【第1号議案付属文書】
2年間の取り組みの経過と到達点
第22回大会以降の運動での到達点は、その主要点について本議案で記述している。また、第41回評議員(07年6月)で、06年度の重点課題の取り組みの経過を報告している。したがって、ここでは、前回大会で確認した重点課題ごとに、07年度の取り組み経過を中心に報告し、あわせて、2年間の運動で作り出してきた到達点を明らかにする。
1.賃金闘争に関わって
賃金闘争では、①ベアの獲得に執念を持って取り組むこと、②非正規労働者賃上げ要求を職場でも地域でも重視すること、③実効ある最低賃金法改正と全国一律最低賃金制の確立をめざすこと、④公契約運動と公務員賃金闘争を強化し、賃下げの循環を阻止すること、⑤成果主義賃金の導入、拡大反対の運動を強めること、を強調した。
(1)ベア獲得をめざした賃金闘争の取り組み
1) 07春闘では「まもろう憲法・平和、なくそう格差と貧困、つくろう安全・安心な社会を」を統一スローガンに、08春闘では「なくせ貧困、ストップ改憲!つくろう平和で公正な社会」を統一スローガンにたたかいを進めた。それは、90年代後半から連続して賃金水準が低下し、非正規労働者が労働者の3分の1を占めるまでに増加したこととも相まって、年収200万円以下の「ワーキング・プア」が1000万人を超えると言う労働者全体の状態悪化に目を向けたものであった。したがって、賃金闘争全体でも底上げ要求や誰でも要求を重視し、産別統一行動を中心とした「力の集中」を強く呼びかけた。同時に、最低賃金引き上げや、労働者派遣法改正など「まともな雇用、まともな賃金」を求める社会的運動とも結んだ職場の賃金闘争を呼びかけた。
2) 情勢的には、貧困と格差の拡大に対する国民的な論議が高まり、その解消、是正を求める世論が強まる中で、政府や財界の一部からも賃上げによる内需拡大論が出はじめ、首相が賃上げ要請発言を行うなどの「追い風」状態での、07年、08年春闘であった。しかし、教訓的な取り組みや、粘り強い奮闘の成果はあるものの、企業の儲けを労働者に還元させるという運動の目標からすれば、「追い風」を活かしきれた結果とは言い難い。とりわけ、「トヨタ相場」と言われる大企業での賃金抑制の「重石」をはね返すという点では、十分な到達点とはなっていない。
3) 08春闘は、6月24日の最終集計で、登録809組合中502組合(62.1%、07年春闘同期は65.0%)で回答を引き出し、299組合(解決率37.0%)が妥結または妥結方向である。6月20日時点で春闘共闘参加の全単組を対象に行った「進ちょく状況調査(第5回)」でも、調査組合4184組合中、回答引き出し組合2080組合(50%)、妥結・妥結方向組合1396組合(33.4%)となっている。6月末の時点での解決組合が4割に到達しておらず、春闘長期化の傾向は改善されていない。
登録組合での回答引き出し状況は、第1回(3/12)・17.13%、第2回(3/21)・24.04%、第3回(4/2)・30.80%、第4回(4/18)・35.30%、第5回(4/25)・40.40%、第6回(5/16)・57.20%、第7回(6/20)・62.10%であることからも、長期化の傾向が伺える。統一行動の配置と関わっても、検討が求められる状況にある。
4) 08春闘の回答・妥結状況では、最終集計で単純平均5,788円(1.93%、前年同期比で額115円、率で0.03ポイントのプラス)、加重平均では6,720円(2.08%、額がプラス・マイナスゼロ、率では0.08ポイントのプラス)となった。2次回答以上の引き出しが143組合、前年実績以上が221組合となっている。
①加重平均で、定期昇給分(2%弱)プラスアルファを確保できたこと、②1組合当りの単純平均でも前年同期比でプラスになり、4年連続で増額をかちとれたこと、③143組合で第2次、第3次と回答上積みをさせる奮闘があること、④半数を超える221組合で前年実績以上となったことなどの健闘がみられる。
回答、妥結状況を産業別に見ると、国内産業型の第3次産業での賃金回答の厳しさが伺え、国内消費の低迷状況などが反映しはじめていることも推測される結果となっている。
(2) 非正規労働者の賃金改善の取り組み
1) 07、08春闘とも、非正規労働者の賃金改善を重視して取り組んだ。08春闘の到達状況は、生協労連パートをはじめ建交労、全労連全国一般、日本医労連、自交総連、JMIU、福祉保育労や自治労連(関連)など16単産390組合(前年335組合)で改善を勝ち取っている。時間額引き上げは1円から最高350円までで、金額・引き上げ率回答の230組合の単純平均は26.8円(前年 224組合で17.8円)となった。
集計次数で見ると、28組合の集計となった第1回目(3/12)は、専門職種の回答が反映して平均38円と高額であった。第2回目(3/21)以降はほぼ同水準の平均額を維持しつつ、回答引き出し組合数が増加しており、相場観を持った取り組みが行われていることが推測される。
人手不足が顕在化している看護師、ヘルパーなどで、高額の時給引き上げが回答されている一方で、生協労連の8.1円、建交労の16.8円など、販売、事務関係での時給引き上げが抑制されたことも明らかになっている。
なお、建交労、自交総連、生協労連、全労連全国一般、全印総連、自治労連関連などで、臨時、アルバイト、嘱託・準職員などの日給、月給の改善も勝ち取られ、日給は、88組合平均で234円、月給は77組合で2,571円の平均引き上げ額となっている。
2) 非正規労働者の賃金改善に直接的な影響を持つと同時に、最低賃金引き上げのたたかいの一環として取り組みを強調した企業内最低賃金協定の締結、改定でも一定程度取り組みが前進している。
建交労、JMIU、化学一般、全印総連、日本医労連、生協労連など、11単産・240組合から、最賃協定が報告され、前年比較で13組合増加した。
「誰でも」の企業内最賃は109組合から報告され、単純平均は162,926円と統一要求水準をこえている。28組合から月額改定(300円〜3,500円)の報告があり、協定を引き上げる成果も出てきている。
時間額で協定した167組合の平均は988円と前年平均から11.5円の増額となっている。過半数の86組合が時間額1,000円以上を獲得し、「時給1,000円」要求での取り組みが職場から前進してきている。なお、日額協定は56組合で、平均7,498円であり、ここでも最低賃金の統一要求に近づいている。
(3) 職場の働くルール確立ともかかわる制度的要求の到達状況
1) 08春闘における職場の制度要求の到達状況は、5月15日の中間集計で、23単産部会1地方から、のべ1336組合(前年同期比でプラス21組合)から報告されている。1回目の調査を行った4月7日の769組合からの回答状況から大きく前進し、賃金闘争と一体的に取り組まれていることが伺える。
改正法が施行されたパートの均等待遇については、55組合(前年同期44組合)から、合併時の継続雇用や正社員化での協約等が報告されている。
企業内最低賃金協定や初任給引き上げ、格差是正などの「賃金保障」課題では、253組合から前進が報告されている。その内訳は、企業内最低賃金・168組合(前年・177組合)、年齢別最低保障賃金・23組合、初任給・29組合、賃金格差の是正・12組合、最賃協定については前述のとおりである。
2) 次世代育成(子育て)支援について、法改正の影響もあり、看護休暇の日数増や対象期間の拡大などで、64組合から前進の報告がある。
労災、安全衛生では、メンタルヘルス対策やパワハラ・セクハラ防止な43組合から成果が報告され、雇用関係でも人員増を15組合が獲得している。
また、07春闘ではやや低調であった労働時間短縮関係で177組合(前年73組合)から報告がある。
その他では、家族手当や、福利厚生などで、335組合が成果をあげ、タクシー運賃改定に伴う労働条件改善に関わって158組合が成果を獲得した自交総連や、非常勤労働者にかかわる自治労連の156組合からの報告などの特徴的な成果も報告されている。
以上のような制度的課題での取り組みの到達状況は、組合員の実利、権利を守るため、各組合が工夫をしながら春闘をたたかっていることも示している。パート労働法改正などの制度改善の成果を職場に定着させるためにも、強化が求められる取り組みだと言える。
(4) 春闘での統一行動などの取り組み状況、進捗状況
1) 08春闘での要求アンケートの集約は、最終集計で281,930人となり、前年に比べ6094人の減少となった。前年比で、減少が16単産、増加が11単産となり、減少単産が多数である。集計結果には、抽出調査に切り替えた国公労連の24,877人の減少が大きく影響している。
統一要請書提出の運動も、減少傾向が続き、5単産350組合と、5地方48組合、計398組合にとどまっている(前年は1170団体に取り組み)。
2月下旬に設定した地域総行動では、自治体非正規労働者の賃金改善要請など取り組み旺盛に展開され、前述している自治体での非正規労働者賃上げの成果に反映した。
08春闘では、1月下旬の決起集会、2月13日の「なくせ貧困」を掲げた国民共同の集会、3月5日の集中回答日前の中央行動、5月30日の働くルール署名などの集約と最低賃金など夏季闘争課題での中央行動を節目に、諸課題での取り組みをすすめた。
