【第1号議案】第23回定期大会運動方針(案)
憲法を職場とくらしにいかし、
貧困と格差の是正・平和の実現を
第1章 20年目をむかえる全労連運動
1.たたかいの伝統を引継ぎ発展させた20年
1989年11月21日、戦後労働運動の積極的・戦闘的伝統を受け継ぐナショナルセンター・全労連を結成した。財界・大企業と政府が一体となった賃金抑制、雇用破壊、社会保障改悪・庶民増税とたたかい、平和や民主主義を守る全国統一闘争と国民運動を提起、追求する労働組合の中央組織が不可欠との熱い思いの結実であった。
結成から20年、全労連はたたかいの旗を高く掲げ続け、たたかいの先頭に立って労働者と国民を励ましてきた。
2.激動の90年代、要求と運動をリードし続けた全労連
1989年11月の「ベルリンの壁」崩壊などを契機に、アメリカ型の資本主義市場経済が世界的規模で広がった。競争と効率性を最重視し、政府の市場介入を徹底して排除する新自由主義・市場経済のもとで、完全雇用と社会保障制度が壊され続け、年功賃金、終身雇用の日本型労使関係が否定され、貧困と格差が急速に広がった。
また、1991年の湾岸戦争を契機に日本政府は、「世界の憲兵」をめざすアメリカの軍事戦略への従属を強めた。同時に日本国内でのナショナリズムも高まり、改憲の動きが本格化した。
1996年から実施された小選挙区制のもとで政治の保守化がすすみ、財界の求める規制緩和、民営化などの新自由主義「構造改革」が強行され続けた。
このような時期、全労連は、大企業の相次ぐリストラに反対する雇用闘争を強め、年金改悪、消費税率引き上げ反対などのたたかいや、憲法擁護の取り組みを国民共同で展開した。一貫して、新自由主義反対を明確にし、労働者、国民の切実な要求を真正面に掲げ、大企業と政府の責任を追及し続けた全労連の取り組みや主張は、労働者と国民の運動をリードし、賛同と共同を広げてきた。
3.全労連運動が影響を及ぼした2007年の政治的変化
21世紀に入り、新自由主義改革は小泉「構造改革」として、全面的かつ強引に進められた。同時に、2001年9月の「同時多発テロ」を契機に、日米安保体制の再定義が行われ、自民党が「新憲法草案」を取りまとめるなど、改憲の動きがさらに進んだ。
全労連は、雇用、最低賃金、労働時間などにかかわる働くルール確立の運動や、有事法制反対、教育基本法改悪反対などの運動、「九条の会」結成の取り組みなどを強化し、国民諸階層との対話と共同を重視した草の根からの取り組みを進めた。
労働者の貧困と格差が深刻となり、地方切り捨ての「三位一体改革」やWTO体制下での農業衰退などによる地域の疲弊が急速に進み、一方で大企業の一人勝ち状態が顕著になるもとで、従来の枠をこえる共同を地域から前進させてきた。
そのような全労連運動は、「地方の反乱」と無党派層の投票行動が反映した2007年参議院選挙での自民党、公明党の敗北という政治的変化にも反映した。
4.全労連の存在と役割が輝きを増す情勢に
結成以来のたたかいと情勢の変化、特に2000年代初頭からの変化を振り返ると、「行動綱領」や「21世紀初頭の目標と展望」で基本的な課題を確認し、その実現をめざしてねばり強くたたかってきた全労連が、社会的存在感を高めてきたことは明確である。
今日、大企業本位、アメリカ従属の政治、経済体制はいきづまりがいよいよはっきりしてくる中で、労働者・国民が主人公の社会に転換させていくためには、労働者の団結を最大限保障する「三つの原則」(資本からの独立、政党からの独立、共通の要求での行動の統一)を堅持する全労連の存在と役割が輝きを増している。
第23回大会では、それらの点での確信を深めあう。全労連の要求と運動の歴史に確信をもち、「200万全労連」を早期に達成し、次の節目にむけて着実な一歩を踏みだす。
第2章 2年間の運動の到達点の特徴と明らかになった課題
1.政治的な激動の中、労働者の要求をかかげて奮闘
(1) 郵政民営化法案成立と新憲法草案の決定の後、2010年代までの「構造改革」継続を既定化する行政改革推進法を「花道」に小泉内閣は終わり、その路線を引き継ぐ安倍内閣が06年9月に発足した。
安倍首相は、「戦後レジュームからの脱却」をスローガンとし、任期中の明文改憲を公言した。安倍内閣は、就任直後の06年秋の臨時国会で教育基本法改悪法や防衛省昇格法を、07年通常国会では「改憲手続法」を強行成立させるなど、改憲に向けた一気呵成の動きを強めた。
財界の求める成長政策に固執しつつも、貧困や格差の是正を迫る全労連などの反撃の前に、ホワイトカラー・イグゼンプションなどの労働法制改悪を断念し、最低賃金引き上げに容認姿勢をとらざるを得ない状況も生まれた。
そのような中、07年7月に行われた参議院選挙では、消えた年金問題や貧困と格差是正が争点となり、「構造改革」への批判も反映して、自公両党の議席が過半数を切る結果となった。この選挙結果をうけて、07年9月、安倍首相は政権を投げ捨て、自民党総裁選挙を経て福田内閣が誕生した。
(2) 福田内閣は、小泉、安倍内閣の「構造改革」路線を基本的には継承し、衆議院と参議院での政党の勢力関係が異なる「ねじれ状況」のもとで、安倍内閣ほどの改憲姿勢はとりえず、民主党との連立を模索しつづけている。
07年秋の臨時国会では、アメリカのイラク戦争継続とかかわる「テロ特措法」の継続が最大争点となった。福田首相は、民主党への大連立協議を申し入れたが拒否され、インド洋の自衛隊艦船を一時撤退させた上で、衆議院で議席の3分の2を占める状態を利用し、新テロ特措法案を08年1月に再議決、成立させて再派遣した。
その後、ガソリン税などの暫定税率を復活させる租税特別措置法なども再議決させて国民の批判を浴び、09年度以降は道路特定財源を一般財源化することを閣議決定せざるを得なかった。
また、08年4月から実施された後期高齢者医療制度の廃止を求める運動が国民的に広がったが、「説明不足」と居直り、消費税率引き上げ論議にすり替える対応を行っている。
衆議院で圧倒的多数を占めている国会状況に逃げ込んで国民世論に応えず、「構造改革」に固執する福田首相への国民の批判は高く、発足半年後には内閣支持率が20%を割った。
(3) 以上のような激動する政治状況のもと、全労連は、民主団体などとの共同を広げ、国会行動と全国統一行動を軸に運動を展開し、世論をリードしてきた。
06年秋の教育基本法改悪反対のたたかいでは、各界連絡会を結成して運動を進め、ナショナルセンターの所属をこえた共同行動を全国に広げた。
07年通常国会での「改憲手続き法」成立阻止のたたかいでは、市民団体などとの共同も広げ改憲反対の世論を高め、秋の臨時国会でのテロ特措法廃案の運動につなげた。
08年通常国会では、年金者組合を中心とするたたかいで、後期高齢者医療制度の廃止・撤回を求める国会内外の世論を先導し、野党4党による廃止法案の提出と参議院での議決の状態を作り出し、政府・与党を追いつめた。
国会状況が変化した07年秋の臨時国会以降、災害被災者生活支援法改正法や薬害肝炎被害者救済法の成立など、運動と世論で制度改善を勝ちとる成果が生まれている。これらの運動でも、全労連は一定の役割を果たしてきた。
2.貧困の解消、格差の是正を求める運動が大きなうねりに
(1) 全労連は、第22回大会で、①「戦争をしない・参加しない日本」をつらぬく、②働くルールを確立し、貧困と格差を是正する、③安心・安全な地域社会の実現をめざす、との三つのキーワードでの運動展開を確認した。
