止まりし、生活を圧迫している。加えて、9月以降の世界的な金融危機が日々深刻化し、自動車、電機、機械などの輸出産業での「ハケン切り」などの人減らし「合理化」が相次いで強行され、09年4月採用者の内定取り消しが出はじめるなど、社会問題化してきている。金融危機に起因する景気後退は、国内のすべての産業に影響し、内需をさらに冷え込ませている。
 しかし、政府や財界・大企業は、国際競争力強化を口実に、輸出大企業中心の社会システムをめざす「構造改革」の継続に固執している。大企業(供給サイド)中心の「改革」が、国内の雇用や地域の経済を疲弊させ、格差を拡大・固定化し、社会のあらゆるところに貧困を作り出したことへの反省はない。
 昨年来の「蟹工船ブーム」や青年の行動への参加増、反貧困の一点での共同の前進、非正規労働者が労働組合に結集した、たたかいの広がりなどは、「構造改革」に苦しむ労働者・国民の反撃であり、大企業の横暴と立ち向かう運動に取りくむ労働組合への期待の反映でもある。
 09年春闘では、そのような労働者の期待にも応え、「雇用も、賃上げも」の立場にたった積極的な要求を確立し、統一行動を軸に全組合員参加のたたかいで要求実現をめざす「労働組合らしい運動」を展開し、組織の強化・拡大をめざす。



(2) 雇用破壊を許さず、貧困・生活危機突破の大運動を地域から追求する09年春闘

 労働者の暮らしの悪化や社会保障の相次ぐ改悪によるセーフティネットもほころび、公共サービス商品化や地域経済の疲弊など「構造改革」の影響は地域に集中してあらわれている。加えて、大企業の雇用破壊が工場単位で実施されているため、雇用問題も地域に集中している。
 進行している経済危機を克服するためにも、雇用の安定や賃金改善、中小企業経営の安定などによる内需中心に転換することが必要であり、そのたたかいを地域から発展させる。
 08年秋からのたたかいを継続し、「地場賃金の相場底上げ」、「雇用、地域経済守れ」の運動を組織し、「たたかいの相互支援」を強め、地域春闘の前進をめざす。
これ以上の貧困と格差の拡大、生活危機の進行に反対し、国民生活本位、内需中心の経済への転換を求める社会的な運動を地域から前進させる。




(3) 「カジノ資本主義」失敗の「ツケ」を労働者・国民に押し付けることに反対し、大企業の社会的責任追及の取りくみを一層強化する09年春闘

 アメリカ発の金融危機が、世界経済を崖っぷちに追い込んでいる。GM、フォードなどの経営難も露呈してアメリカ経済の後退が顕著になり、世界同時不況の様相を示している。
 それは、株主中心で、短期の収益を追い求め、余剰資金を元手にした投機を繰りかえすアメリカ型資本主義=カジノ資本主義の失敗も明らかにした。
 しかし、日本の政府、財界・大企業は「構造改革」の継続に固執し、失敗のツケを労働者・国民に回そうと躍起になっている。
 09年春闘では、アメリカ追従、依存の経済、「構造改革」からの転換を求め、カジノ資本主義失敗のツケ回しに反対する世論と運動づくりが求められている。とりわけ大企業に対して、労働者や下請け中小企業への犠牲転嫁を許さず、社会的責任の履行を迫る取りくみを「貧困・生活危機突破」の運動と結んで強化する。