また、トヨタ、キヤノンなどの大企業包囲行動の全国的な展開、3月12日、4月23日の集中回答日の設定、4月23日、5月30日、6月20日、7月17日と4次にわたる最賃デーを設定した。
2) 07春闘と比較して、2月13日に国民春闘課題での中央行動を配置したこと、4月の中央行動を配置しなかったことに変化がある。それは、参議院選挙での国会状況の変化も踏まえたものであった。日程調整などでの混乱もあったが、後期高齢者医療制度の中止・撤回や労働者派遣法改正など、国民、全労働者の要求を掲げた広範な行動は、その後の国会闘争の起点ともなった。逆に、4月23日には、中央社保協の呼びかけで、後期高齢者医療制度の廃止を求める国会行動が配置され、その後のたたかいを大きく励ましたが、当日を第2次集中回答日と最賃課題での全国行動を呼びかけていたため、国会行動との連携に不十分さを残した。
国民全体の貧困化の元凶である「構造改革」の修正を求めるたたかいは、労働者要求の前進とも関わっており、国民春闘構築の重要な課題である。その点で、賃金、労働条件改善を求める職場の統一闘争と、予算審議などとも関わって政治課題化する国民要求での臨機応変の取り組みとの調整は引き続きの検討課題である。
3) 08春闘の進捗状況は、6月20日の最終・第5回調査で、26単産・4181組合から報告を受けている。なお、前年同時期が27単産・4,432組合であったことと比較して、約250組合減少しているのは、全教・全国私教連の調査が部分的になったことによる。
調査結果は、要求提出組合73%(前年同期・73%)、回答引き出し50%(前年同期・47%)、妥結又は妥結方向33.4%(前年同期・31.5%)スト権確立60%(前年同期・55%)、ストライキ実施18%(前年同期・17%)となっている。
今季の特徴は、スト権確立の回復が目立ち、スト実施も微増となった。また、要求提出は前年並みながら、回答引き出し、妥結とも2〜3ポイント改善された。低下傾向にあった昨年までの進ちょく状況調査からすれば、改善のきざしが見えてきた状況にある。しかしながら、3月以降の経過は例年と大きな変化はなく、登録組合調査の結果と同様、5〜6月段階にずれ込む単産も少なくなく、春闘「長期化」の傾向は変わっていない。産別統一行動を背景に要求前進をせまる春闘の効果を高めるためにも、行動配置全体の論議が求められている。
4) なお、回答引き出しでは、「ベア獲得」が453組合(回答引き出し組合比で22%)にとどまり、「定昇あり・ベアゼロ」が668組合(同32%)と最多となっている。「定昇なし・ベアゼロ」が141組合(7%)に増え、「定昇カット」が40組合(昨年は73組合)あり、「定昇なし・賃下げ」が13組合(昨年は63組合)出るなど一部には厳しい状況もうかがえる。
賃上げ額等が把握できる1,487組合の単純平均賃上げは、5,085円(2.02%)であり、前年同期を278円・0.07P上回った。登録組合(1.93%アップ)との比較では、率で0.09P上回っており、全体としての奮闘がうかがえる。
2.最低賃金引き上げ、全国一律最低賃金制をめざす取り組み
(1) 07年地域最低賃金引き上げの取り組み
1) 「ワーキング・プア」(働く貧困)が重大な社会問題となり、最低賃金闘争は大きく前進した。「生活保護基準を下回る最低賃金の是正」、「時給1,000円以上の実現」、「全国一律制度の確立」などの要求を掲げ、結成以来取り組んできた全労連の運動が社会的世論の支持を得て審議会論議にも影響を与え、第168回臨時国会で改正最賃法が成立にまで結びついた。
とりわけ、「時給1,000円以上」は労働界の共通要求となり、07年の改定審議では「従来の延長線上ではない」金額改定を実現した。
2) 政府は、高まる貧困解消、格差是正の国民要求に応えるポーズを示すため、07年3月に「成長力底上げ戦略推進円卓会議」を設置し、最低賃金底上げの考え方を打ち出した。そして、7月の中央最低賃金審議会開催にあたり、一定の引き上げを促す考え方を示した。
07年度の目安改定に向けては、全国各地でも旺盛な運動が展開され、中央最低賃金審議会が提示した「平成19年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」は加重平均14円となった。これに22の地方審議会で上積みをさせ、地域別には7〜20円の引き上げとなり、最も高い東京が20円増の739円、最も低い秋田と沖縄は8円増の618円、全国加重平均最賃水準は687円となった。
3) 2000年から02年までは改定なしの0円答申であり、その後も1円刻みの改定であったことと比較すれば、07年度の引き上げは貴重な一歩であった。しかし、改定後の最賃額でも、貧困レベルを脱け出せない上に、目安答申がランク別格差を助長したため、地域間格差は従来の109円から121円へと拡大した。改めて最賃引き上げと全国一律最賃制確立の運動を一体的に進める必要があることを示した。
この経過と内容の最低賃金改定に対しても使用者側は強く反発し、タクシー協会などが引き上げ反対の意見書を出したほか、地賃答申に対して使用者側から初めての異議申し出がされた。
各地方組織からの異議申し出も含め、各地方最賃審議会はすべてを却下し、答申どおりの金額で改定した。
4) 07年の地域最賃改定後、全労連は、中小企業団体に対し、低賃金労働者と中小企業の「底上げ」を同時にはかる政策実現に向けた共同を呼びかける行動を展開した。全国中小企業団体中央会、中小企業家同友会、全国商工会連合会、全国フランチャイズ加盟店協会との懇談を実施してきた。
懇談の中では、最低賃金を底上げすることの重要性や、それが地域経済や中小企業にメリットをもたらすこと、また、先進諸国における最賃の現勢なども示し、大幅引き上げと全国一律制度への理解を求めた。こうした取り組みは、今後、大企業支配の経済構造を転換して持続可能な経済を実現するためにも重要な取り組みであることが確認されている。
(2) 最低賃金法改正の取り組み
政府は、第166回通常国会に最低賃金法改正法案を提出したが審議未了となり、秋の臨時国会に継続審議となった。参議院選挙の結果もあって、政府案と民主党案での法案すりあわせがおこなわれた。その協議の中では、一時期、「全国最低賃金」の実現可能性も生まれたが、経営者側などの抵抗もあって実現しなかった。
成立した改正最低賃金法では、決定原則の中に「通常の事業の賃金支払能力」を書き込んでいることや地域間格差是正の視点が欠如しているなど、旧法の欠陥を引きずっている。しかし、第9条第3項に「…労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」としたほか、罰金の上限50万円以下に引き上げるなどの改善点もあり、この到達点をいかすたたかい強化が課題となっている。
(3) 08年最低賃金改定にむけた取り組み
08年春闘では、改正最低賃金法による08年度目安改定を求め、また、最低賃金審議会委員の公正任命を求める取り組みを強めた。
改正最低賃金法の施行が08年7月1日とされた以降は、4次の全国最賃デーなどを節目に、生活保護基準を活用した労働者の最低生計費にもとづく改定を厚生労働省に働きかけた。また、東京、千葉、埼玉、神奈川の首都圏4組織や大阪労連で「最低生計費試算調査」が取り組まれた。
6月20日に開かれた「成長力底上げ戦略推進円卓会議」では、中長期的な最低賃金の引き上げについて、生活保護基準との整合性に加え、小規模事業所の高卒初任給の最も低い水準を勘案し、今後5年間で引き上げることで合意した。合意内容は、最低賃金法改正審議の中で、最の課題とされてきた「ワーキング・プア(働く貧困層)をなくす」という政策目標からすれば、十分とは言えない。当面の目標「せめて時間額1,000円」実現と全国一律最低賃金制の確立にむけて国民的共同の拡大による運動の高揚と世論喚起が求められている。
なお、最低賃金引き上げの取り組みと結んで、生活保護基準引き下げ反対や生産者米価引き上げを求めるたたかいに連帯した運動に積極的に関与してきた。
3.働くルールの確立、雇用を守るたたかい
第22回大会では、①CSRの確立、格差是正と雇用の拡大、②労働法制改悪から働くルール確立への転換、③地域経済活性化の取り組み、④労働基本権確立、中央労働委員会民主化の取り組みを強調した。
とりわけ、働くルール確立の取り組みでは、偽装請負や日雇い・ピンハネ労働、「名ばかり管理者」の実態告発などの職場からのたたかいと、政府・財界が究極の労働時間弾力化として導入をねらったホワイトカラー・イグゼンプション制度を「ただ働き法」として糾弾したことなどが反映し、労働法制改悪一辺倒から部分修正の方向に転換させるという成果につなげてきている。
また、第166回通常国会でも、第169通常国会でも公務員制度改革が重要法案とされた。その中で、公務員労働者の労働基本権について、非現業公務員の一部について、労働協約締結権に限定した「回復措置」が検討されはじめるという60年ぶりの変化も起きている。いずれも、現段階が、働くルールの変換期にあることを示す経過である。
(1) 労働法制改悪反対から働くルール確立へ
1) 第166通常国会で政府・与党は、ホワイトカラー・イグゼンプションと中小企業に対する企画業務型裁量労働制の規制緩和の法案上程を見送った。これは、私たちの取り組みで、「残業代ゼロ法案反対」「過労死促進法案反対」の世論を作りだし、それが長時間過密労働や偽装請負に象徴される「異常な働かせ方」、労働者の貧困化への批判と結びついて、政府・与党を揺さぶった結果である。