この運動は、悪化し続ける労働者・国民の生活実態や、前述した政治的な変化とかみ合って発展してきた。とりわけ、貧困と格差の是正を求める運動は、この2年間で大きく前進し、うねりを作りだしてきた。
06年7月、前回大会直後に、全労連、JMIUが開催した徳島・光洋シーリングテクノでの偽装請負を告発する集会は、製造業で広がる違法な働かせ方への批判を高めただけでなく、非正規労働や間接雇用の増加が貧困と格差の要因となっているとの問題意識を国民的に広げる契機となった。
「競争や格差は必要悪」とのマスメディアの論調も変化しはじめ、「構造改革」のいきすぎを問題視する世論を大きく広げ、青年労働者などのたたかいを励ました。
(2) 世論と運動の広がりが、まともな雇用、賃金を求める要求を前進させてきた。
07年春闘を前に、最低賃金時給1,000円要求で労働組合のナショナルセンターの足並みが揃い、07年の地域最低賃金は平均14円の引き上げ改定につながった。また「生活保護との整合性」を明記し、生活保護基準を下回る法定最低賃金の是正も目的とする最低賃金法改正法が07年11月に成立するまで要求は前進した。
08年に入り、中小企業対策強化やタクシーの参入規制再強化、発注者の下請け単価切り下げの監視強化など、労働者の最低生活保障の観点から、規制緩和の行きすぎを是正する政府の動きも顕在化しはじめた。
08年国会にむけ、直接雇用申し入れ義務の緩和などの労働者派遣法大改悪(労働ビッグバン)が狙われた。しかし、偽装請負をくり返す大企業の実態告発や、日雇い派遣でのピンハネ、労働力レンタルの実態など派遣会社の違法行為の告発が繰り返され、「日雇い派遣」禁止をはじめとする労働者派遣法の抜本改正が政治課題となった。全労連は、ナショナルセンターの枠組みをこえる共同を継続的に追求し、派遣問題を集中的にとりあげた日本共産党の質問が国会内外の世論を変化させるなどの状況のもとで、政府が日雇い派遣禁止に言及する状況も生まれた。
(3) この2年間、とりわけ青年の運動が大きく前進している。
OECDなど国際機関も異常さを指摘する状態となっている非正規労働者増と、人間性さえ否定する働かせ方への怒りや不満を行動で示す青年の取り組みのひとつの結節点が07年5月に開催された青年大集会である。また、全労連も参加した「反貧困ネットワーク」結成や08年3月の「貧困フェスタ」の成功は、貧困解消の社会的運動を大きく発展させる契機となった。
最低賃金引き上げの取り組みと、農民、漁民、自営業者などのくらし、営業の最低保障を求める運動や生活保護改悪に反対するたたかいなどとの連携、共同が全国的に発展し、憲法第25条の実現を求める運動として前進しはじめたことも重要である。
3.儲け優先の企業の横暴を告発するたたかいが前進
(1) 「ルールなき資本主義」と批判される日本企業の経済活動の弊害を告発し、是正を迫るたたかいも前進した。
07年8月、ディーゼル汚染の根絶と被害者救済制度の確立を求め、自動車メーカーや政府を訴えてたたかってきた東京大気汚染公害裁判が、13年に及ぶたたかいの結果、企業の責任も認める形で勝利解決した。
同年6月、ゼネコン等の企業が施行したトンネル建設工事に従事し、じん肺に罹患した労働者が、工事発注者としての国の安全配慮義務不履行などを訴えていた訴訟で、労働時間管理での発注者責任を認めた画期的な内容で和解が成立した。
08年5月16日、広がるアスベスト被害のもとで、政府や製造企業などの責任を問い、被害者救済と被害根絶を求める建設労働者の集団訴訟が、東京地裁に提訴された。07年度でも995人のアスベスト労災認定がおこなわれ、労災認定事業者が次々に追加され、ビル解体などの従事者や教職員にも被害者の発生が確認されはじめている。安全衛生を軽視し、労働者を使い捨てにする政府、企業の姿勢をただすたたかいが粘り強く取り組まれ、成果を挙げている。
(2) 厚生労働省の公表では、06年4月からの1年間で、労働基準監督署が指導した「サービス残業」是正件数は、1679企業、対象労働者約18万人、是正支払額227億円となっている。「名ばかり管理職」の残業代支払いを求める告発が続いたことが、厚生労働省の指導姿勢を改めさせた。介護事業者コムスンの不正受給などを契機に労働者を酷使する事業者規制が強められた。派遣会社のグッドウィルによる悪質な違法派遣が明らかになり、行政指導が強化され、刑事責任も追及される中、廃業に追い込まれた。日雇い派遣禁止の自主ルールを人材派遣協会が制定せざるを得なくなるまでの労働者の怒りをわきたてた。
偽装請負を追及されたキヤノンなどで非正規労働者の正規社員化がはじまり、偽装請負を受け入れた企業の違法性が認定された松下プラズマディスプレイの大阪高裁判決が出されるなど、企業の「やり得」を許さない労働者の声と運動の成果が積み上げられてきた。
4.賃金改善をはじめとする重点課題のたたかいで、多くの先進例
(1)史上空前の利益を更新し続けながら人件費抑制を強める大企業に批判が高まる
大企業の利益は、労働者の賃金を抑制し、非正規・間接雇用労働者を増やし、下請け単価を切り下げ、法人税率引き下げなどの政府の支援によって実現したものである。にもかかわらず、その配分は株主と経営者に偏らせる姿勢をさらに強めた。そのことは、「トヨタ相場」に規制される超低額ベア、一時金重視の利益配分の結果となった07年、08年春闘にも反映している。
しかし、そのような中でも、非正規労働者の時給単価引き上げや企業内最低賃金協定の着実な前進、一定数の5ケタの賃金引上げの獲得組合の奮闘、タクシー運賃改定の労働条件反映の確約、自治体非正規労働者の賃金改善など、先進的、教訓的な取り組みも少なくない。
また、要求提出、統一回答日への結集、ストライキ権確立状況などは、08年春闘では低下傾向に一定の歯止めがかかりはじめた。
さらに、大企業の一人勝ち状況に対する批判は、中小企業経営者などにも広がっている。
(2)労働法制の全面改悪をくい止め、労働者保護強化の流れを作り出した
財界が狙っていたホワイトカラー・イグゼンプション導入や労働者派遣法の改悪などの「労働ビッグバン」の強行は許していない。そればかりか、既にふれた派遣労働をめぐる状況の変化さえ作り出している。
過労死裁判などでの貴重な到達点やサービス残業、「名ばかり管理者」の告発などもあって、行政による所定外労働の規制強化や、トヨタがQC活動を業務とする就業規則見直しに着手するなど、前向きの変化が生まれている。
しかし一方で、政府や財界は、個別労務管理を強め、過密労働を深刻化させる危険性もある「ワーク・ライフ・バランス」施策を強引に進めはじめた。
なお、07年4月から男女の均等な機会、待遇確保を目的とする改正男女雇用機会均等法が、08年3月から労働契約の基本ルールを定める労働契約法が、同年4月から不十分さはあるもののパート労働者の均等待遇を求める改正パート労働法が施行された。
前進的な流れを確かなものにするためにも、正規雇用、常用雇用を原則とする雇用ルールの再確立や均等待遇、労働時間規制強化を政府と企業(経営者)に迫る運動の発展が求められる。
(3)国家公務員法「改正」や道州制検討など、強まる公務リストラ
1) 内閣主導の行政運営の確立や政治任用職の拡大、官民交流の促進、さらには天下りの原則自由化などの「改正」内容は、戦後公務員制度の「構造改革」であり、政官財の一体化をさらに進めることになりかねない。ILOからも再三指摘されている公務員労働者の労働基本権については、非現業公務員について限定的な労働協約締結権付与にふみだすという不十分な譲歩の一方で、能力・実績反映の人事管理を強めることは急ピッチで進められ、「物言えぬ公務員」づくりが具体化されている。