(4) 解散総選挙を迫り政治をかえる09年春闘

 二代続けての「政権投げ出し」と、三代続いて国民の審判を経ない首相が組閣するという異常な状況が自公政治のいきづまりを明白にしている。麻生内閣は、支持率低迷と経済的混乱のもとで立ち往生しつつ、選挙戦略が描ききれないまま解散を一日延ばしにしている。その矛盾を追及し、政治の転換を求め、解散総選挙を迫る取りくみを強める。
 また、民主党が08年秋の臨時国会で、総選挙の早期実施にこだわるあまり、後期高齢者医療制度の定着実施を前提とした補正予算に賛成し、実質審議抜きで新テロ特措法継続法案の衆議院採決を求めたことなど、国民世論に逆行する対応をおこなったことも直視して取りくみを進める。
 総選挙実施によって、与党が衆議院の絶対多数を占める状態が変化し、国民の世論と運動が政治を動かす状況はさらに強まることは確実であることを見すえ、国民生活本位の政治への転換を求める取りくみをさらに強める。
 後期高齢者医療制度廃止や労働者派遣法の抜本改正など09年春闘の重点課題の実現をめざす取りくみを強め、「構造改革」によって壊されてきた雇用と労働・社会保障制度などの再確立を求めるたたかいの前進に奮闘する。



 2 悪化し続ける労働者のくらしと労働条件など 


(1) 深刻化する労働者のくらし

 2000年代に入り、所得低下、雇用の不安定化、公的負担の増大などで生活の困難度を深めてきた労働者に、物価高騰の新たな痛みが押し付けられ、さらに、リストラ攻撃が加わっている。09年春闘を目前した労働者のくらしは、かつてなく深刻である。
 厚生労働省の2007年の国民生活基礎調査の結果では、生活が「大変苦しい」または「やや苦しい」と答えた世帯の割合は57.2%にのぼっている。
 2007年の民間給与実態調査(国税庁)では、2007年の年間給与(平均)が10年ぶりに増加したとされるが、しかし、その中でも年収200万円以下の労働者は10万人増えている。
 財務省の2008年4〜6月期の法人企業統計調査は、このうち従業員給与が減少する一方で、役員給与は前年比で2.1%増となっていることを明らかにした。役員給与を優先し、労働者への分配を低下させる企業経営の姿勢は、企業収益の減少で一層露骨になった。
 以上のような労働者軽視の歪んだ富の配分が、労働者の生活危機の直接の原因である。



(2) 急速に悪化する雇用状況

 10月の完全失業率(季節調整値)は3.7%、完全失業者数は255万人で、前年同月に比べ0.3ポイント、16万人低下している。しかし、11月以降、自動車、電機、機械などの輸出大企業が、アメリカ市場の低迷も口実に、総数3万人(政府調査)の雇用削減計画を発表し、さらにソニーの「16000人削減計画」の発表などで、雇用状況は一気に悪化した。
 不動産・建設、金融、小売などでの経営難による整理解雇や、「内定取り消し」なども増加傾向にあり、10月になり、求人倍率が多くの都道府県で前年よりマイナスとなっている。 
 貸し渋り、貸しはがしの影響もあって、中小企業を中心に倒産件数も上昇してきている。
 このような中、経済危機、景気後退を口実とする人べらし「合理化」に抗議し、大企業の横暴を告発する労働者のたたかいも前進している。



(3) 物価高騰の影響でくらしは悪化

 全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数・10月)は102.4で、前年同月比では1.9%となっている。2007年秋から上昇し始めた物価は、高止まりの状態にある。
 物価が急騰し続ける状況からは一段落した状況にはある。しかし、生活必需品をはじめ、高価格に張り付いた状況にあり、電力料金の引き上げは09年1月に予定されるなど、労働者家計への影響は小さくなく、個人消費が縮小している。
 昨年来の物価上昇分などの補填を求め、生活の改善を求める運動は、秋の段階でも国民的に広がった。



(4) 不満が集中する社会保障

 内閣府の「社会保障制度に関する特別世論調査」の結果では、社会保障制度に対して75.7%が「不満」と回答し、不満に感じている分野は、「年金制度」、「医療制度」、「介護制度」、「出産・育児支援制度」「雇用支援策」などとなっている。
 年金改悪によって、年金額(新規裁定)は年々低下しており、99年度比較で05年度は約1万円減少し、「富の再配分機能」が低下している。
 02年度から強行されている「社会保障費2200億円抑制」策で、削減額は08年度には1兆6200億円にも累増している。このことが、後期高齢者医療制度などの医療改悪や、それにともなう負担増につながっている。
 壊された社会保障制度の再生を求める運動は、医療、介護、保育などの分野で、自治体を巻き込む国民共同の運動として前進してきている。
 なお、社会保障財源を口実に消費税率引き上げをせまる政府の動きも強まっており、麻生首相は定額給付金のバラマキの引き換えに3年後の消費税率引き上げを明言した。