全労連は、その通常国会に向けて「労働法制の拡充を求める請願署名」を取り組み、405,044筆を集約し、7次にわたる国会議員要請行動を展開した。紹介議員数は民主党16名、日本共産党18名、社民党11名、計45名の賛同を得た。また国会には労働契約法案、労基法「改正」法案、最賃法「改正」法案、パートタイム労働法「改正」法案、雇用保険法「改正」法案、雇用対策法「改正」法案などが上程された。
2) パートタイム労働法「改正」法案は、正規と同視できる短時間労働者に限定して、賃金・教育・福利厚生にかかわる差別的取り扱いを禁止したもので、ほとんど該当者がおらず、むしろ通常のパートに対する格差を固定化・合理化するものとして強い反対がおきたが、原案どおり可決・成立した。雇用保険法「改正」法についても、可決・成立した。
労働契約法案や労基法「改正」法案、最低賃金法「改正」法案は、「労働3法案」として一括上程されたが、衆議院厚生労働委員会が「消えた年金問題」で紛糾したこともあり、継続審議となった。
労働契約法案は、「使用者が一方的に決めることができる就業規則による労働条件不利益変更」を可能とする危険なルールが盛り込まれており、全労連は反対を明確にして取り組んだ。
労働基準法「改正」法案では残業代割増率の引き上げが焦点であり、過労死ラインの80時間でようやく5割増という内容には、修正を強く求めて対応した。
「労働3法案」のうち、「労働契約法」と「改正最低賃金法」は第168回臨時国会で成立した。労働基準法「改正」法案は、使用者側の反対が強く、継続審議となった。
3) 政府は、第169通常国会への労働者派遣法改正法案の提出をめざした。労働政策審議会・労働需給制度部会で労働者派遣法の見直しを討議してきたが、労働側と使用者側の意見の隔たりが大きく、また、財界の強い反対もあって国会提出を見送った。
しかし、違法な賃金天引きや二重派遣など不法行為が相次いで告発され、通常国会序盤の段階で日本共産党が集中的に派遣法も矛盾や問題点を糾したこともあって世論が高まり、厚生労働省は日雇い派遣にかかわる指針の改正を3月に行って局面打開をはかろうとした。
しかし、派遣会社グッドウィルなどの日雇い派遣での違法行為が明らかになり、刑事告発も受けて営業廃止に追い込まれるという状況変化の中で、政府も日雇い派遣原則禁止を言い出す事態にまで追い詰めている。
4) この間、全労連は、ナショナルセンターの違いを超えて取り組まれた数次の院内集会成功に寄与するとともに、独自の院内集会も開催して、労働者派遣法の抜本改正、派遣労働者保護の制定を訴えた。
全労連は、1月の第42回評議委員会に、派遣労働者保護法にかかわる法案要綱を提示し、これに基づいた抜本改正運動をすすめた。
08年2月27日には、派遣法の抜本改正を求める国会での院内集会を開催し、当事者の実態告発とともに、全労連の派遣法改正要綱を正式に発表し、派遣・請負連絡会も発足させた。この集会には、民主党、日本共産党、社民党から5人の国会議員が発言し、自民党、公明党の議員秘書も参加するという広がりを作り出した。
また、6月3日には、全労連と全労協が共催して、「偽装請負を行った松下プラズマディスプレイ社に派遣労働者の雇用責任があると認めた大阪高裁判決を力にして労働者派遣法の抜本改正をめざす院内集会」を開き、労働者派遣法の抜本改正を求めて共同した取り組みを強めることを確認した。集会には、日本共産党、社民党の国会議員や自民党の国会議員秘書が激励に訪れた。
5) 08年4月17日に開催された「つくろう派遣法改正案、各党の改正案を聞く院内集会」で、野党各党の派遣法改正案の骨子がすべて明らかになり、①日雇い派遣を禁止すること、②登録型派遣は厳しく限定して常用型派遣を中心にすること、③「対象業務原則自由」から1999年以前の制限状態にもどし、専門的、一時的・臨時的業務に限定すること、④マージン規制を実施すること、⑤違法派遣は派遣先の「みなし雇用」とすること、などの共通点を持っていた。しかし、その後、民主党が発表した法案骨子では、「対象業務自由化」撤廃や「みなし雇用」規定などの派遣先責任を強める重要な項目が欠落した。
そうしたなか、08年5月23日の4野党の書記局長・幹事長会談で労働者派遣法の改正に向けて、各党の政策担当者が協議を進めることで合意している。
6) 厚生労働省は、派遣法の抜本改正を求める労働組合の動きに対し、改正を先延ばしにしつつ論点を整理するため、「今後の労働者派遣制度の在り方研究会」(座長:鎌田耕一東洋大学法学部教授)を設置し、議論を開始した。研究会の議論は、事業規制をさらに緩和し、「多様な働き方」を肯定する方向に、派遣法の見直し論議を誘導しようとするものとなっている。
しかし、前述したような世論の変化や運動もあって、厚生労働大臣が日雇い派遣原則禁止を表明し、自公両党も同様の視点での合意をおこない、臨時国会への法案提出の動きを強めている。
7) 全労連は、第169通常国会に向けて、最低賃金「時給1,000円」の実現、労働者派遣法の改正・規制強化、労働時間規制の再強化を求める「第2次働くルール署名(国会請願署名)」を100万筆目標で取り組んできた。署名集約は、前回を下回る282,380筆(7月16日現在)にとどまったものの、議員要請行動を強めるなかで、紹介議員は、第1次署名を上回る民主党24名、日本共産党16名、社民党11名、国民新党1名、無所属1名、計53名に広がる成果を得た。
07年4月施行の改正均等法を職場に徹底し、職場での協約闘争に活用するために「改正均等法パンフレット」を全労連労働法制闘争本部とともに3万部作成し、普及してきた。パンフレットを活用し、職場の男女平等チェックを行い労働局・均等室要請を行うことを提起した。07年、08年春闘期に愛媛、沖縄、京都、大阪、東京などで要請行動が取り組まれた。
改正均等法では、間接差別が限定されるなど不十分な内容となっていることから、全国社会保険診療報酬支払い基金で行われている転勤可能要件を課長職昇格の条件としている人事政策を「間接差別」に当たる事例として認めるよう労働局に訴える取り組みを提起し、取り組みをすすめた。改正男女雇用機会均等法、育児介護休業法の職場への徹底に向けて学習パンフレットの作成、憲法ハンディノート、妊娠出産リーフを作成し、改正法の周知徹底と職場での協約闘争の強化を提起した。
育児のための「短時間勤務制度」の導入などを盛り込んだ改正国家公務員育児休業法と改正地方公務員育児休業法が07年5月に成立し、8月1日に施行された。
(2) いのちと健康を守る取り組み
全労連は、アスベスト被害者救済と実効ある被害防止対策を求めて、「働くもののいのちと健康を守る全国センター」(略称:いの健全国センター)に結集し、「石綿による健康被害の救済に関する法律」の抜本改正を求める署名運動や先進国で唯一のアスベスト輸出国・カナダ大使館への輸出全面禁止の要請、厚生労働省・環境省との交渉や国会議員要請行動、「アスベスト110番」活動やアスベスト健康被害シンポジウム、被害者の全面救済を進める全国交流集会などの運動を中央・地方でとりくんだ。
政府は、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対する救済の充実を図るため、「石綿による健康被害の救済に関する法律の一部改正法案」を第169通常国会に提出、可決・成立した。
「第2回健康で安全に働くための交流集会」(いのちと健康を守る全国センター主催)が07年10月20日〜21日に開催され、全国から全労連単産・地方組織をはじめ156人が参加した。現在、地方センターは22都道府県で結成し、青森、秋田、岩手、福島、鳥取、島根の各県労連が全国センターに加入し、地方センター結成をめざしている。
(3) 地域経済活性化をめざす取り組み
1) 郵政公社が郵政事業の民営化を前に打ち出した1048の郵便局の集配業務廃止などの再編「合理化」計画に対して、再編「合理化」計画の阻止にむけ、郵政民営化対策委員会を中心に運動をすすめてきた。
07年10月1日に、郵政事業が日本郵政株式会社に移行し、①郵便事業会社、②郵便局会社、③ゆうちょ銀行、④かんぽ生命に4分割され、136年間にわたる国営の歴史に幕を閉じた。
この郵政民営化にともない、集配局や簡易局の削減、局外ATMの撤去、振り込み手数料の大幅値上げなど利用者に対するサービスが切り捨てられた。全国で「こんなはずではなかった」の声があがるなか、民主党・国民新党・社民党が10月23日に「日本郵政株式会社、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式の処分の停止等に関する法律案」(郵政民営化見直し法案)を参議院に提出するなど、郵政民営化見直しの動きがはじまった。
全労連は、郵政民営化にともなう問題点を明らかにし、国民サービスを維持するために必要な郵便・貯金・保険の三事業一体運営と株式売却の凍結などの政策を提起したパンフレットを作成し、国会議員要請や地方自治体・議会要請をとりくんだ。
2) 北海道夕張市の財政破綻問題に関わって現地集会の開催や「除雪カンパ」の取り組みなどを通じて、北海道労連の運動を支援してきた。