また、地方自治体財政難を口実とする賃金、労働条件の一方的改悪も北海道、大阪府をはじめ、多くの自治体で強行されている。
なお、公務員制度改革を政府が進める時期に、全教の求めに応じて「教員の地位勧告」にかかわる専門家委員会の調査団が、08年4月に来日したことは画期的であった。
2) これらの公務員制度改革と表裏の関係で、独立行政法人制度や市場化テスト、指定管理者制度などによる事務事業の民営化、民間化が進められてきた。そして、社会保険庁解体攻撃など民営化と同時の人減らし「合理化」や労働組合解体攻撃も繰り返されている。
また、自治体再編の「平成の大合併」は、08年4月現在、1788市町村にまで進んだ。国と自治体の役割を抜本的に見直す道州制を2010年代前半に導入する動きも加速し、08年5月には地方分権推進委員会が第1次答申を行った。
自治体合併、「三位一体改革」など、教育、医療、福祉での国の財政負担を削減し自治体に転嫁する施策が強行され続け、夕張市が財政再建団体に指定されたことに象徴される自治体の財政難が深刻化し、学校、病院の統廃合や福祉制度廃止をともなう行政改革がより乱暴にすすめられはじめた。夕張市の財政破たんを一つの口実に、財政健全化法が08年4月から具体化されはじめたことで、大阪府の「橋本プラン」のような激しい攻撃が強まる危険性が高まっている。
(4)社会保障連続改革への怒りのたたかいが前進
「骨太方針2006」の具体化である社会保障費2200億円削減とも関わって、06年通常国会で強行された後期高齢者医療制度導入や、障害者自立支援法、介護保険法改悪などには、経済的弱者を切りすてる悪法との批判が高まり、実施直後から廃止運動が起きている。
医療制度に関わっては、医師、看護師不足を原因とする医療体制の不備も明らかになり、とりわけ地域での産婦人科医、小児科医などの不足は社会問題化してきている。また、劣悪な労働条件などを原因に介護・福祉労働者の人材難が深刻化しているが、早期の対策を政治課題にさせて「介護人材確保法」を制定させた。
政府は、このような国民の怒りと運動を逆手に取って財源問題を持ち込み、世代間の分断も強めながら、財界が求める消費税率引き上げに向けた作業を着々と進めている。
09年通常国会には、年金給付額の2分の1を税金で支給するための財政措置法案の提出が求められることもあって、消費税による社会保障費確保を提言する政府審議会等の報告が、07年秋以降、相次いでいる。
消費税率引き上げをはじめとする庶民大増税が労働者・国民の貧困化に拍車をかけることは、定率減税や所得税控除制度改廃などの税制改悪からも明らかである。それだけに、医療、介護給付をはじめとする社会保障拡充を求める課題と、消費税率引き上げに反対し応能負担原則に立ち返った税制確立の一体的な運動が求められている。
(5)粘り強い取り組みで広げた改憲反対の世論
06年11月のアメリカの中間選挙で共和党が敗北し、「ブッシュのはじめた戦争」への批判が顕在化した。アフガニスタン侵攻以降、アメリカは既に3兆ドル(約300兆円)の軍事費を投入したと言われ、その一部を日本が国債購入などで支える構図も明白になってきた。また、北朝鮮問題での6ヵ国協議が継続され、武力によらない対立の解決を模索する動きが国際的には強まっている。
このような動きのなかで、7000を越えて全国に広がった「九条の会」や373に到達した憲法改悪反対共同センター、在日米軍基地強化に反対する沖縄、山口・岩国、神奈川・横須賀での住民運動前進などが世論を変えてきた。その一例が、1993年以降でははじめて賛成を上回る結果となった読売新聞の08年3月の世論調査(憲法改正反対43%)に示されている。
また、08年4月には、イラクでの自衛隊の活動を違憲とする名古屋高裁判決も出されるなど、たたかいを反映した変化もおき、攻勢的な憲法闘争への発展が求められる段階にきた。
一方、政党ビラ配布弾圧事件での相次ぐ有罪判決や、映画「靖国」への政治家の介入など、市民的自由を侵害する動きが強まっており、憲法の根幹問題としての対応強化が求められている。
(6)ITUCの結成と全労連の国際活動
06年11月に結成された国際労働組織ITUCは、世界のすべての労働組合を結集せず、選別するという弱点を当初から露呈した。しかし一方で、グローバル化のもとで強まる多国籍企業の「発言力」との関係では一定の位置を占めはじめている。
全労連は、結成以来のITUCの動向に留意しつつ、中国、インド、ベトナム、ポルトガルなどとの二国間交流を強めるとともに、SEIU、UEなどアメリカの労働組合との交流を継続した。「グローバル化にかかわる『南』からの問題提起の会議」に参加し、あらたな国際共同を模索した。
二国間交流などを強化し、「憲法9条」の優位性を国際的に広め、最初の被爆国の労働組合としての役割発揮や、先進資本主義国の労働組合としての役割が引き続き求められている。
(7)「組織拡大強化・中期計画」の具体化に奮闘
1) 200万全労連建設をめざす組織拡大運動では、非正規労働者の組織化や新規労働組合の立ち上げも含め、組織化が最大の要求闘争と位置づけた単産、地方組織が奮闘し続け、減少傾向に歯止めを打つ状況に今一歩の段階にある。
しかし、単産、地方組織の幹部活動家の世代交代の遅れや、公務組織における定員削減の悪影響が顕在化、専従未配置の地方組織での活動の困難さなど、対処が必要な課題も少なくない。
また、常設労働相談、ローカルセンター、地方共済会などの整備・確立、女性役員比率も、「中期目標」に照らせば更なる努力が求められる。単産の垣根をこえた組織運動も模索されはじめている。
全労連全体の組織強化、整備のため、「中期計画の具体化」論議が必要となっている。
2) 単産における規約整備、非正規センター準備会の立ち上げなど、条件整備は進展して成果も出はじめ、組織拡大の中心課題としての問題意識が共有されてきた。非正規雇用労働者全国センター準備会を立ち上げ、正式発足をめざしてきた。
また、要求闘争を通じた共同行動の積み重ねが組織化につながる例や、全員参加の組織拡大運動が成果をあげはじめた単産もある。
組織の拡大・強化にかかる07年度以降の財政措置について、組織財政検討委員会を設置し、評議員会などでの論議もふまえて今大会で具体化する提起を行ってきた。
第3章 大会をとりまく情勢の特徴
1.政治の転換をめざす総選挙が必至
(1)衆議院議員の任期もあり、1年あまりの内に、自公政治からの転換をめざす総選挙をたたかうことになる。
次の総選挙の争点が、①多国籍大企業の国際競争力強化を最優先してコスト削減と市場の競争条件整備をすすめ、消費税率引き上げなど貧困と格差をさらに拡大する政治の継続か、壊された社会保障制度や労働法制を労働者、国民生活本位に改める政治か、②アメリカの軍事戦略に追従して戦争をする国に突き進む政治か、憲法の平和原則擁護の政治か、の2点に収斂されていくと想定される。
要求闘争と政治の転換を求める政治闘争の関係が、これまで以上に直接的なものとなっていることもふまえ、早期の総選挙実施を求める立場を明確にする。
賃下げからの転換、雇用破壊からの転換、社会保障改悪からの転換、戦争をする国づくりからの転換の「4つの転換」を目標に、職場・地域から政治闘争を強める。
(2)国民の世論と運動が政治を動かす時代を意識した運動が求められている。
