大会の挨拶にあたり、最初に国鉄闘争に関わって一言と申し上げます。7月14日、東京高裁・民事第17部で開かれた鉄建公団訴訟の控訴審において、南敏文裁判長が原告・被告双方に、裁判外での話し合い解決を促しました。四者・四団体は、これまでの運動と判決の積み重ねの成果だとして裁判長の提案を受け入れ、誠意をもって交渉に応じることを表明しました。
冬柴国土交通大臣も閣議後の記者会見で、鉄道運輸機構に対し「お受けし、力いっぱい誠心誠意、解決に向かってやる」と述べました。1047名の不採用問題は22年目を迎え、病気などで他界した被解雇者がすでに47名にのぼっています。雇用問題、年金問題、解決金の問題をふくめて、国鉄闘争の解決に向けた交渉が進展することを強く期待するものです。
大会参加の皆さん、労働戦線の右翼的再編に抗し、日本労働運動の闘う伝統を受け継ぎ、全労連を結成したのは1989年11月21日でした。全労連の結成は、反共・労資協調路線や特定政党支持義務付けのもとで、民主的権利と活動の自由を奪われてきた労働者にとって画期的な選択となりました。
同時に1989年は、6月に中国の天安門事件がおき、11月にベルリンの壁が崩壊した年でした。ベルリンの壁に続いて、ポーランド、チェコスロバキア、ルーマニア、そしてソ連、当時社会主義国と呼ばれていた国が次々に崩壊していく。全労連結成に対して、政府や財界は何と言ったか。
「資本主義が勝利した。社会主義は死滅した」。「こんな時代に、闘う労働組合や階級的ナショナルセンターの結成など時代遅れも甚だしい」。その大合唱でした。「全労連は3年と持たないだろう」と言い、実際に全労連を社会的に排除しようとするさまざまなシフトが敷かれました。
それから19年、全労連は資本からの独立、政党からの独立、一致する要求にもとづく統一行動の旗を掲げ、単産、地方・地域組織、組合員の地を這うような奮闘によって運動と組織を前進させ、日本の階級的ナショナルセンターとして初めて10年以上にわたる闘いの歴史を刻んできました。
政府や財界が宣言したように、今日の世界は本当に資本主義が勝利したと言えるのでしょうか。勝利どころか、資本主義の経済や社会システムが崖っぷちに立たされ、どこでも崩壊寸前に陥っています。労働者の数を減らし、賃金を切り下げ、リストラすると株価が上がり、経営者が儲かる。株価という一枚の紙切れにつけられた値段に、労働者の人生が左右される。物を生産して利益を上げる資本主義ではなく、金で金を儲けるカジノ資本主義に変質し、世界総生産の数十倍にのぼる金融が、株や債権、原油や穀物相場に投機され、それが世界中を飛び回り、世界経済を翻弄する。
新自由主義、市場経済万能論のもとで、地球上に格差と貧困が広がり、環境が破壊されてきた。資本主義はその200年の歴史をとおして、社会における公正な富の配分をいかに達成するのかという問題に答を出せませんでした。アメリカ式資本主義が広がれば広がるほど、格差と貧困が拡大する。そういう中で、資本主義に代わる新しいシステムが必要ではないかという声が世界に広がっています。日本でも爆発的な蟹工船ブームが起きています。
今日は「私たちはいかに蟹工船を読んだか。エッセイコンテストで小樽商科大の学長賞をかくとくした山口さなえさんが代議員として参加されていますがオホーツク海で蟹を獲り、缶詰に加工する船の中での、奴隷的な労働の実態と労働者の闘いを描いた小説に、現代の青年たちが自分自身の姿をダブらせて共感を寄せる。ある若者は、「他人のことを自分のことのように考える蟹工船の労働者に、自分の行き方を見つめ直した」と語っています。
さらに、週刊誌が、「共産党宣言」というタイトルの特集記事を組む。テレビが「資本主義は限界か」という特集番組を放映する。これらの現象は、これまでの単なる延長線上の変化にとどまるものではない。社会あり方そのものを問うような変化の始まりではないでしょうか。