また、07年12月に「地域運動交流集会」を開催し、8単産31地方122地域から259人が参加した。集会では、この間の地域における運動の交流とともに「こんな地域と日本をつくりたい運動」の具体的取り組みをよびかけ、2月の地域総行動での自治体要請や地域再生シンポなどが取り組まれた。
地域医療を守り、全国的運動の交流と更なる前進にむけて、08年6月に「地域医療を守り充実する運動全国交流集会」を開催し、全国から181人が参加した。この集会を通じて全労連、単産・地方組織が連携して全国的に展開していく方向を確認した。
地域におけるワーキング・プアの根絶にむけ、秋闘や春闘での自治体キャラバンを通じて全国で自治体の非正規労働者時給調査を行った。こうした取り組みの結果、15地方50自治体の賃上げ集計で「月額4,239円、日額148円、時給34円の賃上げ」で平均2.4%の引き上げを実現してきた。
3) 07年3月25日に石川県輪島市沖を震源とする「能登半島地震」が、8月16日には柏崎沖を震源とする「中越沖地震」が発生した。全労連は「全国災対連」に結集し、被災者の救援活動に取り組んだ。
また、被災者生活再建支援法の抜本改正にむけた取り組みを強めた。07年の参議院選挙結果による「新しい政治状況の変化」も受けて、被災者を中心に政党・議員要請や自民・民主・共産・社民の各政党代表によるシンポジウムの開催、抜本改正の必要性を訴えた。こうした取り組みも反映して、全会派一致で改正法が成立した。内容面では助成額などの点で課題は残したが、政府が頑なに拒み続けてきた住宅本体への適用をはじめ、被災者救済における年齢・年収制限の撤廃、4特例災害への遡及適用などの面で前進した。
また、全国災対連が要求してきた公立・私立学校の耐震化に関わって、第169通常国会で超党派の議員立法によって、従来3分の1の国庫補助を3分の2に引き上げる「学校耐震化促進法」が成立した。
中国・四川省での大規模地震やビルマでの大型サイクロン「ナルギス」による甚大な被害に対して、全労連は全組合員への支援カンパ運動を取り組んだ。
(3) 労働基本権の確立、国鉄闘争、中労委民主化の取り組み
1) 第166通常国会で、天下り自由化や能力・実績反映の人事管理制度への「構造改革」を内容とする国家公務員法「改正」法を成立させた政府は、07年10月の専門調査会報告も受けた08年2月の「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」報告をもとに、08年4月、国家公務員法改革基本法案を国会に提出した。
専門調査会報告では、06年7月来の討議結果として、非現業公務員の一部に労働協約権を付与することを打ち出す一方で、消防職員の団結権や公務員の争議権については両論併記にとどめると言う不十分な内容であった。全労連は、公務員制度改革闘争本部での論議もふまえて、労働基本権の全面回復を求める見解を改めて表明するとともに、専門調査会報告の問題点を明らかにする学習シンポジウムを緊急に取り組んだ。
懇談会報告では、幹部公務員の一元管理や、そのための人事庁構想等が示されたが、労働基本権については5年以内の検討を表明するにとどめると言う後退姿勢を示した。これを受けた基本法案でも、それらの点が争点となったが、労働基本権について「3年以内に措置」するという修正が自民、公明、民主3党で合意され、6月6日に成立した。
また、マッカーサー書簡60年を契機に「公務の労働基本権問題を考えるシンポジウム」を7月12日に開催した。
2) 第3回幹事会(06年11月)の確認をふまえて国鉄闘争を取り組んできた。
全動労鉄道運輸機構訴訟の勝利をめざして、公正判決を求める署名やハガキ要請行動、裁判傍聴行動を取り組むとともに、「1の日」宣伝や地方からの国労との共同などに取り組んだ。08年1月23日、東京地裁民事11部(佐村浩之裁判長)は、全動労組合員のJR不採用事件に関し、被告の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道運輸機構)に対し、原告一人当たり550万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。
関係当事者である4者(国労闘争団全国連絡会、鉄道建設公団訴訟原告団、鉄道運輸機構訴訟原告団、全動労争議団・鉄道運輸機構訴訟原告団)・4団体(国鉄労働合、全日本建設交運一般労働組合、国鉄闘争に勝利する共闘会議、国鉄闘争支援中央共闘会議)が取り組む署名や集会、国土交通省前座り込み行動を支援した。
国鉄闘争の両輪の取り組みと位置づけた「全動労勝たせる会」は、06年11月に開催した第16回総会で会員拡大に打って出る方針を決定した。具体的には年2回の拡大月間の設定と単産で0.6%の会員拡大目標の設定を要請した。07年5月に開催した代表委員・幹事会では、10万枚の加入リーフを作成・発行した。救援金はこれまで17年間に3億4000万円を超えているが、一方で、この2年間で会員は1,358人減少している。「全動労勝たせる会」は、主要単産・地方組織への要請オルグの実施と争議団員の職場オルグで会員の減少を食い止め増員に向けた運動を展開した。
3) 第28期労働者委員の不公正任命に関わって提訴していた裁判で、07年12月、東京高裁は東京地裁の不当判決をそのまま是認する不当判決を下した。このことから、最高裁判所に対し上告し、徹底審理と公正判決を求めて取り組んでいる。
30期(08年11月任命)の公正任命をめざす取り組みは、水久保新聞労連顧問、淀全医労副委員長の2人の候補者を民主化対策委員会として確認し、単産オルグ、宣伝行動、団体署名運動などに取り組んでいる。
なお、08年6月のILO「結社の自由」委員会・理事会は、第29期の不公正任命や東京高裁判決にかかわる全労連の「追加情報」に対し、「『勧告』にもかかわらず、またも全労連推薦者が任命されなかったことに遺憾を持って留意する。政府が以前の『勧告』に検討を加えたか否か疑問を呈する」旨の5度目の「勧告」を行った。また地労委をめぐって、今年2月に横浜地方裁判所は、神奈川における委員任命に関わって「労働者一般の利益」を理由にした不当判決ではあるものの、「差別的と受け止めるのはもっとも」として我々の主張に理解を示す判断を下している。
4) 06年4月、スタートした労働審判制度は08年4月に2期目に入った。厚生労働省基礎調査報告に基づいた組織人員で連合・全労連の審判員数を割り振り、全労連からは全国で1期2期とも51名(全体で500名)が最高裁によって任命された。企業リストラなどが相変わらず続き、全労連・地方組織が受け付けた労働相談は18000件に上る中で、労働審判制度は、解雇・労働条件引き下げ、配置転換などの個別労働紛争を迅速に解決する制度として、また、労働者が審判員として直接司法の場に参加する制度として活用されている。
なお、労働審判の運用と関わって、「弁護士でない者を代理人とすることを許可することができる」と定める法に沿うよう求めているが、最高裁は厳しく制限する姿勢を崩しておらず改善にむけた取り組みが求められる。
5) NTTリストラ闘争をはじめ、すべての争議解決をめざして取り組んできた。
闘争本部を設置してたたかっているNTTリストラ闘争では、全国7ヵ所(北海道・東京・静岡・愛知・大阪・愛媛・福岡)の地方裁判所に組合員50名が原告となって提訴している裁判闘争を軸に取り組みを強めてきた。持ち株会社前や東西での集会開催などを提起し、中央では、隔週の東京地裁・高裁(不当判決)、最高裁への要請行動などに取り組んできた。また、公正判決を求める署名、学者・弁護士等の要請を行った。さらに、各地方組織で、NTT営業所などへの要請行動を具体化してきた。
この1年間の主な争議解決は、国民金融公庫不当差別事件(07年9月25日)、東映退職金カット裁判(07年11月26日)、住友重機械工業不当労働行為事件(08年2月27日)、北洋銀行斎藤過労死裁判(08年2月28日)、スズキ思想差別事件(08年3月20日)、中野区非常勤保育士不当解雇事件(08年3月31日)、東京エンジニアリング解散・解雇事件(08年4月28日)、東芝賃金差別事件(08年4月24日)、三陸ハーネス争議(08年6月12日)である。これらの争議解決をめざし、秋、春の争議総行動などを取り組んできた。
4.社会保障改悪・増税反対の国民共同の運動
第22回大会方針では、国家的収奪から労働者・国民の生活と権利を守り、全国民の生活最低保障(ナショナル・ミニマム)を確立するたたかいとして、すべての単産・地方組織が社会保障闘争、増税反対闘争を賃金・労働条件と車の両輪に位置づけてたたかいを強化することとした。
重点課題としては、①年金、医療、福祉など社会保障の充実、②消費税など庶民大増税に反対する運動、③公害、アスベスト被災、食料を守る運動を重視して提起した。
前回大会以降、「構造改革」によって人間らしく生きるためのセーフティーネットが壊され続けてきたことへの批判が急速に高まった。そして、「構造改革」で壊された社会保障制度の再生・充実を求める運動や、庶民増税などの負担増に怒る国民的な運動が前進してきた。そのような情勢変化には、全労連などの粘り強い運動が反映している。
(1) 年金、医療、福祉など社会保障拡充の取り組み
1)「骨太方針2006」にもとづく、社会保障費2200億円削減が、07年、08年度の予算編成では大きな問題となった。こうしたことから、署名や集会、宣伝行動などを重視した取り組みを展開してきた。