(5) 生活悪化に追い打ちをかける公共サービスの後退

 産婦人科などの医師不足に起因する事件が相次いでいるもとでも政府は、全国の社会保険病院と厚生年金病院の売却、廃止等を決定する動きを強めている。また、2007年12月に政府が決定した「公立病院改革ガイドライイン」にもとづく、経営形態見直しなどに自治体が着手し始めている。
 地方分権改革推進とかかわって国の機関の自治体移譲や廃止、住民サービスの民営化、廃止や、安易な市場原理導入による公務関連部門でのリストラ強制などの問題が相次いでいる。
 国の公共サービスからの撤退が、貧困を深刻にし格差を拡大していることに目が向き始め、住民福祉にかかわる自治体の責任を追及し、社会保障実現にかかわる国の責任発揮をせまる取りくみの共同が前進している。



(6) 労働者にとっても軽視できない食の安全、WTO問題

 WTO協定を口実にしたミニマムアクセス米について、農林水産省が、汚染米の食用転用を積極的に求めていた事実が明らかになった。その最大の原因は、自動車などの輸出産業の権益を擁護するため、必要性の薄いミニマムアクセス米を輸入し続けるため、国内での消費実績が求められていたからであることも次第に明らかになってきた。
 麦などその他の食品でも、輸入の際の検査、検定の不十分さなどが問題となっている。食料自給率を低下させ続けた農政の失敗であるにもかかわらず、政府は、「消費者庁」設置法案の成立のみに固執し、根本的な政策転換には触れようともしていない。WTO体制については、政府調達協定による入札制度改悪など日本国内への悪影響が顕在化している。



(7) いささかも緩んでいない改憲策動

 国民世論との矛盾の前に、イラクに派兵している航空自衛隊の年内撤退を政府が表明した。また、アメリカのイラク駐留の根拠となっている国連決議が、08年12月で期限切れになるもとでも、イラクとアメリカとの地位協定協議は難航した。
 そのような情勢下で、新テロ特措法延長法案は、12月12日に再議決され成立した。「新テロ特措法案」審議と同時に、民主党の「アフガニスタン復興支援特別措置法案」が審議され、国連決議さえあれば、集団的自衛権行使も可能とする「答弁」を民主党がおこない、麻生首相が就任直後に、「憲法審査会」の早期具体化を指示するなどなど、改憲の動きはいささかも緩んでいない。
 自衛隊の海外派兵が繰り返されるもとで、自衛隊では「侵略戦争美化」の幹部教育がおこなわれ、田母神前航空幕僚長の論文事件にも示されるようなシビリアンコントロールの緩みが進んできたことも明らかになっている。
 国民生活には背を向けながら、政府は、在日米軍基地再編強化のための予算編成をおこない、「軍事費削れ」の国民運動強化の重要性も高まっている。



(8) 08年秋の段階でも、青年の運動などが前進

 10月5日に開催された「青年大集会」(都内)には全国から4600名が結集し、「これってカニコー」という会話が飛び交うなど、行動とたたかいへの青年労働者の確信を深めるものとなった。
 10月19日には、全労連も参加する「反貧困世直しイッキ!大集会」(都内)が2000人の参加で開催された。同集会は、反貧困・全国キャラバンの集結集会とも位置づけられ、貧困解消の目標を掲げた政治の実現を求めるなど、この間の運動前進もふまえた質的な前進を確認できるものとなった。
 また、10月19日には、医療労働者などが結集する「STOP!医療・介護崩壊 増やせ社会保障費中央集会」が開催され、直前の10月16日には年金者組が後期高齢者医療制度廃止などを求める「年金者一揆」を全国で成功させるなど、社会保障拡充を求める運動も前進した。
 09年秋闘の最大の取りくみと位置づけた「11.13統一行動」も8000人が結集し成功した。また、労働者派遣法の抜本改正をもとめるという積極要求を掲げた労働組合などの広範な共同で開催された12.4集会も画期的な取りくみであった。