実際の運動をめぐっても、国民の要求と運動が政治を動かす状況が見られるようになりました。最低賃金や派遣労働をめぐっても、タクシーの規制緩和や医師・看護師不足の問題でも、被災者生活再建支援法や後期高齢者医療制度でも、要求と運動が国会を動かす新しいプロセスが始まっています。
労働組合は、こうした情勢の変化を生かして労働者・国民の要求を一歩でも二歩でも前進させる「反貧困」の闘いを前進させる必要があります。労働者の賃金が9年連続減り続け、生活保護にも満たない年収200万円以下の労働者が1023万人、ワーキングプア、日雇い派遣、偽装請負、ネットカフェ難民。労働者がまるでボロ布のように使い捨てられている。
農民は、150円の水のペットボトルに米を詰め込んでも90円にしかならず、一時間当りの労賃はわずか256円。原油価格の高騰で漁民や中小業者の営業が成り立たず、バタバタ潰れている。患者さんや高齢者は、医師・看護師不足による病院閉鎖、後期高齢者医療制度で医者にもかかれない。
こうした実態に正面から向き合い、労働者の最低賃金の改善、中小業者の下請け単価の保障、農民の農産物価格保障、生活困窮者の生活保護基準の改善、高齢者の最低保障年金の確立など、貧困と格差をなくす課題を正面に据え、統一して闘えば大きく前進する可能性が切り開かれています。
こういう情勢のもとで、私は全労連議長として連合、全労協をはじめとするすべての労働組合、労働者の皆さんに、そしてすべての民主勢力・市民団体の皆さんに、今こそ小異を残して大同につき、労働者と国民に襲いかかっている格差と貧困を解消するために、共同して闘うことを呼びかけるものです。
もう一つは、憲法闘争です。当選者の95%以上が改憲を主張する政党に所属する議員であった参議院選挙、直後のアンケートで、改憲賛成と答えた議員が過半数を割り、九条については改正賛成が26%で反対が54%でした。4月に発表された読売新聞の調査でも、15年ぶりに改憲反対が賛成を上回りました。2004年に結成され、7000をこえた九条の会や共同センターの取り組みなど、私たちの運動が情勢を変えてきました。
憲法審査会を始動させるたくらみ、海外派兵恒久法の策動、米軍基地再編の動きなど、改憲派の策動はいささかも軽視することはできませんが、本大会以降の2年間、憲法を守り生かす圧倒的多数の国民世論をつくること、とりわけ労働戦線において改憲反対の確固とした流れを築くために、全労連のすべての組合員の奮闘を心から呼びかけるものであります。
労働者の過酷な実態と、闘えば前進する情勢が、労働組合に対する期待を高めています。未組織労働者のアンケートで、16.9%が「いつも労働組合の必要性を感じる」と答えているように、900万人以上の未組織の仲間が、いつも労働組合の必要性を感じながら働いています。手立てを尽くして取り組むなら、飛躍的な組織拡大の可能性が生まれています。
格差と貧困をなくす闘いの前進にとっても、憲法を守り日本の平和を守りぬく闘いにとっても、強大な労働組合の建設、労働者の組織率の前進が不可欠です。結成20周年を、史上最高の峰で迎えるために、すべての単産、地方・地域組織が奮闘する決意を固めあおうではありませんか。
代議員の皆さん、全労連結成に託した私たちの夢とロマン。労働者が人間らしく生き、働ける社会をつくろうという夢。すべての国民に、健康で文化的な最低限度の生活を保障する社会をつくろうという夢。二度と再び、戦争しない平和な日本を築こうという夢。日本労働運動の闘う統一を成しとげようという夢。
その夢とロマンは、今も私たちの胸にあります。夢を希望に変え希望を目標に高め、目標にもとづいて計画をつくり、計画を行動に移して前進させようではありませんか。代議員の皆さんの積極的な討論によって歴史的な節目に当たる本大会が成功することを心から期待して議長挨拶とします。
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