08年度予算編成に向けては、生活扶助基準の引き下げ、社会保障財源と関連させた消費税率引き上げが焦点となった。そのことから、07年秋闘では、「許すな!憲法改悪・消費税増税 守れ!くらし・雇用 10・28国民大集会」(東京亀戸公園・42,000人)、9月26日と11月28日の秋闘中央行動、数次の国会行動などを展開した。
「増税反対・社会保障署名」を、全労連としての「消費税廃止各界連1000万署名」としても位置づけて07年10月から取り組み300,099筆を集約した。
消費税引き上げ反対、後期高齢者医療制度の中止・撤回を求め、毎月25日を一斉宣伝行動日として呼びかけ、社保協・消費税廃止各界連と共同して中央、地方・地域でとりくんだ。
「各県ごとの自治体キャラバン行動」で、最低保障年金制度の確立を求める自治体・地方議会要請、社保協規模での後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める地方議会請願などが全国各地でとりくまれた。
生活扶助基準引き下げに反対し、「生活保護の老齢加算、母子加算を元に戻せ! 11・14宣伝・要請行動」、厚生労働省の「生活扶助基準に関する検討会」会場前行動など、生存権裁判を支援する会や反貧困ネットワークの行動に参加し取り組んだ。
「社会保障費2200億円削減・増税反対 緊急 財務省前行動」(社保協、全労連、全生連の共催、12月21日)や厚生労働省交渉を実施した。
2) こうした運動の広がりのなかで、08年度の消費税増税の結論づけは見送りとなっただけでなく、毎年5兆円以上の額で「聖域化」されている道路特定財源や軍事費の使い方が問題となり、歳出全体の見直し論議も強まってきた。
また、08年度政府予算編成での社会保障費2200億円圧縮は、政管健保への国庫負担削減分を健保組合・共済組合が1年に限り負担することや診療報酬の薬価引き下げなどで政治決着し、当初目論まれた生活扶助基準の引き下げは見送られ、児童扶養手当削減も凍結された。また、障害者自立支援法の負担軽減策を09年度以降も継続することや、診療報酬を8年ぶりに「本体部分」0.38%引き上げることなど、政府としての一定の妥協もせざるを得なくなるまで、07年秋の段階で追い詰めた。
なお、秋の臨時国会では、「消えた年金記録」の被害者救済特例法案が全会一致で成立した。また、地方での乳幼児・子どもの医療無料化や妊産婦検診助成などの取り組みも前進している。
3) 08春闘段階で、07年秋の到達点もふまえつつ、「構造改革」の修正、格差と貧困の是正、国民負担増の軽減、社会保障制度の再構築などを重点課題に位置づけた。「なくせ貧困!2・13総行動」や、集会・デモ、3月5日の中央行動、地方議会請願採択、数次の国会行動などを取り組んだ。
特に、「姥捨て政策」である後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める取り組みを重視し、2月段階から、数次の国会行動、厚生労働省要請行動などを取り組んだ。
取り組みを反映して、4月実施を前に「制度凍結法案」が提出されたが、審議がおこなわれないまま実施時期を迎えた。
制度は4月に実施されたが、4月15日の年金からの保険料天引きも契機に、制度への怒りが沸騰し、後半通常国会の最大焦点となった。そのことから、4月23日には国会集中行動・決起集会を、5月14日には国会前行動と年金者組合などによる厚労省前行動を実施した。地方でも110番や一斉宣伝など多彩な取り組みが強められた。運動は、短期間で一気に広がり、高齢者の運動が政治を動かす状況を作り出した。後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める意見書採択は16県・598区市町村、計614議会(7月2日現在、中央社保協集約)にのぼっている。
こうした運動と世論の高揚が、野党4党による「制度廃止法案」の共同提出、参議院での可決となり、そのような状況を踏まえた6月11日の広範な団体による国会行動(約2100人が参加)が、衆議院で継続審議させて臨時国会のたたかいにつなげる力となった。なお、追い詰められた政府・与党は、制度定着を目論む宣伝を繰り返すとともに、保険料軽減措置などの小手先の制度見直しで局面打開を図ろうとしている。
また、医師・看護師不足が深刻となり、その実態が次々に明らかにされる中で、医療制度の充実を求める運動や、地域医療・公的病院守れの運動が全国的に高まっている。08年春闘段階でも、「医師・看護師ふやせ! ストップ医療崩壊! 2・13国会要請・署名提出・政党政策討論会」などを大きく成功させている。
(2) 消費税など庶民大増税反対、生活防衛の取り組み
06年度、07年度の定率減税廃止に伴って、事実上の庶民増税となり、労働者の貧困化を一層深刻にしてきたことから、生活防衛の立場からも税金闘争を強調してきた。
08年3月13日の重税反対全国統一行動では、全国580ヵ所、18万人が参加して取り組まれた。中央ではマスコミや政府税調委員との懇談をはじめ「アピール賛同」運動を行った。
07年夏以降、より顕在化した原油価格の高騰によるガソリンや軽油等の価格高騰に対して、価格安定を求めて内閣府要請を行った。同時に緊急団体署名運動に取り組み、関係単産や団体とも共同して道路特定財源の暫定税率の廃止を求める国会議員要請や政党要請を展開した。
揮発油税暫定税率維持を含む歳入関連法案は、野党の慎重審議によって日切れ法案のため08年3月末をもって成立せず、34年ぶりに暫定税率が下がり、ガソリンや軽油価格は低下した。
与党は、議会制民主主義をも否定し憲法59条を悪用し参議院で「みなし否決」として暫定税率を復活させる税制関連法案を4月30日衆院本会議で再議決し、再び暫定税率を課した。
こうした原油高騰や鋼材・素材の急激な値上げのもとで、中小下請け経営者と連携し、建交労では一部大手での「燃料サーチャージ制」の導入、JMIUでは公取委や中小企業庁への要請等を通じて、「買いたたき」などの下請けいじめの指導徹底など窓口改善をしてきている。また、公正取引委員会や中小企業庁などへの交渉も強めてきた。
(3) 公害、アスベスト、食糧・地球環境保全の取り組み
1) 公害患者の救済のたたかいは、この2年間2つの大きな前進を勝ち取った。
「全国トンネルじん肺根絶訴訟」原告団は07年6月18日、国と原告団が「合意書」を締結し全面解決した。「東京大気汚染公害裁判闘争」は、07年8月東京高裁の和解勧告を受け入れ国と正式和解した。
「トンネルじん肺根絶訴訟」のたたかいは、当該組織の建交労のたたかいを中央・地方で支援し全面解決に追い込んだ。裁判闘争だけでなく超党派での国会議員526人の賛同署名や100万筆を超える署名運動などで国の姿勢を変えさせ、将来の被害防止の視点を盛りこんだ和解に追い込んだ画期的な成果である。
「東京大気汚染公害裁判」のたたかいで、医療費助成制度の創設、公害対策の推進、トヨタをはじめとする自動車メーカーの社会的責任を明らかとする成果を勝ち取った。同原告団は、この成果を生かすため、引き続き公害患者の掘り起こしと助成制度の活用を積極的に広める運動を開始している。また、この制度を全国の喘息患者救済に向け広めることにも取り組んでいる。
2つの公害闘争で明らかになっていることは、患者・原告団が先頭に立って実態を訴え、全国的な支援を受けながら粘り強くたたかい、政治の壁を乗り越えたことである。
2) 農産物・食料品の輸入拡大を進め、一方で国内の農業や酪農の切捨てる農政は、世界的な食糧危機のもとで矛盾を拡大している。全労連は、全国食健連に結集し、安心・安全な食糧と日本の農業を守る運動に取り組んできた。06年秋のグリーンウエーブ行動、BSE全頭検査の維持と米国産牛肉輸入拡大反対とミートホープ社の牛肉偽装事件に抗議する農林水産省・厚生労働省交渉、07年年末からの中国製冷凍餃子事件での政府追求などを通じて、輸入時の食品衛生監視員の増員に結び付けてきた。
07年度から導入された家族農業切り捨ての「品目横断型経営安定対策」は初年度から矛盾を露呈し、多くの生産農家を農業から追い出し、大規模経営をも押しつぶすものであったことが明らかとなった。
急激な輸入穀物価格の高騰は、農業だけでなく養鶏・畜産・酪農家にも飼料高騰として直撃し、廃業も発生している。
政府の輸入依存政策の無責任ぶりが明らかになり、世界的な食糧危機のもとでの生産国の輸出規制の動きなどもあって、福田首相も食料自給率向上に言及をせざるを得なくなっている。WTOの自由貿易体制一辺倒の農政から、自給率向上を柱とした農政への転換が重要な国民課題となっている。
このような中開催された7月のG8洞爺湖サミットに向け、6月1日には、プレ・国際フォーラム『温暖化・食糧問題と食糧主権?G8洞爺湖サミットに向けて』を開催。さらに7月4〜6日に北海道・札幌を中心に「食糧主権」の取り組みを行った。
(4) 国民課題での国会行動
全労連は国民大運動実行委員会に結集し、第165臨時国会では、教育基本法改悪反対を中心にたたかい、国会行動には13次、15,950人が結集し、署名107万筆を提出した。また、「教育基本法改悪反対10・14中央集会」(明治公園―27,000人参加)をはじめ、6次、49,000人が参加する中央行動を取り組んだ。
第166通常国会では、改憲手続き法反対を中心課題に、国会行動には23次、9700人が結集し、署名は188万筆を提出した。