昨年来、国民が政治を動かす状況が目に見えてはっきりしてきている。したがって、切実な要求闘争とも関わって、「軍事費を削ってくらしに回せ」、「大企業は税や社会保障負担などで責任を果たせ」、「雇用の安定と最低生活保障で貧困をなくせ」などの点を強調した職場と地域の世論への働きかけを通年的に強めることが大切になっている。
また、生活向上、民主主義、安保破棄の三つの共同目標での国民多数派の結集をめざす全国革新懇運動での全労連の役割発揮が、従来以上に求められる情勢にある。
2.大企業の身勝手な経済活動が労働者と国民の苦しみの大もとに
(1) 07年に入って、アメリカの住宅バブルがはじけ、低所得者向け融資の焦げ付きが表面化する中で、世界的な規模での信用不安が発生し、世界的な金融不況の懸念が高まっている。
同時に、株や債券市場に流れていた投機資金が、穀物や原油、希少金属などの先物市場に向かい、食糧、原油、原材料の高騰を招き、食糧危機やインフレ懸念を高めている。その投機資金の相当部分を日本からの資金であることも指摘されている。
天文学的な金額がマネーゲームにつぎ込まれ、一握りの富豪が生まれる一方で、先進国においてさえ格差が拡大し、非正規労働者が急増し、貧困が社会問題化してきている。一日2ドル未満で生活する人が世界で25億人もいるという国連の報告(2005年)が示すように、グローバル化のもとで、格差が拡大し、深刻化している。
このような事態の前に、アメリカの裏庭といわれた中南米を中心に、新自由主義との決別を宣言する政権が相次いで誕生している。
(2) 弱肉強食の経済競争が続けられるもとで、地球温暖化の原因となるCO2などの温室効果ガスの排出が急増し、後戻りできない臨界点に至ることさえ懸念される状況に至っている。
日本は、京都議定書にもとづく削減目標が達成できないばかりか、排出量を増やしている数少ない国である。その原因が、コスト削減を優先して石炭による火力発電を増加させるという事例にも象徴される経済至上主義にある。
無秩序で社会的規制が弱められた「ルールなき資本主義」によって、労働者、国民の生活悪化が続き、世界中の多くの人々の生活をも貧困化させ、地球の将来も不透明にしている。これらの点での共通の認識を深め、広げていくことがたたかいを進める上での重要課題である。
(3) 労働者いじめ、下請け企業いじめを繰り返し、税負担などの社会的責任の最小化を求めるなど、無秩序な経済活動をくり返す日本の大企業の横暴を規制する上で、最低賃金の確立や安定した雇用の保障、社会保障の整備、労働時間規制の強化など、人間らしく働くルールの確立の運動強化が重要であることは、2年間の運動からも明らかである。また、食糧自給率向上など持続可能な地域社会の確立をめざす取り組みが、グローバル化の行きすぎを是正する運動として、国民的な支持を広げている。
労働者・国民の生活悪化の対極にある大企業の経済活動の規制を求める取り組みが、国民的な運動と労働運動の連携強化の一つのポイントになり始めていることに目を向け、生活から出発した要求での共同闘争を強化する。
3.戦争をしない、戦争に参加しない日本をめざす攻勢的な運動を
(1) アメリカは、巨額の戦費を投入しながらイラク、アフガニスタンの治安を回復することができていない。むしろ、テロを拡散させ、危機を高めている状況にすらある。
08年12月には、米軍イラク駐留の根拠となっている国連決議が期限切れとなりイラク駐留米軍への自衛隊後方支援継続に、あらたな障害が付加される。
政府・自民党は、自衛隊の海外派遣を何時でも行える恒久法の制定を狙っている。米軍と自衛隊との一体的運用をめざし、財政悪化のもとで多額の国民負担が予定される在日米軍基地再編・強化が具体化されており、戦争に参加させない運動の強化が求められている。
(2) 08年3月に発足した「新憲法制定議員同盟」には、自民党、公明党、民主党の議員も参加している。国民投票法案が成立し、自民党が新憲法草案を取りまとめているもとでの改憲運動を、草の根から強めるとしている。草の根からの 改憲反対運動が広がっていることに対抗した改憲派の運動である。また、改悪教育基本法にもとづく「愛国心教育」もはじまろうとしている。また、「インターネット規正法」など、IT化社会での国家による情報統制の動きも強まっている。
これらの動きにも目を向け、強固な改憲反対の世論を作り上げ、戦争をしない、戦争に参加しない日本をめざす取り組みを粘り強く、地道に広げ続けることが求められている。
4.非正規労働者の働くルール確立は労働組合の重点課題
(1) 貧困解消の求める運動や労働者を使い捨てにする企業を告発するたたかいに、とりわけ青年の共感が広がっている。また、日雇い派遣など人間性さえ否定する企業の働かせ方と社会保障制度の連続した改悪が、「秋葉原通り魔事件」のような凶悪犯罪の一因となるなど、雇用のあり方が社会問題化してきている。また、貧困と格差の「世代間移転」などが現実の問題となりはじめている。たたかいは労働組合だけでなく、反貧困の国民的な運動となっていることに、これまでにない特徴がある。
運動では、このような変化にも目を向け、これまでの枠をこえる共同の追求、労働者への接近が求められている。
(2) 労働者の3分の1が非正規労働者となり、共働き世帯の割合が増加、サービス産業の就労者が急増していることなどに対応した労働政策や社会保障制度などの改善が、直面する課題となっている。
非正規労働者増と並行して年金など社会保険制度の空洞化が進行していることや、正規労働者の長時間過密労働が深刻化している実態を直視する必要がある。
労働力人口がマイナスに転じたことや社会保障費抑制の思惑もあって、政府、財界は「全員参加型社会」やワーク・ライフ・バランスなどを強調し、女性と高齢者、ニート、外国人などに焦点を置いた雇用施策を強めている。
非正規労働者や単身世帯増加などの変化にも目を向けた要求政策を積極的に掲げ、共同を拡大し、働くルールの形骸化につながる雇用政策への批判を強める必要がある。全労連の社会的影響力を高めて非正規労働者の労働条件改善を社会的運動に高め、組織拡大の運動につなげる。
第4章 2年間の運動の基本方向
1.憲法をいかす職場と地域の運動を展開
2年間取り組んできた「もうひとつの日本をめざす大運動」を発展させ、前進している憲法擁護の運動と連携させた「憲法をくらしと職場にいかす運動」として展開する。
運動では、①「構造改革」によって不平等や差別を拡大させる施策が強行され続け、貧困や格差が放置され、世代間移転しはじめていることと、②ハラスメントや表現の自由への侵害などの人権侵害が深刻化していることなど、今日的な状況にも留意する。
憲法に規定される基本的人権条項に依拠し、その実現をせまる取り組みを具体化する。公務・公共サービスの民営化など、国・自治体の責任放棄の施策や、公務員制度改革などによる「物言えぬ公務員づくり」に反対する取り組みとも連携させる。
また、9条改憲に反対し、民主主義の実現を追求し、国民各層との対話と共同を進める。
運動は、①最低賃金引き上げや正規雇用の拡大、労働時間短縮や要員確保などの「働くルール確立運動」と社会保障制度拡充を重点課題とする「なくせ貧困運動」、②地域での教育、医療、福祉など国民生活を支える諸制度の後退を許さず、地域経済活性化を求めるなどの「住み続けたい地域運動」、③在日米軍基地の縮小・撤去を求め自衛隊増強に反対し、平和憲法の遵守を求める「憲法闘争」の「三つの柱」を軸に進める。
(1)「働くものに憲法を」の運動として「なくせ貧困運動」を展開