 3 重点課題と具体的な運動 


(1) 生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争の課題とたたかい

 賃金、労働条件の改善に背を向け、経済危機を口実にしたリストラ攻撃を強める財界の攻撃への反撃を強め、力を合わせて要求実現の展望を切り開く。
 国民春闘共闘委員会の08年春闘総括では、『トヨタ相場の重石』を跳ね返す粘り強い奮闘や、パート賃上げでの「(国民春闘共闘規模での)相場観を持った取り組み」、「企業内最低賃金協定での一定の前進」などの評価点を確認する一方で、「第2次集中回答日を設定した4月下旬時点での回答引き出し率は50%に達しておらず、統一行動への集中度を高めて春闘の効果を上げるたたかい方」の議論を呼びかけている。このこともふまえ、「『労働組合』が問われる09春闘」の中心的な課題に賃金闘争を位置づけ、力の集中をはかる。

 また、「全国加重平均16円」の改善となった08年地域最低賃金改定の到達点もふまえつつ、「時給1,000円」要求実現をめざす取りくみを「貧困・生活危機突破」運動の中心的課題と位置づけて展開する。
 公務職場の非正規労働者などの賃金・時給改善を、地場賃金の最低基準引き上げの課題とし、人事院通達(8月26日)も活用しつつ、地域春闘活性化の取りくみとして展開する。



1) 内需拡大による経済危機克服の立場にたって、「積極的な賃上げ」要求の合意形成をはかり、産別での要求統一、行動統一を重視し、職場の賃金闘争を活性化する。

@ 要求討議と要求提出、スト権確立、産別統一要求に基づく統一交渉強化による集中的な回答引き出しなど、労働組合の基本に立ちかえったとりくみを重視する。
A 統一賃金目標は、底上げ要求や「誰でも要求」の意義を改めて確認し、集約した賃金アンケートの結果もふまえ「誰でも月額1万円以上、時給100円以上の賃金改善要求目標案」を提起する。
この統一要求目標案論議を全組織で進めるとともに、パートや臨時、派遣、請負など非正規労働者を組合に迎え入れた賃金闘争の具体化をはかる。
B 単産統一要求については、生活実態に基づく要求確立の基本を維持する。
統一要求の討議では、「定期昇給(相当分を含む)分」、「物価上昇分」、「90年代後半からの大企業への富の集中、労働分配率低下分に着目した賃金改善分」の3点を確保できる水準(ベア)に留意して進める。
C 「賃上げ、生活危機突破」の要求実現を統一課題とするストライキを含む実力行使体制の確立をめざす。



2) 全労働者に影響する最低賃金引き上げのたたかいを重視し、取りくみを強化する。

@ 最低賃金審議会委員の公正任命を求める取りくみなど、1月から運動を具体化する。
A ナショナルミニマムの基軸となる最低賃金の水準確保をめざす。「月額16万円、日額7500円、時給1,000円以下の労働者をなくそう」の最低賃金要求を確認して取りくみをすすめる。
09年の取りくみでは、08年最低賃金改定の到達点もふまえ「生活保護との整合性」のとり方の改善、中小企業対策の充実を求める政府追及や宣伝行動を強める。
B 京都、大阪、首都圏などで先行して取りくまれた「必要生計費試算」結果の活用を図るとともに、C、Dランクの地域での同様の試算について検討する。
C 初任給水準と最低賃金との関連にも留意し、初任給引き上げ、企業内最賃協定締結の運動を重視する。