第168臨時国会では、新テロ特措法反対、後期高齢者医療制度中止撤回を中心課題に展開した。新テロ特措法をめぐって年を跨いだ国会行動には21次、3,500人が結集し、署名は142万筆を提出した。
第169通常国会では、労働者派遣法の抜本改正が国民課題となり、後期高齢者医療制度中止・撤回や暫定税率廃止・道路特定財源の一般財源化要求など中心課題に、国会行動は12次、6500人が参加し、187万筆の署名を提出した。
5.憲法改悪を阻止し、平和を守るたたかい
第22回大会では、「戦争をしない国か」「戦争をする国か」をめぐる戦後史をかけたつばぜりあいが展開される情勢にあるとの認識のもと、憲法闘争をこの2年間のすべての課題に優先ずる運動と位置づけた。前半の1年間は、戦後レジュームからの脱却や在任中の明文改憲を掲げた安倍内閣のもとで、改憲をめざす動きが急速に進められ、改憲手続き法の成立と言う段階にまで強引に進められた。しかし、07年7月の参議院選挙に示された民意もあって、一気呵成の明文改憲が困難な状況となり、自民党と民主党の大連立構想が頓挫したこともあって解釈改憲の障害も大きくなってきた。何よりも、「9条の会」や共同センターなどの粘り強い取り組みで国民世論が変化し、改憲に反対する世論が多数を占めはじめたことに、この間の取り組みの大きな特徴がある。
(1) 憲法改悪阻止のたたかい
1) 大会方針の具体化として、07年度では「500万署名集約」の取り組みを提起した。
憲法改悪反対署名を08年通常国会時期までに500万筆集約目標で取り組むことを確認し、1人5筆以上を目標とする単産・地方組織の目標設定、報告体制と「500万署名推進ニュース」発行などで達成をめざした。また、07年秋には「全労連憲法リーフ」をもとにした職場からの学習運動を強めた。さらに、08年5月に、憲法運動集中月間を設け、「憲法キャラバン」を推進して、目標への追い上げを図った。
運動推進のために、「憲法闘争本部」(3ヵ月に1回)、「憲法闘争単産担当者会議」(毎月)開催し、08年1月22日には500万筆署名の達成とキャラバンの成功に向けた「単産地方代表者会議」を開催した。
憲法署名の6月末現在の到達点は、単産507,509筆、地方1,099,063筆、合計1,606,572筆で、500万筆の目標には届かなかった。しかし、単年度で160万筆を超す署名を集めたことは貴重な到達点であること言うまでもない。なお、憲法署名を開始した04年来の累計集約数は、単産122万筆、地方352万筆、合計475万筆である。
全労連女性部が呼びかけた「憲法署名100筆チャレンジャー」には8,040人が登録し、運動の推進者の役割を発揮した。
2) 署名推進に関わって、08年5月を中心に「憲法網の目キャラバン」を取り組んだ。取り組みは、47都道府県すべてで実施され、憲法闘争の面的な広がりを作り出した。
「憲法網の目キャラバン」は、各都道府県の自主的な計画のもとに実施することを基本としたが、全体として大きなエネルギーが発揮され、「学習」「宣伝」「署名」「自治体要請」「労組訪問」などが積極的に取り組まれた。しかし、一部の県では宣伝活動や「憲法集会」の取り組みにとどまるなどの温度差も見られた。また、キャラバンは、「共同センター」規模の取り組みで実施された地方組織も少なくない。
キャラバンでの自治体との懇談は、34都道府県で実施され、約430自治体を訪問し、地方交付税の削減、地方財政の困難なども含め、率直な意見交換が行なわれた。
5月30日には憲法キャラバンの集結集会の位置づけももった中央行動を取り組み、憲法署名50万筆余を日本共産党と社民党を通じて国会に提出した。
3) 08年6月までに、職場「9条の会」は、単産では生協労連、全国一般、福祉保育労、年金者組合、全教、自治労連、国公労連など13単産で約800が結成されている。地方組織集約では、大阪、埼玉、愛知、山口などで約1600となっている。
「九条の会」の発表によると、各分野・地域・職場などの「9条の会」は、08年4月段階で7039ヵ所結成されている。第2回「九条の会」全国交流集会が07年11月24日に開催され、福田内閣のもとでの明文、解釈改憲の両面からの運動強化の必要が議論された。
全労連は、462地域組織に対応する地域共同センターの結成を提起し、5月末現在45都道府県308地域に共同センターが確立されている。多くの地域共同センターは、毎月の「9の日」宣伝が定着し、いくつかの地域共同センターでは地域ローラー作戦や団地宣伝訪問活動も展開されるなど、改憲反対闘争をたたかう体制が確立されつつある。この間、憲法改悪反対共同センターが作成したリーフは460万部に達した。
憲法改悪反対共同センターが主催した「憲法闘争の前進をめざす第6回全国交流集会」(07年10月4日)には246人が、「第7回交流集会」(08年6月21日)には150人が参加した。第7回交流集会では、改憲反対の世論が高まり一方で改憲派のまき返しの策動が続き、画期的な名古屋高裁のイラク派兵違憲判決が出されると言う新たな情勢下での、攻勢的な憲法闘争の推進について意思統一した。
なお、労働組合レベルの憲法共同闘争では、07年12月10日に、東京の労働者、労働組合がナショナルセンター所属の違いを超え、「改憲反対」の一点で共同集会を開催した。
4) 全労連は、08年5月に開催された「9条世界会議」の実行委員会に加わり、9条改憲反対で一致する共同行動の成功に尽力した。千葉の幕張メッセ(5/4〜6)には22,000人、仙台(5/6)2,500人、大阪(5/6)8,000人、広島(5/5)1,200人、計33,700人、海外から40ヵ国150人が参加して大きく成功した。
5・3憲法集会実行委員会主催の8回目の憲法集会など、08年5月3日には、全国各地で憲法擁護を明確にした集会が開催され合計3万人が参加した。なお、5・3憲法集会実行委員会は、毎国会開会日に院内集会を開催している。
(2) 日米軍事同盟打破、米軍再編強化反対のたたかい
1) 07年秋の臨時国会の最大争点は、11月1日期限切れのテロ特措法延長問題となった。
全労連は、テロ特措法延長反対のたたかいの意義と論点を明らかにしつつ、テロ対策特措法の延長と新法に反対する国会議員への要請行動、「イラク特措法の延長反対10・3中央集会」(日比谷野音)、「10・28国民大集会」(42,000人)などに取り組んだ。
そのことが参議院選挙で変化した国会状況に影響を与え、11月1日、テロ特措法は期限切れとなり、インド洋から自衛艦が撤退するという歴史的な事態が生まれた。しかし、自公与党は米・ブッシュ政権の意を受け、新テロ特措法を衆議院の絶対多数を背景に成立させるという暴挙にでた。
新テロ特措法案や衆議院再議決に対する反対の世論も急増し、政府与党は追い込まれたが、12月15日に国会会期が再延長され、自公両党は1月11日、参議院本会議で否決された新テロ特措法案を衆議院で再議決し強行成立させた。
3月20日、「イラク戦争5年 無法な戦争はすぐやめよ 自衛隊は撤退せよ3・20中央集会&パレード」を東京・芝公園23号地で開催し、雨の中2,000人が参加した。
2) 「2007年日本平和大会in沖縄」が11月22日から25日、那覇市を中心に開催され、単産・地域組織から多数参加した。25日には1,400人がキャンプ・シュワブを囲む「人間の鎖」行動が行われた。
「在日米軍再編」計画の実施によって基地被害の増大が懸念される自治体での反対運動が広がる中、政府は、米軍再編を受け入れた自治体には実績に応じて補助金を出すことで反対運動の切り崩しをはかり、そのための法律まで強行した。こうした国の不当な圧力と仕打ちに抗議して、岩国では12月1日、「国の仕打ちに怒りの1万人集会in錦帯橋」が開かれた。また、12月2日、神奈川県座間市でも 「戦争司令部ノー、爆音も原子力空母もゴメンだ! 12・2首都圏大集会in座間」が開催された。いずれの行動にも、全労連各単産、地方組織からの積極的な参加があった。
2月10日、沖縄海兵隊員による女子中学生暴行事件への怒りが広がり、アメリカ大使館や日本政府への抗議や院内集会を開催され、沖縄では、県議会はじめすべての市町村で抗議決議が採択された。3月23日には、日米地協定の抜本改正と基地の整理・縮小を求め「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」が開催され6,000人が参加した。
3月19日には横須賀で自交総連組合員がタクシー内で米兵に刺殺される事件がおきたことから、これに抗議し、4月14日に神奈川での「米兵犯罪抗議、緊急横須賀集会」が開催された。なお、横須賀では、幅広い団体個人が参加する「住民投票を成功させる会」が、3月6日〜4月6日の期間に原子力空母の配備の是非を問う住民投票を求める直接請求署名運動を行い、52,000筆を集めて運動を大きく前進させた。「原子力空母の配備を許すな7・13全国大集会in横須賀」が開催された。
3)「07年原水爆禁止世界大会」は、07年8月3日から9日、国際会議(広島)、世界大会−広島、世界大会−長崎(本大会)が開催され、広島、長崎での「世界青年のつどい」「核兵器なくそう女性のつどい」も取り組まれた。大会に向け、全労連加盟単産をはじめ多数の労組議長・委員長連名のアピール「核兵器のない平和で公正な世界のために原水爆禁止2007年世界大会に職場・地域から代表を送ろう!」を発表し、これに応えて多くの単産・地方が世界大会に参加した。