1) 「貧困解消、社会保障充実!けずれ軍事費、果たせ大企業の社会的責任」のスローガンでの団体間、国民共同の前進、全国的なネットワーク作りをめざして取り組む。
①生活保護基準を下回る所得の解消と安定した雇用の保障、②最低保障年金制度の確立、③、医療、福祉の充実(後期高齢者医療制度、障害者自立支援法、介護保険制度の改悪部分の修正を含む)、④義務教育諸費の無償化、高等教育の学費の漸進的無償化による国民への教育の保障など、憲法第25条の実現を求める課題を中心に、国民共同を追求し、全単産、地方組織の統一行動を具体化する。
また、「なくせ貧困」の一点での幅広い共同を追求する。
2) 憲法を職場にいかす「職場の働くルール運動」を具体化する。
①まともな雇用と生活できる賃金、②労働三権の保障など労働者の権利確立、③仕事と生活の両立、安全な職場環境や社会保障整備など人間らしい仕事、④均等待遇の4点を、職場の全ての労働者に保障させる運動を強める。
労働時間規制や企業内最低賃金などの協約、協定の締結運動を統一の取り組みとして強める。
(2)「くらしに憲法を」の運動として「住み続けたい地域運動」を取り組む
1) 教育、医療、福祉などの公的サービス実施責任が、都道府県などの自治体に押し付けられる現状もふまえ、地域間格差の拡大に反対し、是正を求める取り組みを全国展開する。
その際、国の責任を放棄して地方、地域に自立、自己責任をせまり、地域間格差を拡大する道州制や交付税改悪、地方自治を否定する「国主導の地方財政再建」に反対する取り組みを重視する。
2) 運動の具体化では、地方・地域組織の主体性を尊重しつつ、①相互の運動交流や統一した取り組み課題、ゾーンの設定、②統一的な要求政策、宣伝物づくりなどで、全労連の役割を発揮する。
すでに取り組んでいる「こんな地域運動」を継続、発展させる運動でもあり、当面、全国的な課題となっている地域医療・公的病院守れの取り組みの全国的な展開をめざす。
食の安全を求め、地域での農業再生を求める運動とも連携する。
(3)「戦争をしない・参加しない日本」をつらぬく憲法闘争そのものを継続、強化
1) 明文、解釈、個別立法など、改憲につながるあらゆる動きに反対し、改憲反対の強固な国民世論の形成をめざして取り組みを継続する。
実質改憲となる「自衛隊海外派兵恒久法案」の提出、成立に断固反対し、在日米軍基地再編・強化反対の運動を住民との共同を広げて展開する。
2) 改憲反対の国民過半数署名の達成など、草の根からの運動を発展させるために、取り組みを強化する。職場、地域の労働者、住民過半数集約をめざす取り組みを単産、地方組織、全労連が共同して進める。職場、地域「九条の会」の結成、すべての自治体をカバーする憲法共同センターの結成をめざす。
単産、地方組織の教訓的な取り組みの交流を促進し、アンバランスな状況もふまえた運動の「底上げ」をめざす。引き続き全労連憲法闘争本部を設置して運動の調整を進める。
2.大企業に社会的責任の履行を求めるキャンペーン運動を展開
(1) 2000年代に入って大企業は、一貫して労働分配率を低下させ、そこで生み出した余剰資金でマネーゲームをくり返している。税制でも優遇され、地方財政へも依存し、非正規雇用増による雇用破壊など地域社会にも悪影響を及ぼしている。さらに、偽装請負などの違法行為をおこない、法治国家での社会的安定を形骸化し続けている。原材料高騰のもと、中小・零細の下請け企業に負担を転嫁する動きをより強めていることも見過ごせない。
そのような大企業の横暴が、すべての労働者の労働条件に否定的な影響を及ぼしている。その実態を徹底して明らかにし、大企業に社会的責任発揮を迫る取り組みを強める。
また、過剰流動資金による「マネーゲーム」の規制強化を求める要求運動の具体化をはかる。
(2) 労働者・国民の貧困化や格差拡大の対極に、ぼろ儲けを溜め込む大企業の無秩序な経済活動があること、外需頼みの日本の多国籍企業の経済活動が、農業をはじめとする国内産業衰退の原因となり、内需を冷え込ませていることなどの点に目を向ける。
大企業に社会的責任の履行を迫るキャンペーン型の取り組みをさらに強める。
グローバル化のゆがみをただす国際運動と連帯した取り組み進める。
3.「環境にやさしい働き方」をキーワードに環境問題の取り組みを強化
(1) 地球温暖化が深刻な問題となり、被害も続出している。そのような被害の増大は、持続可能な経済社会の阻害要因となり、貧困を深刻にしている。地球温暖化問題は人類の存亡ともかかわる待ったなしの課題との認識で、行動を起こしていくことが求められている。
その際、地球温暖化が経済活動の結果であり、とりわけ大企業の行動規制を国家レベルで強めていくよう求めることが基本の取り組みであることを改めて確認し、その点での国民共同の前進に奮闘する。
(2) 同時に、既に、自交総連のタクシーの総量規制を求める取り組みのように、地球温暖化の問題には、はたらき方にかかわる産業政策からの接近も可能である。また、企業レベルでは交通用具利用の制限、環境ボランティアなどの取り組みの強制、事業所での所定外労働の強制禁止などの動きも出はじめ、労働条件問題としても軽視できない状況となりはじめている。
全労連として、それらの視点での取り組みも追求する。
(3) 地球温暖化問題での学習や宣伝を強め、共同を広げ、政府に対する取り組みを強める。
また、専門家の協力も得て「環境にやさしい働き方」運動のあり方を検討し、組織内外の合意形成を図りながら、順次具体化を進める。当面、「職場の働くルール確立運動」とも連携させた「24時間社会」や長時間労働の環境リスクを明らかし、是正を求めるキャンペーン運動などを検討する。
また、この課題での国際的な運動交流を強める。
4.対話と共同を徹底して追求し、過去最高の「峰」で20年を
(1) 全労連運動への青年労働者などの関心が寄せられている情勢を活かした組織運動を展開する。
あらゆる課題で、労働組合、市民団体などとの共同を追求する。
個人レベルでも参加しやすい行動形態の模索など、未組織、非正規労働者が多数を占める実態をふまえた運動を追求し、全労連の社会的影響力を広げて、全労連排除に固執する財界、政府の攻撃に対抗する。
200万全労連建設をめざし、「中期計画」の具体化を着実に進める。組織拡大運動での交流を強化するとともに、「拡大期間」を設け、全員参加の組織拡大運動を呼びかける。
200万全労連建設の通過点として、結成20周年を迎える2009年11月21日を過去最高の組織人員で迎えることを目標に、すべての加盟組織が目標と計画をもって取り組む。
(2) 団塊世代の退職期を迎え、雇用継続期の組合員継続や、退職後の年金者組合加入の促進などについても検討し、早期の方針化を進める。
退職者を上回る組織拡大目標を確認し、職場及び周辺職場への働きかけを強める。
青年労働者の組織化や青年部の整備、強化、労働運動における男女共同参画の当面の目標達成など、「中期計画」具体化のテンポをあげる。
(3) 非正規雇用労働者全国センターを発足させ、非正規労働者の要求実現、組織化の取り組みを本格的に進める。
単産、地方組織、パート臨時労組連絡会などの「4連絡会」が、それぞれの拡大目標と戦略を確認し、取り組みを具体化する。また、拡大集中月間を設けた取り組み、キャンペーンの具体化、地域、職種などを明確にした「力の集中」をはかるなど、要求運動とも一体の全員参加の組織化運動を取り組む。職種、地域などで重点対象を設定した単産、地方組織、全労連三者一体の「総がかり行動」の具体化をはかる。
(4) 「組織拡大推進費」を活用した取り組みを「教育、地方、非正規」をキーワードに具体化する。