3) 「公契約における公正な賃金・労働条件確保」を求める運動を強める。

 ブロック規模での学習会、シンポジウム、集会などの具体化を検討する。1月23日に東京で、公契約運動の学習会を開催する。
 競争入札での雇用、労働条件破壊の実態調査を検討する。
 先行事例もふまえた自治体要請行動の全国展開をめざす。



4) 地場賃金の引き上げやたたかいの相互支援など地域春闘を強める。

 地域の最低賃金相場の形成も目的に、自治体および関連職場での官製ワーキングプアの解消、公契約運動の前進をめざす全自治体訪問行動、国の出先機関要請行動などを2月中下旬に配置する「地域総行動」で具体化する。
 取りくみでの人事院「指針」の活用を検討する。



5) 大企業による「儲けの独占(ぼろ儲け)」や企業のモラルハザードを告発し、社会的責任の履行を求めるキャンペーン運動を地域から展開する。

 「チェックリスト」の作成と宣伝、配布と集約をすすめる。キャンペーン運動の国民運動化を模索する。
 非正規労働者などの雇用破壊を先導するトヨタ、キャノンなどを対象とする大企業包囲行動の全国的な取り組みを2月初旬に具体化する。



6) 生活危機突破の共同を経営者や事業者団体にも働きかける。

 統一要請書にもとづく産別、地域組織での企業要請行動の再活性化を追求する。2月中下旬を取りくみの集中時期とし、各組織で具体化する。



(2) 雇用破壊反対、働くルールの確立のたたかい

 日雇い派遣の禁止を内容とする労働者派遣法「改正」法案提出など、不十分さは持ちつつも、労働者保護規制にかかわる一定の修正が動き始めた。一方で、財界はホワイト・カラー・イグゼンプション導入など「労働ビッグバン」具体化を虎視眈々と狙っている。大企業が率先して雇用破壊をおこない始めた状況からしても、働くルールをめぐる労使の鋭いせめぎ合いのもとで09年春闘を迎える。
 08年春闘期の制度要求での協約改定の到達状況が7年ぶりの高水準となり、職場から働くルールの整備・確立を求める運動も強まってきている。
これらの点もふまえ、09年春闘での「職場の働くルール確立運動」を進める。
 金融危機、経済危機のもとで、非正規労働者を「雇用の調整弁」とする雇用破壊と、正規労働者のリストラの動きを強めている製造業・大企業の横暴告発を強める。


1) 不安定雇用の減少、非正規労働者の雇用確保、労働条件改善をめざす取りくみを強める。

@ 非正規労働者などの雇用打ち切りなどの雇用破壊に反対する取りくみを地域から強める。公的分野における雇用の場の確保や職業訓練の充実などを求める政府要請行動などに取りくむ
A 製造業をはじめとする派遣労働の打ち切りの急増や、派遣労働から有期雇用への切り替えによる雇い止め問題など、雇用破壊への反撃を強め、当該労働者の組織化を進める。
B 労働者派遣法の抜本改正運動を継続、強化する。
C 非正規労働者の正規雇用への切り替えを求める職場、地域の運動を強める。
D 以上の取りくみを通じて、「非正規センター」の活動活性化をめざす。



2) 非正規労働者の働くルール確立の取りくみを強める。

 改正パート労働法などを積極的に活用する職場、地域の取りくみを強める。



3) 自治体要請行動(2月中下旬の地域総行動)と合わせ、公的分野における雇用の場の確保や職業訓練の確立を求める要請運動を取りくむ。

4) 外国人労働者の受け入れ条件の法的整備を求める取りくみ(行政要請行動など)を検討する。

5) 労働時間の短縮や労働時間管理の徹底を求める単産、地方組織の要求として、次の5点に留意した論議を進める。

@ 所定内外の労働時間短縮と休暇の完全取得、要員の確保を追求する。
A 長時間通勤の緩和を求める。
B くらしに配慮した労働時間の短縮等の実現をめざす。
C ただ働き残業の根絶を追求する。
D 労働基準法改正も含め、所定外労働時間割増率の引き上げを追求する。