世界大会を節目として、全国で取り組みが進められている国際署名「すみやかな核兵器の廃絶のために」を全国各地で強めるとともに、原爆症認定制度の抜本改定を求める「緊急100万署名」にも取り組んだ。
50周年記念原水爆禁止国民平和大行進に取り組んだ。「2008年3・1ビキニデー」が3月1、2日に静岡県焼津市で開催され、単産・地方から参加した。
(3) 言論・表現の自由を守る取り組み等
1) 言論弾圧3事件(国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件、葛飾ビラ配布弾圧事件)の裁判勝利と、国民の言論・表現の自由、ビラ配布の自由を守り、公務員の政治活動の自由を勝ちとるためにたたかいをすすめてきた。
06年12月8日に、「言論・表現の自由を守る国民集会」(公務員や市民ら1,000人)を東京・日比谷公会堂で開催した。2007年11月27日には、「言論の自由と公務員の権利を考える集い」(300人)が東京・社会文化会館で開かれた。
08年7月9日には、「あぶない!言論の自由が!ビラ配布の自由を守る7・9集会」を日本教育会館一ツ橋ホールで開催し、950人が参加した。
2) 映画「YASUKUNI−靖国」の「事前検閲」や上映「自主的」中止問題、日教組教研集会に対するプリンスホテル側の集会、宿泊の使用拒否が起こるなど、集会・結社、言論の自由に他甥する弾圧が強まっている。改めて言論の自由、表現の自由のたたかいを大きく広げていく取り組みが重要となっている。
高校日本史教科書の沖縄戦をめぐる「集団自決」への軍関与にかかわる検定意見撤回・記述の回復を求める県民大会が、07年9月29日に開催され、116,000人が参加した。
(4) 政治の民主的転換をめざす取り組み
07年4月の統一地方選挙や、07年7月の参議院選挙にあたり、組合員の政党支持の自由を保障しつつ、要求実現の立場から政治闘争を重視しつつ、「候補者選択の基準」を明らかして取り組みを強めた。
この間、岩手、福島、東京、神奈川、埼玉、愛知、大阪、三重、奈良、鳥取、高知、福岡、沖縄、の知事選挙や、大阪市、京都市などの都道府県庁所在地での首長選挙、山口県岩国市長選挙など行政に大きく影響する自治体市長選挙で、当該地域組織の推薦決定もふまえながら、取り組み支援を行ってきた。
対米従属、大企業優遇の政治の行きづまりが深刻化する中で、「構造改革」を進めてきた自公政治への批判が高め、政治的変化をつくり出す上で、全労連の取り組みも一定も役割を果たしてきている。
6.世界の労働組合との連帯・共同の取り組み
(1) アジアを軸とした二国間交流・連帯活動
1) 国際組織の加盟にかかわらず、二国間の交流を深め具体的な課題での交流を深めることを重視して活動を展開してきた。米国、中国、ベトナム、インド、ポルトガルの組織などとへの大会参加や定期交流を行った。研修生・実習生の問題では中国やベトナムのナショナルセンターに積極的に情報提供を行い、必要な協力を行うことで合意した。また日経多国籍企業での団結権侵害、争議の解決などへの支援、情報提供を行った。
またグローバリゼーションと労働組合の権利に関する南からのイニシアチブ(SIGTUR)の大会に初めて代表を派遣。進歩的な労働組合のネットワークに参加することで具体的課題での交流を図った。また世界平和大会(ベネズエラ)への日本代表団に参加するなど、世界の社会運動との交流も深めた。
2) ILO総会に引き続きオブザーバーを派遣するとともに、日本の労働者の実態と全労連のたたかいについて発信することを重視した。ビルマの軍事政権による市民の弾圧には、大使館とビルマで活動する日本企業に抗議と懸念を伝える文書を送付した。また、ビルマのサイクロン、中国・四川大地震への被災者支援募金にも取り組んだ。
(2) 行動綱領改定にむけた報告会や学習資料の提供
「行動綱領の改定」にむけて、06年12月のITUC発足大会の報告会をはじめ資料の作成、第41回評議員会での予備提案、「世界の労働者の闘い」発行等を通じて、加盟組織内での討議を促進してきた。
7.労働組合の共同と組織拡大・強化の取り組み
(1) 2年間の組織拡大運動についての全体評価
1) 単産・地方組織において、団塊の世代の大量退職にともなう新規採用者をかつてない規模で迎えることに成功してきている。また、非正規の組織化では、単産の個人加盟組合や地域ユニオンへ青年労働者が結集し、不払い残業代の支給や「名ばかり管理職」の是正に見られるような社会的キャンペーン運動前進の礎となっている。「組織拡大こそ要求実現への最大の保障」と確認して組織拡大の重要性を共有し、運動強化がはかられた2年間だったといえる。
2) 非正規雇用などに焦点を当てた労働相談ホットライン、ブロック別オルグ養成講座の開催、青年労働者組織化のためのビデオ作成などを行うなかで、単産・地方組織での独自の「組織拡大オルグ」の配置や地方組織における組織化の受け皿となる常設労働相談センター確立と相談員配置、ローカルユニオン、地方共済会の確立へと大きな流れに発展してきた。また、「ヘルパーネット」、「外国人労働者問題連絡会」、「派遣・請負労働者連絡会」の結成、「パート・臨時労組連絡会」の運動強化など不安定・非正規労働者の要求実現と組織化にむけた新しい取り組みがすすみ、「全国非正規労働者センター準備会」結成に至った。若者の貧困が大きな政治・社会問題になるなかで、青年ユニオンをはじめとする青年労働者自身の運動が、職場と社会を変えはじめている。
3) 一方、「200万全労連600地域組織の建設」という目標からみれば、達成状況は極めて不十分であり、組織人員の減少は一部の単産を除き歯止めがかかっていない。今後に残されている課題は少なくないが、単産・地方が最大の課題として組織化を位置づけるところまできたことは、今後の展望を切り開く上で極めて積極面な側面といえる。
(2)取り組みの経過と到達点について
1) 2年間の組織拡大数は、06年67,021人(前期41,380人、1後期25,640人)、07年74239人(前期43,227人、後期31,012人)であり、08年は目下、集約中であるが39,145人(1〜5月集計のみ)となっている。単産・地方組織での積極的な取り組みが新しい前進を作り出してきている。本年5月までの拡大実績を見ると、日本医労連はすでに昨年半期実績を突破し、自治労連も昨年水準に到達し、福祉保育労も昨年の拡大数に近づいている。生協労連は、昨年度の年間の拡大数を上回っており、組織数で純増になる見込みである。年金者組合の拡大数は昨年を上回っている。土建関係では、未集約があるもののすでに1万人台となっており昨年を上回る状況にある。
2) 特徴点の一つは、新規採用者の組合加入が大きく前進していることである。大量退職にともなう新規採用の大幅な増加とともに、労働組合に対する新しい期待の表れとして、かつてなく新規採用者の組合員加入がすすんでいる。単産・地方組織での新規採用者に対する組合説明会や意識的な働きかけの強化、さらにこの間各地で「社会人に贈る権利手帳」などを活用した大学卒業式宣伝や就職フォーラム会場での宣伝などが拡大に結び付いてきている
3) 特徴点の二つは、ローカルユニオンなど個人加盟組合で組合員拡大すすんでいることである。ローカルユニオンや単産の個人加盟組合の組織拡大は引き続き前進しており、ローカルユニオンでは02年3138人だったのが05年4736人となり、07年末で6000人をこえた。とりわけ地域労組「おおさか」は、本年3月以降だけで427名を拡大し目標の2千名を突破した。また、道労連・札幌地域労組「結」、岩手ローカルユニオン、埼玉ユニオン、京都・伏見ふれあいユニオンなどの組織的前進も著しい。ロリータ服ブランド三宮店で、4人の女性が不当解雇されたが兵庫の地域労組「KOBE」に加入し、運動に立ち上がったのはマスコミも大きく報道し大きな関心を呼んだ。ローカルユニオン熊本では、中国人研修・技能実習生6名を組織し時給300円前後で奴隷的労働条件の改善を求め法廷闘争でたたかっている。深刻な未組織労働者からの労働相談が組織化に結実する事例が増え、派遣・請負、ヘルパー、外国人など弱い立場の労働者と向きあってきた個人加盟の組合やローカルユニオンが駆け込み寺の役割を果たしており、組織拡大の新たな状況が生まれている。
(3)非正規労働者などの組織化の取り組み
1) 全労連の「非正規雇用労働者全国センター」は、08年3月に準備会を発足させ、松下プラズマ判決の検討会を全労協と共催で実施するなど運動実績を積み上げてきた。体制の確立、活動計画などの具体化についてさらに検討を図りつつ第23回定期大会をもって正式発足する。第22回定期大会(06年7月)の「全労連組織拡大強化・中期計画」で「非正規労働者などの本格的な組織化の推進」を「4大目標」のひとつと位置付け、「2010年までに非正規労働者35万人の組織化をめざす…非正規労働者等部会を立ち上げ、①パート・臨時労組連絡会、②ヘルパーネット、③派遣・請負労働者連絡会等を設置し、担当の配置や一般会計による財政措置を検討する。単産は、「パート・臨時部会」などを設置して対応するとともに、可能な地方組織から「パート・臨時労組連絡会」「ヘルパーネット」を結成し、全国的な体制を整備しつつある。さらに、移住労働者などの組織化については、「外国人労働者連絡会」をつくり、全国的な移住労働者の組織化についての交流・指導・援助を行う」ことを確認し、この2年間、具体化を図ってきた。