全労連の機能強化、組織拡大とも関わって、全労連が共済事業を実施することについて検討を行う。
国際組織との関係に関わって全労連の行動綱領(希望に輝く未来のために)を改定し、地域、産業別を含む二国間共同や国際会議への参加などを中心に、国際活動を強化する。
第5章 重点課題と具体的な運動
1.生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争の重点課題とたたかい
(1)賃金闘争の強化を重視する
全労連の賃金闘争の軸として、①職場のすべての労働者の賃金底上げと積極的な賃上げの獲得、②当面「時給1,000円」以上の早期達成、全国一律最低賃金制度の実現、企業内及び産別の最低賃金協定の締結、③男女賃金格差の是正、非正規労働者の均等待遇実現、④自治体公契約条例や非正規労働者の賃上げなどの実現、⑤成果主義賃金打破・生計費原則に基づく賃金改善の5点をすえる。
08年以降、物価上昇が顕著になり、低所得者ほど被害が集中しはじめていることにも目を向けた賃金闘争の活性化はかる。
すべての労働組合が、要求討議と要求提出、スト権確立、統一交渉強化による集中的な回答引き出しなど、労働組合の基本に立ちかえった取り組みを着実に進める。
パートや臨時、派遣、請負など非正規労働者を組合に迎え入れ、要求を組織し、ともに賃金闘争をたたかうことを追求する。
(2)当面「時給1,000円」以上の実現、全国一律最賃制の確立を目標に運動を強める
「なくせ貧困」運動の中心課題の一つに最低賃金引き上げを位置づけ全国闘争を強める。
生活保護制度の改善、下請け単価改善や農産物価格最低保障の確立、最低保障年金制度の創設運動など諸階層の要求と運動とを結合し、労働者、国民、中小事業者などとの共同を広げ、憲法第25条の具体化をめざす運動とも位置づけた運動に発展させる。
企業内最賃協定締結の運動を重視し、統一闘争を強化する。
(3)公契約運動をさらに強める
競争入札制度の改悪や、指定管理者制度、市場化テストの導入などで、人件費さえ確保できない落札価格のダンピングがおきている。当該労働者の労働条件の切り下げにとどまらず、公共サービスの質にも影響することから、先行する取り組みにも学び、最低賃金闘争とも連携させた「公契約における公正な賃金・労働条件確保」を求める運動の全国展開をめざす。また、運動推進のための共同づくりを追求し、ブロック規模での学習会、シンポジウム、集会などを連鎖的に取り組む。
競争入札での雇用、労働条件破壊の実態調査などの問題点把握と、適正化の運動を強める。
(4)成果主義賃金の導入・拡大反対、生計費原則に基づく賃金制度の確立を追求する
成果主義賃金が、労働組合の連帯を破壊し、労働者の個別支配で総額人件費を削減するとともに、長時間過密労働を深刻化させ、職場の人間関係を壊して深刻なメンタルヘルス問題の温床になるなど、その弊害が明らかになっている。民間職場では見直しに踏みきる企業もあらわれる一方で、公務職場では制度導入が本格化している。
成果主義賃金の一方的な導入に反対するとともに、すでに導入されている職場では、その弊害を具体的に明らかにする実態調査や、一方的・恣意的な査定を許さない査定基準・方法・結果の公開を追求し、個別労働者の苦情処理などに取り組み見直しを迫る。
生計費原則や同一労働同一賃金原則を基礎とする賃金闘争の重要性について、あらためて学習・意思統一をはかる。そのための「賃金闘争読本」の作成を進める。
(5)大企業による「儲けの独占(ぼろ儲け)」を批判するキャンペーンを強め、すべての労働者の賃金、労働条件改善の実現を迫る取り組みを行う
労働者の視点から、企業の社会的責任をチェックする取り組み(雇用や労働時間管理、安全衛生など)、下請けいじめ、偽装請負やサービス残業などの違法行為の告発をうける「110番」運動、CSR,SRIなどの国際基準も参考にした「チェックリスト」の作成と宣伝、配布と集約、大企業包囲行動を発展させる全国的な取り組みなど、キャンペーン型運動を具体化する。
2.働くルールの確立、雇用を守るたたかい
(1) 非正規労働者の雇用、労働条件改善の取り組みを強める
直接雇用を基本とするまともな雇用の確立をもとめ、労働者派遣法の抜本改正や、非正規労働者の正規雇用への切り替えを求めるたたかいを強める。
常用代替禁止や日雇い派遣の禁止、派遣先企業の責任明確化などを内容に、労働者派遣法の派遣労働者保護法への抜本改正を求める署名運動や国会議員要請行動などを進める。
安易な非正規労働者への切り替えに反対し、均等待遇の実現を求め、改正パート労働法などを積極的に活用する職場、地域の取り組みを強める。そのための「権利パンフレット」、労働協約チェックリストなどを作成し、学習交流集会などを具体化する。
職場に憲法をいかす取り組みの一環として、「非正規労働者と人間らしく働くルールシンポジウム」をブロック規模で連鎖的に開催する。
雇用状況が悪化する傾向を見せはじめ、2000年代初頭の「就職氷河期」に社会人となった労働者や、中高年失業者の雇用対策も求められている。公的分野における雇用の場の確保や職業訓練の確立を求める運動と、地域からの「雇用を守れ運動」を結合してとりくむ。
政府・財界は、労働力減少を口実に外国人労働者の受け入れを拡大しようとしている。安価な労働力確保の思惑が先行し、条件整備や違法行為の解消目処が立たない中での拡大方針には強く反対し、受け入れ条件の法的整備を求める取り組みを強める。
(2)労働時間の短縮や労働時間管理の徹底を求める運動を強める
1) 政府・財界は、労働時間管理の枠外に置く労働者の範囲拡大を引き続き狙っている。極限まで絞り込まれた人員で、高度複雑化する業務や、非正規労働者増による業務負担増などが正規労働者には押しつけられ、過労死ラインを超える働き方を強いられる労働者が増加する傾向にある。また、24時間社会を口実にした効率優先の深夜労働も深刻化している。このような働き方が家庭生活にも影響し、少子化の一因ともなっていることを産業、職場実態をもとに社会的な共感を広げる取り組みを重視する。
2) ①所定内外の労働時間短縮(当面総実労働時間1,800時間の達成)と休暇の完全取得、要員の確保、②長時間通勤の緩和、③くらしに配慮した労働時間の短縮、④ただ働き残業の根絶、⑤所定外労働時間割増率の引き上げ、などの要求実現をめざす。
3) 労働安全衛生活動の強化などによって、過労死、過労自殺をおこさない職場づくりを呼びかける。「働くもののいのちと健康を守る全国センター」への結集を強めて担当者育成をはかるなど、職場の労働安全衛生運動の活性化をめざす。
所定外労働時間規制にかかわる協約闘争強化をめざし、「モデル協約」作成を進める。
(3)営業規制を含む労働時間規制強化の取り組み強め、「環境にやさしい働き方」の追求を当面の運動課題に位置づける
全労連ホームページを活用した「労働組合の温暖化防止運動(環境にやさしい働く方をめざして)」の交流促進、職場・地域での学習運動、24時間社会告発シンポジウムや元旦営業中止を求める運動などを具体化する。
(4)男女とも働き続けられる社会、実効ある少子化対策を求めて取り組みを進める
改正男女雇用機会均等法を職場に生かし、妊娠・出産に関わる不利益取り扱いの禁止、母性保護拡充、セクハラ根絶、男女賃金格差や昇進・昇格差別の是正をめざす。次世代育成支援対策推進法改定もふまえた計画策定を事業主に求める。保育・社会保障制度の拡充を求める運動にとりくむ。