6) 「職場の働くルール運動」の取りくみを推進し、「働くルール署名」に取りくむ。

 「働くルール署名」は、
@雇用の安定、
A労働者派遣法抜本改正、
B最低賃金「時給1,000円」の実現、
C労働時間規制強化、
D均等待遇の法制化
の5点とし、国会請願署名として具体化する。
 署名集約目標を100万筆とし、3月下旬を第1次集約、4月下旬を第2次集約、5月下旬の最終集約をめざす。
 労働基準法改正法の成立もふまえ、時間外割増賃金率の引き上げの労働協約締結の取りくみを進める。
 裁判員制度実施にともなう休暇保障にかかわる労働協約締結を進める。



7) 男女とも働き続けられる社会をめざし取りくむ。

 育児・介護休業制度改善の運動(署名等)を進める。



8) 公務員の労働基本権・政治活動の自由の回復、国鉄闘争の早期解決、NTT闘争をはじめすべての争議の勝利などをめざす取りくみを強める。

 「春の争議総行動」を5月28日に取りくむ。


9) 労働委員会民主化の取りくみを進める。労働審判制度も含め、労使紛争処理機関の活用状況調査等を検討する。


(3) 社会保障の充実を求め、消費税率引き上げ反対など国民共同のたたかい

 医師養成数の拡大、介護報酬の引き上げ・介護人材確保など、この間のたたかいを反映した対応を政府が言明している課題もある。しかし、政府は、限界に来ている社会保障費削減に固執し、後期高齢者医療制度の定着、年金給付額の抑制などの制度改悪を継続しつつ、財源確保を口実にした消費税率引き上げの姿勢を強めている。また、保育の市場化をねらう制度改悪も進められようとしている。
 社会保障制度のあり方は政治の中心課題となっており、総選挙後の状況で課題が大きく変化することが考えられ、総選挙と結んだ運動強化は不可欠である。
 消費税増税に反対し、軍事費の聖域化、大企業本位の予算編成からの転換を求める国民的運動の前進も課題となっている。


1) 政治のあり方を国民的に問い続ける中心の運動課題に社会保障制度改善の運動を位置付け、年金、医療、介護制度の拡充要求を掲げて取り組む。

 年金財源への「国庫負担2分の1」の履行期限であることもふまえ、09年度最低保障年金制度の確立、年金支給額改定を求める取りくみを強める。生活保護改悪に反対する取りくみを進める。



2) 通常国会冒頭での後期高齢者医療制度廃止法案成立をもとめ、署名行動などを継続、強化する。介護保険制度の改善を求める運動を強める。

 これらの課題での要求前進もめざした「貧困・生活危機突破」の節目の行動として2月13日に中央行動を配置し、政府交渉、国会行動などに取りくむ。



3) 税金の使い方、とり方の国民生活重視への転換を求める運動を進める。

 09年度予算編成ともかかわって、軍事費聖域化や無駄な公共事業を中止して社会保障に回すことを求める宣伝、政府追及などの運動を展開する。
 消費税による財源確保、消費税率引き上げに断固反対し、企業の社会的責任追及や優遇税制の是正、税金の使い方を社会保障中心に切り替える政策転換を迫る取りくみを強める。
 3月13日の重税反対総行動など、国民諸階層と連携した取りくみを強める。



4) 労働総研、中央社会保障協議会とも連携し、社会保障制度にかかわる要求政策の具体化を急ぐ。

 年金財源への「国庫負担2分の1」の履行期限であることもふまえ、09年度最低保障年金制度の確立、年金支給額改定をもとめる取りくみを強める。 生活保護改悪に反対する取りくみを進める。