2) 「パート・臨時労組連絡会」は、発足以来7年が経過し役員体制、機関運営が確立して3単産・23地方組織にも組織がつくられている。昨年は、二度目の「パート・臨時で働く仲間の実態アンケート」を14,855名集約、「均等待遇シンポ」を通じて実態を鋭く告発するとともに賃金・労働条件の改善と均等待遇実現の世論をつくりだすことに貢献してきた。07年12月には「格差と貧困を考える集会」、07春闘では「3.8青年・女性・パートの中央行動」を取り組んだ。08年5月、仙台で行なわれた第16回パート・臨時、派遣ではたらく仲間の全国交流集会は「格差と貧困を克服し、人間らしい働き方を実現するために」をテーマに、シンポジュウムや分科会を開催。青年も含め、様々な雇用形態の非正規労働者がつどい、540名を超える最大規模の集会となった。
3) ヘルパーネットは、介護保険発足時より国の施策によって大量に生み出された登録型、直行直帰という不安定なヘルパー労働者の組織化と要求実現に向けて、さまざまな挑戦を行ってきた。運動をつうじて厚生労働省に「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について〜04年8月27日」を出させ、これを使って労働条件の改善などの取り組みを展開してきた。発足以降、都道府県単位のヘルパーネットワークも宮城、大阪、東京、広島、京都などで結成され、単産でも日本医労連、福祉保育労、自治労連、生協労連などで「介護部会」の結成など活発な動きになっている。この間「世話人会議」を定例開催して、「ヘルパー実態調査アンケート」の取り組みや組織化を正面にすえた「ヘルパー組織化交流集会」を開催してきた。
4) 「外国人労働者連絡会」は、首都圏移住者労働者ユニオンなどの協力で06年9月に結成し、13万人以上のベトナム人、中国人をはじめとした過酷な労働条件と人権侵害に苦しむ「外国人研修・技能実習生問題」が全国に広がるなかで、その実態を告発し、組合加入をふくめてかれらの身柄を保護してきている。さらに「労働法や労働組合法の遵守」や「外国人研修生・技能実習生制度の廃止」など全労連「外国人労働者政策」をまとめて政府や国際研修協力機構(JITCO)など係機関との交渉に取り組んできた。外国人労働者の組織化では、JMIUが静岡でブラジル人を中心に約300名を組織するなどの動きが広がってきている。
5) 派遣・請負問題では、光洋シーリングテクノなどの闘いに連動して「派遣・請負労働者連絡会(準備会)」を06年11月に確立した。派遣・請負リーフレット改訂版を発行し「無権利の谷間からとびだそう〜派遣請負労働者問題・交流集会」の開催、単産・地方担当者による7回の「準備会」を開催した。全労連として、職場に蔓延する現行の労働者派遣法にも違反する違法派遣=偽装請負の告発と直接雇用を求める闘いを労働組合の結成・加盟を力にしながら取り組み、政治・社会問題にまで押し上げてきている。全労連は、「派遣は臨時的・一時的なものに限定するべき」として「登録型派遣の廃止」など労働者派遣法の抜本的改正をもとめ、この間「連絡会(準備会)」として、要求・政策の検討、単産・地方の運動交流、政府交渉などに取り組んできた。
(4) ナショナルセンター・全労連の機能強化に関わって
1) 男女共同参画型の労働組合づくりにむけて、第22回大会での規約改正もとづく全労連機関会議への女性参加比率の向上にむけて取り組んできた。
女性の参加比率は、わずかながら上昇してきている。評議員会については地方定数が「1名」という困難性があり、改善のテンポは遅い。
07年11月5日、「労働運動における男女平等参画をめざす単産・地方代表者会議」を開催した。男女平等社会の実現めざし「地域、職場から男女平等のための取り組みを!―全労連男女平等推進委員会問題提起(案)―」を提起し論議した。
「女性労働者の健康・労働実態および雇用における男女平等調査」、「妊娠・出産・育児に関する実態調査」を取り組み、それぞれ4100人、1800人分を集約、分析し発表した。
2) 国際女性デー、日本母親大会、はたらく女性の中央集会、核兵器をなくそう女性のつどいの成功に向けて取り組みをすすめた。また婦団連、女性の憲法年連絡会、国際婦人年連絡会に結集し、共同の取り組みをすすめた。08年6月に行った婦団連共同行動では、「妊娠・出産にかかわる女性の実情と要求をシンポジウム」で産婦人科・小児科の増設、妊婦検診の無料化、子どもを生み育てながら働き続ける労働条件の改善などの要求をまとめ、政府交渉を行った。
07年4月に開催された国際民婦連大会に柴田女性部長を派遣した。
各地方女性組織の活性化のために、ブロック交流会を重視し、運動と組織の強化をはかってきている。近畿・東海北陸のブロック交流会の定期化、関東甲信越ブロック、四国ブロックでの女性交流集会の開催などが進められてきている。
3) 全労連青年部は「憲法守れ、平和と民主主義守る」取り組み、青年が「まとも生活できる仕事!人間らしく働きたい!」という願いを実現する取り組み、青年部の組織拡大強化と政治の転換をめざす取り組み、の三本柱で活動した。
憲法改悪阻止と平和の取り組みでは、学習と街頭宣伝、憲法署名など青年独自でとりくんだ。核兵器なくそう・世界青年のつどい準備委員会で奮闘し、ピースツアーの実施、福岡での「平和友好祭」の成功、四国の反核ライダー、建交労反核トラックなど、各地での広がりがあった。
青年の雇用問題では、07年5月20日におこなわれた「青年雇用大集会」が3300人の青年が結集し、マスコミにも大きくとりあげ世論を動かした。08年10月の「青年大集会」にむけて民青同盟、全学連、首都圏青年ユニオンなどと実行委員会を結成し6月と7月のプレ企画などを実施した。全国各地でも独自の地域実行委員会が結成され、運動の広がりがうまれている。また最低賃金の運動でも、各地で取り組みがすすみ、正規・非正規を超えた青年の団結が築かれた。就職連絡会の運動にも積極的に参加し、奮闘した。
青年組織の拡大強化では、毎年一回、全国から青年部幹部をあつめユニオンユースアカデミーを開催している。08年は、「ピースツアーin韓国」を実施し、平和学習・国際交流を行った。
福岡県労連青年部の再建、福祉保育労青年部の結成など、新たな動きで青年の団結がうまれている。
4) 教育活動では、春闘学習資材として、「学習の友・春闘別冊」を労働者教育協会と共同編集で毎春闘ごとに学習資材として発行(各年24,000冊以上)・普及した。幹部活動家向けの「春闘白書」は、全労連と労働総研の共同編集として発行(各年5,000冊)した。
勤労者通信大学「憲法コース」「労働組合コース」の募集に協力し、2年間で両コース合わせて3000名を超える受講生を組織化した。
大会方針に基づき、「全労連新聞」「月刊全労連」の定期刊行物の改善につとめてきた。「月刊全労連」は、読者アンケートの結果を参考に文化のページを新設するなど、紙面改善を進め、部数拡大にも取り組んでいるが目標には到達していない。
「ホームページ」は06年10月からリニューアルした。非正規センター(準)のブログも08年3月に設置し、好評である。
5) 06年4月に施行された「改正」保険業法は、労働組合が行う共済をはじめ、全商連・民医連・保団連・労山などが行っている自主共済事業を、保険業とみなして民間保険業並みの規制を行うこととした。労働組合が行う共済事業は、現段階では適用除外となっているが、そもそも、労働組合が行う共済事業は、労働組合の自主的活動としての「助け合い事業」であり、利益を目的とする民間保険業とは、目的も内容も対象も全く異なるものである。
全労連は、共済規制に反対する「全労連見解」(07年2月)を発表、労働共済連、労働共済とともに「学習用リーフ」や「労働共済ビデオ」を作成し学習をすすめてきた。2007年3月28日には全労連主催で「労働組合の共済事業を考えるシンポジウム」を会場いっぱいの200名で行った。また全商連、保団連、民医連、労山などで構成された「共済の今日と未来を考える懇話会」にも参加して個人署名、国会議員要請などに取組んだ。また金融庁、厚生労働省との交渉、政党・国会議員との懇談を行い、とりわけ厚生労働省には、憲法、労組法にもとづく対応をとるよう強く求めてきた。労働共済と労働共済連はこの秋に結成20周年を増勢でむかえ、各単産・地方組織でも共済事業の取組み強化が方針として強調された。
08年3月24日共済事業への規制見直しにむけた「経過措置期間を1年延長するための法案」を4野党と無所属議員10名が共同して参院に提出したが審議未了となった。2008年3月末までの保険会社への移行等の猶予期間が満了し、保険業法第2条に規定される適用除外の共済(1,000人以下の小規模共済、制度共済、一の労働組合の共済など)以外は、必要な申請を行わなかった自主共済については08年4月以降、新規の契約はできなくなり、管理業務をふくめて09年3月末までに廃業に追い込まれることとなった。
08年1月に「労働組合共済への規制に反対する対策会議」を設置し、「学習リーフ」を作成するとともに08年2月28日に学習決起集会を150名の参加で開催した。また保険法が第169通常国会に上程されたことから、法務省との話し合いを4月8日と10日に行った。
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