(5)労働基本権確立、国鉄闘争、労働委員会民主化など労働基本権拡充の取り組みを進める
公務員の労働基本権問題の先送りを許さず、ILO勧告にも沿った内容での早期実現を求めて、政府への追及を強める。また、労働基本権回復を視野に入れた公務員賃金闘争論議を開始する。引き続き、公務員制度改革闘争本部を設置する。
公務員の政治活動の自由の回復を求め、国公法弾圧事件裁判勝利をめざす取り組みと一体で運動を進める。
国鉄闘争の早期解決に向け、建交労・国労を軸とした4者4団体の団体間共闘と解雇された当事者の団結を土台に、政府に解決交渉のテーブルづくりを迫る取り組みを国鉄闘争本部で調整しながら進める。また、「全動労争議団を勝たせる会」の会員拡大の取り組みを強める。
NTT闘争をはじめすべての争議の勝利をめざした取り組みを強める。
第30期中労委労働者委員の公正任命をめざす。第28期の不公正任命にかかわる裁判闘争の勝利に向けた取り組みを労働委員会民主化対策会議と連携して強める。
労働審判制度も含め、労使紛争処理機関の活用状況の調査等を検討する。
3.社会保障の充実を求め、消費税率引き上げ反対など国民共同のたたかい
(1) 後期高齢者医療制度や障害者自立支援法、介護保険法改悪など、経済的弱者に社会保障財源の不足分の負担をしわ寄せする制度改悪が相次いでいる。その根底に、「骨太の方針2006」による2200億円の社会保障費削減をはじめとする歳出・歳入一体「改革」がある。この削減方針の撤回を迫り、軍事費聖域化や無駄な公共事業を中止して社会保障財源に回すことを求める取り組みを強める。企業責任追及も含めた社会保障制度の拡充を求める国民共同運動の発展をめざす。
国民課題での取り組みを国家的収奪から労働者・国民の生活と権利を守り、全国民の生活最低保障(ナショナル・ミニマム)を確立するたたかいとしても位置づけ、すべての単産・地方組織が社会保障闘争、増税反対闘争を賃金・労働条件と車の両輪に据えてたたかいを強化する。
(2) 引き続き、「21世紀初頭の目標と展望」の具体化を追求する社会保障闘争を進める。
後期高齢者医療制度の廃止運動を先行させつつ、医療と介護双方での制度の不備や人的体制の不足、サービス提供体制の不十分さなどを追及し、改善を求める取り組みを「住み続けたい地域運動」の中心課題に位置づけて取り組む。
労働総研、中央社会保障協議会とも連携し、社会保障制度にかかわる要求政策の具体化、拡充をはかる。
09年通常国会に向け、税負担による最低保障年金制度の実現をめざす取り組みを継続強化する。消費税による財源確保に断固反対し、企業の社会的責任追及や税金の使い方を社会保障中心に切り替える政策転換を迫る取り組みと一体で運動を進める。
(3) 消費税率引き上げに反対し、大企業優遇税制の是正を求める運動を国民的な運動として進める。消費税率引き上げ反対の課題でのストライキの提起を検討する。
「構造改革」のもとで応益負担原則に切り替えられた税制の応能負担原則への回帰を求め、大企業、大金持ち優遇税制の廃止や、キャピタルゲイン課税強化の税制改革などの積極要求を対置した運動を展開する。
生活費非課税の原則に立ち、低所得者の税負担軽減を求める立場から、課税限度額の引き上げと累進課税強化を求める課題を含めた「なくせ貧困・税金署名(仮称)」を取り組む。
(4) 地球温暖化問題、公害、アスベスト被災、食糧を守る運動などで諸団体と共同する。
災害時対策の拡充と復興に向けた被災者支援拡充を求める取り組みを進める。災害発生時における対策「災害対策マニュアル」を各組織で積極的に活用する。
アスベスト被災の完全救済を求め、「働くもののいのちと健康を守る全国センター」などと協力して「健康被害対策全国交流集会」、「全国いっせいアスベスト110番」、裁判支援などにとりくむ。
温暖化ガス削減を求める運動を強め、CO2の測定運動や公害裁判早期解決の運動を支援する。公害・地球懇談会が提起している「大口排出源に対する削減義務化」を求める署名などに取り組む。
諫早湾の埋め立て被害の救済を求める裁判、水俣病裁判などの支援にとりくむ。
安全・安心の食糧と農業を守る食健連への結集をはじめ、食料自給率の向上を求める運動、地産地消運動などを労働者の立場から取り組む。
4.憲法改悪の策動をはね返し、守り、いかすたたかい
(1) 「改憲手続法」が成立し、憲法審査会が設置されているもとで、明文改憲の動きが急浮上する危険性は薄まっていない。
画期的な名古屋高裁判決や、草の根から広がっている改憲反対の世論の高まりに依拠し、イラク、インド洋からの自衛隊の撤退や、憲法9条違反の在日米軍基地再編・強化反対、日米安保条約廃棄などの積極要求も掲げた運動を展開する。
すべての課題と結んで、憲法がいきる職場と地域の実現をめざす取り組みを展開する。
「戦争をする国」の人づくりを進める教育の反動化に反対して、国民運動に結集する。
(2) 職場、地域、分野から「九条の会」のアピールに応えた幅広い共同を広げる。
すべての職場での「九条の会」などの職場組織、全自治体をカバーする共同センターの確立を引き続き追求する。
職場過半数、住民過半数の憲法署名の達成をめざして取り組みを継続する。大会時点までの「500万署名」の集約状況もふまえつつ、その早期達成を改めて確認し、各組織が具体的目標をもって進める。
「憲法改悪に反対」の一点での労働組合間の共同拡大を追求する。
憲法学習や戦争体験の伝承の取り組みを強めることとし、ホームページ活用なども検討する。
(3) 米軍基地の再編・強化と自衛隊との一体化がすすめられ、当該の自治体、住民の激しい反発を引き起こしている。米軍基地の再編・強化や再編にともなう「3兆円負担」に反対し、全国の運動を交流・連帯して発展させる。
国民保護法が施行されたことにともなって、危機管理の名のもとに自衛隊の管理下に入る住民訓練などが頻発しており、住民の自主的な行動の規制に反対する運動にとりくむ。
(4) 2010年の核不拡散条約再検討会議を大きな節目に、核兵器廃絶を求める国内外の運動を強める。
7月の「世界平和労組会議」を契機に、世界の労働組合に向け、非核兵器地帯条約の促進や平和市長会議への加盟促進を訴えるアピールを発出するなどの取り組みを検討する。
5.政治の民主的転換をめざす取り組み
政治を転換させる衆議院選挙の実施が確実な状況にあることをふまえ、労働者の生活と権利擁護、社会保障の拡充をめざす政治の実現をめざす政治闘争の強化をはかる。
総選挙にも影響する地方自治体の首長選挙などでは、住民のくらしと福祉を守り、革新・民主の自治体をめざす民主勢力の前進をめざしたたたかいを積極的に展開する。
職場・地域から革新懇運動を広げ、政治の民主的転換を求める世論を喚起し、運動の前進をはかる。
6.世界の労働組合との連帯・共同の取り組み
グローバル化する経済のもとでの多国籍企業の行動規制とも関わって、国際労働基準の整備・確立や過剰な投機規制を求める国際労働運動との協調、二国間共同の前進が求められる。
また、日本の労働運動の現状を正確に発信することも重要である。
08年7月に開催する「世界平和労組会議」を契機に、2010年核不拡散条約再検討会議に向け、非核地帯条約の推進をはじめとする核兵器廃絶の世論を国際労働運動の分野で広げるための情報発信を強める。
引き続き、二国間交流を強める。とりわけ、アジア地域でのグローバル経済への対応や平和課題、環境問題などの課題別交流の促進をめざす。また、交流関係にある中華全国総工会、ベトナム労働総連合、インド労働組合センターなどとの産業別、地域間交流の活性化を呼びかける。