5) 地球温暖化問題、公害、アスベスト被災、食糧を守る運動などで諸団体との共同や学習、署名などを強める。


(4) 憲法改悪の策動をはね返し、守り、いかすたたかい

 航空自衛隊のイラクからの撤退の一方で、アフガニスタンへの自衛隊派遣を求めるアメリカの圧力が強まっている。また、9月25日、横須賀に原子力空母が入港し、在日米軍基地再編強化が進められている。
 改憲のための「国民投票法」が成立しているもとで、改憲策動はいささかも緩んでおらず、運動の継続、強化が求められる。


1) 9条改憲反対、在日米軍基地強化反対、「戦争をする国」の人づくりを進める教育の反動化に反対など、一致する課題での共同の取りくみ具体化を進める。

2) 2010年の第2回核不拡散条約再検討会議に向け、核兵器廃絶を求める国内外の運動
に結集する。署名行動の具体化をはかる。



 4 おおまかな日程と行動配置 


(1) 単産、地方組織での春闘論議を強め、たたかう体制作りを進める。

 各組織では、09年春闘での要求、行動などの意思統一にむけた討論集会などの早期実施を追求し、たたかいを準備する。



(2) 1月から2月初旬にかけ、貧困・生活危機突破の運動のうねりを地方、地域からつくり出す宣伝行動、集会などを展開し、2月中旬以降の取りくみにつなげる。

  1月7日 新春宣伝行動
 1月14日 経団連包囲行動
        単産・地方代表者会議
 1月28日 春闘決起集会(春闘開始宣言集会)、全国統一行動
 2月初旬(ゾーン) トヨタ、キャノンなどの大企業包囲行動


(3) 2月中旬から月末にかけ、政治、経済の転換を求める国民世論への訴え、共同の前進めざす取りくみを中央、地方で旺盛に展開する。
 この時期に、各組織での春闘要求を提出する。


2月13日 貧困・生活危機突破、雇用確保など、労働者・国民の切実な要求を掲げ、国民諸階層と共同して取りくむ中央行動
    * 貧困・生活危機突破、雇用の安定・確保、中小企業経営の安定、後期高齢者医療制度廃止法案の成立、社会保障費2200億削減反対・充実要求の実現など09年度予算の国民生活本位への転換、労働者派遣法改正要求など非正規労働者の雇用安定にむけた制度実現などの要求課題で、全省庁要請行動、国会行動、集会などの終日行動配置

2月中旬から3月初旬(ゾーン) 地域総行動
    * 自治体要請行動、事業者団体要請行動などを具体化



(4) 3月中旬に第1次回答日を設定し、回答引き出しの交渉を強化する。集中回答日の翌日にストライキを含む実力行使の統一行動を配置し、回答押上げをはかる。
  第1次集中回答の結果もふまえ、追い上げ交渉を強めるとともに、3月決着を迫る統一行動を配置する。


3月5日 春闘要求実現・総決起中央行動
     * 第1次回答日前の意思統一の行動
3月11日 第1次集中回答
3月12日 春闘要求への回答引き出し、追い上げを迫る全国統一行動
     * ストライキを含む実力行使の配置
3月13日 重税反対全国統一行動
     * 消費税率引き上げ反対、庶民減税要求を掲げた地域行動として具体化
3月23日頃(ゾーン) 春闘回答追い上げの職場集会などを3月23日中心に統一行動として配置
     * 財界の春闘押さえ込みを許さず、3月中の回答引き出し、追い上げの意思統一の統一行動


(5) 4月下旬に回答引き出し、追い上げの集中日(ゾーン)を配置し、早期決着をめざし取りくみを集中する。

 09年最低賃金の大幅引き上げをめざした大衆行動をこの時期から強める。
 国会動向に応じた行動配置を別途検討する。
 4月中旬(20日の週)回答引き出し、追い上げの全国統一行動
           * 4月中の春闘決着にむけ、統一行動を配置
           * 最低賃金引き上げにかかわる一斉申し入れ行動などを具体化
5月中下旬       春闘中間総括、最賃・人勧、国会終盤課題での中央行動を検討




以上



雇用闘争の強化について 


 
貧困・生活危機突破の大運動で、かえるぞ大企業中心社会