国際労働基準にそった労働法制の整備を求める取り組みや、ILOへの対応を強める。
第6章 労働組合の共同と組織拡大・強化
1.総対話・共同を追求、「中期計画」具体化の取り組み
(1) 全労連の基本姿勢として、要求の一致点を大切に、すべての労働組合との総対話と共同を追求する。国民春闘共闘に参加する単産との連携、純中立労組懇やMIC、陸海空港湾20労組などとの共同をいっそう発展させる。また、連合及び連合加盟組合との共同を中央・地方で積極的に追求する。
(2) 「組織拡大強化・中期計画」(中期計画)にそった単産・地方組織の拡大目標の達成のために奮闘する。
秋と春の「組織拡大月間」を中心に、全組合員参加の組織拡大運動の展開めざす。
類似産業の「単産合同」の方向について引き続き検討することとし、単産間の要求闘争での共同を働きかける。
職種、地域などでの重点を設定し、全労連、単産、地方組織が一体となった拡大運動を具体化する。
(3) 単産は、中期計画で設定した「現勢力の50%」目標の達成にむけ、①友好関係にある組合の結集、②空白県における加盟組織の立ち上げ、③関連する業種の未組織労働者の組織化対策、④職場組織の過半数以上の組織化などを基本においた計画を策定、具体化を進める。
なお、拡大運動の推進にあたっては、共済加入とセットで拡大を追求するスタイルの徹底、産別として対象を明確にした要求政策にもとづく組織拡大運動、統一行動の定期的な実施、点検と指導体制の整備などの具体的手だてを講じて取り組む。
取り組み交流をはかるため、四半期毎に組織担当者会議を開催し、半年毎に到達点の確認と次の取り組み交流を行う「組織拡大交流会議」を開催する。なお「組織拡大交流会議」には、全労連ブロック組織からの参加など、地方組織との交流、調整もはかる。
(4) 地方組織は、単独加盟している組合員を2011年までに60万人にするとの中期計画の目標を基準に、各地方での目標を改めて確認して取り組みを進める。
未加盟組織や中立単産の地方・地域における状況の分析を行ない、全労連、単産と連携した取り組みの具体化をはかる。08年度中に全ての地方組織での計画策定を完了する。専従未配置などの困難を抱える地方組織での計画立案と具体化を「組織拡大推進費」も活用して取り組む。
ローカルユニオン、ローカルユニオンに直結する青年ユニオンの確立と拡大を引き続き重視し、ローカルユニオン交流集会の開催を検討する。地域労連の活性化、人口20万人以上の都市の地域での地域組織の結成などにねばり強く取り組む。
「常設労働相談センター」、「地方共済会」の整備、確立を追求する。
(5) 結成以来の全労連運動を継承発展させ、次代をになう幹部育成をめざし、全労連としての教育・学習活動の強化を追求する。「組織拡大推進費」を活用して、次世代をになう青年活動家の育成、ローカルセンター、ナショナルセンターの次世代幹部の育成、労働相談などを契機とする日常的な組織拡大に取り組む「オルグ」育成を目的とする集合研修を、当面年1回のペースで開催する。
日常的な取り組みを強めるため、要求課題にもとづく学習強化のための素材の提供を検討する。
「全労連教育大綱」を早期に確立する。
(6) 青年組合員の活動強化を労働運動全体にかかわる重要課題と位置づけ、すべての単産・地方組織における青年部組織の確立、担当役員の配置、執行委員会など機関役員への青年の登用、予算の重点的配分、教育・学習活動や文化・サークル活動の強化などに取り組み、運動の活性化をはかる。
男性中心の役員体制などを改善し、女性労働者の要求が全労連運動により反映できるようめざす。機関会議等への女性参加の促進をはかる。また、各組織における女性部運動の活性化を追求する。規約にもとづく全労連大会や評議員会、諸会議への女性参加比率の向上、単産・地方組織の女性役員比率の向上を追求する。
2.非正規労働者の組織化を加速
(1) 非正規労働者の組織化を本格化する。結成する「非正規雇用労働者全国センター(非正規センター)」を基盤に、非正規労働者の労働条件、くらし改善の運動を組織し、たたかいのサポートを強める。
「非正規センター」は、非正規労働者のたたかいを援助し、要求実現と労働組合への組織化をサポートし、世論に働きかける政策提言、労働相談、実態調査、情報発信などを取り組む。これらの取り組みを進めるためにも、学者、文化人、弁護士など多様な人々からなるサポーターを組織して運動を行う。サポーターの組織化とも連携させ、「非正規労働者の労働条件改善アピール運動」などの具体化をはかる。
可能性のある地方・地域での「非正規センター」や、「パート・臨時労組連絡会」や「ヘルパーネット」などの確立を追求する。
ヘルパー交流会、派遣・請負労働者対策会議、「パート・臨時・派遣など非正規で働く仲間の交流会」、外国人労働者交流会などを引き続き取り組む。
(2) 地方組織では、「青年ユニオン」のたちあげや、各単産の退職者組織との連携強化などをはかる。「青年ユニオン」交流会など、取り組み前進のための手だてを講じる。
「なくせ貧困運動」とも関わって、市民団体などとの連携と共同を深め、非正規労働者の要求運動を地域から社会的に発展させることをめざし、その取り組みを通じた組織拡大を模索する。
職種にも着目した組織化運動の典型例作りを、単産、地域組織の協力も得ながら追求する。
3.ナショナルセンターとしての機能強化
(1) 08年8月から、全労連の組織拡大運動を安定的に進めるための「組織拡大推進費」を徴収し、拡大運動での先行的、モデル的な取り組みを具体化する。
集中的、機動的な組織拡大運動をサポートするため、全労連事務局運営の機動性を高めることとし、総合局制の見直しなどの対応を幹事会の議を経て具体化する。
補助組織としての公務部会の体制整備などを進める。
(2) 「中期計画」の具体化とも関わって、全労連の福利厚生事業の充実をはかり、労働者の組織化を促進することを目的に全労連が共済活動を実施するため、08年中を目処に、規約改正を含めた検討を進める。
共済事業については、単産共済・労働共済の拡大を通じ、2010年までに100万人の加入達成をめざす。そのためにも、地方共済会を全地方で確立する。共済事業へ規制強化に反対も含めた共済運動の前進をはかるため、「共済運動交流集会」を各年実施する。
(3) 全労連の政策・要求を充実させるために、単産や地方組織、労働総研の協力を得て課題別の「政策委員会」を具体化する。
定期刊行物、宣伝資材などの改善に努力するとともに、情報サービスの迅速化、連絡(通達)の効率化をはかる。全労連新聞、月刊全労連の充実を追求し、普及を促進する。
組合員への情報の伝達、労働者への全労連情報発信のあり方などについて、見直しの検討を進める。そのため、単産、地方組織などの協力も得て「インフォメーション委員会」を設置し、08年度中に検討をすすめ、09年度からの改善の具体化をめざす。
第7章 20周年記念事業に関わって
08年度、09年度の2年間を取り組み期間に、20周年記念事業を具体化する。具体的な事業としては、記念誌の作成、記念・大決起集会、文化行事、海外調査団など想定し、幹事会に「20周年記念事業実行委員会」を設けて具体化する。
「世界平和労組会議」などの国際会議や「非正規労働者と働くルールシンポジウム」などブロック単位で開催する事業については、20周年記念事業の冠をかけて具体化する。
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